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平昌オリンピック:朝米日の対韓アプローチ

2018.02.11.

1.安倍首相とペンス副大統領

韓国3紙の日本語WSは、平昌冬季オリンピック開会式に参加するために訪韓した安倍首相と文在寅大統領との会談の模様及びペンス副大統領の韓国滞在中の行動について詳しく報じています。
 私は、安倍首相による「北朝鮮脅威論」の政治利用(9条改憲実現に向けて国民説得にはなくてはならない材料)については、2月3日付のコラムで指摘しましたが、今回の文在寅大統領との首脳会談における彼の言動は正にこの考慮に貫かれている今ひとつの証明材料だと思います。また、いわゆる「従軍慰安婦」問題における彼の頑迷な姿勢も、人権派弁護士出身の文在寅の信念とかみ合おうはずもありません。また、ペンス副大統領の無礼を極める行動も、超強硬路線で朝鮮に臨もうとするトランプ政権の基本姿勢が微動だにしていないことを確認させます。そういうことを確認する意味で、韓国紙の報道内容を紹介します。

<安倍・文在寅会談>
日韓首脳会談に関する韓国3紙日本語WSの報道(2月10日付)は以下のとおりです。

(中央日報)
○安倍首相「北の微笑外交に注意を」…文大統領「国際協調が乱れることはない」
文在寅大統領が9日に訪韓した安倍晋三首相との首脳会談で「慰安婦被害者問題は政府間でやり取りする形の交渉で解決されるものではない」と述べた。
文大統領はこの日、平昌冬季オリンピック出席のために入国した安倍首相との3度目となる首脳会談で「慰安婦問題は被害者の名誉と尊厳を回復し、その方が受けた心の傷が癒やされる時に解決する」と話しながらこのように強調したと、青瓦台の金宜謙(キム・ウィギョム)報道官が伝えた。
今回の韓日首脳会談は、韓国政府が「朴槿恵政権での韓日慰安婦合意は手続きと内容上に誤りがある」という結論を出した後、初めて行われた。文大統領が「やり取りする形の交渉」と述べたのは、韓日間の合意で慰安婦問題が解決したわけではないという従来の立場の再確認だ。
文大統領は「慰安婦問題を本当に解決するためには被害者の名誉と尊厳を回復し、心の傷を癒やすことができるよう、両国政府が継続して共に努力していかなければいけない」と述べた。その一方で「歴史を直視しながら首相と共に知恵と力を合わせて両国間の未来志向的な協力を推進しようと思う」と強調した。過去の問題と経済・安保協力を分離しようという政府のツートラック方針を改めて明らかにしたのだ。
しかし安倍首相は「慰安婦合意は国家対国家の合意であり、政権が代わっても守らなければならないというのが国際原則」とし「日本は合意を最終的かつ不可逆的なものと受け止めて約束を守ってきただけに、韓国政府も約束をすべて実行してほしい」と要求した。日本政府当局者は会談後、記者らに対し「安倍首相は『文大統領と共に未来志向的な日韓関係を築くことを心から望んでいる』という話をした。そのためにも日韓合意と徴用工問題(強制徴用者賠償問題)に対する適切な対応を願うという趣旨で話した」と伝えた。
慰安婦合意問題とその他の分野を分離しようという文大統領の発言に、安倍首相は慰安婦合意問題に対する明確な整理なしに未来志向的な関係は難しいと事実上反論したのだ。
安倍首相は在韓日本大使館前の少女像についても「外交関係・領事関係に関するウィーン条約上でも問題がある」と指摘し、合意の着実な実施を要求した。
北核対応でも両国の首脳は隔たりを見せた。文大統領は「南北対話が非核化をあいまいにし、国際協調を乱すというのは杞憂にすぎない」とし「南北関係の改善と対話が結局、非核化につながらなければいけない」と述べた。
