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米中日関係(環球時報社説)

2019.05.27.

5月27日付(ウェブ掲載は前日)の環球時報社説「中国を落とせないアメリカ 対日態度軟化を強いられる」は、日本を国賓として訪問中のトランプが日本に対してこれまでのトランプにはない尊重姿勢で臨んでいることに注目して、米中貿易交渉で中国の断固たる姿勢に直面したトランプが日本(及びEU)に対するアプローチの変更を強いられた結果であるという見方を示し、「アメリカのいじめに対する中国の抵抗が中国の周辺諸国ひいてはアメリカにいじめられている世界の多くの国々にとって積極的な意義を持っている」と指摘しました。米中日関係にかかわる中国側の見方を示すものとして興味深いので、翻訳紹介します。

 アメリカのトランプは4日間の訪日を行っている。しかも彼は、1ヶ月後には大阪で開かれるG20サミットに参加するために訪日する予定であり、このことはワシントンが日本に対して空前の尊重を示しているものだ。ちなみに、昨年11月にパプア・ニューギニアで行われたAPECサミットにおいてトランプはペンス副大統領を派遣しただけだった。
 ワシントンは一貫して米日同盟の主役を自任しており、通常の状況下であればアメリカ大統領が日本に対してこれほど慇懃に振る舞うことはあり得ない。ましてや過去においてしばしば同盟国を軽んじる行いをとってきたトランプにおいておやである。ワシントンが現在日本を慰撫する最大の原因は中米貿易戦争及び中米関係の全面的緊張にあり、日本はアジア太平洋におけるアメリカの最重要の盟友として、ワシントンにとっての重みがさらに増したということだ。
 トランプは貿易問題で日本に圧力を行使して対米譲歩を引き出すことを大いに願っているが、今回はおそらくダメだろう。様々な情報によれば、彼は日本の要求を受け入れて貿易問題を今回の訪日の主要議題にしないことを受け入れざるを得ないということだ。
 多分確かなことは、中国が貿易に関するアメリカのいじめ的な要求に抵抗する限り、ワシントンは欧州及び日本との間でアメリカに有利な取引を達成することはできないだろう。中国が絶対に引かない状況下では、アメリカはこの2年間に貿易問題では何事も達成できないだろう。
 ワシントンは闇雲に中国との間で大国間の正常レベルをはるかに超えた戦略的駆け引きを行い、中国を防遏しようとし、その結果、自らを多くの面で受け身の境遇に陥れることになった。アメリカは中国が原則的な妥協を行わないという決意を過小評価し、また、中国がそのように行動することがアメリカのグローバル戦略を牽制することになることをも過小評価した。アメリカは先週、欧州及び日本に対する自動車関税加徴の延期を発表し、メキシコに対する鉄鋼及びアルミの関税も取り消した。アメリカは正に戦線収縮を迫られている。
 さらに、中米が持久的な相互消耗戦に入った後は、アメリカがそのいじめにとってつけた道義的口実はますます八方破れになっていくだろう。アメリカはさらに、アメリカの同盟諸国が中米貿易戦争を利用してアメリカと取引することに対する関心は、これら諸国がアメリカと一緒になって中国の「不公平な貿易のやり方を変えさせる」べく圧力をかけることに対する関心よりもはるかに大きいことも発見するだろう。その結果、ホワイトハウスは「貿易戦争は両負けのゲームである」という道理を苦しくも理解することになるだろう。
 日本についていえば、その戦略環境の改善は中米関係の緊張という面から来るだけではなく、中日関係が最近2年間不断に緩和していることがその新たな利益環境に重要な創造力を生み出している。数年前の中日関係が緊張し、中米関係は比較的良好という時期と比べると、日本はまったく異なる状況下にある。
 実際、アメリカのいじめに対する中国の抵抗は、中国の周辺諸国ひいてはアメリカにいじめられている世界の多くの国々にとって積極的な意義を持っている。
 中米の今回の超長期の駆け引きは両国経済に対してマイナスの影響を生み出すだろうし、中国に対する影響はもっと大きくなる可能性がある。しかし政治的に見れば、アメリカが必要とする動員理由は中国が必要とするよりもはるかに多い。中国は闘いを強いられた側であり、アメリカの圧力に対して反撃を展開する大義名分は証明する必要もほとんどない。しかしアメリカは自分が仕掛けたのであり、アメリカ社会が一緒に損害を被ることに関する道義的理由をでっち上げる必要がある。
 アメリカの力は大きいが、戦略的誤りを犯した結果を軽々と受け止めることはできない。ブッシュ政権はアフガン戦争とイラク戦争という間違った戦争を行い、本来は経済発展に使うべき資源を大量に消耗した。今のワシントンは内部に原因を探し求めるのではなく、国際貿易ルールを大幅に変えることによってアメリカ経済を振興させようと試みており、しかも市場規模において自らにもっとも接近している中国を凶暴にもやり玉に挙げており、このことは第二次大戦終了後アメリカがグローバルな経済覇権を確立して以来最大の誤りを犯したという可能性が極めて強い。
 世界はあたかも「乱世」に入ったかのごとくであり、中国を含む各国は慎重にことを行う必要があるが、その慎重さには少なくとも以下の二つの原則が含まれる。第一は、可能な限り多くの友達と交わり、軽率に敵を作らず、人に利用されないことだ。第二は、なるべく自らの発展を図ることであり、経済的なやり方で達成できないような発展目標を地縁政治のやり方を通じて達成しようなどとは考えないことだ。