第2回米朝首脳会談(イ・ジェフン及び李敦球の分析)-

2019.01.26.

1月25日付のハンギョレ日本語版WSは、イ・ジェフン背任記者署名文章「金委員長「トランプ大統領の親書に大いに満足」…非核化・相応措置において一歩進展?」を掲載し、朝鮮中央通信が24日付で報道した、金正恩委員長が訪米してトランプ大統領と会見した金英哲党副委員長の報告を受けた記事の中での同委員長の発言に注目して、「"速度戦"や"一括妥結"よりも、共通の目標を設定してから"段階的に"進むことに焦点を合わせたアプローチ」「「素晴らしい親書」や「善意の感情」、「満足」などの言葉が示唆するように、雰囲気が明るい」と指摘しています。イ・ジェフン先任記者の文章はこれまでもこのコラムで度々紹介してきました。私が目にする韓国3紙の中で、私がもっとも高く評価する記者です。今回の彼の以上2点の指摘は私も共有します。
 朝鮮半島問題の専門家でも何でもない私がもう一点「なるほど」と感じ入ったのは、イ・ジェフンが朝鮮中央通信の以上の記事の中で紹介した写真についての解説でした。彼は、「金英哲副委員長の後ろにキム・ヒョクチョル元スペイン大使とパク・チョル朝鮮アジア太平洋平和委員会副委員長(推定)が陪席している」ことを指摘して、この二人の人物の役割についての彼の見方を示しています。
 同記事をそのまま紹介します。

金委員長「トランプ大統領の親書に大いに満足」…非核化・相応措置において一歩進展?
 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が「日程に上った2回目の朝米首脳会談と関連し、実務的な準備をきちんと進めていくことに対する課業と方向を提示した」と、「朝鮮中央通信」が24日付で報じた。朝鮮中央通信の報道によると、金委員長は23日、金英哲(キム・ヨンチョル)労働党副委員長を団長とする「第2回朝米高官級会談代表団」と面会し、訪米期間中の「会談情況と活動結果に満足感を示し」、このように述べたという。金委員長が金英哲副委員長の報告を受け、ドナルド・トランプ米大統領との第2回首脳会談の主要議題やアプローチ方式、目標などと関連した具体的な交渉ガイドラインを提示したものと見られる。
 金委員長は、金副委員長から「トランプ大統領が送ってきた素晴らしい親書を受け取り、大きな満足感を示した」と、朝鮮中央通信は報じた。金委員長は「我々はトランプ大統領の肯定的な考え方を信頼し、忍耐と善意の感情をもって待つ」とし、「朝米両国は共に到達すべき目標に向かって、一歩一歩共に前進する」と誓った。"速度戦"や"一括妥結"よりも、共通の目標を設定してから"段階的に"進むことに焦点を合わせたアプローチと言える。
 これに先立ち、昨年5月末の金英哲副委員長の最初の訪米の際は、結果報告の場面や金委員長の反応、追加指示が北朝鮮メディアに公開されなかった。今回は、訪米結果に対する金委員長の判断を、官営メディアを通じて直接外部に伝えた点で、注目に値する変化だ。「素晴らしい親書」や「善意の感情」、「満足」などの言葉が示唆するように、雰囲気が明るい。
 朝鮮中央通信は、2回目の首脳会談のための朝米高官・実務交渉過程で、北朝鮮の交渉団が堅持すべき"絶対的指針"ともいうべき金委員の「課業と方向」の具体的内容は公開しなかった。ただし、金委員長が報告を受けて第2回首脳会談の準備のための「課業と方向」を提示したという報道から、金英哲副委員長の訪米期間中に懸案別の具体的な交渉は行われなかったものと見られる。事情に詳しい消息筋は「金英哲副委員長は米国に交渉しに行ったわけではない」とし、「(非核化追加措置に関連した)"新たな提案"を含む金委員長の一連の構想を、トランプ大統領に直接伝えると共に、トランプ大統領の反応と構想を聞き、"真意"を把握することが目標とみるべき」と指摘した。同消息筋は「『善意の感情を持って待つ』という金委員長のメッセージには、トランプ大統領が明らかにした(制裁問題など相応の措置に関する)肯定的なメッセージが、今後朝米交渉過程で具体化することを望んでいるという意味が込まれたものと見られる」と分析した。