一方、安倍首相は「北朝鮮は平昌五輪期間に南北対話をしながらも核・ミサイル開発に注力している」とし「北朝鮮の微笑外交に惑わされてはいけない」と指摘した。安倍首相は会談後、日本の記者らに「(北朝鮮の核開発を)国際社会が直視しなければならず、対話のための対話は意味がない」とし「これを確実に文大統領に伝えた」と話した。
日本政府当局者は「安倍首相は『本当に重要なのは五輪以降であり、北朝鮮が非核化に向けて誠意のある意志を具体的な行動で見せることが非常に重要だ』と述べ、安保理制裁履行の重要性を強調した」と伝えた。
ただ、文大統領は「シャトル外交」復元の必要性を強調し、安倍首相もこれに同意した。両首脳は日本が主催する韓日中首脳会談の早期開催に合意し、文大統領の日本訪問も可視化する見通しだ。
(朝鮮日報)
○平昌五輪:韓日首脳非公開会談、慰安婦・核めぐり衝突
 韓国の文在寅大統領と日本の安倍晋三首相は9日、平昌の竜平リゾートで首脳会談を行った。だが、慰安婦合意や北朝鮮制裁問題をめぐり認識の差がみられた。文大統領と安倍首相の会談は今回で三回目だが、これまで韓日関係や安全保障事案でこのように正面衝突することはなかった、という見方がある。
 公開発言時までは、雰囲気は悪くなかった。文大統領は「歴史を直視しつつも首相と共に知恵と力を合わせて両国間の未来志向的協力を推進しようと思う。このためにシャトル外交を復活させ、首脳レベルの緊密なコミュニケーションを強化しよう」「両国が心の通う真の友人になれることを真剣に望む」と語った。安倍首相は「同じアジアのリーダーとして、平昌で開催されるオリンピックを成功させるため協力したい」と語った。
 しかし非公開会談では、歴史と安全保障問題で認識の差がはっきりと表れた。慰安婦合意について、安倍首相は「国家対国家の合意で、政権が変わっても守るべきというのが国際原則。日本はその合意を最終的かつ不可逆的なものとして受け入れているだけに、韓国政府も約束を実現することを希望する」と語った。これに対し文大統領は「慰安婦合意では解決できないという決定は、元慰安婦や韓国国民が合意内容を受け入れなかったことに基づく。慰安婦問題は被害者の名誉と尊厳を回復し、傷が癒えたときに解決され得るものであって、政府間のやりとりという形での交渉で解決できるものではない」と発言した。両首脳は、慰安婦合意に際して日本政府が支払った10億円の処理問題についても意見を交わしたという。
 北朝鮮問題について、安倍首相は「北朝鮮は平昌オリンピックの期間に南北対話をしつつも、核とミサイルの開発に力を注いでいる。北朝鮮の『ほほ笑み外交』に注意を払うべき」と発言した。しかし文大統領は「南北対話が非核化を曇らせたり国際協調を乱したりするというのは杞憂に過ぎない。南北関係改善と対話は、最終的に非核化へつながらなければならない。日本も積極的に対話に乗り出してくれることを望む」と発言した。南北対話を優先する韓国と、北朝鮮圧迫を強調する日本の立場の差が表れたのだ。
鄭佑相(チョン・ウサン)記者
○安倍首相 韓米軍事演習「予定通り実施を」=文大統領「内政問題」と反発
【ソウル聯合ニュース】韓国の青瓦台(大統領府)高官は10日、安倍晋三首相が9日に開かれた文在寅大統領との会談で、北朝鮮が反発している定例の米韓合同軍事演習を平昌冬季五輪・パラリンピック後に延期したことについて「延期する段階ではない」として、「予定通り実施することが重要だ」との考えを示したと伝えた。
  安倍首相は「五輪後が山場だ。非核化に対する北朝鮮の真摯(しんし)な意思と具体的な行動が必要だ」と述べたという。
