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台湾統一地方選挙結果(環球時報社説)

2018.11.26.

台湾の統一地方選挙は11月24日に行われ、蔡英文が率いる民進党が大敗しました。大陸・中国がこの選挙について大きな関心を持って見守っていたことは、環球時報が11月23日付(WS掲載は22日深夜)、25日付(同24日深夜)及び26日付(同25日午後)と続けて社説を発表したことからも窺えます。
 最初の社説は西側メディアによる中国が選挙に干渉しているとする報道に対する反論(「西側こそが台湾選挙に干渉」)、二番目の社説は民進党大敗判明直後のとりあえずの反応(民進党政権わずか2年で敗北 反省すべし」)、三番目の社説は民進党が選挙結果を受け止めて目を覚ますことを呼びかけたもの(「自ら敗北を招いた民進党が徹底的に目を覚ますことを希望する」)です。三つの社説を通観するとき、①大陸が台湾「内政」に干渉することはあり得ないが、大陸に経済的に依存するほかない台湾に対する中国の客観的影響力はますます増大するという自信(いわば「柿は熟して落ちる」という読み)、②選挙結果は国民党に敗北したというよりも、民意に逆らった反大陸一辺倒の政策をとってきた民進党の自滅を表していること、③経済的には大陸依存の台湾が政治的には対決政策をとろうとする道は前途がないことを民進党が悟るべきこと、という中国側の基本的判断・認識を理解することができます。要するに「台湾独立」という選択肢はあり得ず、「一つの中国」という「九二コンセンサス」に基づいた両岸関係構築という正道に戻ることを促しているわけで、私としては極めて穏当な内容だと思いました。3社説の要旨は以下のとおりです。

<11月23日付社説>
 台湾が両岸問題について選挙を通じて次第に理性的になるという望みは、大陸社会は早くから持たないようになっている。台湾情勢の今後の道筋は、大陸の発展力如何と中国の国際環境に対する掌握度によって決まるという考え方はますます多くの大陸人の認識となっている。台湾島内で誰が上で誰が下かということは、大陸人にとってはますますどうでも良いことになっている。…
 台湾の統一地方選挙がいかなるものか理解している大陸人はほとんどおらず、ほとんどの人は関心もない。‥我々が台湾側に言いたいのは次のことだ。誰がどこの首長になろうとも両岸の力関係を変えようはなく、大陸の政策及び決心も変えることはできない。だから好きなようにしなさい。
<11月25日付社説>
 選挙前から民進党劣勢は分かっていたが、これほど惨めな負け方をするとは多くのものにとって想定外だった。‥陳水扁及び馬英九政権の時は第2期目の時の統一地方選挙で大敗したのだが、蔡英文政権は1期目の半ばの統一地方選挙で大敗したということで、この事実は、蔡英文政権がもっともダメな当局であることを証明している。
 今は国民党が一番弱いときであり、党の資産は奪いあげられ、内部は団結しておらず、韓国瑜が高雄で頑張って新たに国民党の士気を喚起しようとしている。しかし、多くの分析が指摘するように、今回の国民党の大勝は国民党の活力が回復したためではなく、蔡英文及び民進党の失政が民進の怒りを買い、多くのものにとって民進党は「嘘つき」と映り、民進党だけには投票しないという結果が国民党に勝利をもたらした。…
 民進党が政権について以来、党内で政治をもっぱらにし、清算をこととし、両岸関係では「九二コンセンサス」を拒否して両岸に再び対立を呼び込むということで、彼らは平和的発展という考えがなく、このことは台湾の基本的民意に逆らうものだった。‥民進党は台湾民衆が考えていることは何かということを忘れ、今回、大量の中間層及び青年層の票を失った。
 統一地方選挙は元来両岸関係をテーマにするものではないのに、民進党が今回これを看板に掲げたということは、これまでも試みてきて良い結果をもたらしていなかったことの繰り返しであり、これですでに大勢は決まっていた。‥今回こそ、民進党が十分な教訓をくみ取ることを希望する。  アメリカも今回は統一地方選挙に深く干渉した。‥しかし、民進党の大敗はアメリカの島内におけるコントロール力に限界があることを反映している。アメリカの姿勢は島内の政治的生態におけるパワーの一つではあるが、そのパワーは下降傾向にある。
 イデオロギーを操り、外部勢力に頼るという蔡英文当局の手段は深刻なネックに直面したということこそが今回の選挙結果が示した明確なシグナルだ。民進党としては、この誤ったアプローチから抜け出し、平和的発展を希求する島内民意に応え、党の政治路線及び選挙戦略を調整することをしない限り、前途はますます厳しいものとなるだろう。
 大陸が島内の政党間の闘争に具体的に干渉することはあり得ないが、島内の政治的パワー・ゲームが台湾の国家に対する離心傾向を導くことには断固反対する。大陸がますます強大になるに従い、大陸と対抗することを通じて島内政治資本を満たそうという試みは前途がないことは決まっている。
 我々が期待するのは、両岸関係が「九二コンセンサス」を双方が堅持する基礎の上で次第に安定していくことだ。我々は早晩そういう局面になると信じている。なぜならば、それが大きい潮流だからだ。島内においては、この潮流という目標に歩み寄るものが戦略的な主導権を握ることになるだろう。
<11月26日付社説>
 民進党は国民党を挫折させることに成功し、アメリカの支持をたぐり寄せることにも成功したが、もっとも重要なものすなわち民心を失った。…台湾の民衆が民進党に政治を委ねたのは、国民党政権が成し遂げなかった経済社会発展問題を解決することを期待したからだ。ところが民進党は民意を読み誤り、党の「脱中国化」の政治路線が支持を受けたと考え、‥「文化的台独」「密かな台独」を推し進めた。…
 台湾の選挙に干渉しないということは大陸の断固とした政策の一つだ。しかし同時に、実力が急速に伸びている大陸が台湾に対してますます大きな影響力を持つことも間違いないことだ。大陸と対抗するというのは台湾にとっては極めて難しい選択であり、戦略的に耐えることができないものだ。アメリカを引っ張り込んで中国を牽制するというのも非現実的であり、出口はない。正確に言えば、大陸と対抗するのは行き詰まりだ。…民進党は明らかに世界の大勢を見極めておらず、2回目の政権というのに戦略的に極めて未成熟なくせにやみくもなことをし、自ら及び台湾がアジア太平洋の政治的パラダイムの中でいかなる地位にあるかということも分からず、やっとのことで獲得した政権の座という機会を軽率にも壊してしまった。
 今回の選挙と同時に行われた10項目の住民投票の一つ、「東京オリンピック参加正式名称住民投票」も失敗に終わったが、これもまったく現実的ではなく、仮に通ったとしても実現しようはなく、‥民進党のグロテスクでパラノイア的な思考を代表している。民進党が党内の極端な勢力及び思考によって縛られず、今次選挙における失敗を真剣に反省し、時勢を的確に判断し、両岸問題で革命的な調整を行うことを希望する。