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第2回米朝首脳会談(ハンギョレ記事)

2019.02.09.

2月8日付のハンギョレ・日本語版WSは、キム・ジウン記者署名の第2回米朝首脳会談の見通しに関する分析文章を掲載しています。また、ワシントン/ファン・ジュンボム特派員のポンペイオ国務長官とトランプ大統領の首脳会談に対する楽観的発言に関する記事も掲載しています(この記事では、アメリカの伝統的エスタブリッシュメント側の冷ややかな反応も紹介していますが、それはそれで面白いと思いました)。手前味噌になりますが、私が2月6日付コラムで書いたこの会談の見通しに関する判断と基本的に軌を一にするものだと思います。参考までに両記事を紹介します。

[ニュース分析]「北朝鮮から寧辺核廃棄+αを引き出せるかは米国の制裁緩和次第」
 朝米は7日、平壌で2日目の第2回朝米首脳会談の準備に向けた実務交渉を行った。ドナルド・トランプ米大統領と金正恩北朝鮮国務委員長の"再会"が19日後に迫っただけに、「ベトナム共同宣言」に盛り込む内容を詰める作業だと言える。
 スティーブン・ビーガン米国務省北朝鮮特別代表とキム・ヒョクチョル国務委員会対米特別代表(元スペイン大使)が6日から開始した実務交渉の輪郭は、先月31日(現地時間)に行われたビーガン特別代表の米スタンフォード大学での講演で明らかになった。まず、「ベトナム共同宣言」には、朝米両国が新たな議題を掲げるよりは、シンガポール共同宣言の履行措置を具体化した内容が盛り込まれるものと予想される。ビーガン特別代表はこの日の講演で、ドナルド・トランプ大統領が北朝鮮と米国の交渉チームに非核化について「大胆で、実質的な措置を期待する」という点を明らかにしたと紹介した。シンガポール共同宣言が原則と方向性を提示するものだとすれば、2回目の首脳会談宣言文には"行動"を盛り込みたいという意味だ。
 細部に入れば、昨年、朝米首脳が発表したシンガポール共同声明の第3項である「完全な非核化」を、今回の首脳会談でいかに具体化するかがカギとなる。第一に、東倉里(トンチャン二)ミサイル・エンジン実験場と豊渓里(プンゲリ)核実験場に対する国際査察団の検証が「非核化過程に対する信頼構築」に向けた第1段階の措置として合意される可能性が高い。金委員長が平壌共同宣言とマイク・ポンペオ米国務長官の4度目の訪朝当時、直接約束した内容であるうえ、ビーガン特別代表も講演で「履行方式」について協議すると明らかにしたためだ。
 非核化措置のもう一つの主な協議事項は、寧辺(ヨンビョン)や寧辺以外のプルトニウムおよびウラン濃縮施設などに位置する核施設の廃棄だ。ビーガン代表は今回の実務交渉で、これについて協議すると明らかにした。朝米交渉に批判的な米国世論を踏まえ、寧辺核施設の廃棄は今回の首脳会談でトランプ政権が北朝鮮から引き出すべき最小値と見られている。ただし、寧辺以外のウラン濃縮施設に対する協議につなげられるかどうかは不透明というのが大方の見解だ。
 北朝鮮のこのような非核化措置を引き出すためには、米国が提供する相応の措置が必要だ。特に、北朝鮮が制裁緩和を強く求めており、これをめぐり双方が鋭く対立する可能性もある。米国の制裁解除に対する原則的な立場にもかかわらず、外交関係者の間では、いかなる形であれ制裁緩和が実現しなければ、北朝鮮が寧辺の核施設の廃棄には着手しないだろうという見通しが優勢だ。慶南大学極東問題研究所のイ・グァンセ所長は「寧辺の核施設と東倉里試験場の廃棄を中心に、制裁緩和の程度によって(追加措置の)プラスアルファが決まるだろう」と見通した。