 これに対し、文大統領は「北の非核化が進展するまで軍事演習を延期しないよう求めるものと理解している。だが、この問題はわれわれの主権問題であり、内政の問題」と反発。「総理がこの問題を直接取り上げることは困る」と強調した。
 強力な対北朝鮮制裁と圧力の維持を望む安倍首相と、平昌五輪を機に南北対話ムードを続けたい文大統領の立場の隔たりが鮮明になった格好だ。
(ハンギョレ)
○文大統領と安倍首相「慰安婦合意」めぐり正面衝突…北朝鮮核問題の解決策にも隔たり
 文在寅大統領と安倍晋三日本首相は9日に開かれた3回目の韓日首脳会談で、日本軍「慰安婦」被害者問題関連2015年韓日合意(12・28合意)をめぐり、真っ向から対立した。北朝鮮・北朝鮮核問題解策における強調点も異なっていたが、両首脳はシャトル外交の復活を本格化するなど関係改善に向けた努力を続けた。
 同日午後、江原道の龍坪リゾート・ブリスヒルステイで会った両首脳は、12・28合意に対する議論で協議を開始した。昨年12月「韓日日本軍慰安婦被害者問題の合意を検討するタスクフォース」報告書発表後、両首脳が初めて会った席だった。
 キム・ウィギョム大統領府報道官は会談後の記者団に、安倍首相が「慰安婦の合意は国家対国家の合意であり、政権が変わっても守らなければならないというのが国際原則」としたうえで、「日本はその合意を最終的かつ不可逆的なものとして受け止めており、約束を守ってきただけに、韓国政府も約束を実現することを望んでいる」と述べたと伝えた。安倍首相は同日の会談で、駐韓日本大使館前の「平和の少女像」の撤去も要求したという。共同通信は、安倍首相が「日本大使館前の少女像には外交上の問題がある」とし、このように要求したと報じた。
 文大統領はこれに対し、「慰安婦の合意が解決されなかったという決定は、前政府の合意後、慰安婦被害者と国民が合意内容を受け入れなかったため」と述べた。キム報道官によると、文大統領は「(慰安婦問題は)政府間の取引式の交渉で解決できるようなものではない」とし、「慰安婦」問題の真の解決のためには「両国政府が引き続き共に努力していかなければならない」と強調した。
 文大統領は同日、過去の歴史と未来の実質協力を切り離してアプローチする「ツートラック」の原則を繰り返したものとみられる。会談に先立ち、「両国が心の通じる真の友人になれることを心から望んでいる」とし、「(歴史を直視しながらも)両国間の未来志向的協力を推進していきたい」と述べたためだ。安倍首相も予告したとおり「日本の立場」を直接文大統領に伝えており、両国は「慰安婦」問題に対する従来の立場を再確認した。ただし、両首脳がこの部分について「率直な意見を交わした」や「自由に意見を交わした」という大統領府関係者の話から、いつになく激しい議論が行われたものとみられる。「率直な意見」や「自由な意見」が飛び交ったというのは、外交界では「意見衝突」を指す典型的な表現だ。これについて、韓日関係が当分は再び冷却するという分析もある。
 両首脳は北朝鮮・北朝鮮核問題についても異なるアプローチを強調した。安倍首相は「北朝鮮は、平昌五輪期間中、南北対話をしながらも、核とミサイル開発に注力している」とし、「北朝鮮の微笑外交に注意を払わなければならない」と主張した。対北朝鮮制裁と圧迫基調のもと、韓日と韓米日3カ国の対北共助の強化に重点を置いたのだ。一方、文大統領は「南北対話が非核化を遅らせたり、国際協力を乱すというのは杞憂に過ぎない」としたうえで、「南北関係の改善と対話は結局、非核化につながるものになるべきだ」と強調した。キム報道官は、文大統領が「このような雰囲気を生かしていけるよう、日本も積極的に対話に乗り出してほしい」と述べたと伝えた。
キム・ジウン記者、東京/チョ・ギウォン特派員

