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朝鮮半島緊張回避のカギは文在寅(環球時報社説)

2018.02.10.

2月9日付環球時報は、「どうしたら冬季オリンピックの緩和を夢に終わらせないことができるか」と題する社説を掲載しました。要するに、冬季オリンピック終了後の朝鮮半島情勢の行方は文在寅政権の不退転の決意如何にかかっているとするもので、私が2月3日付のコラムで書いた論点と同じです。要旨を紹介します。

 平昌冬季オリンピックが開幕し、朝鮮と韓国の選手が半島旗を掲げて共同で入場し、半島情勢緩和はピークに達した。アメリカのペンス副大統領と朝鮮の金永南常任委員長は文在寅大統領とともに貴賓席に現れることになっており、これまた奇観である。このような和気藹々とした一幕はホンモノなのかと思わざるを得ない。
 このような一幕が半島情勢の決定的な転換点になることを願う人は多いと信じる。しかし、この一幕は夢のごとくであって真実ではなく、3月末まで続いた後、冬季オリンピックが終わり次第、半島情勢は再び尖鋭な対決という現実に戻っていくと断言する人が少なくない。
 しかし、この機会をしっかり捉えずに、あぶくのごとくはじけさせてしまうとすれば、それは一種の罪であり、半島の人民に対する無責任であり、平和を鼻でせせら笑うことである。
 2月8日は朝鮮の建軍節だったが、韓国メディアは朝鮮における閲兵式の時間が短縮され、規模も縮小されたと報じた。このことは、朝鮮が冬季オリンピックの成功を配慮した姿勢の表れだと見なされる。韓国でも南北緩和を大切にしようという声が現れており、冬季オリンピック終了後に米韓合同軍事演習が再開されるとしても、規模は縮小すべきだと主張する韓国人もいる。
 平壌が戦略を調整しており、韓国も平壌が投げてきたボールを受け止めようとしていることを見て取ることは難しいことではない。ソウルにとっての優先事項はまず冬季オリンピックを平安にやり遂げることであるが、半島の緩和がすでにある時間続いたことを見て、このような平静さに未練心が生まれないとしたら、それはあり得ないことだ。
 現在の緩和を最終的な朝鮮核問題の解決プロセスへと転換していく方法を考える上でのカギはアメリカにある。しかし現在に至るも、アメリカは朝鮮に対して最大限の圧力を行使する姿勢を改める気配はみじんもない。ワシントンが要求するのは、冬季オリンピック終了後は直ちに元来の米朝対決のロジックに戻すということだ。
 ワシントンが思想回路を変えるように勧告できる人がいないのは、平壌に対してその核保有路線を改めるように勧告できる人がいないのと同じようなことに見える。もしそうであるとすれば、韓国人は情勢安定の最後の時間を享受した上で、ベルが鳴った瞬間に夢から覚めるように情勢の転換を迎える準備をするべきだ。
 しかし、そうすることは韓国人にとって自分自身を諦めるということになるだろう。その実、韓国の手元にはホンモノのカードがあるのであり、韓国はワシントンに対して自分の意見を堅持し、米韓合同軍事演習の規模縮小をはっきりと要求することもできるのだ。それはアメリカにとって気持ちよくないことだろうが、仮に米韓があまりに気持ちが良いということになれば、韓国は朝鮮が再び面相を改めることに直面することになるわけで、韓国人としては、いかなる局面が自らにとってより有利であるかについて計算するべきだろう。
 本来であれば、韓国は半島問題の主役の一つであるのに、情勢の重要な分かれ道では脇役に追いやられてしまっている。何事もワシントンが決定するということは明らかに韓国の利益に合致しない選択となるのであり、ソウルがひたすらアメリカに従うということは半島の運命に対して負うべき責任を放棄するということなのだ。
 すべての関係国が一種の惰性に陥っているとき、情勢を動かして方向性を変えるテコとなり得るのは韓国だけかもしれない。平壌がやり方を緩和させる気持ちがあるこの時に、ソウルとしてはワシントンの動きを緩めさせるブレーキ役となる必要がある。韓国がこの動きに伴うリスクを負うことに肯んぜず、他者がこの転機をあたかも贈り物のように韓国に送り届けることを願うのであれば、我々としては、韓国は同時に、半島情勢がさらに深刻化することを受け止める思想的準備をする必要もあると言う必要がある。
冬季オリンピックは始まり、その終わりは遠くない。ソウルよ、ためらうことなくあなたたちが担うべきことを担いなさい。