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朝米首脳会談の見通し(韓国メディアの分析・報道)

2018.05.16

6月12日にシンガポールで開催することが決まった米朝首脳会談における中心テーマは、トランプ大統領が追及する速戦即決及びCVID(完全、検証可能、非可逆な非核化)による朝鮮の非核化実現と金正恩委員長が堅持する朝鮮の安全保障を確保する基礎(休戦協定の平和協定への転換と米朝国交正常化)の上での朝鮮半島の非核化実現との間で、果たして折り合いをつけた妥協案を見いだすことができるかどうか、そしてその妥協案はいかなる内容のものになるか、という点にあることは間違いありません。
 この点について、韓国・メディアは様々な興味深い観測・分析を行っています。特に、5月9日付ハンギョレ・日本語WSは、次の図表を掲げつつ、アメリカ及び朝鮮の立場について、以下のような見方を示しました。


<アメリカの立場>
 「非核化過程を細かく分けない」(マイク・ポンペオ米国務長官)
 「不十分な合意は受け入れられない」(ボルトン・ホワイトハウス国家安保補佐官)
 米朝首脳会談を控え、ドナルド・トランプ米大統領の外交・安保の中心人物らが一斉に「見返りのない北朝鮮の広範囲な非核化」を強調した。ポンペオ長官は8日の平壌行きの飛行機の中で、ボルトン補佐官は同日のトランプ大統領のイラン核協定脱退宣言直後、ホワイトハウスで北朝鮮に照準を定めた。いずれも前日、北朝鮮が中国との首脳会談で再確認した「段階別、同時的処置」を一蹴する発言だ。
 ポンペオ長官は「我々は、過去に歩んだ道を踏襲しない。私たちは目的を達成するまで制裁を緩和しない」と述べた。北朝鮮の非核化という目標を達成するまで、段階別措置には見返りを提供しないということだ。彼の訪朝が朝米首脳会談の議題を最終的に調整するためと見られることから、米国の態度が依然として頑固であることがうかがえる。ポンペオ長官は「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)を重ねて強調した。
 一方、ボルトン補佐官は、米国のイラン核協定の脱退に北朝鮮に向けたメッセージが盛り込まれていることを明らかにした。彼は「今日の脱退はこれから北朝鮮との会談にも影響を及ぼすだろう。不十分な合意は受け入れられないという明らかなメッセージを送った」と述べた。米国がイラン核協定の問題点として指摘する要素を、北朝鮮との交渉では除去するということを示唆する。トランプ大統領は大統領選挙候補時代から、イランの核協定を「最悪の契約」だと非難してきた。特に、イランの核能力の制限を10~15年に限定した「日没規定」に強い不満を示した。米国はイランの核協定の問題として、弾道ミサイル関連内容が盛り込まれておらず▽核プログラムの平和的利用に対する検証が不可能であり▽軍事基地の査察を制限しているという点を指摘してきた。
 米国は北朝鮮の核廃棄の対象に過去と現在はもちろん、未来の核物質まで含む可能性を示唆した。ボルトン補佐官は特に「我々が要求しているのは、北朝鮮が1992年の朝鮮半島非核化共同宣言に立ち戻り、核燃料サイクルの始まりと終わりの両方を除去すること、すなわちウラン濃縮やプルトニウム再処理を放棄すること」だと強調した。南北は非核化共同宣言で、核兵器の試験、製造、生産、受付、保有、貯蔵、配備、使用を行わず、核再処理施設とウラン濃縮施設を保有しないことで合意した。ボルトン補佐官はこれに先立ち、「すべての核兵器や弾道ミサイル、生物化学兵器と関連プログラムを含む北朝鮮の大量破壊兵器の完全かつ永久的な廃棄」を求めた。  朝鮮半島非核化共同宣言は平和的核利用の権利を認めている。ボルトン補佐官がこれを受け入れたものかは定かではない。米国は2005年「6カ国協議共同声明」(9・19共同声明)を生み出した6カ国協議で、北朝鮮の平和的核利用も認めない方針を貫いたが、反発に直面して譲歩した。米国にとっては不十分な合意だったと言える。
