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朝鮮制裁安保理決議2397(環球時報社説)

2017.12.25.

国連安保理は12月23日、朝鮮に対してさらに厳しい制裁を科すことを内容とする新決議2397を全会一致で採択しました。朝鮮外務省スポークスマンは翌24日、「わが共和国に対する全面的な経済封鎖同様」の決議を、「共和国の自主権に対する乱暴な侵害、朝鮮半島と地域の平和と安定を破壊する戦争行為とらく印を押し、全面排撃する」とする声明を発表し、一歩も退かない姿勢を宣明しました。声明はまた、朝鮮の核デタランス構築は「米帝の核恐喝政策と核脅威から国の主権と領土保全と人民の平和な生活を守り、朝鮮半島とひいては世界の平和と安全を頼もしく裏付けるため」のものとし、「米国の敵視政策と核威嚇・恐喝に終止符を打つために核拡散防止条約(NPT)外で正々堂々と開発、完成したわれわれの核兵器はいかなる国際法にも抵触しない」と強調しました。声明はさらに、「今回の「制裁決議」で招かれる全ての結果は全的に、「決議」の採択に手をあげた国々が責任を負うべきであり、われわれはそれについていつまでも厳しく計算するであろう」と指摘して、間接的表現で、アメリカに同調した中国とロシアを批判しました。
 また、中国外交部の華春鎣報道官は記者の質問に答える形でコメントを発表し、「決議は適度に朝鮮に対する制裁措置を強化するとともに、朝鮮の一般民衆に対して不利となる人道的影響を与えるべきではなく、正常な経済活動並びに協力、食料援助及び人道援助にも影響せず、朝鮮の外交使節団の活動にも影響しないことを強調し、同時に、朝鮮半島及び北東アジアの平和と安定を守ることを重ねて述べ、平和的、外交的及び政治的方法で問題を解決することを呼びかけ、6者協議回復を支持し、さらに関係諸国が半島の緊張情勢を低める措置をとるべきであることを強調した」とする中国側認識を示しました。
 しかし、12月23日の午前9時過ぎに環球時報WSに掲載された同紙社説「朝鮮に対する新制裁は極めて重く、戦争阻止に注力」は、華春鎣報道官が制裁は「適度に強化」されたとする認識を実質的に否定するとともに、朝鮮外務省スポークスマンが主張した、朝鮮の核デタランスは「朝鮮半島ひいては世界の平和と安全を頼もしく裏付けるため」のものという立場をも実質的に否定し、「朝鮮は1950年代以来でもっとも安全でない時に立っている」とする認識を示しました。また社説は、今回の決議がアメリカに対する「戦争ゴー・サイン」を与えるものとならないようにするために、中ロ両国がアメリカと舞台裏で交渉した事情をもかいま示しています。要旨を紹介しておきます。

 アメリカが提出した決議草案を巡り、中ロはアメリカとの間で困難に満ちた協議を行った。環球時報の了解によれば、中国は、安保理決議がアメリカに対して武力行使を行うこと許すようないかなる手がかりを与えることにも断固として反対し、衝突を引き起こす可能性がある、朝鮮に対する海上軍事封鎖を実施することに対しても断固として同意せず、アメリカは結局譲歩した。
 また、最終的に採択された決議には、アメリカが要求した朝鮮に対する石油禁輸宣言は含まれず、朝鮮に対する石油製品の輸入量を毎年200万バーレルから50万バーレルへと大幅に削減することとした。朝鮮の個人に対する制裁は増えたが、朝鮮の主要な指導者は含まれていない。朝鮮労働者が受け入れ国から退去する時間も2年に延長され、朝鮮の対外輸出及び中国から輸入する商品もさらに制限されることになったが、完全には禁止されたわけではない。
 新決議は朝鮮の核保有に反対する国際社会の一致と団結を明確にするとともに、朝鮮のさらなる核ミサイル技術開発を阻止するために行動をとるという大国の共通の決意をも明確に示した。新決議とアメリカ原案との違いはまた、中ロが半島で戦争が起こることに反対する意思をも反映している。仮にアメリカ原案を受け入れていたならば、それは取りも直さず、決議は最後の制裁決議となり、残るは戦争という選択肢しか残らなくなっただろう。
 朝鮮半島情勢はすでに極めて危険となっており、新決議が朝鮮をして核ミサイル活動を停止する必要性を理解させ、アメリカにもさらに多くの忍耐を生ましめ、かくして膠着状態打破の合成力を生み出すのであれば、それは国際社会が見届けたいことである。
 最近2年間の朝鮮の核ミサイル活動は加速し、技術的ブレークスルーは明らかであるが、安保理決議も不断にそれに歩調を合わせており、本年だけでも3つの新制裁決議が行われた。朝鮮はさらに成熟した核ミサイル技術を修得したが、その安全に関わる形勢は大幅に悪化した。度重なる制裁により、朝鮮の対外貿易はほとんど残すところがなくなり、石油輸入はさらに圧迫され、アメリカの軍事圧力はますます口先だけにとどまらなくなっており、現在は間違いなく、朝鮮にとって1950年代の戦争以来のもっとも安全ではない時となっている。
 平壌は一貫して中ロが安保理によるさらなる制裁を行うことを阻止することを希望しているが、第一に、中ロ両国は朝鮮の核保有と核兵器開発に反対であり、第二に、中ロの立場は国際社会の普遍的願望と協調しなければならない。中国はアメリカの極端な要求には抵抗できるが、国際社会の共通意思と対抗することはできない。
 中国社会は、朝鮮の核保有には反対であるとともに、朝鮮の民衆の長期にわたる生活が制裁のもとで暗い影の下にあることに対しても同情している。我々は、制裁が朝鮮の核ミサイル活動に対するだけのものであることを希望しており、朝鮮の民生に打撃を与え、朝鮮政権の安定に害を及ぼすことは望んでいない。制裁が朝鮮の民生に対して及ぼす衝撃を減らすべく、中国はアメリカから押し寄せる次から次への圧力を堪え忍んでいる。
 朝鮮の核保有は受け入れられないし、朝鮮に対する武力行使並びに朝鮮及び半島の現状を変更させることも同じく受け入れられない。我々は、米朝が双方の対話のための最大公約数を探し出すことを手伝うことを希望しているし、対話のための最大公約数こそが米朝にとっての真の利益であり、両国が現在とっている主張は極めて非現実的な願望であることを米朝が最終的に確信できるようになることを希望するものである。
 新制裁決議は非常に厳しいものであり、半島情勢が絶体絶命に近い状況の中で現れた最後のチャンスであるかもしれない。韓国は現在、明年2月の冬季オリンピックの期間中における米韓合同軍事演習を延期することを提起しており、朝鮮がこのシグナルを捉え、積極的に反応し、「双方暫定停止」の起点形成を推進することを希望する。
 半島においては、平和が危機に代わることを後に延ばせば延ばすほど高くつくものとなる。これは、朝鮮にとってもアメリカにとっても同様である。