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日露外相会談(ミュンヘン)後のラブロフ発言

2019.02.20.

2月8日のコラムでロシアのラブロフ外相の日露領土問題に関する率直な発言を紹介しました。2月16日、ラブロフ外相はメディアの質問に答えた内容がロシア外務省英語版WSに掲載されました。その中では、ミュンヘン安全保障対話の傍ら行われた日露外相会談についての質問があり、ラブロフ外相がますます明確にロシア側の交渉ポジションを明らかにしています。2月8日のコラムのフォロー・アップとして、短いですが紹介しておきます。安倍首相は6月のG20サミットの際に行われる日露首脳会談を目標にして交渉の進展を図ると口癖のように言ってきましたが、ラブロフ外相の今回の発言は安倍首相に対して引導を渡したといえるでしょう。

(質問)河野外相との会合で立場(の違い)を調和させたか。平和条約署名に立ちはだかる最大の障害は何か。G20サミットまでには取り除くことができるか。
(回答)ロシアはこの問題についていかなる期限も設けていない(We in Russia do not set any deadlines for this)。我々は静かに日本側に対してこの類いのことは何も予定されるべきではないと言っている(We calmly explain to our Japanese colleagues that nothing of this kind can be planned)。昨年のシンガポールにおいて両指導者が約束したとおり、我々は1956年宣言から進めていくことを望んでいる(We want to proceed from the 1956 Declaration, just as our leaders agreed in Singapore at the end of last year)。ということは、第一歩は平和条約を署名することだ(This implies that the first step must be to sign a peace treaty)。広く知られているロシアの立場からすれば、第二次大戦の結果(4島を含む全千島に対するロシアの主権を含む)を日本側が承認する以外の他の選択肢はないということだ(According to the Russian stand, which is public knowledge, this means that there is no alternative for our Japanese neighbours' recognition of the results of WWII, including Russia's sovereignty over all the Kuril Islands, including the four islands of the Lesser Kuril Chain)。(以下省略)