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韓国外交部「ジャパン・スクール」凋落(!?)

2018.10.25.

10月23日付の聯合通信と朝鮮日報(ともに日本語版WS)は、韓国外交部における在日大使館勤務希望者が一人もいなかったというニュースを掲載していました。韓国外交部において「ワシントンスクール」と並んで「ジャパンスクール」が双璧をなしてきたということも私は知りませんでしたが、中国の重要度の上昇に加え、いわゆる「従軍慰安婦問題」をめぐる日韓の軋轢も影響しているという指摘には考えさせられるものがあります。私のかつての職業でもあったこともあり、他人事としては受け止められません。

○聯合ニュース「在日大使館での勤務希望者「ゼロ」 若手外交官に変化=韓国
【ソウル聯合ニュース】韓国外交部の当局者は23日、部内でこのほど在外公館での勤務希望者を募ったところ、公館ランクが最も高く人気の赴任先だった東京の在日韓国大使館と仏パリの経済協力開発機構(OECD)政府代表部を希望した人が一人もいなかったと伝えた。
 中でも、在日大使館での勤務希望者がゼロだったことに驚きの声が出ている。
 中国の重要度が急激に増した2000年代以前には、日本で研修を受け在日大使館での勤務経歴がある「ジャパンスクール」と呼ばれる外交官が「ワシントンスクール」と並び外交部内で双璧を成しており、北米局長と並ぶ同部の上級ポストに挙げられるアジア太平洋局長(現在は東北アジア局長)に就くには在日大使館での勤務経歴が必要だというのが通説だった。
 希望者がいないという異例の事態は、公館ランクが最上級の在日大使館での勤務を希望して選抜されなければランクが下位の公館に赴任するという同部の人事制度、若手外交官の意識変化、近年の外交状況の特殊性などが複合的に作用した結果と指摘される。
 中国と日本のポジションと影響力が劇的に逆転し、韓国にとってアジア地域内で最も重要な公館の地位はとっくに在日大使館から在中大使館に移ったとの見方は多い。対日外交に関心と意欲があるならともかく、単にキャリアを積む赴任先としての在日大使館の魅力は薄れているといえる。
 また近年、旧日本軍の慰安婦問題を巡る韓日合意などに関与した対日外交従事者らが苦労にもかかわらず社会的非難の対象になり、人事でも報われないという状況を若手外交官らが目にしていることも影響したようだ。
 実際、2015年末の慰安婦合意以降、韓国国内で合意に対する批判が巻き起こる中で、外交部の対日外交担当職員の一部はカウンセリングを受けねばならないほど極度のストレスを訴えていたとされる。
○朝鮮日報「ジャパン・スクール凋落、志願者が集まらない駐日韓国大使館」
韓国外交部(省に相当)が駐日韓国大使館で勤務する外交官を募集したものの、申請者が必要数に達せず再募集をしていたことが22日、分かった。
 外交部はこのほど、来年初めに駐日韓国大使館に赴任する書記官級外交官3人を募集した。しかし志願者がなく、募集を再告知して人員を選抜しているところだという。外交部は「現在は志願者が複数いる」と話しているが、一部には「外交部内の日本専門家グループ『ジャパン・スクール』の現実だ」という話も飛び交っている。駐日韓国大使館はかつて人気の勤務地だったが、東日本巨大地震や韓日関係悪化などで人気が大幅に落ちているという意味だ。
 ある元外交官は「日本勤務は慰安婦問題などの敏感な懸案で苦しめられるばかりで、良い評価は得られないという認識が多い」と語った。事実、現政権発足以降、「ジャパン・スクール出身者は韓日慰安婦合意に加わった」という理由などから人事上の不利益を被る事例があり、そうした認識が強まったという。
 だが外交部は、日本だけの問題ではないと考えている。外交部関係者は「今年上半期に中国と欧州連合(EU)、今回は経済協力開発機構(OECD)などでも志願者が募集人数に達しない事例が出ている。育児休業などで本部の勤務人員が減り、主な公館も全体的に志願人員が減っているためだ」と説明した。