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ハメネイのロウハニ及びザリーフ批判発言(?)

2019.05.25.

5月23日付の中国新聞網は「イラン最高指導者、初めて公開の場でイラン大統領及び外相を批判」と題するニュースを掲載しました。大要は以下のとおりです。

 イランの最高指導者ハメネイ師は現地時間の22日にテヘランで、大統領及び外相に対してイラン核合意が本当に実行されると信ずるな、合意本体に問題がある、と何度も警告してきたと述べた。あるメディアは、これはハメネイが初めて公開の場でイラン政府指導者を批判したものだと指摘した。
 イラン通信社の報道によれば、ハメネイは当日、イランの大学生及び学生団体代表を相手にスピーチを行い、学生の質問に対して以上のように述べた。
 ハメネイは次のように述べた。イランイスラム革命が脅威に遭遇するとき以外、最高指導者は行政事項に直接介入するべきではない。彼はイラン政府が他国と交渉することには同意したが、2015年に署名したイラン核合意を承認したことはない。彼は合意が本当に実行されるとは信じておらず、合意本体に問題があり、彼はかつて何度も大統領及び外相に警告した。
 APは、これはハメネイが初めて公開の場でロウハニ大統領及びザリーフ外相を批判したものであり、アメリカがイラン核合意から脱退した背景のもと、イランはこれまでより強硬な態度をとるかもしれないと報じた。
 アルジャジーラは次のように報じた。イラン核合意に関しては、ハメネイは様々な異なる見解を表明してきた。彼はかつて、アメリカは信用できないから同国との間で協定に署名するべきではないと述べたことがある。しかし彼はまた、イラン政府がこの問題について行っている努力を肯定し、この合意はイランが達成できる最良の結果であると述べたこともある。ハメネイが今回公開の場でロウハニとザリーフを批判したということは、イランの強硬派勢力が台頭しつつあることを示している。
 実は私も5月23日付のイラン通信社IRNA及びイラン放送WSで関連の報道を読み、これまでに接したことがない報道内容なので関心を持っていたところでした。しかし、この二つのイラン側の報道内容から直ちに、ハメネイがロウハニとザリーフを批判したと結論づけることができるのか、ましてや、アルジャジーラが指摘するような強硬派の台頭を示すものなのかについては、即断するのは早すぎるのではないかと思いました(ただし、ハメネイが過去においてJCPOAについてアルジャジーラが報道したような発言を行ったことがあることは、私もIRNA及びイラン放送WSで読んだ記憶があります)。最高指導者庁WSが昨年10月6日以後彼の発言を英語で紹介するのが途絶えているので、彼が正確にはいかなる発言を行ったのかは知るすべはありません。しかし、5月23日以後もロウハニ大統領が執務しており、ザリーフ外相もパキスタンを訪問して活発な活動、発言を行っていることは、イラン大統領府WS及びIRNAとイラン放送WSの報道で確認できます。
 しかし、注目に値する事実関係ですので、記録にとどめる意味でIRNAの当該報道の関連部分を紹介しておきます。
 (イラン国家の諸問題はエスタブリッシュメントの不始末または構造の結果であるのかという学生の質問に対して)憲法の構造は良いものだ。もちろん、欠点をなくすために改善し、修正することはできる。例えば、かつては公益判別会議(the Expediency Council)はなかったが、今はそれがある。構造自体には問題はないが、修正を加える必要はある。憲法改正会議において議会制政府の考え方については大いに研究したが、議会制政府の問題は大統領制政府の問題より多いと結論した。確かに我々執行機関には問題がある(we as the executives are faulty)。足りないところや能力不足なところがある(we have shortcomings and inabilities)。時には執行機関が誤りを犯し、社会に大きなギャップを作り出すことがある。
 (イラン核合意(JCPOA)を最高指導者が批准したことに関する学生の質問に対して)イスラム革命そのものが危機に面しているときをのぞき、最高指導者の役割には行政事項に干渉することは含まれていない。最高指導者はJCPOAを承認しなかったが、交渉することは許した(His Eminence did not approve of the JCPOA but allowed for the negotiations)。しかし、JCPOAの扱われ方については確信できなかったし、そのことについて大統領と外相に対して述べ、何度も警告した(the way the JCPOA was handled, I did not really believe in it, and mentioned this to the president and the foreign minister and had warned them several times)。
 JCPOAに関するハメネイの発言部分について、イラン放送WSは以下のように報道しました。
 (イラン国家の)システムに重大な危機がある場合を除き、最高指導者は行政事項には干渉しない。したがって、彼は交渉の流れについては是認しなかったが、交渉することは許した(he did not approve of the trend of talks but allowed for the negotiations)。しかし、JCPOAの扱われ方については確信できなかったし、そのことを大統領と外相に述べ、(否定的結果について)何度も彼らに警告した(the way the JCPOA was handled, I did not really believe in it, and mentioned this to the president and the foreign minister and had warned them several times (of the negative consequences))。