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グテーレス国連事務総長の朝鮮関連発言

2017.12.17.

グテーレス国連事務総長は12月13-14日に日本を訪問しました。国連広報センターWSの発表によれば、日本滞在中の活動は次のとおりでした。

「事務総長は12月14日(木)に安倍晋三内閣総理大臣と会談を行います。さらに、議員、市民社会の方々とも懇談を行う予定です。
事務総長は、日本政府、国際協力機構(JICA)、世界銀行グループ、世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)、およびUHC2030のための国際保健パートナーシップ(UHC2030)の共催による、「UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)フォーラム2017 」で演説します。
また、事務総長は上智大学において「Global challenges — the role of human security(「グローバル課題~『人間の安全保障』の役割~」(仮) 」をテーマに講演 を行った後、学生との意見交換を行います。その後、日本記者クラブで記者会見を行う予定です。」

安倍首相とグテーレス事務総長との朝鮮問題に関する会談内容については、14日付の外務省WSが次のように紹介しています。

安倍総理大臣とグテーレス国連事務総長との会談 平成29年12月14日(外務省WS) (1)安倍総理大臣とグテーレス国連事務総長は,朝鮮半島の非核化が地域の平和と安定のために不可欠であることで完全に一致しました。北朝鮮が核・ミサイル開発を継続する中,国連安保理決議の完全履行の必要性や,北朝鮮との間では対話のための対話では意味がなく,非核化に向けた意味ある対話でなければならないとの認識を共有しました。
(2)安倍総理大臣から,明15日の国連安保理閣僚級会合で圧力強化に資する力強いメッセージを共に発出したい旨述べ,緊密な連携を確認しました。
(3)安倍総理大臣からグテーレス国連事務総長に対し,拉致問題の早期解決に向け理解と協力を求め,支持を得ました。

また、事務総長の日本記者クラブでの記者会見における朝鮮関連の発言内容としては、私は朝日新聞で次の記事を読みました(以下に紹介するのはWS掲載版です)。

国連事務総長「夢遊病の様に紛争、回避を」 北朝鮮問題
神田大介
2017年12月14日20時43分
 来日中の国連のグテーレス事務総長は14日、日本記者クラブで会見し、北朝鮮の核開発は緊急性のある問題として「夢遊病のように紛争に突入することを避けなければならない」と警告した。米国のトランプ大統領は武力行使も辞さない構えだが、「軍事的な解決策はひどく否定的な結果をもたらすだろう」とした。
 国連のフェルトマン事務次長(政治担当)は5~8日に訪朝し、対話の継続で一致した。グテーレス氏は国連決議の順守と平和的な朝鮮半島の非核化が重要だとし、北朝鮮に「メッセージは伝わった」と強調した。
 自身の訪朝や金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との直接対話については、「目的のない会合は無意味だ。もし有用ならいつ、どこにでも行く用意があるが、単にカメラの前に現れるだけなら求めない」と発言。「我々の調停を双方が受け入れたときだけ仲介が可能だ」とした。
 ティラーソン米国務長官が12日、北朝鮮側と「前提条件なしで会う用意がある」と述べ、核放棄を対話の条件としてきたトランプ氏と矛盾する発言をしたことについては、「コメントは差し控える」とした。(神田大介)

以上の外務省発表文及び朝日新聞記事からイメージさせられるのは、グテーレスが日本の対朝鮮政策に理解を示し、また、国連の朝鮮との関わり方について慎重な立場を表明したということです。
 しかし、16日付のハンギョレ・日本語WSは、グテーレスの日本記者クラブでの発言について以下のように、グテーレスが朝鮮核問題の平和的解決に対して極めて意欲的であり、自らの訪朝についても、「すべての関係国が同意し、最善の方法だと判断された場合は(訪朝)できるだろう」という断りを付しつつも、「いつでもどこにでも、必要ならば行く用意がある」と話したと紹介しています。
 外務省WSが自分たちに都合良いように紹介するのはいつもながらのことで驚きませんが、朝日新聞とハンギョレの報道の落差の大きさには唖然とさせられます。私はまだ、グテーレスの日本記者クラブにおける発言(原文)には接していませんので確定的なことは言えませんが、しかし、状況証拠的には、イラン核問題に関してもトランプ政権の対イラン政策に率直な批判を行っているグテーレス・国連が、朝鮮核問題に関してその平和的解決に深くコミットしているであろうことは容易に想像がつきます。
 以下にハンギョレの報道を紹介しておきます。

