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朝鮮半島情勢(南北会談)-環球時報社説-

2018.01.08.

金正恩の「新年の辞」を契機に、南北高位級会談が1月9日に行われることが決まり、朝鮮半島情勢好転への期待が高まっています。中国外交部の耿爽報道官は1月5日の定例記者会見の席上、記者の質問に答え、「半島の隣国として、中国は朝韓双方が相互関係を緩和させるためにとっている積極的な動きを歓迎し、支持する」と述べるとともに、「国際社会がこれに支持を与える」ことを望むと付け加えました。また、平昌冬季オリンピック期間中、米韓が合同軍事演習を延期することに合意したことに関しても、「これは疑いなく良いことだ」と評価し、「半島問題関係諸国が、平昌冬季オリンピックを契機として、半島情勢緩和、対話協議の正軌道への復帰、半島非核化実現のために努力することを希望する」と付け加えました。
 耿爽の以上の最後の発言をあたかも補足するように、1月5日付の環球時報は、「半島に双方暫定停止が初めて現れる うたかたの夢か?」と題する社説を掲載しています。すなわち、今回の動きは歓迎できることだが、平昌冬季オリンピック終了までという限定的な制約がついており、アメリカの朝鮮に対する強硬姿勢を考えるとき、韓国がしっかり対応しないと、「うたかたの夢」に終わってしまう危険があるとするもので、私が昨日のコラムで記した認識とほぼ同じです。
 社説の大要を紹介します。

 朝鮮と韓国は、冬季オリンピックを機会に関係を改善し、高度に緊張している半島情勢に新しい要素を注入した。アメリカはこれまで一貫して警戒感をあらわにしており、韓国は冬季オリンピックを安全に行うことができることを喜びつつも、ソウルと平壌が意思疎通を回復することに対するアメリカの不満について心配している。
 この時に当たり、中国外交部副部長兼半島問題特別代表の孔鉉佑が今日(5日)、ソウルで韓国6者協議団長の李度勛と会談し、低迷している情勢を打開することに一筋の手がかりを添える。
 半島非核化の目標を堅持するとともに、半島情勢緩和に資する対話と接触を支持することは、朝鮮問題に対する国際社会の基本的姿勢であるべきだ。非核化という共通認識がなければ、半島の緩和は長続きすることができない。ところが、緩和によって導かれなければ、非核化推進ははじめから議論する余地も出てこない。これこそが長期にわたる困難な状況である。
 今回、朝鮮は韓国との関係改善にイニシアティヴをとったが、ここには明らかに制裁という鉄のカーテンを打破しようとする考慮がある。韓国が朝鮮と関係を改善できるのであれば、アメリカその他の国々もどうして同じことをできないことがあろうか。スポーツ交流が良いのであれば、経済及び政治の交流も将来的に良いということにならないだろうか。平壌が希望するのは、核保有の下で以上のロジックを推進したいということだろう。
 アメリカの態度はこれと真っ向から対立している。ワシントンが要求しているのは平壌が核を放棄し、ICBM研究開発を停止するということのみであり、そこでの唯一の作戦は極限まで圧力を行使するということであり、戦争も惜しまないという勢いだ。ワシントンは今回、ソウルのメンツを立て、朝鮮との接触に反対せず、冬季オリンピック期間中の軍事演習の暫定停止にも同意したけれども、基本的姿勢は変わっていない。
 しかし、今回の動きは、期待されている双方暫定停止に至りうる得がたいチャンスだ。この期間はきわめて短いが、きわめて貴重なものだ。この機会を捉え、突然舞い降りてきた半島情勢の緩和を拡大し、長続きするように大いに努力し、各国が共同して半島非核化という目標を回復するために条件を作り出すことは試してみる価値がある。
 金日成及び金正日の時代には、平壌は半島非核化という目標を承認したことがある。朝鮮の核保有は、総じていえば、外部の条件の刺激によって引き起こされたものであり、外部的条件に新たなかつ十分な変化が起こりさえすれば、この目標が最終的に半島に戻ってくる可能性はまったくないということではない。
 現在、朝米間の相互信頼はゼロ以上、マイナスですらある。双方の対決はもはや強大な慣性にまでなっており、とりわけワシントンにしてみれば、朝鮮に対して極限まで圧力をかけるというオペレーションはますます簡単で、ロジックもすっきりしており、それを改めるということはあまりにも面倒だし、様々なリスクも多い。平壌も同じで、核保有の段取りが間近に近づき、頑張ってさえいればやり過ごすことができると思いがちだ。
 しかし、米朝の先鋭な対決はすでにこれ以上延長できないという臨界点に至っており、それによってもたらされる深刻な激痛は、韓国が真っ先に耐えきれるものではなくなっている。ソウルは半島における戦争勃発に反対であり、ワシントンに「お伺い」を立てないで行動した後に報告し、平壌との接触を復活させた。この行動は、米韓日陣営の角度から見るとき、「戦いを前にした動揺」「敵前逃亡」に若干似ている。
 韓国は、半島問題の主役であるが、往々にして半島情勢の帰趨を決定するうえでの「脇役」と見なされるのが常だ。その実、ソウルの立場はそれほど弱いものではない。真実の状況はといえば、次のようになる。すなわち、韓国が同意しなければ、新しい戦争は起こすことはできない。アメリカが同意しなければ、カギとなる交渉は行いようがない。朝鮮が同意しなければ、非核化という目標を実現することはできない。中国とロシアが同意しなければ、半島非核化を推進するという共通の決意及び枠組みを形成することはできない、ということだ。
 朝韓が冬季オリンピックを契機に接触を復活させたことは、双方がいかなる考慮を持っているかとは関係なく、歓迎に値することだ。しかし、南北緩和ということだけではワシントンに対する有効な圧力とはなり得ず、平壌の非核化という目標の誘導力にもなり得ないのであって、対話を促進するための様々な仕事が追いついていく必要がある。しからざれば、朝韓の今回の緩和は「うたかたの夢」になる可能性がある。
 6者協議を復活させ、緩和延長及び関係諸国相互接近にチャンスを作り出すべきだ。米朝の立場は深刻に対立しているが、双方ともに戦争は欲しておらず、そのことは双方間に一切共通点はないということではないということだ。中韓の6者協議代表が金曜日に相まみえることになっており、山が重なり川はくねっているが、真っ暗闇の中に一筋の光明が見えてくる転機となることを希望したいものだ。