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南北首脳会談合意事項履行状況(ハンギョレ)

2018.11.14.

4月27日の南北首脳会談による板門店宣言及び9月の平壌宣言に複mじゃれている南北合意事項に関し、板門店宣言成立から200日を迎えた時点での合意事項履行状況をハンギョレがまとめています(11月13日付日本語WS)。とても明快かつ詳細に履行状況及び未履行事項に関する課題・問題点を整理しています。参考までに紹介します。

板門店宣言から200日…南北合意の履行、どこまで進んだか
 今日(12日)は4月27日に南北首脳が「板門店宣言」に署名してから200日となる日である。今年9月、両首脳は平壌で再会し、板門店宣言の合意内容をより具体化した「平壌共同宣言」を採択した。両宣言の合意内容はどれほど履行されたのだろうか。また、残っている課題はどのくらいだろうか。
板門店・平壌共同宣言の36%が履行完了…52%は協議中
 板門店宣言と平壌共同宣言の25件の合意内容(図表参照)の履行状況を点検したところ、履行が完了した合意は9件(36%)、履行レベルは初歩的であるものの、分科会談を行うなど引き続き協議中の事項は13件(52%)だった。履行に失敗した件数は2件(8%)、条件つきの約束であるためまだ履行の有無を判断できない合意(開城工団と金剛山観光正常化や西海経済共同特区および東海観光共同特区の造成問題の協議)は1件(4%)だった。
 南北の合意は、南北関係▽朝鮮半島における軍事的緊張の緩和▽朝鮮半島平和体制の構築の3分野に分けられる。全体合意25件のうち、南北関係分野が17件で圧倒的な多数を占める。その分、履行件数(7件)が他の分野に比べて多く、協議中の事項(7件)も多い。例えば、南北は保健医療協力(11月7日)、体育(11月2日)、山林協力(10月22日)など、板門店宣言と平壌共同宣言の合意履行に向けた分科会談を続けている。ただし、離散家族常設面会所の開所や画像での再会、映像メッセージの交換など、人道的な問題でありながらも離散家族の高齢化に伴って履行が急がれる事案に関連し、これといった進展が見られないのは限界と言える。
 南北関係部門で履行に失敗した合意2件は、6・15南北共同行事の開催と10月中の平壌芸術団のソウル公演だ。これらの事業は履行自体には失敗したが、まだ悲観するのは早い。先月行われた10・4宣言南北共同行事など他の共同行事が持続的に行われており、芸術団の公演も南北が協議中であるだけに、11~12月、または来年にも開かれる可能性があるからだ。
「年内」明記した鉄道・道路の着工式、終戦宣言は実現可能だろうか?
 板門店宣言と平壌共同宣言合意内容のうち、履行期限が迫っているのは、「年内」と明記した鉄道・道路の連結のための起工式と終戦宣言だ。米国は、韓国が鉄道・道路の連結のための調査と着工式を行うためには、国連対北制裁委員会に制裁免除を要請し、承認を受けなければならないという立場だ。韓国政府は実際、この問題を解決するために米国と協議している。国連安全保障理事会の常任理事国であり、国連で最も大きな影響力を持っている米国が了解しなければ、制裁委に免除を要請することも、実際に事業を進めることも不可能であるからだ。
 終戦宣言についても同様の問題を抱えている。南北の首脳は4月27日の板門店宣言で、「朝鮮半島に戦争はもはやない」と発表した。一部の専門家らは、このような宣言が事実上、南北が終戦を宣布したものだと主張する。ならば、残った課題は北朝鮮と米国が戦争と敵対関係の終息を宣言することだ。これは全面的に北朝鮮と米国の交渉にかかっている問題であるため、韓国政府が「年内」という約束を守れると期待するのは難しい状況だ。朝米が高官級・実務会談などを開き、北朝鮮の非核化と米国の相応措置などが含まれた具体的な非核化プロセスに合意すれば、南北間の合意履行にも弾みがつくかもしれないと期待されていたが、今月8日に開かれる予定だった朝米高官会談は延期され、まだ再開の目途が立たない状況だ。