 米国がこのように「過去に歩んだ道」を「不十分な合意」と見なしているのは、北朝鮮との交渉を以前とは異なるスタートラインから始めるためと見られる。過去の合意を失敗と見て、北朝鮮と新たな合意を結ぼうということだ。米国務省関係者は「過去の過ちを繰り返さないため、非常に留意している。これは、新しくて大胆なアプローチを必要とする。それに及ばないのは、いかなるものであれ過去の過ちを繰り返すだけだ」と話した。北朝鮮としては以前よりはるかに複雑化した米国の要求に直面しているわけだ。
<朝鮮の立場>
 朝米首脳会談を控えて40日ぶりに電撃的に再会した北朝鮮の金正恩国務委員長と中国の習近平国家主席の「大連会談」の結果と関連して、北朝鮮の朝鮮中央通信の8日夜の報道には意味深長な内容がある。金委員長が習主席との首脳会談で、朝鮮半島周辺の情勢推移を分析・評価し▽戦略的機会をしっかりつかみ▽朝中間の戦術的協力を強化するための方法論的問題を話し合ったということだ。「戦略的機会をしっかりつかみ」とは、金委員長がなんとかしてトランプ米大統領との会談を成功裏に終えるという意志を示し、「方法論的問題」とは、金委員長がトランプ大統領との談判に先立ち具体的な交渉および情勢管理の方案を習主席と相談したという意味と見ることができる。中国外交部の耿爽報道官は9日、金委員長の今回の訪中は「北朝鮮側が提案したこと」だと話した。
 朝鮮中央通信は、金委員長が明らかにした「方法論的問題」が具体的に何かは公開しなかった。だが、中国官営の新華社通信の会談結果報道によれば、「金正恩式解決法」の仕組みが表われている。
 まず、金委員長は「朝鮮半島非核化の実現は朝鮮の終始一貫した明確な立場」と再確認した。3月末の朝中首脳会談、4・27南北首脳会談板門店宣言の「完全な非核化」と「核なき朝鮮半島」の確約の再確認だ。「非核化意志」を疑うなというメッセージだ。さらに金委員長は「関連国が朝鮮に対する敵対視政策と安保脅威をなくしさえすれば、朝鮮は核を持つ必要がなく、非核化は実現可能だ」と強調した。「完全な非核化」は、米国の体制安全保障(敵対政策と安保脅威解消)と等価交換の対象だという意味だ。「北朝鮮の完全な核廃棄以前には補償はない」という米国強硬派に向けたメッセージだ。
 さらに金委員長は、以前より具体的に構想を明らかにした。「朝米対話が作る相互信頼を通じて、関連各国は責任をもって段階的・同時的措置を取り、半島問題の政治的解決プロセスを全面的に推進し、最終的に半島の非核化と持続的平和を実現することを希望する」。まず「対話を通じた相互信頼」を、朝米双方が今まで行ったことのない旅程の案内灯として提示した。これまでに取った行動である、核・大陸間弾道ミサイル試験発射中止▽北部(豊渓里)核実験場閉鎖と外部公開▽米国人抑留者の釈放などが、"相互信頼"を重ねるための北側の善意であることを婉曲に強調したわけだ。したがって米国側も「信じることはできない」とだけオウムのように繰り返して言うなという訴えでもある。
 「段階的、同時的措置」は、金委員長が3月末の朝中首脳会談の時から明らかにしてきた朝米懸案解消の方法論だ。「等価物の同時交換」方式だ。これに対して「北朝鮮が少し出しては多くを得ようとするサラミ切り式の引き延ばし戦術を使っている」という批判があるが、全く異なる解釈もある。イ・ジョンソク元統一部長官は「トランプ大統領だけでなく金委員長も非核化プロセスを圧縮して進めたいと考えている」とし、キム・ヨンチョル統一研究院長は「早期の非核化を望むならば、相応措置のスピードを速めろという意味」と指摘した。
 これと関連して金委員長は「半島問題の政治的解決プロセスを全面的に推進」するなら、北側の非核化措置と米国側の関係正常化措置をかみ合わせようという提案を出した。キム・ヨンチョル院長は「関係の性格が変われば、核問題は自然に解決されるという意味」だとし、「重要なことは関係の性格を変えること」と指摘した。「政治的解決プロセス」が6カ国協議を念頭に置いたものかもしれないという見方もある。

さらに5月11日付のハンギョレ・日本語WSは、9日に行われた金正恩委員長とポンペオ国務長官の会談によって米朝間の隔たりがかなり埋まった可能性があるとする以下の分析を掲載しました。