 朝鮮中央通信が公開した報告写真を見ると、金英哲副委員長の後ろにキム・ヒョクチョル元スペイン大使とパク・チョル朝鮮アジア太平洋平和委員会副委員長(推定)が陪席している。統一戦線部のキム・ソンヘ室長と外務省のチェ・ガンイル北アメリカ局副局長は陪席しなかった。キム元大使とパク副委員長が今後米朝関係で重要な役割を果たす実務の幹部として急浮上したわけだ。キム元大使は、マイク・ポンペオ米国務長官が言及したスティーブン・ビーガン北朝鮮政策特別代表の「新しいパートナー」と推定される。パク副委員長は昨年6月、第1回朝米首脳会談の際、シンガポールに派遣された北朝鮮代表団の一員であり、昨年7月には3回目の訪朝を機に行われたポンペオ長官と金英哲副委員長の会談にも陪席した。統一戦線部傘下の朝鮮海外同胞援護委員会と、2010~2016年に北朝鮮の国連代表部で「同胞担当参事」を務め、朝米交流に深く関与してきた"米国通"だ。
 もう一つ紹介したいのは中国における朝鮮半島問題の第一人者である李敦球氏の文章です。李敦球(本論とは関係がないのですが、彼の肩書きが数ヶ月前から曲阜師範大学外国語学院大学教授に変わっているのが気になっています。検索サイト「百度」での紹介は変わっていないのですが)の文章についてもしばしばこのコラムで紹介してきましたが、1月24日付の中国青年報は、「第2回朝米サミット:難問と出口」と題する同氏の文章を掲載しました。アメリカと朝鮮の交渉における争点を4点に概括しているのはさすがと思いました。非常に頭がすっきりします。また、朝米双方の立場についても明晰な分析を加えており、とても参考になりました。以下に紹介しますので味読してください。
 1月18日ホワイトハウスは、トランプ大統領が2月末に朝鮮の最高指導者・金正恩と第2回サミットを行うと発表した。報道によれば、第2回サミットの開催地はヴェトナムの可能性がある。
 過去2年を振り返ると、半島情勢は複雑多変、時に暗雲がたれ込み、時に風が凪ぎ日が降り注ぐ状況だった。2017年の「火と怒り」から2018年の「春にして暖か」へ、さらに2019年の「局面打開の年」へと来て、今正に来たらんとする第2回サミットでは朝米は「非核化」及び「安全保障」という問題についてどのように局面を打開するかが内外の最大の注目点となっている。
 過去の「非核化」交渉の歴史の糸口から見るに、米朝間の主要な違いは以下の数点である。第一、核放棄の「ステップ」と手順に関わる問題。アメリカは一貫して「全面的、査察可能、不可逆的」という基準(CVID)を堅持し、包括的核放棄を要求してきた。これに対して朝鮮は、双方の「段階的」方式に基づく核放棄、すなわち、かつての6者協議で強調された「行動対行動」原則に基づいて進めることを主張してきた。第二、非核化における「不可逆性」の違い。アメリカが強調する「非核化」は主に朝鮮の核兵器を徹底的に取り除き、さらには核能力の使用及び利用も放棄させるというもので、「徹底した不可逆性」という性格のものだ。しかし朝鮮は、現段階における「非核化」とは短期的には核施設を凍結し、核実験を停止し、さらには発射台を取り壊し、核兵器に関する秘密を漏らさないなど、朝鮮がアメリカに行ってきた「5つのコミットメント」(2018年4月21日から発効)の内容を指すものであり、特殊な状況下における「可逆」の可能性を排除しない。第三、「補償と核放棄」の同歩性の問題。アメリカは朝鮮が包括的に徹底した核放棄を実現した後でのみ経済制裁解除と補償措置を考慮する立場を堅持してきた。