「並進路線の勝利」と「新たな戦略的路線」

2018.04.23

私は朝鮮労働党中央委員会総会の核戦略に関する部分に目を奪われすぎていて、それよりさらに重要な内容に関して中国メディアの指摘を目にするまで、不覚にも注意を払うことを怠っていました。朝総聯がメーリング・リストで紹介した今回の総会に関する報道の冒頭で、金正恩は、「経済建設と核武力建設を並進させるべきだという戦略的路線の提示した歴史的課題がりっぱに遂行された今日、わが党の前には勝利に対する確固たる信念を持って革命の前進速度をより加速化して社会主義偉業の最後の勝利を早めなければならない重大な革命課題が提示されている」と提起しています。続けて彼は、「わが共和国が世界的な政治・思想強国、軍事強国の地位に確固と上った現段階で全党、全国が社会主義経済建設に総力を集中すること、これがわが党の戦略的路線である」「経済建設に総力を集中することに対する新しい戦略的路線はもっとも科学的で、革命的な路線になる」と闡明したのです。その後も金正恩は繰り返し、「経済建設に総力を集中することに関する(対する)新たな戦略的路線」「社会主義経済建設に総力を集中することに対する新しい戦略的路線」「時代の要求とわが人民の志向を正確に反映した党の新しい戦略的路線」と言及しています。また、見逃してはならないのは、金正恩が「並進路線の偉大な勝利として締めくくられたように経済建設に総力を集中することに対する新しい戦略的路線も必ず勝利するだろう」とも述べていることです。
 以上をまとめるならば、経済建設と核武力建設の並進路線は「勝利」のうちに完成したのであり、したがってこれからは「社会主義経済建設に総力を集中すること」を内容とする「新たな戦略的路線」に向かうということになります。4月22日の新華社平壌電は「社会主義経済建設の新たな戦略路線」と端的に表現しました。つまり、並進路線のうちの「核武力(デタランス)建設」は勝利のうちに完成したので、これからは並進路線のもう一つの「経済建設」に全力を挙げて取り組むということであり、大胆にいうならば、並進路線は卒業し、経済建設路線に邁進するという決意表明であるということではないでしょうか。
 そのことを踏まえるならば、昨日(4月22日)のコラムで紹介した決定書「経済建設と核武力建設並進路線の偉大な勝利を宣布することについて」の第五項(「国の人的、物的資源を総動員して強力な社会主義経済をうち建てて人民の生活を画期的に高めるための闘争に全力を集中する」)及び第六項(「社会主義経済建設のための有利な国際的環境を用意し、朝鮮半島と世界の平和と安定を守護するため周辺国と国際社会との緊密な連携と対話を積極化していく」)とする決定は尋常ではない重みを持っていることに改めて気づかされます。
 もっと率直に、私の昨日の段階での理解不足を正直に説明しておきます。私の昨日までの理解は、今回の総会の決定は「経済建設と核武力建設の並進路線はこれからも堅持するが、これからは経済建設が主となる」ということを打ち出した、ということでした。しかし、正しい理解はおそらく「並進路線は卒業。これからは経済建設という新路線」という「路線転換」「戦略転換」を打ち出したということです。
 いずれ、金正恩の発言の詳細が発表されるでしょうから、私の以上の理解が正しいかどうかを検証することができるでしょう。しかし、私の以上の新しい理解が的外れではないとするならば、金正恩は、核デタランス廃棄に最終的に応じること(NPTへの復帰)を武器(究極的取引材料)として、アメリカとの間では休戦協定に代わる平和協定締結、米朝国交正常化による安全保障環境の確立、そして国際的には経済建設に邁進できる条件の確立、具体的には安保理制裁諸決議の撤廃・廃止を目指す戦略を構想しているのだと思います。
 以上、昨日(4月22日)のコラムの重大な認識不足について改めてお詫びします。