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中朝関係の基調確認(環球時報社説)

2018.03.19.

3月19日付の環球時報は、「中朝友好関係は韓米日の干渉妨害を絶対に受けるべからず」と題する社説を掲載しました。朝鮮半島情勢が急展開への動きを見せる中で、中朝関係の基本的性格を改めて確認し、外部の干渉妨害によって揺るぐことのない中朝友好関係を築いていく必要性を指摘したものです。
 環球時報を含め、中国国内にも、南北首脳会談及び米朝首脳会談の開催への動きが中国抜きで進んでいること(チャイナ・パッシング)に対する意外感、動揺、焦りが見られます(そういう反応が現れること自体、私には意外でした)。今回の環球時報社説は、中朝関係の基本的性格を改めて確認し、その基本に沿って中朝関係を進めていくという方向性を再確認したものです。内容的には何の意外感もありませんが、朝鮮半島情勢が全体として急展開の兆しをうかがわせる状況の下で、こういう社説が現れたこと自体が、中国国内における朝鮮半島問題を巡る世論状況の一端をうかがわせるものとして興味深いので、要旨を訳出して紹介します。

朝鮮核危機は朝鮮をして世界世論の焦点にしており、韓日及び西側の世論機関が生み出すニュースが世界世論をリードしている。中朝両国に関して言えば、核問題を巡る両国の対立と中朝友好関係とを如何に区別し、把握するか、この点において如何にして韓日及び西側世論の影響を免れるかということは重大な試練であり、両国が高度に重視するべきことである。
 中国社会がまずなすべきは、認識を正し、冷静を保つことであり、どんなことがあっても悪意ある勢力によって引っ張り回されることがあってはならない。
 環球時報は一貫して、半島の非核化及び半島に戦争や動乱が生まれることに対する反対という中国政府の主張を断固支持してきたし、中朝友好関係を維持し、この関係がショックに見舞われることを極力減らすことの重要性を確固として認識してきた。中国社会がこの問題について共通認識を打ち立てる能力があることを希望している。
 核問題について深刻な対立があることは中朝関係の現実であるが、この問題はいかなる時においても両国関係のすべてということになってはならず、長期にわたる中朝関係の戦略的つながりを切り裂くことがあってはならない。我々にとって、その点に関する認識と考え方について整理し、明確化することが必要なのかもしれない。
 第一、朝鮮は尊重するに値する国家である。朝鮮は高度に独立自主であり、このことは東北アジアにおいてはきわめて得がたいことである。朝鮮の経済規模は大きくはないが、工業体系は比較的完備しており、これを成し遂げていることは簡単なことではない。また、朝鮮の経済的社会的発展は、外部が描き出すような真っ暗というものではなく、朝鮮に行ったことがある人のほとんどは誰もが想像もできなかったような注目点があることを目にしている。
 第二、朝鮮は自らの政治体制を選択する権利があり、外部はこれに干渉するべきではなく、中国の人々は特にこの点について十分な理解を持つべきである。世界各国の政治体制における違いはきわめて大きく、朝鮮の政治体制だけを取り上げて攻撃するのは公正ではない。韓国は朝鮮と特殊な関係がある国であり、長期にわたって朝鮮の政治体制を攻撃し、朝鮮指導者を悪者に仕立て上げる急先鋒だが、こういうことはあってはならず、中国世論がその影響を受けることは絶対にあってはならない。
 第三、「中国は朝鮮をうまく手なずけていない」という類いの論調は間違いであることを正確に認識する必要がある。この類いは韓米日が宣伝するものであるが、中国国内にもこれに付和雷同するものがいる。必ず見て取らなければならないことは、中朝は抗米援朝によって鮮血で固められた友好を築いたが、その後中国は朝鮮における軍事プレゼンスを撤収しただけでなく、朝鮮における影響力のほとんどをも撤収したということだ。朝鮮は、完全に独立自主の国家となり、中朝関係は、アメリカが韓国に軍隊を駐留させ、韓国に対して全面的な影響力を及ぼしている同盟関係とはまったく異なる性格の関係であり、中国は「朝鮮を手なずける」能力はないし、他国をコントロールするということは中国の長期にわたる外交政策とは相容れないものであり、中朝は、互いに平等で、尊重し合う友好的隣国である。
 第四、核問題を巡る対立は中朝間における唯一の重大な違いであり、この点を除けば、中朝関係におけるその他の矛盾なるものは、基本的にすべて憶測の産物である。韓米日は中朝の核を巡る対立が両国の全面的対立に発展することを大いに望んでおり、そのために全力を挙げて中朝を離間させようと図っており、中朝が対決に向かうことにより、米韓日が朝鮮との緊張と対峙の局面を分散させ、半島の新たな焦点となることによって、彼らは高みの見物ができるようにしたいと願っている。
 第五、中朝が友好関係を保つことは両国それぞれの利益に完全に合致することである。中国にとっては、中朝友好は我が国の周辺友好戦略を十全なものにし、東北アジア問題における中国の動き回るスペースを増大することに有利である。朝鮮にとっては、朝鮮が単独で韓米日に対処することは困難かつ危険であり、朝鮮が国家の安全を図るという正当な権利を中国が支持することは、韓米日と交渉する上での朝鮮の立場を強化し、多くのリスクを解消する上で助けとなる。
 半島問題は錯綜して複雑であり、さまざまな事件やニュースが中朝社会の相互認識を不断にかき乱すし、韓米日の世論は絶え間なく波風を立てようとする。我々が希望するのは、中朝両党関係が両国関係の安定にとって中核的役割を果たし、波風を立てようとするものがマーケットやチャンスを持つことができないようにし、中朝関係が両国及び両国人民に有利となる正しい道筋で平穏な形で前進していくことである。