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朝鮮半島問題に関する中露外相会談

2018.04.07.

4月5日、習近平主席の特使として訪ロした王毅国務委員兼外交部長はラブロフ外相と会談しましたが、同日の中国外交部WSは、会談後の共同記者会見の席上、記者の質問に答えた王毅の朝鮮半島情勢に関する発言を伝えています。
王毅が言う中ロ間の「新たな共通認識」とは、金正恩が(体制の安全保障と引き替えに)非核化の用意ありという意思表明(文在寅大統領特使代表団及び習近平との会談)をするという朝鮮半島情勢の新たな展開を踏まえ、①「半島核問題を如何に政治的に解決するか。まずは非核化という大方向を堅持することだ。半島の非核化は半島に関係する問題を解決するマスター・キーであり、半島が長期にわたって安定に向かうマスター・コースである。各国はこの大方向を堅持して動揺することがあってはならない。」として朝鮮半島の非核化を前面に押し出したこと、及び②それを従来の中露の立場である「ダブル・トラック同時並行」、そして「ステップを踏み、同歩的に進み、一括して解決するという進め方」とセットにして提起したこと、の2点にあると思います。
 以上の発言の斬新さと提案の突っ込みの深さは、昨年(2017年)7月の習近平訪ロの際に発表された「朝鮮半島問題に関する中国外交部とロシア外務省の共同声明」の相当部分における抽象性と比較すれば直ちに明らかです。そこでは次のように述べていました(2017年7月9日のコラム参照)。

4.双方は、国際核不拡散体制を断固として擁護し、朝鮮半島非核化の目標の実現を堅持する。安保理関連決議は全面的かつ完全に実行されるべきである。双方は関係諸国とともに、対話と協議を通じて各国の関心についてバランスをとって解決することを推進するべく引き続き努力する。
 双方は、朝鮮の合理的な関心は尊重されるべきであることを重ねて表明する。他の諸国は、交渉再開のためにふさわしい努力を払い、平和的相互信頼の雰囲気を共同して作り出すべきである。
 双方は、各国が「9.19共同声明」が詳述した誓約を遵守し、半島問題を全面解決する対話プロセスを速やかに再開することを呼びかける。軍事手段は朝鮮半島問題を解決する選択肢とするべきではない。

以上を踏まえて、4月5日の王毅発言を紹介しておきます。

 王毅は次のように述べた。中露はともに朝鮮半島の隣国であり、6者協議のメンバー国でもあって、半島の平和と安寧は中露両国の利益と不可分に結びついている。近年、中露は互いに協調して半島核問題の平和的解決推進のために倦むことのない努力を行い、現実的かつフィージブルなロードマップを制定してきた。先ほど、私とラブロフ外相は半島情勢の最新の変化に関して突っ込んだ意見交換を行い、新たな共通認識を達成した。
 我々は、半島情勢に明確な好転が現れたことを歓迎し、支持し、朝韓を含む各国がこのために払った努力を賞賛する。我々は、予定されている朝韓及び朝米首脳会談を契機として、半島で戦争混乱を引き起こす信管を徹底的に引き抜き、核問題を再び対話交渉の軌道に乗せることを希望する。このことはまた、安保理の朝鮮関連決議が達成することを呼びかけてきた目標でもある。
 半島核問題を如何に政治的に解決するか。まずは非核化という大方向を堅持することだ。半島の非核化は半島に関係する問題を解決するマスター・キーであり、半島が長期にわたって安定に向かうマスター・コースである。各国はこの大方向を堅持して動揺することがあってはならない。
 第二に、半島非核化実現と半島平和メカニズム樹立の「ダブル・トラック同時並行」を堅持することだ。半島核問題と各国特に朝鮮が長期にわたって直面してきた安全に対する脅威とは密接に関連している。非核化を推進するプロセスにおいては、朝鮮の正当な安全に関する関心を解決することは情理にかなった要求であり、非核化実現において叶えるべき筋合いのものである。
 第三に、ステップを踏み、同歩的に進み、一括して解決するという進め方を堅持することだ。半島核問題の由来は久しく、各国なかんずく米朝間では基本的信頼が欠如している。和平プロセスは、非核化を確定する前提の下で順序を追って漸進し、向き合って進む必要がある。一つ一つのステップにおいて、各国は相対応した責任と義務を担うべきである。このようにすることで、和平プロセスの持続性を保障し、対話と交渉が中断しないことを保障することができる。
 中露両国は、引き続き協調を強めるとともに、他の利益関係国とも意思疎通を維持し、やっとのことで迎えた対話と交渉の流れを共同で推進し、半島及び地域の平和と安定を共同で維持していく。