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目が見えにくくなったとお悩みの方へ(続)

2018.10.22.

3月15日付のコラムで表題の文章を記しました。3月15日の時点では、斜視であることが分かり、プリズム入りの眼鏡をあつらえることで問題が解決するという超楽観的(今にして思うとですが)結論を下していました。しかし、「世の中はそれほど甘くはない」ことをその後思い知らされて今日に至っています。私と同じような悩みを抱えておられる方も少なくないと思うので、その後の経緯を参考までに記します。

 近距離用のプリズム入り眼鏡はしばらくの間は快調でした(途切れなくコラムを更新できたのはそのおかげです)。しかし、9月頃から再び文字が二重になる現象が現れ始めました。しかも、近距離では横(左右)の斜視だといわれていたのが、今は縦(上下)」に二重、三重になるのです。したがって、パソコンでの作業も2~3時間たつと疲れがたまり、見えにくくなってしまいます(ちなみに最近、コラム更新のペースがガタッと落ちているのはそのためです)。
遠距離用のプリズム入り眼鏡もしつらえましたが、こちらはモノが二重、三重に見える現象はまったく解消しませんでした。右目の方は比較的問題がないのですが、左目の方がだめなのです。しかも、右目よりも左目の方がモノを濃く認識するため、両眼でモノを見る場合には、左目の方の像が支配してしまい、結果としてモノは二重、三重になるというわけです。
私はもちろん、以上のことについて斜視と診断してくれた専門家と相談しました(医者は取り合ってくれそうになかったので)。ところが彼女は、「片目でモノが二重、三重に見えることはあり得ない」と断言し、その原因としては脳に問題がある可能性もあるからMRIを撮ってもらった方が良いとアドバイスをくれました。私は近くにある脳神経外科でMRIを撮りましたが、「特に異常はない。そういう問題は眼科で見てもらうことだ」と言われました。要するに玉突き状態になったわけです。
そこで私はネットでモノが二重、三重に見えることについて何か手がかりはないかと検索してみました。すると、いとも簡単に「複視」という症状について専門家が詳しく解説していることを見つけました。それによると、複視の原因は様々で、最悪の場合は重症筋無力症(難病指定)の初期に現れる特徴的な症状であることを知りました。ちなみに、複視の原因は様々であるといいましたが、緑内障や、白内障の場合でもマレに複視になる場合があると書いてあります(私は眼科医に何度も白内障のせいではないかと訴えたことがあるのですが、彼は「白内障はありますよ」と言うだけでした)。複視の場合にかかるべきは脳神経内科であることを知り、多摩地域で脳神経内科外来を受け付けているTセンターにかかることにしました(予約に紹介状が必要ということで、長年のかかりつけのホーム・ドクターに紹介状を書いてもらいました)。
Tセンターにかかった期間は6月から10月初までの約4ヶ月でしたが、結論的に言いますと、重症筋無力症の最大の原因を調べる血液検査の結果は陰性、脳の血管に関するMRIでも異常は見られずということで、神経眼科に回されました。医者にかかる前に綿密な視力検査が行われ、モノが二重、三重に見える原因は乱視の調整がうまく行われていないからではないか、という所見をもらいました。しかし、神経眼科医はとんでもない人物で、モノの2,3分もしないで「私の所見はあなたがかかっている眼科医師と同じです」と言うのです。あまりの言い草に私は呆然としました(眼科医が何もしてくれないからTセンターに来たというのに)。その後、神経内科医とのアポを取り付けてあったので、「視力を調整するセンターの担当眼科医を紹介してほしい」と頼んだのですが、「私は眼科の専門ではないので、紹介はできない」と言われました。結局、この4ヶ月間でも問題は解決しなかったというわけです。
まったく「万事休す」だったのですが、たまたま久しぶりに一緒した兄から、「斜視の名医を知っている」という話を聞きました。「灯台もと暗し」でしたが、早速訪れました。視力検査、斜視検査、さらには緑内障に関する検査と、これまでかかっている眼科とは「月とすっぽん」の迅速かつ見事な対応をしてくれて、その上でくだんの名医さんが診てくれて、結論として「これは白内障のせいだろう」と診断しました。しかも、白内障の手術では日本有数(これは、後にかかりつけのホーム・ドクターから聞いた話)のI眼科のT先生宛の紹介状をすぐに用意してくれました。これまたあっけにとられる展開でした。
I眼科には11月初にアポが取れました。これまでの紆余曲折は何だったのかと砂をかむ味気ない思いをしています。私の兄も白内障の手術を経験しており、術後は「世界がまるで別物のように見えて感動した」という体験談をしていました。白内障の手術を受けた人はゴロゴロいるわけで、何で私はこんなに回り道をしなければならなかったのだろうと思います。他方、これまでの苦い経験から、「まだこれからも紆余曲折が待ち構えているかもしれない」という弱気が顔をのぞかせます(今後のことについては、また結果を踏まえてご紹介するつもりです)。
以上、長々と書き連ねましたが、私が最後に特筆大書したいのは、「複視を自覚したら、ためらわず神経内科にかかってください」ということです。重症筋無力症の患者は全国に2万人弱だといいます。私がかかった神経内科医も数人の患者を診ていると言っていました(私の場合も、最大の原因について調べる血液検査は陰性でしたが、他の原因による場合もマレにあり得るから、何かあったら再診を受けるようにと言われています)。かかりつけの眼科医が複視に関してまったく無反応だったことは信じられないことですが、いわゆる「町医者」のレベルはそんなものなのかもしれませんので、「複視を自覚したら直ちに行動を」と申し上げます。