 9日、北朝鮮の金正恩国務委員長とポンペオ国務長官の2度目の"電撃面会"以降、朝米首脳会談に対する楽観論が再び頭をもたげている。ポンペオ長官の訪朝以降、朝米双方から公的的なシグナルが送られている。会談の日程・場所だけでなく、核心議題をめぐる隔たりをかなり埋めたものと見られるのも、そのためだ。
 まず、北朝鮮が朝米首脳会談が準備されていることを内部に初めて公式化した。朝鮮労働党中央委員会の機関紙「労働新聞」は10日付の1面全面にわたり写真8枚を添えて、金委員長とポンペオ長官の面会事実を伝えながら、「(ポンペオ長官が)朝米首脳会談の準備に向けて我が国を訪問した」と報じた。北側がメディアを通じて朝米首脳会談に言及したのは今回が初めてだ。
 金委員長は「来る朝米首脳の対面と会談が朝鮮半島の肯定的な情勢発展を促すと共に、素晴らしい未来を建設するための大きな第一歩を踏み出す歴史的な対面になるだろう」と述べたと、「労働新聞」が報道した。金委員長は「トランプ大統領の口頭メッセージを聞いて、大統領が対話を通じた問題解決に深い関心を持っていることについて高く評価すると共に、謝意を表した」という。
 「朝鮮中央テレビ」は、金委員長が「(トランプ大統領が)新たな代案を持って」おり、「朝米首脳の対面に対する積極的な態度」を示している点を「高く評価して謝意を表した」と報じた。初めて言及された「新たな代案」が何を意味するかにも注目が集まっている。
 特に、「労働新聞」は今回の面会で「朝米首脳会談の開催に向けた実務的な問題と、それに伴う手続きと方法が詳しく話し合われた」とし、「(金委員長が)米合衆国の国務長官と協議した問題について、満足できる合意をした」と報道じた。首脳会談の日時、場所などが確定されており、議題についても大枠での調整が行われたことを示唆したものと見られる。米国人抑留者3人を解放した事実を同紙が大々的に報道したことからも、北側の雰囲気がうかがえる。
 「議題について多くの対話をするなど、(朝米間の)隔たりをかなり埋めたようだ」(政府関係者)というのが大方の評価だ。実際、日程を終えて帰国したポンペオ長官も、前日の金委員長との面会について、「成功的会談のための環境をしっかり整えるため、いかに調整していくかについて実質的に対話する機会を持った」とし、「生産的で良い対話を行っている」と明らかにした。同日、ホワイトハウスの閣僚会議を主宰したトランプ大統領は「これ(朝米首脳会談)は非常に成功的な取引になると思う」として、(朝米首脳会談の成功を)楽観視した。慎重で有名なジェームズ・マティス米国防長官まで、朝米首脳会談と非核化交渉について、「このような交渉が有益な結果に繋がるという楽観論には理由がある」として、肯定的な見通しを示した。
 ただし、金委員長とポンペオ長官が行った「満足できる合意」の内容について、専門家らは、北朝鮮の非核化の見返りとして、「米国の核戦略資産展開の中断」から「経済制裁解除」まで様々なものが話し合われただろうと予想した。ク・カブ北韓大学院大学教授は、北朝鮮の非核化によって「(北朝鮮に対する米国の)積極的な体制安全保障に関する何かが話し合われただろう」とし、「朝鮮半島における核戦略資産の展開禁止のような具体的な軍事的措置から、平和協定、朝米国交正常化まで協議したものとみられる」と話した。キム・ジュンヒョン韓東大学教授は「ディテールまではいかなくとも、大きな枠組みのロードマップに対する合意を成し遂げたようだ」とし、「北朝鮮の核査察、現存する核計画に対する査察が終わった頃には制裁を緩和したり、2020年5月までCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)とCVIG(完全かつ検証可能で不可逆的な体制安全保障)を交換するという話をしたものと見ている」と分析した。これと関連し、外交安保分野の高官は「朝米首脳会談はあまりにも前例のないビッグゲームであるうえ、最高指導者の判断と交渉が決定的なので、まだ越えなければならない山が多い」として、多少慎重な態度を示した。

