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朝鮮の李容浩外相のロシア訪問

2018.04.12. 04.13補筆

(補筆)
4月11日付の朝鮮中央通信は、「朝鮮とロシアの外相会談」と題する記事を掲載しました。参考までに紹介しておきます。

【平壌4月11日発朝鮮中央通信】ロシアを公式訪問中の朝鮮政府代表団団長である李容浩外相とロシアのセルゲイ・V・ラブロフ外相間の会談が、10日に行われた。
会談には、朝鮮側から代表団員と同国駐在朝鮮大使、大使館員が、ロシア側から外務省の関係者が参加した。
会談では、長い歴史と伝統を有している朝露友好・協力関係をよりいっそう発展させるのが両国人民の志向と念願に合致するということについて見解の一致を見た。
朝露外交関係設定70周年になる意義深い今年、互恵的な善隣協力関係を政治と経済など各分野にわたってさらに拡大していくことについて合意した。
会談では、互いに関心を寄せる地域および国際問題に対する意見を交換した。
ロシア側は、最高指導者金正恩委員長の平和愛好的立場と決断によって最近、朝鮮半島に緊張緩和と平和の雰囲気がもたらされたことに全的に支持するという立場を表明した。
李容浩外相は9日、ロシア安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記に会った。

朝鮮の李容浩外相は4月9日-11日にロシアを訪問し、10日にラブロフ外相と外相会談を行いました。ロシア外務省英語版WSは、8日付で同外相の訪ロに関する紹介コメントを掲載し、10日付でラブロフ外相の冒頭発言及び会談後の記者会見における発言と記者からの質問に対する回答を掲載しました。注目されたのは、本年10月12日が両国の外交関係成立70周年に当たるので、さまざまな行事が企画されていることが紹介されたことです。また、安保理制裁決議の枠内でではありますが、両国の経済関係についても取り上げられたのも注目に値することだと思います。8日付の紹介コメントにもいくつかの注目点がありますので、合わせ紹介します。