南北の軍事的緊張緩和は予定通り進んでいる
 点検の結果、「朝鮮半島における軍事的緊張の緩和」分野の合意は履行率が最も高かった。「地上、海上、空中などすべての空間で敵対行為を全面中止」するという板門店宣言の合意内容は、「軍事分野履行合意書」という付属合意書の採択(9・19)で弾みがついている状態だ。
 先月27日、板門店共同警備区域(JSA)内にある南北監視警戒所および火器の撤収に対する南・北・国連軍司令部の3者による共同検証が終了した。近いうちに民間人観光客の自由往来が可能になる見込みだ。南北は1日から、軍事境界線一帯で相手に向かって地上や空中、海上で実施してきた各種軍事演習、すなわち敵対行為を中止した。
 5日には漢江(臨津江)河口の共同利用のための水路調査を南北が共に行った。現在、江原道鉄原(チョルウォン)のファサルモリ高地一帯では、南北共同遺体発掘のための地雷除去と道路開設作業が進められている。
 南北が試験的に撤収することにした監視警戒所の各11カ所の火器や装備、兵力などは、10日に撤収が完了した。南北は今月末まで歴史的な象徴性や保存価値、今後の平和的利用の可能性などを考慮し、監視所1カ所を除いて、残りの10カ所全ての施設物を完全に破壊する方針だ。
朝鮮半島平和体制の構築の進展は「朝米交渉」にかかっている
 残念ながら、「朝鮮半島和平体制の構築」の分野については、まだ合意事項の履行は行なわれていない。平和体制の構築という問題自体が、南北はもとより、米国や中国などの朝鮮半島周辺国であると同時に停戦協定の当事国との協力が必要な問題であるからだ。特に、同分野の核心は北朝鮮の非核化だが、この問題は朝米間の非核化交渉と密接にかかわっている。事実上、朝米対話の結果にかかっていると言っても過言ではない。
 数十年間にわたり北朝鮮と協議してきた韓国政府は、米国が北朝鮮の立場をよりよく理解できるよう、韓米間の協議に力を入れているという。例えば、今回外交部レベルでイ・ドフン朝鮮半島平和交渉本部長とスティーブン・ビーガン米北朝鮮政策特別代表を中心とする韓米作業部会を立ち上げたことがその例に当たる。ただし、この作業部会が正常に作動するためには、韓国政府は朝米交渉で北側がいかなる立場を持っているのかをよく把握しなければならない。米国に北側の立場が何なのか伝え、朝米が見いだせない折衷点を韓国が用意せざるを得ない状況を迎えるかもしれないからだ。南北協力事業のための制裁免除措置などが円滑に行われるよう、外交部が中心となった作業部会が、大統領府をはじめ、特に南北関係を担当する統一部と省庁の壁を越えて緊密にコミュニケーションしなければならない。
 韓東大学のキム・ジュンヒョン教授は「米国が私たちに立ちはだかる障害物ではないが、米国が了解しなければ南北協力が制約を受けるのは事実だ」とし、「米国が(南北協力事業について)根拠もなしにブレーキをかける場合、韓国が制裁を突破することは難しくても、もう一度南北関係を主導的に率いる可能性はある」と話した。「状況によって決めなければならない時期が来るだろうが、私たちが主導して対話を加速化できるよう雰囲気を作らなければならない」とも付け加えた。
 統一研究院のホン・ミン北朝鮮研究室長は「特使を送るなど、様々な方法で朝米交渉における北側の要求事項を把握し、朝米間にブレーキがかかった部分をいかに解消できるかを考えなければならない。そうしてこそ、南北協力の問題も自然に解決できる」と話した。
ノ・ジウォン記者