国連事務総長「北朝鮮核問題の仲裁に必要なら訪朝できる」
登録:2017-12-16 06:52 修正:2017-12-16 08:08 ハンギョレ
 アントニオ・グテーレス国連事務総長が朝鮮半島の非核化と平和的な北朝鮮核問題の解決を強調し、対話の仲裁のために必要なら、北朝鮮を訪問する意向を示唆した。
 グテーレス総長は14日、日本プレスクラブで開かれた記者会見で、「我々は皆、状況が統制不能の状態に突き進むことを望んでいない。誤解とミスによって起きた状況が、致命的な結果をもたらしかねない戦争に吸い込まれていく状況は、誰も望んでいない」と述べた。彼は「普遍的医療保障フォーラム」に出席するため、1泊2日の日程で前日夜、東京に到着した。
 グテーレス総長は約32分間にわたり行われた会見で「北朝鮮核問題の平和的解決」を9回も強調した。彼は「外交には目的があるべきであり、我々の目的は朝鮮半島の非核化を平和的な方法で成し遂げること」だとし、「このために必要なのがまさに対話」だと強調した。今月12日、レックス・ティラーソン米国務長官が言及した「条件なき米朝対話」についての質問にも、「重要なのは対話が意味を持っており、対話を通じて得ようとする狙いがあるべきという点」だとしたうえで、「(対話の)目的は朝鮮半島の非核化であり、非核化は平和的な方法で行われなければならない」と答えた。
 これに先立ち、ジェフリー・フェルトマン国連政務担当事務次長が今月5~9日に訪朝し、リ・スヨン北朝鮮外相など要人たちと面会した。グテーレス総長はフェルトマン事務次長の訪朝の成果を尋ねる質問に対し、「思慮深い外交を進めていると、直接的な結果を予測することが難しい」とし、「状況が緊迫し、早急に意味のある対話を通じて朝鮮半島の非核化を達成するための条件を作り出さなければならないという強力なメッセージを伝えた」と答えた。彼はフェルトマン事務次長を通じて北朝鮮側が訪朝を要請したかどうかを問う質問には、明確な答弁を避けながらも、「北朝鮮はフェルトマン次長を招待しており、様々な状況を調査し、必要と判断したために訪朝した」と答えた。グテーレス事務総長はさらに、「直接訪朝し、金正恩労働党委員長に会う意向があるのか」という質問には、「いつでもどこにでも、必要ならば行く用意がある」と話した。ただし、彼は「ただテレビカメラに顔が映ることが目的ではない」とし、「すべての関係国が同意し、最善の方法だと判断された場合は(訪朝)できるだろう」と付け加えた。彼はさらに、「(国連は)いつでも乗り出す用意がある」とし、「しかし、(米朝)両方が私たちの仲裁を受け入れられる場合に仲裁が可能だろう」と強調した。
 これに先立ち、北朝鮮を訪問したフェルトマン事務次長は14日、国連本部で韓国特派員団に、「北朝鮮に二つの形の疎通について話した」とし、軍事当局間対話を含めた南北間チャンネルの再開と平昌(ピョンチャン)冬季五輪への参加などを提案したと明らかにした。彼は「南北対話の重要性と共に、北朝鮮核問題を平和的かつ外交的に解決するための戦略的水準の疎通を北朝鮮に強調した」と説明し、北朝鮮が平昌冬季五輪の参加の提案に対し、「注意深く傾聴し、質問したり、メモを取る場面もあった」と述べた。ただし、実際に参加するかどうかについては「予測できない」と話した。
チョン・イナン記者
韓国語原文入力:2017-12-15 21:30