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森友学園問題と自民党政治(中国専門家文章)

2018.03.17.

日中関係に改善の機運が現れ始めたことも背景にあってか、中国の日本問題専門家による日本政治に対する正面切った批判も最近はあまり見られなくなっていました。しかし、日中関係の先行きに関して楽観的な論調は多いわけではなく、安倍政権の本質についても警戒的な見方が主流であり、今後の日中関係についても安倍政権の出方を慎重に見極めるというのが大方の判断であると見てよいと思います。
 そうした背景のもと、3月16日付の環球時報は、上海外国語大学中日韓協力研究センター執行主任の廉徳瑰署名文章「「森友スキャンダル」背後にある日本政治の病弊」を掲載しました。日本のメディアは総じて、事態がここまではっきりしてきたにもかかわらず、安倍政治の本質に関する率直な批判はまだ控えめであり、生煮えの報道姿勢が相変わらずで、私は大いに不満です。そうした中、廉徳瑰の文章はきわめて歯切れよく安倍政治ひいては自民党政治の腐敗を極める右翼的本質を剔抉しました。要旨を訳出して紹介する次第です。

 森友学園の「地価ゲート」は安倍政権に対して再度の政治的打撃をもたらしている。昨年この案件が明るみに出た後、安倍政権に対して重大な打撃を与えたのだが、当時は証拠がまだ足りず、加えて野党勢力が分散していたこともあって、安倍はなんとかその危機をやり過ごした。先週、メディアが財務省理財局による重要文献の改ざんを暴露したことにより、次第に薄れかけていたこの醜聞が再び人々の視線に戻ってきた。日本国民は激怒し、官僚及び政治家の法律及び政治倫理に対する蔑視、民主主義の看板のもとで私利のためには人々の感情を無視する様を糾弾している。この事件はまた、日本政治特に自民党政治における政治倫理の病弊を映し出している。
 第一、政治道徳倫理の欠落によって国民の信頼を失っていること。自民党は、戦後長期にわたって政権の座にある老舗の保守政党であり、自ら民主主義を標榜し、日本の主要な経済利益集団を代表していると同時に、日本の右派政治勢力をも代表している。しかしこの政党は、長期の執政とさまざまな経済政治勢力との無数のつながりを通じて利益を交換することにより、自らを国民及び法律の上に置き、個別の人・集団のために利益を図るという醜聞は絶えることがない。例えば、ロッキード事件、リクルート事件、佐川急便事件などの腐敗した事案により、首相がスキャンダルを原因として辞職したケースは数えきれず、基本的には腐敗した政党と見なすことができる。
 安倍一派が森友学園に対して利益を図ったと指摘されている今回の問題は、腐敗という嫌疑に加え、自民党政治家と官僚との結託をも反映している。しかるに、事件発覚後は責任を承認するのではなく、ウソ八百を並べ立て、トカゲのしっぽ切りを行うざまであり、政治道徳はほとんどゼロ、その所業は完全に民主主義原則に背馳しており、日本国民の政治に対する信頼を再び損なっている。
 第二、右派の政治に対する浸透は人をして憂慮させるものがあること。森友学園の前理事長である籠池泰典は右翼組織の「日本会議」と密接な関係にあったが、昨年に事件が発覚した後、「日本会議」は速やかに彼との関係を断絶し、彼は同会議とは関係がないと称した。しかし、今回暴露された改ざん文献は、関係する政治家及び官僚と籠池が地価の交渉を行う際に、「日本会議大阪分会」責任者という身分及び肩書きを使用していたことを明らかにしている。安倍は「日本会議」と関係ある「日本会議議員連盟」の会長であり、麻生太郎、平沼赳夫等の自民党の有力メンバーもこの議員連盟メンバーであり、彼らも地価交渉の当事者であった。「日本会議」は一貫して日本の首相及び重職者の靖国神社参拝を推進し、安倍による憲法改正を支持し、激励し、安倍右傾政治の有力な推進者であり、安倍政治の主要な政治的後ろ盾である。今回の「地価ゲート」事件において、安倍一派が極力隠そうと図っているのは彼らと「日本会議」との関係である。
 第三、長期政権の企みが水の泡と消えるかもしれないこと。安倍政権は、「10年9首相」という不安定な政局を背景として登場した。そのため、このグループが自民党総裁の任期の規定を改定することによって長期政権を目指したとき、有権者は必ずしも安倍の「一強体制」に対して反感を示すことはなかった。昨年の「地価ゲート」の衝撃によって安倍は辞任する危機もあったし、自民党内でも権力を調整する動きも出て、岸田文雄は外相を辞して禅譲の準備を行うなどの動きはあったが、最終的には、野党が無能及び烏合の衆であったため、安倍は衆議院総選挙を易々と勝利し、第2期政権における最大の危機を乗り切った。順調にいけば、安倍は本年9月の自民党総裁選挙で再び勝利し、長期政権の夢を叶えるはずだった。
 夢想もしなかったことに、「地価ゲート」が再びセンセーショナルに爆発し、安倍政権の中心人物であり、「屋台骨」でもある麻生太郎は人々の批判の的となった。麻生が降りるとなれば、安倍政権は重要な支柱を失うことになり、安倍首相の連帯責任も必ずや追及されることとなる。この状況下において、野党は相変わらず自民党に取って代わる力はないけれども、自民党内部における反安倍勢力が反旗を翻し、安倍に対して政権を交代することを迫るだろう。自民党が野に下ることはないとしても、安倍は降りることとなり、日本の政局には重大な変化が生まれるだろう。
 カネと権力との交換のために公然と国家の利益を損ない、世論の反対と民意の所在を顧みずに右傾政策を無理矢理推進し、国民のために利益を図ると言いながら、実は権謀術数を尽くして長期政権を追及する。今回の「地価ゲート」の再度の発酵展開は、自民党政治の腐敗及び政治倫理欠如の本質を暴露し、その悪質な影響はおそらく短時間では消し去ることができないだろう。法治を自ら標榜してきた日本社会は、政治のハイ・レベルにおける腐敗が次から次へと止むことなく起こることを防止することに関して無力であり、政治家のなすがままに任せざるを得ないというのは、日本式民主主義の悲哀と言わざるを得ない。