その後も、韓国メディアでは興味深い指摘をする報道があります。その中でも特に重要だと思われるものをミップアップして紹介しておきます。

<5月12日付中央日報・日本語WS「トランプ大統領が「韓半島全体非核化」発言」>
先月27日、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長は板門店宣言で「韓半島(朝鮮半島)非核化」に合意した。今度はトランプ米大統領が明らかに「北朝鮮非核化」ではなく「全体韓半島非核化(denuclearize that entire peninsula)」という表現を使った。 トランプ大統領は10日(現地時間)、ワシントン近隣のアンドルーズ空軍基地で北朝鮮が解放した韓国系米国人3人を迎え、「私が最も誇れる業績は韓半島全体を非核化する時になるだろう」とし「我々がこの道にこれほど早く来るとは誰も思っていなかったはず」と述べた。
「韓半島(朝鮮半島)非核地帯化」は、北朝鮮が1992年の韓半島非核化共同宣言協議から主張してきた。当時の非核化共同宣言に盛り込まれた韓半島内の核兵器の試験・製造・生産・搬入・保有・保存・配備・使用禁止のほか、北朝鮮は核戦略資産の韓半島展開と核の傘保障禁止はもちろん、在韓米軍の撤収など北東アジアの安保秩序を根本的に変化させる内容を要求した。
トランプ大統領の発言は8日のボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の発言と重なり「意味深長」と受け止められている。ボルトン補佐官は米国のイラン核協定離脱をブリーフィングしながら突然、「ポンペオ国務長官が北朝鮮で議論することになるのは、北朝鮮が1992年の韓半島非核化共同宣言に戻ることだ」と強調した。
<同日付同紙「米国務長官「北が早期非核化すれば韓国レベルの繁栄に協力」>
米国のポンペオ国務長官が「北朝鮮が早期に非核化する果敢な措置を取れば、米国は北朝鮮が我々の友邦である韓国と同じレベルの繁栄を達成できるよう協力する用意ができている」と述べた。ポンペオ長官は11日(現地時間)、ワシントンで韓国の康京和外交部長官と会談した後、共同会見でこのように明らかにした。
ポンペオ長官は「金正恩委員長が正しい道を選択すれば、北朝鮮には平和と繁栄で満たされた未来があるだろう」と強調した。これは米朝首脳会談の開催を控えて、北朝鮮が核さえ放棄すれば米国の積極的な経済支援が保証されるという点を具体的に表現したものであり、注目される。 特にポンペオ長官が最近、訪朝して金正恩委員長と2回目の会談をしたという点で、北朝鮮の非核化と米国の北朝鮮体制保証および経済支援などをめぐり金委員長とビッグディールがあったのではという見方も出ている。ただ、ポンペオ長官は「北朝鮮が核を保有しないということを保証するには強力な検証プログラムが要求されるだろう」と述べた。
ポンペオ長官は北朝鮮が主張してきた「段階的・同時的非核化」と米国が要求する「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄」の隔たりを狭める案を金委員長と議論したのか、今後これを解決する案は何かについては「詳細な事項は共有しない」と返答を避けた。しかし「トランプ大統領と金委員長だけでなく、文在寅大統領が望む結果について、我々には共通した点があると自信を持っている」とし「我々は我々が望むこと、この過程が完了する時期について見解を共有している」と述べた。
ポンペオ長官は「最終的な目標が何かについて完全な合意があると考える」と強調した。また「南北の首脳が板門店宣言で明らかにした非核化目標に弾みを受けた」とし「緊密に調整されたトランプ大統領と文大統領の指導力がなかったとすれば今ここまでは来られなかったはず」と話した。 ポンペオ長官は金委員長との会談内容について「我々は良い対話、実質的な対話、そして深くて複雑な問題と挑戦、金委員長の戦略的決定が含まれた対話をした」とし「我々の対話は温かいものだった」と話した。続いて「我々は両国の歴史と我々が直面した挑戦について良い対話をした」とし「我々は、米国の歴史で今は緊密なパートナーとなっている敵国があったという事実と、北朝鮮とも同じことが可能という希望について話した」と紹介した。
