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朝鮮半島問題(中国とロシアの共同アプローチ)

2019.05.17.

5月13日、中国の王毅外交部長はロシアのソチでプーチン大統領及びラブロフ外相と会見・会談しました。中国外交部WS及びロシア外務省WSはその会見・会談内容について紹介しましたが、私が特に注目したのは、中ロ外相会談後の記者会見における朝鮮半島問題に関する王毅及びラブロフの発言部分です。王毅は、米朝首脳会談が停滞に陥った最大の要因は「米朝双方が実行可能な問題解決のロード・マップをまだ見つけるに至っていないこと」にあると指摘しました。またラブロフは、王毅発言に完全に同意するとした上で、「非核化は(朝鮮半島の)北の部分だけではなく朝鮮半島全体に及ぶべきだというのが我々の見解だ」と述べました。手前味噌になりますが、両発言は私がこれまでコラムで指摘してきたことを裏付けるものです。
 以下に、王毅及びラブロフの発言を紹介しておきます。

(ラブロフの冒頭発言-朝鮮半島部分-)
 我々はこの問題について緊密な接触を継続し、北東アジアにおける平和と安全に関するメカニズムを作るために一緒に努力していくことに合意した。
(王毅)
 米朝指導者がハノイで会談した後、核問題解決プロセスは停滞に陥り、半島情勢には不確定要因が増している。しかし、朝鮮は半島非核化という目標を引き続き堅持しており、アメリカも対話を通じて問題を解決するという基本的考え方を放棄していない。ということは、半島核問題解決は脱線したわけではなく、引き続き政治的解決の枠組みの中にあるということだ。
 停滞に陥ったカギとなる原因は米朝双方が実行可能な問題解決のロード・マップをまだ見つけるに至っていないことにある。米朝指導者は昨年のシンガポール宣言の中で、半島の完全な非核化を実現し、半島の平和メカニズムを作るという2大目標に明確にコミットし、そのために新しいタイプの朝米関係を建設することにもコミットした。これは正しい方向であり、中ロ両国を含む国際社会はこれを支持し、歓迎した。問題はこの2大目標を如何にして同時に実現するかにある。半島核問題が勃発してから現在まですでに1/4世紀経ったが、この間に何度か成功しそうになったものの最後になると、朝米双方が受け入れ可能でしかも現実的なロード・マップを見いだせないことでつまずいてきた。この問題を如何にして突破するか。25年の経験と教訓を総括するに、確実に実行できる方法は、目標のパッケージを確定し、段階的に推進することを明確にし、同歩的に進む方式を実施することだ。この基本的考え方は中ロ双方の共通認識であり、国際社会の共通認識にもなりつつある。米朝双方も不断のもみ合いを通じて徐々に(この認識に)歩み寄ってきている。
 朝鮮半島が完全な非核化を実現し、朝鮮の安全保障に関する関心が解決され、朝鮮経済が発展を獲得し、半島が長期にわたる安定と平和を迎えることは中ロが共同して努力する目標であり、中国はこのために引き続き建設的な役割を発揮していく。
(ラブロフ)
 若干付け加える。同僚(王毅)が示したアウトラインに完全に同意する。冒頭に述べたように、我々は朝鮮半島に関する努力を緊密にコーディネートしている。中国と同じく、我々はアメリカと北朝鮮の指導者の間の直接対話の始まりを歓迎している。我々は、同僚が述べた諸原則の基礎の上での(米朝間の)対話をエンカレッジするべく最善を尽くす。その諸原則とは、段階的、相互的及び透明性ということだ。非核化は(朝鮮半島の)北の部分だけではなく朝鮮半島全体に及ぶべきだというのが我々の見解だ。
 我々は繰り返しこの方向に進むことを支持することを述べてきた。約2年前の2017年夏、定期的露中サミットの間に、王毅氏と私は今紹介されたロード・マップ(これが欠けたら状況改善に資さない)を含む宣言に署名した。アメリカと北朝鮮の指導者の間で始まった接触は、信頼樹立措置から直接接触へと、我々が中国とともに作成したロード・マップにドンピシャで進行してきた。我々が希望するのは、どこかの時点で、朝鮮半島の非核化と北東アジア全般の平和と安全のシステム(明確で堅固な北朝鮮の安全保障を含む)樹立の双方に関する包括的合意を達成することだ。この点については、4月25日のウラジオストックでの露朝首脳会談を含め、プーチン大統領が繰り返し述べてきた。これらの保証を実現することは容易ではないが、将来のいかなる合意においても絶対に不可欠である。ロシアと中国はこれらの保証を作り出すために助力を惜しまない。その方向に向かうための動きが必要であることを改めて強調する。平壌がとった信頼樹立措置は十分に真剣なものであり、それには核実験と弾道ミサイル発射の中止、実験場の一つの廃棄が含まれる。それに応えてアメリカと南朝鮮は軍事演習を中止した。しかし、最近大規模な演習が行われ、平壌は否定的な反応を示した。我々は中国の友人と一緒に、すべてのサイドの温度を下げ、対話及び互いに受け入れられる合意を達成するための条件作りを助けるための動きをとっている。
 (ポンペイオのソチ訪問における露中米3角関係に関する質問に答える中で)すべての国々にとって等しくかつ不可分な国際的な安定と安全に対する我々(露中米)の責任を承認しなければならない。平和という大義に資するならば、中国、アメリカ及びロシアの協力を含むいかなる事業をも支持する。我々はすでにアフガニスタンについて3者の対話を行っている。朝鮮半島に関してロシア、中国及びアメリカのより緊密な3国間の対話を行うことになれば、半島情勢を解決するためのより大きな進展がなされるだろう。