朝ロ首脳会談(中国側評価分析)

2019.05.04.

プーチン大統領と金正恩委員長との間の露朝首脳会談に対する中国の関心は並々ならぬものがあります。中国外交部の定例記者会見においても、耿爽報道官は記者の質問に対して積極的かつ念入りに中国の認識と立場を表明しました。また、環球時報社説及び何人かの専門家も興味深い論調を掲げました。以下にそのいくつかを紹介します。  注目されるのは、ロシアも中国も、金正恩の半島非核化の決意を高く評価し、朝鮮がこれまでとってきた措置に対する見合いとして朝鮮に対する安保理制裁決議の緩和を明確に主張していることです。そして、これまでの米朝韓トライアングル方式から6者協議再起動のマルチ方式への転換を主張していることも要注目です。また、環球時報社説の指摘に見られるとおり、「アメリカ寄り」の韓国・文在寅政権が米朝の仲立ちの役割を担うことはもはや限界という認識のもと、中国とロシアが今後はその役割を担う姿勢を打ち出していることも重要なポイントです。以上のことは、第2回米朝首脳会談以後しゃしゃり出ているボルトン補佐官主導のトランプ政権の対朝鮮政策に対してレッド・カードを突きつけたに等しいわけです。金正恩・朝鮮の戦略転換を受けて中ロ両国が朝鮮半島問題解決に取り組む立場を明確にしたことは、大統領選挙を視野に入れて速戦即決を目指してきたトランプ政権にとって重大な試練となるでしょう。当面は安保理制裁決議の取り扱いが焦点となる可能性が大きいと思われます。
5月3日のロシア大統領府WSは、アメリカ側のイニシアティヴによってプーチンとトランプの電話会話が行われたこと、その中でプーチンがトランプに対して、ロ朝首脳会談のカギとなる結果を伝え、「平壌の誠実な約束履行に対しては北朝鮮に対する制裁を緩和するという見合いの措置が伴われるべきだと強調した」ことを明らかにしました。プーチンは金正恩との首脳会談後の記者会見で、結果についてはアメリカに通報することを明らかにしていました(5月3日のコラム参照)が、トランプからプーチンに電話したという事実はトランプの心中穏やかならざるものがあることを示しているようです。

<耿爽報道官発言>
〇4月24日
(質問)朝ロ首脳会談に対する中国側見方如何。
(回答)朝鮮とロシアは中国の友好的隣国だ。朝ロがハイ・レベルの往来を強化し、二国間協力を増進することは喜ばしく、朝ロ関係の一層の発展に資するし、半島及び地域の平和と安定にとっても有利だと確信している。朝ロ首脳会談が成功し、半島問題解決のために役立つことを希望している。
 半島の隣接国及び安保理常任理事国として、中ロ両国は一貫して半島問題に関する緊密な意思疎通と協力を保っている。両国は半島の平和と安定を維持するために手を携えて大量の仕事を行っており、半島問題の政治解決のロード・マップを共同で策定した。現在、半島情勢には対話と緊張緩和の積極的な流れが現れている。中国はロシアを含む関係諸国とともに、包括的、段階的、同歩的という考え方に従って引き続き半島非核化及び政治解決のプロセスを推進するべく前進し、不断に積極的成果を獲得することを願っている。
(質問)報道によれば、プーチンは6者協議再起動を提案するとのことだが、中国は支持するか否か。
(回答)その情報にはまだ接していないので、チェックする必要がある。
 私が言いたいのは、6者協議メカニズムは中国が提案し、推進して成立したものであり、半島の非核化、半島情勢の緊張緩和に積極的かつ建設的な役割を発揮したということだ。今日の情勢のもと、中国はロシアを含む関係諸国とともに、半島に出現した対話と緊張緩和の流れを継続し、強固にし、半島の非核化及び政治解決プロセスが不断に前進するように推進することを願っている。
〇4月25日
(質問)本日ウラジオストックで会談が行われた。双方は主に朝鮮半島問題を議論したというニュースがある。中国のコメント如何。プーチンは第2回「一帯一路」国際協力フォーラムに参加し、習近平と会見すると了解しているが、会見では今回のロ朝首脳会談は取り上げられるか。
(回答)ロシアと朝鮮は中国の友好的隣国だ。ロ朝がハイ・レベルの交流を強化し、協力を深めることは喜ばしく、このことは両国関係の発展増進に役立つし、地域の平和と安定にも資すると確信している。我々は一貫してロ朝首脳会談の成り行きに注目しており、これまでに得られた情報に基づけば、会談はかなり積極的な成果を上げた。首脳会談は半島問題解決に対して新たな助力を提供すると信じる。