<ペンス副大統領の行動>
ペンスの露骨な行動ぶりについては、ハンギョレの記事が詳しいので、これを紹介します。

(ハンギョレ)
○ペンス米副大統領の非礼…キム常任委員長を除いて握手し歓迎式場を後に
 マイク・ペンス米副大統領が9日、文在寅大統領が主催した平昌冬季五輪事前歓迎レセプションに事実上欠席した。ペンス副大統領の欠席で、キム・ヨンナム北朝鮮最高人民会議常任委員長との初の朝米首脳級の遭遇もなくなった。事前に調整された首脳級要人の公式行事で、予期せぬ波紋を広げたペンス副大統領の行動は、外交的な常識を外れた非礼と言える。平昌五輪を機に、ペンス副大統領とキム・ヨンナム常任委員長が顔を合わせることで、今後の朝米対話に連結しようとした文大統領の構想も難関にぶつかることになった。
 文大統領は同日午後、江原道平昌郡龍坪(ヨンピョン)リゾート・ブリスヒルステイで、平昌五輪をきっかけとして訪韓した外国首脳級要人夫妻やトーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)委員長、アントニオ・グテーレス国連事務総長など、国内外の要人約200人を招待し、事前のレセプションを開いた。文大統領夫妻が座っている円形の主賓席にはキム・ヨンナム常任委員長とマイク・ペンス米副大統領夫妻をはじめ、日本の安倍晋三首相や韓正中国共産党政治局常務委員、ドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領夫妻、バッハ国際オリンピック委員会委員長夫妻、グテーレス事務総長など12人が座る予定だった。ペンス副大統領の席は文大統領の左隣に、キム常任委員長の席は文大統領の右から4番目に配置された。
 レセプションに先立ち、文大統領と夫人のキム・ジョンスク氏は、午後5時17分頃から会場前でバッハ国際オリンピック委員会委員長夫婦を皮切りに、簡単な挨拶と記念撮影を行いながら、外賓らを迎えた。しかし、ペンス副大統領と日本の安倍首相はレセプション開始時刻(午後6時)を10分も過ぎて到着した。文大統領は、行事場の中で待っている他の要人らのため、6時11分にレセプション会場に入場し、歓迎の辞を述べた。文大統領は「平昌五輪がなければ、一堂に集まることが難しかった方もいますが、私たちが一緒にいて、一緒に選手たちを応援しながら、未来を語ることができるというのが重要だ」としたうえで、「私たちが一緒にいるという事実そのものが、世界平和に向けて一歩近づくための大切なスタートになるだろう」と述べた。文大統領が歓迎の辞を終えるまでペンス副大統領と安倍首相は入場せず、別途の部屋で2人だけで記念撮影を行った。歓迎の辞を終えた文大統領は、2人が待機していた部屋に行き、彼らと共に記念撮影を行った。3人は6時39分に並んでレセプション会場に入場しており、この時までは円満に行事が行われるものと思われていた。
 しかし、ペンス副大統領は主賓の席に座らず、キム・ヨンナム常任委員長を除いた残りの要人らと握手を交わした後、6時44分に行事場を後にした。ユン・ヨンチャン大統領府国民疎通秘書官はペンス副大統領の予期せぬ行動をめぐる外交的波紋を縮小しようと、「ペンス副大統領は米国選手団と6時30分に会う約束になっており、事前通知が来た状態だった。テーブルにも席が用意されていなかった」としたうえで、「フォトセッションに出席した後、すぐに帰る予定だったが、文大統領が『友人らに挨拶したらどうか』と勧めたため、レセプション会場に立ち寄った」と釈明した。彼は「ペンス副大統領は日程の協議の過程から欠席の意向を示唆した」と付け加えた。
 しかし、同日午前までも大統領府側は「ヘッドテーブルの座席配置に関して朝米双方の了解を得た」とし、ペンス副大統領がレセプションに参加すると説明した。大統領府関係者たちは「ペンス副大統領とキム・ヨンナム常任委員長が一緒に座るだけでも、意味のあるメッセージになるだろう」と話した。実際、晩餐が始まる前、ヘッドテーブルには「ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ」という名札が載せられていた。結局、ペンス副大統領が突然レセプション会場から出て行ったもので、これは深刻な外交的非礼である。
 ペンス副大統領がこのような行動に出たのは、キム・ヨンナム常任委員長との"相席"に対する不満のためと見られる。文大統領が推進している南北対話に続く朝米対話に対する強い抵抗を、レセプション出席の約束を破棄する外交的な非礼まで冒して、露骨に示したものだ。ペンス副大統領は前日、文大統領との晩餐会で、「米国は、北朝鮮が永久的に不可逆的な方法で北朝鮮核兵器だけでなく弾道ミサイル計画を放棄するその日まで、米国にできる最大限の圧迫を続ける」と述べた。訪韓前に日本で安倍首相と行った首脳会談でも、「近日中に北朝鮮に最も強力かつ攻撃的な制裁を加える」と明らかにした。
 ペンス副大統領のこのような態度は、今後、米朝対話の険しい道程を予告していると言える。平昌で平和五輪を開催→南北対話を拡大→米朝対話→朝鮮半島の非核化と平和体制の構築につながる文大統領の構想も大きな障害に直面することになった。キム・ヨンチョル仁済大学統一学部教授は「ペンス副大統領の行動は今後、米国の対北朝鮮強硬政策に対するメッセージと見られる」としたうえで、「文大統領が構想した朝米対話への道は険しいかもしれない」と話した。
ソン・ヨンチョル記者