 大枠の相応の措置にあたるシンガポール共同声明の最初の条項、すなわち「新たな朝米関係の樹立」の具体的な内容として、連絡事務所の設置や両国間の人的・文化的交流などが合意文に盛り込まれる可能性もある。ビーガン特別代表のスタンフォード大学での講演後、再び注目が集まっている終戦宣言は、シンガポール共同声明第2項の「平和体制の構築に向けた努力」を具体化する形で反映されることも考えられる。終戦宣言を象徴的な政治宣言として提示し、平和協定のための枠組みを具体化することもあり得る。統一研究院のホン・ミン北朝鮮研究室長は「北朝鮮が望んでいるのは制裁解除や合同演習及び(朝鮮半島における米軍)戦略資産展開の中断をはじめ、(初期)アクションプランのマイルストーンとしての終戦宣言」だとし、「(第2回共同声明の)合意文にはシンガポール共同声明の第1~2項の具体案として盛り込まれる可能性がある」と話した。
 一方、ビーガン特別代表は米国へ向かう前に、韓国政府側と会って協議内容を共有する予定だという。朝米交渉に詳しい外交消息筋は「ビーガン代表がいつ烏山(オサン:米空軍基地)に戻るかは、週末まで見守らなければならない」と述べた。
キム・ジウン記者
「北朝鮮の非核化を信じる」楽観論を唱える米政府
 ドナルド・トランプ米大統領とマイク・ポンペオ国務長官が連日、非核化と平和体制の構築に関する朝米対話に楽観的な展望を示している。2回目の朝米首脳会談に対する米国内の懐疑論に反論し、進展した成果に対する自信をのぞかせている。
 トランプ大統領が一般教書演説で、「金正恩北朝鮮国務委員と良好な関係を保っている」とし、2月27~28日にベトナムで2回目の朝米首脳会談を開催する計画を発表した翌日の6日(現地時間)、ポンペオ長官はマスコミとのインタビューでこれを積極的に後押しした。ポンペオ長官は同日、「FOXビジネス」の番組に2回出演し、「金委員長が非核化の約束を守ると期待している」と述べた。
 彼は「突破口の観点から見て、今回の首脳会談で何が期待できるか」という司会者の質問に対し、「それは世界のための本当の機会」だと述べたうえで、「我々は金委員長が昨年6月にシンガポールで行なった、自分の国を非核化するという約束を履行することに大きな期待を寄せている」と答えた。さらに「それは北朝鮮住民に最上の利得となり、米国民を安全に守る上でも確かに最上の利益になるだろう」とし、「これが大統領の任務であり、我々が数週間後にベトナムで進展させようとしているもの」だと述べた。
 ポンペオ長官は「北朝鮮が非核化する可能性が依然としてあると信じているのか」という質問に対し、「もちろん信じている」と答えた。「我々は対話の中でそれを見てきた。金委員長は北朝鮮住民に、彼らが進路を変え、国内経済環境を向上させる必要があると言ってきた」と述べた。
 彼は同放送との別のインタビューでも、「我々は金委員長が非核化の約束を守れば、もっと明るい未来をもたらすと約束した」とし、「我々はそうする準備が完璧に整っている」と述べた。米政界の悲観的な見通しを一蹴する一方、北朝鮮に「経済」や「未来」、「機会」をキーワードとして示し、大胆な非核化行動を求めたものとみられる。
 これに先立ち、トランプ大統領も3日、CBSとのインタビューで「金委員長は北朝鮮を莫大な経済大国にする機会を持っている」とし、非核化交渉で「合意する可能性も非常に高い」と述べた。
 しかし、米国の政界の雰囲気は冷ややかだ。チャック・シューマー民主党上院院内総務はCNNとのインタビューで、「トランプ大統領は核を保有する北朝鮮はもはやないと言ったが、事実ではなかった」とし、「これはリアリティショーではない。(2回目の首脳会談は)"本物"でなければならない」と皮肉った。共和党でも下院外交委所属のアダム・キンジンガー議員がCNNに「我々は金正恩を持ち上げるのをやめるべきだ」と言うなど、批判ムードが漂っている。韓米経済研究所のキム・ヨンホ非常勤研究員は前日、トランプ大統領が一般教書演説で、対北朝鮮政策の成果と朝米首脳会談の日程を語る際、共和党からも立ち上がって拍手するなどの反応が少なかった点に言及し、「今回の首脳会談に対する米国政界、特に与党である共和党の雰囲気が感じられる部分」だと指摘した。また、「今回の会談で具体的な合意が出た場合、相応の措置を履行する過程で、米国の国内政治的論議も念頭に置かなければならない」と話した。
ワシントン/ファン・ジュンボム特派員