<5月14日付ハンギョレ・日本語WS「米国「北朝鮮が完全な非核化に合意すれば米企業の投資認める」」>
 ポンペオ米国務長官は、北朝鮮が完全な非核化に合意した場合、米国の民間企業の対北朝鮮投資を認め、制裁を緩和すると発表した。11日(現地時間)、果敢かつ迅速な非核化の見返りとして、「韓国レベルの繁栄」を約束し、具体的な見返りを公約したのだ。6・12朝米首脳会談を1カ月後に控え、「ビッグディール」に対する期待を高める発言を通じて、「最大の圧迫」から「最大の懐柔」に転じている。
 ポンペオ長官は13日、「フォックスニュース」に出演し、「米国の民間分野が(北朝鮮に)莫大な電気が必要なエネルギー網の建設の支援になるだろう」と述べた。また、米国企業が北朝鮮の基盤施設と農業投資を支援できると明らかにした。彼は同日、CBS放送とのインタビューでは、完全な非核化に合意すれば経済制裁を緩和できると述べた。米国政府が北朝鮮の非核化を前提に民間投資を認める方針を明らかにしたのは、今回が初めてだ。
 ポンペオ長官はまた、「フォックスニュース」とのインタビューで、「北朝鮮が米国の要求に応えれば、金正恩が権力を維持できるか」という質問に対し、「私たち確かな安全保障を提供しなければならないだろう」と答えた。このような発言は、北朝鮮が核を放棄する見返りとして求めている、制裁の解除などの経済的補償と安全保障に対する米国の意志を確認するものだ。
 ポンペオ長官は11日、カン・ギョンファ外交部長官とワシントン国務省庁舎で会談した後に行った共同記者会見で、「北朝鮮の金正恩国務委員長が正しい道を選べば、北朝鮮と住民たちに平和と繁栄に満ちた未来が待ち受けているだろう」と述べた。さらに、「北朝鮮が速やかに非核化を進める果敢な措置を取った場合、米国は北朝鮮が韓国と同じレベルの繁栄を達成できるよう支援する準備ができている」と明らかにした。また、「米国が韓国人を助けた歴史はどこにも引けを取らない」と付け加えた。  ポンペオ長官の相次ぐ発言は、彼が今月9日の再訪朝で金正恩国務委員長と面会して帰国した直後、ドナルド・トランプ大統領が朝米首脳会談の日時と場所(6月12日、シンガポール)を発表した後に出たもので、注目を集めている。金委員長がポンペオ長官と面会した直後、「トランプ大統領の新たな代案」と「満足できる合意」に言及しており、北朝鮮も豊渓里(プンゲリ)核実験場を5月23~25日に公開閉鎖する方針を発表するなど、肯定的なシグナルを相次いで送っている。ポンペオ長官は「私たち(自分と金委員長)は、米国の歴史においてたびたび敵国だった国が今は緊密な同伴者となった事実と、北朝鮮についても同じことを成し遂げられるという希望について話し合った」と明らかにした。
 「平和」と「繁栄」は4・27南北首脳会談の成果物である「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店(パンムンジョム)宣言」のキーワードでもある。数回の対北接触と南北首脳会談の結果を総合し、経済問題や体制保障など、北朝鮮が望んでいる部分を積極的に反映することで、「ビッグディール」に向けて進んでいくものとみられる。米国が強調する「包括的かつ一括的北朝鮮核問題の解決策」と、北朝鮮が明らかにしてきた「段階的かつ同時的な処置」の間で接点を見出していることを示唆している。
<5月15日付ハンギョレ・日本語WS「「果敢で迅速に…」北に2つの"非核化見返り"示した米国」>
 北朝鮮と米国が、首脳会談の場所と日付を「6月12日シンガポール」と確定した後、本格的な議題交渉に突入し、米国の交渉戦略が次第に輪郭を現わしている。米国の戦略は、北朝鮮が核兵器搬出などの「果敢で迅速な非核化措置」をすれば、米国も民間投資および安全保障と関連して「果敢で迅速な相応措置」を取るという"ビッグディール"と要約できる。
 マイク・ポンペオ米国務長官は13日(現地時間)、フォックスニュースとCBS放送に、ホワイトハウスのジョン・ボルトン国家安保補佐官はABCとCNN放送に出演し、首脳会談の議題に対する米国側の立場を詳細に紹介した。