2.朝鮮のアプローチ

平昌冬季オリンピック開会式に参加するために金永南常任委員長とともに訪韓した金与正党第1副部長は、10日に文在寅大統領を青瓦台に訪問した際、文在寅訪朝を招請する金正恩委員長親筆の書簡を手渡しました。ちなみに、10日付の朝鮮中央通信は、「第23回冬季オリンピック競技大会が開幕」(この中で、「金永南、金與正の両氏、文在寅大統領夫妻が立ち上がって手を振り、北と南の選手にあいさつを送った」「この日、金與正党第1副部長は文在寅大統領夫妻と握手し、温かいあいさつも交わした」という紹介あり)及び「金永南委員長が文在寅大統領に会う」という2つの記事を載せていますが、文在寅訪朝招請に関しては言及していません。しかし、朝鮮日報が掲載した聯合ニュースは、以下のように紹介しました。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は10日、韓国青瓦台を訪れた妹の金与正党第1副部長を通じ、文在寅大統領に南北関係改善の意思を示す親書を伝達し、訪朝を要請した。青瓦台の金宜謙(キム・ウィギョム)報道官が記者会見で発表した。
 金報道官によると、与正氏は金委員長の意思として、「文大統領と早期に会う用意がある」と表明。「都合の良い時期の訪朝を要請する」と述べた。
 文大統領は「今後、環境を整えて実現していく」と応じた。
 親書で金委員長は「朝鮮民主主義人民共和国国務委員長」との肩書きを使った。与正氏は金委員長の特使として派遣されたという。
 文大統領は与正らの北朝鮮代表団と面会した後、昼食会を開いた。
 代表団の団長を務める金永南最高人民会議常任委員長は文大統領に対し、「平昌五輪の開会式が成功裏に終わったことを南北が祝いたい」とあいさつした。
 文大統領は友好的な雰囲気の中、代表団と南北関係や朝鮮半島問題全般について幅広い意見交換を行ったという。特に、「南北関係の発展のためにも米朝間の早期の対話が必ず必要だ」として、「米国との対話に積極的に乗り出すことを望む」と呼びかけた。
 また、「代表団の訪韓により、平昌五輪が平和の五輪となり、朝鮮半島の緊張緩和と平和定着、南北関係改善の契機になった」と述べた。
 双方は朝鮮半島の平和と和解の雰囲気を維持し、南北対話と交流・協力を活性化することで一致した。

3.環球時報社説

環球網WSは、2月10日21時12分に「文在寅大統領は朝鮮訪問招請を受けるだろうか」と題する社説を掲載し、文在寅の訪朝を招請した金正恩の行動に、「この意表を突いたニュースは世界のメディアと分析者たちを驚愕させた」という表現で率直な驚きを表明するとともに、ペンスの行動を「きわめて礼を失している」と酷評しながら、アメリカのこのような姿勢に鑑みると、朝鮮半島情勢の前途は予断ができないとしながら、しかし、本年の半島情勢がどう展開するか否かのカギは文在寅の動き次第だとする、私が昨日のコラムで紹介した同紙社説と同じ主張を再び展開しました。私としてもおおむね首肯できる内容なので、要旨以下のとおり紹介します。文章はあくまでも分析の形をとっていますが、内容的には、文在寅に難しい決断を行うことを促そうとする中国側の精一杯のエールであると見るべきでしょう。