<外相会談におけるラブロフ冒頭発言>
 ロシアは朝鮮(DPRK)との隣国関係を発展させる強い決意だ。2018年10月には外交関係設立70周年を記録する。同僚たちが祝賀行事のプログラムを調整している。議会間の結びつきは強くなっており、我々はそれを評価している。2017年4月及び11月に、北朝鮮との議会友好グループが平壌を訪問し、同年11月には北朝鮮の最高人民会議常任委員会副議長のアン・ドンチュン氏を招待した。
 貿易経済科学技術協力に関する政府間委員会は精力的に仕事をしている。数週間前の3月に、委員会は第8回会合を招集した。達成された諸合意により、相互の交流及び合同プロジェクトの実行の効率が高められるだろう。
 我々は、南朝鮮のパートナーの協力に関する用意が表明され次第、北朝鮮との3国間プロジェクトを実施する用意がある。
 我々は緊密な政治対話を行ってきた。あなたと私は常時接触しているし、2017年8月のマニラでのASEANNの会議の傍らで会合した。
 ロシアは北朝鮮に対する人道援助を引き続き提供する。
 我々は、朝鮮の独立を防衛して亡くなったソ連の兵士たちの墓及び記念碑を北朝鮮の指導部及び人民が維持していることに感謝している。
 今日の話し合いでは、2国間問題及び朝鮮半島情勢及び北東アジアの平和と安全を含む地域及び国際問題について突っ込んだ議論を行いたい。
<記者会見でのラブロフの冒頭発言及び質疑応答>
(冒頭発言)
 我々は二国間関係について長時間話し合った。2018年は外交関係樹立70周年に当たる。我々は、ロシアと北朝鮮で行われる極めて目を見張る内容の行事計画を承認した。
 我々は両国間の貿易経済の結びつきの状況についてレビューした。3月に行われた貿易経済科学技術協力に関する政府間委員会は、安保理決議を考慮しつつ、両国の貿易経済協力を拡大できる特定の課題について議論した。双方は、所与の条件の下で行動する必要性と、その下でも可能性があることを了解した。
 我々は文化的及び人道的な結びつきについて議論した。総じて言えば、我々の協力はかなり良いレベルにあるということに同意した。
 我々はかなり突っ込んで朝鮮半島核問題を議論した。我々は、情勢が次第に正常化に向かっていること、相互の脅迫がなくなったこと、そして北朝鮮と南朝鮮及び北朝鮮とアメリカとの間の接触を維持しようとする意思があることを歓迎することを再確認した。
 我々は、「地上」での実際の歩みは、緊張をエスカレートさせず、話し合いのための条件を作り出そうとする昨年のロシアと中国が提起したロードマップに沿っていることに留意した。このプロセスは、朝鮮半島の平和と安全(北朝鮮と南朝鮮の指導者が述べたように、世界の重要な地域である朝鮮半島の非核化を含む)を保障する北東アジア諸国間の多国間協定を生み出すことを目的としている。
 我々はまた、国連その他の国際機関における協力問題についてもレビューした。
 李容浩外相は私の平壌相互訪問を招待した。我々は彼の招待を受諾した。
(質疑応答)
Q 70周年を祝うという。様々なレベルでの積極的な接触に言及した。話し合いでは首脳会合を議論したか。金正恩は訪ロするか。プーチン大統領は北朝鮮に対する相互訪問を行うか。
A 今日はそれらの問題は話さなかった。両首脳は普段からメッセージを交換している。両者が都合の良いとき、個人的接触について議論するだろうことは確かだ。
Q 北朝鮮の非核化の取引の可能性については議論したか。交渉相手としてのアメリカの信頼性に対する疑念を北朝鮮側は表明したか。トランプ大統領は、イランとの取引を一方的にキャンセルすると脅迫している。6者協議再開及び露中イニシアティヴを含め、朝鮮危機解決について特別な段取りを議論したか。
A 露中ロードマップについて話したが、この中には着実に段階を踏んで終結局面に向かうことが含まれている。終結局面とは、朝鮮半島の非核化を含む北東アジアの平和と安全を保障する多国間協定のことだ。金正恩個人を含む北朝鮮指導者は、北京での話し合いでもこの原則を再確認した。当然のことながら、我々はこうしたステップを歓迎する。それとは別に、この問題は複雑だということだ。非核化の枠組みのもとでDPRKの合法的な関心と安全とを確保するためには、非常に強力な協調と保障とが必要となるのは必定だ(Ensuring the lawful interests and security of the DPRK in the context of denuclearisation is bound to require very strong coordination and guarantees)。
 イランの核計画及びそのことで起こっていることについては話し合わなかった。JCPOAについて起こっていることを考えれば、朝鮮半島に関して話し合われる保障は鉄壁で一分の隙もない(ironclad)ものでなければならない。…6者協議は、北東アジアの安全と非核化は地域のすべての国々に関わるから、それらの諸問題を議論するのに適した方式だ。
Q 最近のメディアの報道によれば、中国がアメリカに対し、DPRKに関する話し合いを4者協議、すなわちロシアと日本を抜きにして行うことを提案したという。話し合い再開の見通し及びロシアが参加することについてどう考えているか。
A それは2週間ほど前の噂だろう。4月5日に中国の王毅外相がモスクワを訪問した時、我々はそのことについて質問した。我々はそれが本当かどうかを尋ねた。彼はきっぱりとその噂を否定し、「混水摸魚」の企みだと形容していた。だからそんなことはなかった。中国側はそんな計画はないと保証した。
<ロシア外務省情報プレス局コメント>
 外相会談では、政治対話の発展及び貿易経済協力を含む二国間協力を議論する予定だ。話し合いには、北東アジアの平和と安定を維持する上で重要な要素である、ロシアとDPRKの間の外交政策の相互交流(interaction)が含まれる。…
 来たるべき話し合いにおける重点は、朝鮮半島情勢及び問題解決の方途に関する意見交換となるだろう。朝鮮半島における核その他の問題は、ロシアと北朝鮮との間の協力を妨げている深刻な要素であり続けている。ロシアは、制限に関するもの及び朝鮮半島の核その他の問題を政治的外交的に解決することに関するものを含め、安保理関連諸決議に従うことを支持している。この関連で、我々は南北の和解及び関係の正常化並びにアメリカとの直接対話(これらはロシアが提案して、中国が支持しているロードマップに含まれている)を目的とする北朝鮮指導部の行動を支持している。この分野における最終的結果は、朝鮮半島情勢の包括的解決と北東アジアにおける持続的な平和と安全のメカニズム創造とであるべきだ。
 両外相はまた、3月21-22日に開催された貿易経済科学技術協力に関する政府間委員会第8回会合の結果に基づき、貿易経済協力の発展についても議論するだろう。その中では、韓国のパートナーを巻き込んだ3国間フォーマットを含む合同プロジェクトの分野及び可能性に関する交流を増やすことも議論されるだろう。
議論される項目の一つは、外交関係70周年を記念する準備についてだ。共同企画、相互訪問の計画が議論される予定だ。(以下、これまでの議会間交流、政府間交流などの詳細紹介)
 ロシアはDPRKの伝統的な貿易経済パートナーである。国際的制裁及びいくつかの国々がとった違法で一方的な制裁により、二国間の経済的結びつきのさらなる発展が難しくさせられている。2017年の両国の貿易額は77.9百万ドルで、対2016年比+1.3%だった。
 ハサン(ロシア)-羅津(DPRK)間で再建された鉄道及び羅津港第3埠頭の共同運営は重要な二国間プロジェクトだ。DPRKに関する安保理決議は、DPRK経由のロシア産石炭のトランジットに関わるハサン-羅津プロジェクトには適用しないと明確に述べている。…
 二国間経済協力にとって相互に利益がある一つの分野はシベリア及び極東における労働力不足を補うためのDPRKの人的資源を活用することだ。安保理決議2397を議論した際に、ロシアは北朝鮮労働者の即時本国帰還に対して断固反対した。2017年9月11日に契約期限が切れるDPRKの労働者は、さらに2年間滞在でき、契約上の義務を完了した後にロシアを離れることになっている。…
 ロシアは、国際機関を経由するものを含め、DPRKに対して人道援助を通常的に行っている。2017年には、国連のWFP(世界食糧計画)を通じて3100トンの小麦粉を提供した。
 教育及び文化協力も進展している。ロシア平和財団が平壌外語大学に設立したロシア・センターは2009年から成功裏に運営されている。RUSSIA STUDYプログラムの一環として、2017/2018学暦年にはDPRKの学生に30の場所が確保されている(費用はロシア連邦予算)。