しかし朝鮮の立場は「補償と核放棄との同歩」であり、それによって「戦略的ペテン」を防止するというものだ。金正恩は2018年5月31日に訪朝したラブロフ外相に段階的核放棄の方法を強調している。第四、「核放棄の時間表」の問題における違い。アメリカは明確な時間表のない段階的核放棄は実際的意味がなく、これは朝鮮による一種の「引き延ばし策」、つまり、一種の戦術的核放棄であって長期的戦略的核放棄ではないと見なしている。しかし朝鮮は、半島にマルチの安全保障メカニズム及び米朝国交正常化が実現する前に一方的に核放棄を加速させることは自国に不利と考えており、この点においても双方に矛盾がある。
 以上の諸点が米朝「核放棄交渉」の根本的阻害要因であるとともに双方が駆け引きを行ってきたカギでもある。「トランプ・モデル」の柔軟性は硬直した米朝関係における「弾力性」と「融通空間」をもたらしてきた。しかしあまり楽観することはできないのであり、アメリカの「接触」と「圧力」との同時平行方式の本質は典型的な「両面博打」である。
 過去一年間の米朝の頻繁なインタラクションから見て取ることができるように、米朝が2018年6月12日に共同で署名した「共同声明」は半島の将来における非核化に対して基本的で大まかな枠組みを定めたが、この文書の中には「完全」とか「査察可能」とかの内容は入っておらず、したがって、詳細については曖昧に処理した妥協の結果とも見なすことができる。しかし、2018年にポンペイオが4回訪朝して金英哲副委員長と会談したが、核放棄のロードマップに関する隔たりは大きく、朝鮮は「極めて遺憾」「危険な段階で、我々の非核化の意図を揺るがす可能性がある」とも述べたことがある。米朝間の立場の違いをおろそかに見ることができないゆえんである。
 (金正恩の新年の辞におけるトランプに対するメッセージと1月2日のトランプの金正恩に対する親書、1月7日-10日の金正恩第4回訪中に言及した後)総じて見るに、朝鮮は2018年にアメリカ軍人50名の遺骸返還及び豊渓里原子炉と寧辺ICBM発射台の破壊という不可逆的措置によって米韓軍事演習中止という可逆的行動を交換で獲得した。しかし、「行動対行動」原則から見るとき、朝米は相変わらず「3歩進んで1歩を待つ」状況にある。「終戦宣言」締結と対朝鮮制裁の段階的取り消しが第2回サミットの重要議題になるだろう。同時に留意する必要があるのは、核放棄要求及び対朝鮮制裁の点においてアメリカが微妙な変化のシグナルを出し始めていることだ。つまり、元々のCVIDから、本年1月11日にポンペイオが第3回訪朝で示した「最終的で、十分な検証を経た非核化」という表明、さらには1月11日に彼がFOXとのインタビューの際に述べた「アメリカに対する脅威をいかにして不断に減らすかについて、今我々は多くの考え方を議論している。最終的な目標はアメリカ国民の安全だ」という表明へという変化だ。
 以上の比較的ポジティヴなシグナルは、アメリカが元々の交渉膠着状態から実務的、段階的、同時並行的な核放棄交渉へと徐々に向かっている可能性を示している可能性がある。つまり、実利主義のトランプ政権はひょっとすると、対朝鮮制裁の部分的解除及び終戦宣言署名を朝鮮の核申告、朝鮮のICBM・IRBM除去に対する見返りとし、これをもって最終的「非核化」実現の突破口としようとしている可能性がある。ただし、現在の米朝間の相互信頼の基礎が薄弱であることを考慮するとき、アメリカがこれまでの対朝鮮制裁を維持することで完全核放棄を実現するというこれまでの一貫した政策を本当に改めることができるかどうか、これが正に第2回サミットが成果を上げることができるかどうかのカギとなる。よって、第2回サミットには「チャンス」と「チャレンジ」とが共存しており、筆者としては「慎重的楽観」(cautious optimism) の立場である。