 もう一点述べたいのだが、半島の隣国及び安保理常任理事国として、中ロ両国は一貫して半島問題についての意思疎通と協調を保っている。両国は半島の平和と安定を維持するために手を携えて大量の仕事を行っており、半島問題の政治解決のロード・マップを共同で策定した。現在、半島情勢には対話と緊張緩和の積極的な流れが現れている。中国はロシアを含む関係諸国とともに、包括的、段階的、同歩的という考え方に従って引き続き半島非核化大美政治解決のプロセスを推進して前進し、不断に積極的成果を獲得することを願っている。
 プーチンと習近平との会談に関しては、プーチンのフォーラム出席を歓迎しており、習近平はプーチンと会談を行う。関連する状況については随時ニュースを発表する。引き続き注目してほしい。
〇4月29日
(質問)報道によれば、ボルトンが6者協議再起動はアメリカの優先事項ではなく、ロシアと中国は安保理の対朝鮮制裁決議の履行を強めるべきだと述べたとのことだ。中国のコメント如何。
(回答)6者協議は朝鮮半島の非核化実現を推進し、関係諸国の合理的な関心をバランス良く解決することに重要な努力を行い、積極的な役割も発揮した。新しい状況の下、このマルチの対話プラットホームは半島問題の政治解決を推進するのに相変わらず積極的な意義を持っている。半島情勢の目下の成り行きは正にカギとなる時期にあり、我々は関係諸国が対話を強化し、同じ目標に向かって歩み寄り、半島非核化及び政治解決のプロセスが新たな進展を得ることを共同で推進することを希望する。
 アメリカ提起の朝鮮関連の安保理決議履行問題については、中国は安保理が採択した各決議は全面的かつ真剣に履行するべきだと一貫して主張してきた。中国は果たすべき国際義務を一貫して忠実に履行している。
<4月26日付環球時報社説「ロ朝首脳会談は半島問題解決にとって建設的」>
 プーチンと金正恩は25日にウラジオストックで会談した。プーチンは半島の緊張した情勢の緩和を支持すると表明し、さらに両国指導者はロ朝経済関係強化を表明し、プーチンはこの分野で多くのことができると述べた。
 今回はプーチンと金正恩の最初の首脳会談であり、ロ朝首脳の8年来で初めての顔合わせでもある。これはロ朝関係における大事件であるのみならず、半島問題解決にとっても建設的であり、半島問題をめぐる国際的要素のバランスという点でも有利である。
 ロシアはかつての6者協議の参加国の一つであり、その基本的立場は半島非核化の支持、平和的方法による問題解決支持等である。米韓は一貫してロシアが半島問題を利用して地縁政治的利益を追求することを疑っているが、モスクワがこの種の「事態かき乱し」を実際に行ったことはほとんどない。首脳会談で半島核問題についていかなる話し合いが行われたかに関して両国が明らかにした情報は限られているが、モスクワの一貫した態度と平壌が昨年以来示してきた立場との間の相互交流ということだっただろう。
 米朝交渉が膠着状態に陥った今、ロ朝が首脳会談を行ったことは半島情勢の緊張緩和に関する考え方を広げることに資する。朝鮮と陸続きの3つの隣国の一つであり、安保理5常任理事国の一つでもあるロシアは、半島問題においてさらに大きな影響力を発揮するのが当然である。ロ朝が地理的利便性を利用して安保理決議の制限外における正常な協力を行う権利も尊重されるべきであり、朝鮮が対外開放を行うに当たっては、まずは周辺国に対する開放となるのが自然である。
 注目する価値があるのはウラジオストックで金正恩と会談した直後にプーチンが直接北京に飛んで、「一帯一路」国際協力フォーラムに参加し、その間に中ロ首脳が単独で会談する可能性があり、そこでは半島問題が取り上げられることだ。中ロ全面戦略パートナーシップには半島問題における両国の政策協調・協力が含まれる。総じていえば、半島問題に関する両国の立場は高度に接近している。
 過去一年余の間に半島問題は重要な進展を得ており、半島非核化という目標は朝鮮を含む各国が確認し、半島の恒久的和平の実現、朝鮮の安全保証という目標もアメリカを含む各国が確認している。問題は米朝間の高度な相互不信のためにこれらの目標を実現する上でのロードマップに関して一致を見ることがはなはだ困難であることにあり、これが現在の半島問題におけるカギとなるチェックポイントである。
 米朝間の相互信頼については神頼みで構築できるはずはなく、国際社会が有効な手助けを行う必要がある。朝米が相互信頼を増進することを推進し、「信頼担保」的な役割を担う点では、中ロはなし得ることがあるし、またそうするべきである。
