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日中関係(環球時報社説)

2018.01.25.

中国共産党第18回党大会が開催された後の中国の対日姿勢に変化が現れていることは多くの指摘があるとおりです。しかし、中国側の安倍政権に関する論調は、今年に入ってからも総じて厳しいものが多く、中国側の安倍政権に関する認識自体に質的な変化が起こったと見ることはできません。
 そうした中で、1月23日付の環球時報は「中日関係改善 揺れつつ前進開始」と題する社説を掲載しました。安倍政権の対中関係改善に対する意思は矛盾をはらみつつも中身はあるとし、中日関係緩和は両国の根本的利益に合致するものであるという立場から、中国としては原則なき妥協はしないけれども、進んで矛盾を拡大することは避け、関係改善に取り組むことは試してみる価値があることだと論じています。中国の対日政策の要諦を示すものとして一読の価値があると思います。要旨を訳出して紹介します。

 安倍首相は(1月)22日の施政方針演説で中日関係に言及し、自由で開放的なインド太平洋戦略を推進するという大方針の下で、日本は中国と協力して不断に増大するアジアのインフラ建設の需要を満足させていくと述べた。安倍はさらに、日本と中国は地域の平和と繁栄に大きな責任を負っており、切り離すことができない関係でもあるとし、大局的見地から中国との安定した友好関係を発展させるとも述べた。そして、今年は日中平和友好条約締結40周年であり、日本は各レベルでの日中民間交流を強化していくとも強調した。
 多くの中国の学者は、安倍の以上のスピーチは「比較的積極的」であり、彼が引き続き中日関係を改善していきたいという意思を表明したものだと見なしている。昨年中葉以来、彼のこの種の態度表明はおおむね安定してきており、中日関係の政治的雰囲気の変化を推し進めてきた。
 しかし、中日間の外交上のいざこざは相変わらず少なくないのが現実である。最近も、日本は中国の艦船及び潜水艦が釣魚島隣接区域内に侵入したと公表し、両国社会の感情を刺激したばかりだ。また、東京は北京を刺激するインド太平洋戦略及び米日豪印4カ国対話を推進することにももっとも積極的であり、こうしたことは中日間の相互不信を不断に強めている。
 安倍政権の対中関係改善の意思はホンモノのようだが、東京が対中問題で複雑な動きをとり続けるだろうこともほぼ疑いのないところだ。安倍政権の対中関係改善の動きは、トランプ政権の対日姿勢が不確実であることによって引き起こされている面もある。したがって、東京が中国に対して好意を示すに至った動機は複雑であり、そのことは中日関係改善の不安定性を内包させている。
 客観的に言えば、これからの中日関係は、一方で以上の足に立脚しているが、もう一方の足はどちらの方向に向かって進むかは分からない状況だ。前者の足が立脚するのは両国間の貿易その他の協力が動きを規定するものであり、懸念されるもう一方の足を規定するのは両国間の様々な摩擦及びアメリカの牽制等の第三者的要因だ。
 総じて言えば、中国の中日関係に対処する現実的状況とは、中日関係を積極的な方向に向かって導いていくことを基本目標とし、原則堅持を両国間のいざこざを処理するうえでの尺度とするということだ。我々は日本側の積極的な動きをすべて激励するべきであるとともに、その間違った行動に対しては無原則な譲歩を行わず、しかも同時に具体的ないざこざが両国関係全体に影響するまでに拡大しないようにするべきだ。
 そうすれば、日本も中国との関係を確実に望んでいる限り、具体的ないざこざによって日中関係全体を悪化させようとは思わないだろうから、両国は徐々に前に向かって進み、ゆっくりと相互信頼と善意を蓄積し、今後の実質的な相互関係向上のために地固めを行っていくことができるだろう。
 中日両国は、和すれば両得、闘えば両損であり、この道理は両国の社会の中で(受け入れられる)基礎を持っている。中日が対立することによる最大の受益者はアメリカである。ワシントンは、中国との戦略的競争を強める意志を持っており、そのために、日本が、いつでもアメリカの意のままになる「忠誠的盟友」として、アメリカを助けてアジアで中国に対処することを今後ますます必要としている。このことは中日両国に対して妨害物となるだろう。
 中日が関係を緩和することは、いかなる意味においても両国の根本的利益に合致する。北京と東京が現実的な妨害を排除してこのことを成し遂げることができるならば、双方にとって戦略上の負担軽減をもたらしうるのであり、したがって双方が試してみる価値があることだ。
 実質的に中日関係を緩和させるには、以下の二つのことを行う必要がある。第一に、両国は断固として軍事衝突発生の可能性を排除することだ。それはすなわち、両国が釣魚島海域及び東海(東シナ海)全域における双方の対立を適切にコントロールする必要があるということだ。第二に、両国は中日貿易の停滞ひいては後退の趨勢を転換させ、両国経済貿易協力のさらなる繁栄を再び推進するべきである。
 今日、中国のGDPはすでに日本の3倍近くに達しており、両国間の実力比は歴史的に逆転している。日中双方はこの変化に適応する必要がある。すなわち、日本は中国の台頭を真剣に受け入れるべきであり、中国としては、19世紀以来長期にわたって日本に圧迫され、侮られてきた民族的心理を調整する必要がある。両国社会が以上の関門を超えることができるのであれば、中日間には重大な利益の衝突は何もなく、両国は完全に共同して未来に向かうパートナーとなることができることを見いだすことになるだろう。