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中日関係の現状と課題(環球時報社説)

2018.09.03.

9月3日付の環球時報社説「中日、相互消耗を収束してプラスの関係へ」は、中日財務相対話、王毅外交部長の二階幹事長との会見を受けて、安倍首相が2日の産経新聞とのインタビューで、日中関係が「完全に正常な軌道に戻った」と述べたことを紹介、さらに、日本メディアの報道を紹介する形で、中日平和友好条約締結40周年の10月に安倍首相が訪中する可能性に言及した上で、中日関係の現状、底流を流れる問題、そして今後の課題について論じています。環球時報社説が示す他者感覚の確かさにはしばしば感服させられる私ですが、日中関係に関する今回の社説の内容に示された、日本の対中姿勢の底流に流れる矛盾と葛藤に関する分析・判断には舌を巻きます。日中関係の今後の課題についての社説の提起に対しても私はほぼ全面的に同感です。ということで、社説の要旨を紹介します。

 中日交流が活発化しようとしていることは、長年にわたる緊張からの自然な回復であるとともに、トランプ政権の「アメリカ第一主義」政策という外部的推進要因もある。現在の中日関係が「完全に正常な軌道に戻った」というのはいささか言い過ぎだが、両国が正常な国家関係に回帰することは大きな趨勢だろう。
 日米同盟による牽制、中日がアジアの二強であることから、日本の対中戦略的思考はきわめて複雑だ。加えて釣魚島及び歴史問題があり、中日関係が安定した友好関係になるのはきわめて難しく、長期的課題となる運命である。
 しかし、中日関係を激動に委ね、両国の外交全体におけるコストを高めるという「共に傷つく」事態は過去数年で十分に検証された。正常な関係を回復することは、今や中日共同の願望、必要という戦略次元の課題であり、その重みは両国間の様々な摩擦の影響という重みに勝るものだ。
 中国社会における日本に対する見方のほとんどは根の深い懸念に由来する。その懸念とは、この隣国はある日再び清末から1940年代にかけての凶悪な日本となって、中国の国家的安全を再び脅かす挑戦者となる可能性があるのではないかということだ。しかしながら、中国の持続的発展にしたがい、中国の総合的国力は次第に日本を大きく引き離していくだろうから、このような懸念は弱まりつつある。このことは、我々が中日間の伝統的摩擦をコントロールする措置を主動的に講じる上での強大な心理的基礎を提供している。
 日本の対中心理にはいくつかの問題がある。一つは国力で中国に追いこされたことに納得がいかないことだ。二つ目は中国に報復され、制圧されないかという心配だ。三つ目は強者崇拝で、アメリカ側に立つ方がいっそう保険になると考えていることだ、等々。しかし、中国の台頭が現実になるにつれ、日本が中国に対する思考を調整することになるのは必然である。なぜならば、「聯米抗中」は日本長期的利益に合致しないからだ。
 日本の最大の利益は間違いなく中米の間で相対的中立を維持することであり、一方に従ってもう一方と事を起こすということではない。韓国もアメリカの同盟国だが、韓国の対中政策は日本のこれまで数年ほどに極端ではない。日本の対中姿勢が徐々に「韓国化」する可能性は存在する。
 中日の実力差は今後さらに拡大することは間違いない。そのことは、日本がますます中国を恐れ、そのためにアメリカの太ももにしがみつき、そのことでワシントンに「忍の一字の恥ずかしめ」を受けることも厭わないようにする可能性がある。しかしまた、日本が戦略的理性を養い、中米間で「バランス外交」を行うことを促す可能性もある。中国としては後者の可能性を追求するべきだ。
 現在安倍政権は中日関係を回復する積極性を示しているが、日本の態度は定まっているというにはほど遠い。中日関係の緩和は寒暖をくり返し、将来的に様々な変数が存在する。
 中日間の問題でもっとも重要なことは多分、心理的に互いに適応できないということであって、国家的利益が本当に互いに相容れないということではないのかもしれない。中国がますます強大になるに従い、中日間の権力闘争という命題は虚構になるだろう。中日の共同の利益がますます実となるだろう。中日の共同の利益には、両国が経済上の協力を強め、双方の衝突を利用してアメリカが「漁夫の利」を得ることがないようにすることが含まれる。「和すれば両利、闘わば両傷」。中日関係におけるこの警句は、ますます多くの人によって認識され、深い確信となりつつある。
 一定の期間の消耗戦を経た今こそ、中日戦略的互恵関係を真に回復する重要なチャンスである。中日両国はさらに多くのインテリジェンスそしてさらに大きな矜恃をもってこの転換を成し遂げ、中日関係が両国の外交全体においてマイナス要因からプラス要因に変化するようにするべきである。