 プーチンは金正恩との会談後の記者会見で、非核化と軍縮を実現するには朝鮮の安全を国際法上保障する必要があり、そのために6者協議を改めて起動するべきだと述べた。プーチンの6者協議再起動の提案は現在の情勢にマッチしており、中国は積極的に反応すると確信する。米韓日もプーチンの提案を真剣に考慮するべきだ。
 朝鮮はすでに核実験と戦略ミサイル発射実験を停止し、米韓も朝鮮を目標とする合同軍事演習を停止した。朝鮮はさらに非核化という最終目標にもコミットした。以上すべてが半島情勢の新局面を作り出している。かかる状況の下、朝鮮に対する部分的制裁を緩和減少することは国際社会として当然の態度、行動であるべきであり、中ロ両国はこの問題について協調を強化し、必要な推進の手立てを講じることになる。
 平壌は工作の重心を経済分野に移しており、国際社会としては支持するべきである。ワシントンは朝鮮がこの計画を実行することを阻止することで朝鮮をしてさらなる譲歩を行わせる手段としようとしているが、これは良い考え方ではない。今回の半島の緊張緩和の前の激動においてすでに明らかなとおり、アメリカが圧力のみに頼っても目的は達成できないのであり、ワシントンとしてはより弾力的な態度をとり、平壌との間で交渉及びインタラクションを行うというバイタリティを保つべきである。
 ロシアが和平促進力として活発に半島プロセスに参与することは、情勢全体における理性的要素を増やし、国際社会が半島問題に対してより実事求是的な認識を形作ることに有利である。韓国は半島問題に関してはやはりアメリカにぴったり寄り添っており、アメリカと朝鮮が同じ目標に向かって歩み寄ることを促すだけの力が足りない。その原因の一つは韓国世論が半島問題に関する認識においてアメリカの主張の影響を受ける度合いが大きいということにある。
 中ロ朝三国が意思疎通と交流を強化することは半島の当面の平和な局面を維持することに有利であり、朝鮮核交渉プロセスの前進を推進する上でもプラスであり、したがって他の側(米韓日)は支持するべきである。
<鄭浩嵐「プーチンの金正恩訪ロ強力プッシュ ウィン・ウィンの会談」(抄訳)>
(4月24日付中国網所掲。鄭浩嵐:上海外国語大学ロシア東欧中央アジア学院)
 (プーチンが第二次大戦勝利記念軍事パレード、2018年ワールド・カップ、東方経済フォーラムなどの際に金正恩の訪ロを招請したけれども実現しなかった経緯を経て今回ようやく実現したことを説明の上)今回の首脳会談の背景にはいかなる実現促進要因があったのか。
 ロシア側からすると、プーチンは2000年に大統領になってからエリツィンの西側「一辺倒」の外交政策を改め、実務的で弾力的な全方位外交政策を実行し、一貫してロ朝関係の発展を積極的に推進してきた。ロシアにとってのロ朝関係は多重的で重要な意味がある。
 第一は国内的な意味合いだ。ロシアの西部と東部の発展不均衡はロシアの発展を長期的に制約する要因の一つだ。ロシアは2012年に極東開発部を設立し、2013年には「ロシア極東・バイカル地域社会経済発展国家計画」を公表し、新たな極東開発戦略の実行を推進してきた。安定的な朝鮮半島情勢はロシア極東地域の経済発展を実現する上で極めて重要だ。朝鮮の核施設に深刻な安全上の問題が出現した場合、ロシア極東地域にも破壊的結果をもたらす。したがって、半島の平和と安定を維持し、ロシアの周辺環境の安全を確保することはロシアがロ朝関係を発展させる上での重要な戦略目標の一つである。
 第二は地域的な意味合いだ。2016年の「ロシア連邦対外政策構想」は「アジア太平洋地域におけるロシアの地位を強固にし、アジア太平洋諸国との関係を積極的に発展させることはロシア外交の重点である」と明確に指摘した。ロシアは一貫して北東アジア地域のマルチの安全保障メカニズムの構築に積極的に参与し、この地域における影響力をはっきり示してきた。クリミアの「脱ウクライナ」以来、ロシアと西側諸国の関係は冷戦以来の最低レベルに陥り、ロシア西部国境の安全保障情勢は深刻に悪化した。こうした状況の下、北東アジア地域の国々との対話を積極的に展開し、マルチの安全保障メカニズムを構築し、地域の平和と安定を確保し、東西両前線での「作戦」を回避することはロシアにとって重要な戦略的意義がある。
 第三はグローバルな意味合いだ。今日のロシアにはソ連時代の「世界覇権追求」の実力も野心もとっくにないが、世界大国としての地位と影響力を維持し顕示することは引き続きプーチン外交の重要目標である。安保理常任理事国の一つとして、ロシアは様々な重要な国際問題(例えば朝鮮核問題)において積極的な参画者たる役割を担うことを希望している。朝鮮核問題が米朝交渉の段階にある今、ロシアも朝鮮半島に対する影響力を積極的に追求している。金正恩の訪ロを積極的に招待することのほか、ロシアは朝鮮に対する安保理の制裁を緩和し、朝鮮に人道的援助を提供することを度々提案してきた。
