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中国2017年周辺外交の総括(環球時報社説)

2017.12.26.

12月26日付の環球時報は、「2017年の中国周辺情勢 複雑の中で好転」と題した社説を掲載し、2017年における中国のアジア外交を総括しました。中国にとっての北(ロシア)及び西(中央アジア諸国)が安定する中で、東(日本及び朝鮮半島)及び南(東南アジア及びインド)においてはむずかしい舵取りを迫られた中国ですが、総合的に評価すれば、中国の国力の増大と中国外交の対応能力により、プラス評価となるという自己判断を下しています。日本との関係についても慎重ながらも前向きの評価を示していることが注目されます。大要を紹介しておきます。

 周辺は昔から中国の国家戦略推進上の前線地帯であり、中国周辺はもっとも複雑と言っても決して誇張にはならない。周辺を安定的にできないのであれば、中国がグローバルに戦略的主動性を獲得することは論じる余地も出てこない。
 では、2017年における周辺情勢を如何に見るべきか。中国の角度から見る時、総じて言えば、積極的な方向に向かっていると言うべきである。台頭しつつある大国として、周辺諸国との間の相互適応の模索を通じて、見通せる部分が増えた。個別の問題及び危機は相変わらず厄介ではあるが、中国が台頭する中で戦略的安定性はさらに増大してきた。
 最大の変化は南海(南シナ海)及びASEANである。2016年末に南海情勢に緩和が始まり、2017年にはこの傾向が大いに固まった。フィリピン及びヴェトナムが中国との関係を改善する流れを維持し、シンガポールを含む他のASEAN諸国も中国との関係をより重視するようになり、「南海行動準則」は枠組み合意を達成した。
 南海は米日が深々と介入し、介入するためのテコも極めて多い地域であり、潜在的な爆発の危険性は極めて深刻なものがある。この地域の情勢が大幅にヒート・ダウンしたのには、北京の外交努力が大きな役割を果たした。中国の台頭は事実であり、台頭する中国が周辺諸国と如何に付き合うか、諸外国が不断に成長する中国の実力を如何に見るか等々の非常に重要な命題は、南海地域において試練をくぐることにより、公約数としては得がたい蓄積を得ることとなった。
 北東アジアにおいては、中日関係がやっとのことで谷間から抜け出し、両国の互いに対する対し方及びその方法を再調整する新しい傾向が形成されてきた。厳冬状態から若干の春の気配を迎える過程で、中国及び日本はともに多くの考え方を経ることは避けられなかったが、アジア第一位と第二位の両国間の実力関係をいったいどのように処理するかについて、両国はいささか冷静さが増したと言える。
 中韓関係は、友好協力のピークから対決に近い深淵へと落ち込んだが、文在寅が大統領に当選したことによって再び友好協力の道へと立ち戻った。これらすべてはまるで「夢を見る」のと同じようだった。
 中印はこの夏、(国境問題で)対峙する危機を迎えたが、最終的には平和的に収めることができた。しかし、板から釘は抜き取ったものの、そこには釘穴が残ることとなった。この危機は中印関係の脆弱性をさらけ出したが、同時に、中国が実力で挑発を退ける能力があることを明らかにするとともに、中印がともに21世紀において敵対するつもりはないというボトム・ラインの考え方に立っているということをも映し出した。インドのこの戦略的態度は、米日が推進する「アジア太平洋戦略」の内実を如何に構築するかに対して影響を与えることになるだろう。
 2017年の中国周辺情勢における最大の挑戦は朝鮮半島情勢であり、米朝が中国の門口でコントロールが利かないのと近い形で対決していることは、周辺情勢を形作る上での中国の能力の限界をさらけ出した。
 この一年、中国との間で安全保障上大した関係のないオーストラリアが突如として安全保障問題で一再ならず中国を批判し、中国周辺では新たなそして突出した面倒製造者として立ち現れた。しかし、オーストラリアは中国にとっては「エセ周辺国」であり、以上に述べた諸問題と比較すれば、中国人にとっての面倒さ加減は違うものだ。畢竟するに、オーストラリアは中国からは遠く、中国にとっての扱いにおいては順番を後ろに下げることができる。
 中国の周辺は実に大きなものがあるが、北と西は固まっており、当面の急迫した問題及び挑戦はすべて東及び南から来るものだ。以上に総括したことから判断すれば、2017年における中国の周辺外交の得失は「得」が大であり、さらに重要なことは、中国の「得」の多くは底入れして上昇に転じたものであり、「失」に関しては、中国の適応力形成はますます迅速になっており、「失」の圧倒的なショックはもはやほとんどないということだ。
 周辺の問題は今後も少なくなることはないだろうが、2017年の状況から分かることは、周辺問題を解決し、コントロールする中国の資産は増え続けており、周辺問題の「自己治癒能力」も増え続けている、ということだ。周辺勢力の中には中国を挑発にかかるものもいるが、そういった極端な政策は長続きするのがむずかしく、様々なきっかけで瓦解することになるだろう。
 中国が発展することにより、一連の潜在的問題が表面化することもある。しかし、しっかり見届けるべきは、中国が周辺問題を解決する最大の力の源もまた発展であるということだ。周辺問題を完全に解決することは不可能だが、中国が力強い発展の勢いを保つ限り、そういった問題が増長する勢いは、中国が全局を制御する能力の増大との駆け比べでかないっこなく、その結果、中国の戦略的主動性は不断に剰余利益となり、赤字となることはあり得ない。間違いなく、2017年は中国の周辺に対する戦略能力において大きな剰余利益を得た一年だった。