 ボルトン補佐官はまず、朝米首脳会談の核心議題である「非核化」と関連して「(完全な)非核化決定の履行はすべての核兵器を除去すること、核兵器を廃棄しテネシー州のオークリッジに持っていくことを意味する」と明らかにした。これは「過去の核」と呼ばれる既存の核兵器の全面廃棄とその米国搬出を要求したものだ。この問題が今回の交渉の最大の争点であり、峠になると予想される。北朝鮮はこれまで「(敵に)武器庫を見せることはできない」として、既存の核兵器を北朝鮮安保の"最後の安全弁"と考えてきた。
 米国は既存の核兵器の搬出を北朝鮮の非核化意志に対する"リトマス試験紙"と見て、これに対する北朝鮮の同意を引き出し、首脳会談合意文に入れるという計算をしているという。ボルトン補佐官は、ここからさらにもう一歩踏み出して「それ(完全な非核化)はウラニウム濃縮とプルトニウム再処理能力を除去することを意味する」として、現在進行中の北朝鮮の核計画も除去するという意志を明確にした。
 ボルトン補佐官はまた、核とミサイル施設のすべての位置を公開することと、その施設に対する開放的査察を許容しなければならないと北朝鮮に要求した。検証方法と関連しては、濃縮と再処理施設など現在進行中の核計画については「国際原子力機構(IAEA)が役割」を果し、すでに完成された「核兵器の解体は米国がするとし、おそらく他国の支援を受けるだろう」と話した。核拡散禁止条約(NPT)体制では、国際原子力機構は核兵器の解体には参加できず、核保有国である国連安保理5カ国だけにその権限がある。
 ボルトン補佐官は続けて、弾道ミサイル、生物化学兵器、北朝鮮拉致日本人問題なども議題に上げると明らかにしたが、「非核化問題」が核心だと強調した。北朝鮮がこれまで非核化と大陸間弾道ミサイル(ICBM)を越えた議題の拡大には強く反発してきた点を考慮すれば、また別の争点になり得る。
 米国はさらに北朝鮮が度量の大きい非核化に応じれば、得られる相応措置として「韓国同様に豊かに暮らせるようにする」という経済の繁栄と体制の安全保障計画を明らかにした。
 ポンペオ長官は「私たちの企業家、冒険企業家、資本供給者の中でも最も優れた人々と彼らが持ってくる資本を(核放棄の見返りに)得ることになるだろう」と明らかにした。これは、対北朝鮮制裁の緩和または解除を通じて、米国民間資本の対北朝鮮直接投資を許容できるという言葉だと解釈できる。しかし、彼は「米国の納税者のお金を支援することはできない」として、米国連邦政府の直接財政投入はないことを明確にした。ポンペオ長官はさらに「彼ら(北朝鮮)はばく大な量の電力が必要で、インフラを開発するために協力することを望んでいる」とし、特に米国の農業と技術が北朝鮮を支援すれば「彼らは肉を食べることができ、健康な生活を送ることができる」と話した。彼は金正恩国務委員長とこうした目標を「共有している」と強調した。
 第二の"ニンジン"は安全保障だ。ポンペオ長官は「当然、私たちははっきりと安全保障を提供しなければならないだろう」とし、「この問題は過去25年間解決できなかった交換的性格の問題であった」と明らかにした。彼は「今までどの米国大統領も北朝鮮の指導部に対し、本当にこの問題(安全保障)が可能と考えさせる立場を取ったことがない」として、果敢な安全保障を北朝鮮に約束する意向を明らかにした。
 ポンペオ長官は、北朝鮮が主張する段階的・同時的解決法と関連して「金委員長は(過去とは)異なり大きく特別で以前とは違う何かがなければならないという点を認識していると考える」と明らかにした。金委員長も「果敢で迅速な交換」という大原則には同意しているという意味と捉えられる。
 非核化とこれに対する相応措置の順序と関連して、ボルトン補佐官は「私たちは(北朝鮮の)履行を見る必要がある」として「履行がなされるまでは大統領が(最大の圧迫)政策を変えるとは思わない」と答えた。「完全化非核化」に対する検証まで終えるには、相当な時間がかかるので、核兵器の搬出時点などに合わせて朝米国交正常化および制裁の緩和や解除ができるという意味だとワシントン消息筋は伝えた。