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「朝米首脳会談と韓国人の周辺国認識」報告書

2018.07.09.

韓国の研究所が発表した、韓国人の朝鮮及び金正恩に対する認識が非常に好転しているという結果が示されました。これは、7月6日付のハンギョレ・日本語WSが報じたものです。金正恩に対する好感度は安倍晋三に対するものの2倍、また、朝鮮に対する好感度も中国、日本を上回ったとあります。
 今年に入ってからの金正恩・朝鮮のめざましい外交攻勢に対する韓国人の意識変化も目を見張るものがあることが分かります。寡聞にして、日本国内で類似の世論調査が行われたことは承知しておらず、したがって日本人の金正恩及び朝鮮に対する認識にどのような変化が生まれているのか(生まれていないのか)は知るすべがないのは残念なことです。
 ハンギョレ記事を紹介します(原文は図表入りなのですが、ハングル表記なので省略します)。

韓国人の好感度、金正恩は安倍の2倍
 朝米首脳会談以後、金正恩北朝鮮国務委員長とドナルド・トランプ米大統領に対する韓国人の好感度が大きく上がったことが分かった。北朝鮮に対する好感度も急騰し、中国と日本を超えたと調査された。
 峨山(アサン)政策研究院が5日に発表した「朝米首脳会談と韓国人の周辺国認識」報告書によれば、金正恩委員長に対する韓国人の好感度は、安倍首相(2.04点)より二倍高い4.06点を記録した。このような結果は、峨山政策研究院がリサーチアンドリサーチに依頼して先月18~20日に全国の成人男女1000人を対象にした電話世論調査(95%信頼水準に標本誤差±3.1%p)とあらわれた。周辺国の指導者に感じる好感度(0~10点)を聞いた結果、昨年11月に底を打った金委員長の好感度(0.88点)は、今年3月2.02点に上がり、今回再び2倍以上騰がったと調査された。研究院側は「指導者好感度調査を始めた2013年以来、金正恩委員長の好感度が1点台前後であった点を考慮すれば、驚くべき結果」として「金正恩委員長が今年初めから対北朝鮮制裁から抜け出すために対話に積極的に取り組んで起きた変化」と解釈した。
 韓国人が最も好感を感じる周辺国の指導者は、トランプ大統領(5.16点)だった。3月(3.76点)に比べてトランプ大統領の好感度も明確に上昇した。朝米首脳会談でトランプ大統領に対するイメージが改善されたとみられる。
 一方、習近平中国国家主席に対する韓国人の好感度は3.89点で、昨年11月(4.02点)と今年3月(3.29点)に比べて大きい変化は見られなかった。同じ期間に安倍晋三日本首相の好感度変化はさらに微小だった。昨年11月の2.04点から今年3月には1.79点に落ちた安倍首相に対する好感度は、6月調査で2.04点を記録した。
 周辺国に対する好感度も大きくは変わらなかった。回答者が最も好感を感じた周辺国はアメリカ(5.97点)で、北朝鮮(4.71点)がそれに続いた。研究院側は「北朝鮮の好感度が4点台を超えたのは、周辺国好感度調査を始めた2010年以来初めて」とし「北朝鮮に強硬な態度を見せた保守層でも、北朝鮮好感度は4.32点で高かったということも興味深い結果」と評価した。調査の結果、中国と日本に対する好感度はそれぞれ4.16点、3.55点とあらわれた。北朝鮮の好感度が中国より高く調査されたのは今回が初めてで、日本を超えたのも約4年ぶりだ。
 6・12シンガポール朝米首脳会談に対する韓国人の評価も高く表れた。10人中7人は「朝米首脳会談が成果を上げた」(71.8%)と答え、「成果がなかった」という回答者(21.5%)より圧倒的に多かった。敵対国だった朝米の首脳が初めて会ったという点が肯定的評価の要因にあげられた。ただし年齢帯別に見れば、朝米首脳会談の成果に対する肯定的回答が相対的に20代の女性(59.7%)で少ないことが調査された。
 「北朝鮮の非核化の可能性はない」という認識は、会談前(3月・23.7%)から会談後(6月・10.2%)に半分以下に減った。同じ期間に北朝鮮の非核化に予想される所要期間は、10.9年から6.5年に短縮された。
 回答者10人中6人は「北朝鮮が合意をちゃんと履行するだろう」と見通した。研究院側はこのような展望が対北朝鮮信頼度と関連があると指摘した。2013年の調査で「北朝鮮を対話相手として信頼できる」という回答者は10.7%に過ぎなかったが、今回の調査では54%に高まった。一方、「北朝鮮を信頼できない」という応答は85.1%(2013年)から43.5%(2018年)に半減した。
 多くの回答者は、南北関係(83.2%)と朝米関係(76.7%)が今後「良くなるだろう」と見通した。文在寅政府の対北朝鮮政策に対しては、72.3%が「満足」と答えた。
 研究院側は「多くの韓国人が現状況を肯定的に見ていたが、年齢帯別では視角の差が存在した」として「相対的に20代は北朝鮮(3.95点)と金正恩委員長(3点)に低い好感を示し、北朝鮮を信頼しない方(54.4%北朝鮮不信)だった」と明らかにした。韓米合同演習の中断に対しても、回答者の賛成が51.9%で反対(44.2%)より高い中で、20代は反対(58.4%)意見が賛成(39.1%)を上回った。研究院側は「新しい南北関係を確立しなければならない重要な時期をむかえることになった以上、文在寅政府は20代の対北朝鮮認識に注意を注がなければならない」と指摘した。