 金正恩が文在寅の訪朝を招請したという意表を突くニュースは世界のメディアと分析者たちを驚愕させた。文在寅はこの招請に対して、明確には受け入れなかったが、断りもせず、半島情勢に大きな懸念を残すこととなった。
 金正恩の招請は、平昌冬季オリンピック後の半島劇に新しい手がかりを注入した。それ以前の多くの分析では、オリンピック終了後には、ワシントンの督促の下で米韓軍事演習が速やかに行われ、これに対して平壌が新たなミサイル実験でお返しするという確率が高い、とされてきた。
 しかし、現在の状況下ではもっと多くの可能性が出てきた。この2日間、文在寅は朝鮮代表団を厚くもてなし、金与正は金正恩の特使として代表団に加わり、しかも金正恩の真筆の手紙を持ってきたことにより、南北関係改善の雰囲気を際立たせた。朝韓緩和が部分的にも継続し、少なくとも文在寅の施政に面倒を添えないとするならば、この事実は文在寅の執政上の成功と見なすことができるだろう。
 ワシントンは、朝韓関係が冬季オリンピックを機会に改善されることに対して懸念を隠していない。開幕式に参列しに来たペンス副大統領は9日のレセプションに遅刻しただけでなく、5分間いただけですぐに退去するというきわめて失礼な振る舞いだった。これはペンスが故意にとったジェスチャーだったというのが大方のメディアの理解だ。このジェスチャーにはいろいろな意味が込められていただろうが、韓国の主人に対する一種の不満表明、メンツつぶしの意味が込められていたことは明らかだ。
 平昌オリンピックにおける南北緩和があだ花に終われば、今後の朝韓関係にマイナスの遺産となるだけではなく、米韓の相互不信に消し去ることができないしこりともなるであろうし、そうなれば笑い話として文在寅のイメージに対する打撃となるだろう。さらに、文在寅はかつて北に対して「太陽政策」を実行した盧武鉉元大統領の親密な戦友であり、大統領選挙期間中も南北関係緩和を主張していたのであり、文在寅のホンネとしては朝鮮訪問の招請を是非受け入れたいところであろう。しかし、彼が行くことができるか否かは他の要素によって決まってくる。
 仮に、これから1年のうちに半島情勢が冬季オリンピック以前の状態に戻り、米韓合同軍事演習が再開され、朝鮮が繰り返しミサイル発射実験を行い、特に新たな核実験を行うとなれば、韓国世論における南北緩和に対する支持は再び一掃され、文在寅の朝鮮訪問は水の泡となるに違いない。
 したがって、文在寅が今年の半島情勢に対して創造力を発揮できるか否かがもっともカギとなる。
 朝鮮が代表団を訪韓させ、かつ、文在寅の平壌訪問を招請したということは、冬季オリンピック後も核ミサイル活動の暫定停止状態を継続していく意思があるということを示している。朝鮮が長期にわたって核ミサイル活動を暫定停止することは、核問題の解決にとって不可欠であり、そのことは、朝鮮が核ミサイル活動を加速することよりも、半島情勢の安定及び和平のための最終案を探求するために有利である。
 アメリカは、朝鮮が長期にわたって一方的に核ミサイル活動を暫定停止することは米韓が合同軍事演習を継続することとは無関係であり、しかも、アメリカは朝鮮が最終的な核放棄の目標について積極的姿勢を示すことを要求しており、これのみが米朝対話の前提だと主張している。したがって、文在寅がこれからするべき最大の難しい仕事はワシントンを説得するということだ。
 ワシントンをして譲歩させること、少なくとも米韓合同軍事演習の規模と内容をレベル・ダウンさせることに関しては、文在寅にはカードがある。もちろんそうすることは彼にとって容易なことではないし、一定の政治リスクを伴うだろうが、彼がこの一歩を踏み出すことによってのみ、朝鮮核問題を平和的に解決するための真の曙光をもたらすことができる。
 半島情勢は十字路の入り口における重大な選択に直面している可能性がある。一つの可能性は、韓国が自ら果たすべき役割を担い、米朝が向き合って進み、中ロが主張してきた「双方暫定停止」の状況を形作ることによって、南北がともに祝う8月15日の「光復節」(朝鮮では「祖国解放日」)あるいは他の機会に、文在寅が訪朝するための条件を作り出すということだ。もう一つの可能性は、対峙する双方が平和的に朝鮮核問題を解決する考え方を放棄し、さらに尖鋭な対決に向かう準備をするということだ。
 実際の情勢がどうなるかを予測することは至難だ。しかし我々としては、文在寅が最終的に訪朝を実現させる可能性の方が高いのではないかという見方に傾く。さまざまな要素をバランスしてみた結果、我々としては、文在寅大統領が南北緩和を継続していきたいとする願望を重く見るものだ。願望は動力を意味し、動力は変化をもたらす可能性がある。