 朝鮮側からすると、対ロ外交を積極的に繰り広げることはエネルギー、軍事面におけるロシアとの協力を強化し、対米交渉におけるカードを増やし、各国が共同で朝鮮半島問題を解決することを促す上で有利である。金正恩は4月12日に行った「現段階における社会主義建設及び共和国政府の内外政策」と題する施政演説の中で、対内外政策を調整することによりアメリカの長期にわたる包囲、圧力及び制裁に対処すると表明した。その外交政策の部分で金正恩は「伝統的な外交関係を強固にし、発展させる」と明確に指摘している。
<韋進深「ロ朝関係の発展 プーチンは遅刻した可能性はあるが欠席することはあり得ない」(抄訳)>
(4月26日付中国網所掲。韋進深:上海外国語大学ロシア東欧中央アジア学院研究員)
 金正恩の4回の訪中、3回の北南首脳会談、2回の朝米首脳会談後に、金正恩はプーチンとの初めての首脳会談を行った。このことは北東アジア地域の安全及び対朝関係発展においてプーチンが遅刻した可能性はあるが、欠席するということは決してあり得ないことを意味している。
 第一に、半島の非核化を堅持し、北東アジア地域の安全を擁護し、この地域におけるロシアの影響力を拡大することは、ロシアの半島政策における既定目標である。
 2003年にロシアが6者協議のメンバーになって以後、ロシアは朝鮮核問題において一貫して重要な役割を担ってきた。ロシアは一方で朝鮮が核を放棄し、NPTを遵守するべきであると主張し、核拡散がロシアの安全を脅かすことを防止することを主張した。したがって、プーチンは金正恩が朝鮮核問題解決のために行った努力を高く評価した。他方ロシアは、アメリカが朝鮮の核開発を口実にしてミサイル防衛システムを配備することに反対し、この地域における軍備競争を避けることを主張してきた。
 朝鮮が「核放棄」のシグナルを出したのに第2回朝米首脳会談が結果なく終わったことは、ロシアと朝鮮にとっては戦略的対話を進める基礎ができたことを意味する。朝鮮にとっては、金正恩のロシア訪問は政治外交的にロシアの支持を取り付け、朝米対話が膠着しているときに「ロシア・カード」を切るという意味がある。ロシアからすると、ロ朝首脳会談の実現によって半島問題におけるロシアの影響力を誇示することができる。
 第二に、経済貿易協力はロ朝首脳会談の重要な中身である。
 2014年にロシアは朝鮮の大部分の債務を免除し、ロ朝経済貿易協力における一大障害を取り払った。欧米による経済制裁という背景のもと、ロシアは「東に方向転換」する選択を行い、北東アジア地域がロシアの対外経済貿易協力に占める比重はますます高まっており、ロ朝経済貿易協力を発展させることはロシアの対朝関係において重要な地位を占めている。羅先経済開発区の開発、シベリア鉄道と朝鮮半島鉄道網との連結、天然ガス・パイプラインの敷設は将来におけるロ朝経済協力の重点議題である。
 朝鮮に関していえば、2018年4月20日に金正恩は朝鮮労働党第7期中央委員会第3回全体会議で行った報告の中で「すべての力を集中して社会主義経済建設を行う」ことを明確に提起した。経済貿易協力を発展させて経済建設を進める上で、ロシアは朝鮮にとって重要な支持力となる可能性がある。
 最後に、ロ朝政治関係は日増しに強化される。
 クリミア「回収」によって引き起こされたロシアと西側諸国との関係緊張は今日もなお緩和していない。朝鮮はクリミア問題でロシアに対する支持を明らかにした。ロシアも朝鮮にかかわる問題では朝鮮を支持し、両国の政治関係はますます温度が上がっている。近年、朝ロ間のハイ・レベルの相互訪問は絶えることがなく、政治的交流往来は極めて密である。これらのことは金正恩とプーチンが成功裏に会談する上での基礎を作った。そして金正恩とプーチンとの初めての首脳会談特に「一対一」の会談はロ朝間の政治的信頼を十分に物語っている。
 こうして、ロ朝首脳会談をシンボルとしてロシアと朝鮮との関係はソ連解体後における最良の歴史的時代に入っている。両国は相互に協力する戦略的必要があるとともに、経済貿易協力を強化するという現実的必要もある。今回の首脳会談がロ朝間系を新たな高みに引き上げることは疑いないところだ。そして地域の安全保障に関していえば、ロシアは一貫して半島問題解決の重要なメンバーである。