21世紀の日本と国際社会 浅井基文Webサイト

1994年朝鮮戦争危機回避理由(米側文書)

2017.12.12.

1993年のいわゆる「北朝鮮核疑惑」を発端としてアメリカ・クリントン政権が行うことを真剣に考えたとされる、朝鮮の核施設に対する先制攻撃計画は結果的には現実のものにはなりませんでした。戦争勃発が回避された理由としてよく挙げられているのがカーター元大統領訪朝による金日成との話し合いの実現ですが、私は個人的に、いわゆる有事法制の備え(米軍が本格的軍事力行使を行うために不可欠な、出撃及び兵站支援の拠点としての役割を果たすために不可欠な要素)が欠落していた日本の存在がアメリカをして二の足を踏ませたという事実も大きかったと確信しています。その証拠に、この危機が終わった直後からアメリカはいわゆるナイ・イニシアティヴで日本に対して対米軍事協力体制の確立を迫る動きに出たのです(それが新ガイドライン、周辺事態法、そしてイラク戦争協力のための有事法制・国民保護法制定へとつながっていきました)。
 しかし、アメリカが軍事行動に踏み切ることができなかった最大かつ直接的な原因としては、朝鮮による反撃によって米韓が甚大な被害を受ける可能性が大きいという判断があったことはつとに知られています。12月11日付のハンギョレ・日本語WSと中央日報・日本語WSは、アメリカのジョージ・ワシントン大学附設の国家安全保障文書保管所が12月8日に公表した報告を紹介する形で、当時のアメリカ政府の開戦回避決定の事実関係を伝えています。
私はまだ原文には当たり得ていないので、とりあえず両紙報道をそのまま紹介します。
これは、一つには私の目の調子が相変わらず優れないということもあって、安易な方法をとらざるを得ないためです。しかし今ひとつのより大きな理由は、トランプ政権が朝鮮に対して「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」という表現で軍事力行使の可能性を「誇示」していますが、1994年当時ででも朝鮮(当時は38度線沿いの火力による報復能力のみ)の反撃で甚大な被害を受けることが不可避であったのに、2017年の朝鮮(日韓を確実に射程距離に収める核ミサイル戦力による報復能力の備えあり)の反撃では、想像するだに身の毛がよだつ被害を蒙ることが不可避である今日において、トランプが対朝鮮軍事力行使に踏み切ることは狂気の極み・沙汰という表現でもとうてい足りない行動(それをあえてするトランプは朝鮮が彼を形容する「老いぼれ狂人」以外の何者でもありません)であることを確認しておきたいからです。

「米国は1994年に北朝鮮との戦争を計画…勝利確信したが多数の死傷者発生を憂慮」
登録 : 2017.12.10 22:26 修正 : 2017.12.11 09:14 ハンギョレ
 ビル・クリントン米行政府が1990年代の第1次北朝鮮核危機当時、北朝鮮との戦争を実際に計画したが、膨大な人命被害を憂慮して事実上あきらめた事実が、最近機密解除された文書を通じて再確認された。
 米国ジョージ・ワシントン大付設の国家安保文書保管所は8日(現地時間)、公開された米国政府の機密文書で明らかになった主要人物の発言と政府機関の報告を総合し、このように明らかにした。
 金大中大統領とウィリアム・ペリー対北朝鮮政策調整官の1998年12月7日の面談内容に関する駐韓米国大使館の報告電文によれば、ペリー調整官は金大統領に「北朝鮮核危機時期の1994年6月に国防長官に任命された」として「当時、戦争を計画した」と明らかにした。
 ペリー調整官はさらに「もちろん韓国と米国の連合戦力で私たちは疑う余地なく戦争で勝つことができる」として「だが、その過程で多くの死傷者が出る」と強調した。ペリー調整官は「戦争にともなう否定的影響をよくわかっている」として「戦争を避けるために最善を尽くすだろう」と金大統領を安心させた。これと関連してニューズ・ウィークは、朝鮮半島で戦争が勃発すれば、米軍5万2千人と韓国軍49万人をはじめ窮極的に100万人以上が亡くなり、米軍の戦争費用は610億ドルに達すると推定されたと2006年に報道したことがある。
 また、1997年の国務省文書によれば、クリントン行政府は北朝鮮の核プログラムだけでなく、1990年代の北朝鮮の飢謹が「危うい混乱状況」を引き起こす可能性を憂慮したとも発表された。これに伴い、米国政府は「4カ国会談を通して北朝鮮に接近しながら、北朝鮮に新しい活力を付与する意味ある改革から北朝鮮政権の崩壊に至るまでの幅広い選択肢の融通性を持たなければならない」と判断した。
 2000年6・15南北首脳会談に対してスチーブン・ボズワース駐韓米国大使は、国務省に送った電文で、金大中大統領との会談成果について「事実上、欠点を見いだせない」と評価した。彼はさらに「金大統領の政策の成功と、韓米両者の関係のために、公開的であれ私的であれ、米国は継続的かつ完ぺきに支持するという立場を送ることがとても重要だ」と強調した。
ワシントン/イ・ヨンイン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2017-12-10 21:09
米国、1994年に北先制打撃を検討…90日以内に軍人54万人死傷を予想
2017年12月11日15時30分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
1990年の第1次北核危機当時に米国が対北朝鮮先制打撃を進めたが、莫大な人命被害が懸念されてあきらめたという事実が最近、機密解除された文書で再確認された。
8日(現地時間)の米ジョージ・ワシントン大学の国家安保文書保管所によると、ビル・クリントン政権で国防長官と対北朝鮮特使を務めたウィリアム・ペリー北朝鮮政策調整官は98年12月、当時の金大中大統領との会談で94年北核危機当時の戦争計画を明らかにした。こうした事実は、在韓米国大使館が当時の青瓦台対話録を根拠に国務省に報告した文書で明らかになった。
この文書で米国は特に人命被害について深く懸念した。米国防総省は韓半島戦争模擬実験の結果、90日以内に在韓米軍5万2000人、韓国軍49万人が死傷すると予想した。北朝鮮の核施設などに対する精密打撃が全面戦争につながる可能性が高く、莫大な人命被害を予想したのだ。
ペリー元長官も「もちろん韓国と米国が戦力を合わせれば戦争で勝つが、その過程で多くの死傷者が発生する」と憂慮した。
国家安保文書保管所は「クリントン政権がニンジンとムチをともに検討したが、94年の対北朝鮮軍事オプションの影響を分析した後、北朝鮮に対する攻撃の声は急激に弱まった」と説明した。
ペリー元長官は最近ワシントンで開かれたあるセミナーでもこれと似た内容に言及した。ペリー元長官は「北朝鮮との全面戦争は核戦争になるはずであり、これは中国の介入がなくても第1・2次世界大戦当時と似た規模の死傷者を出すだろう」と述べた。
ニューズ・ウィークは2006年、韓半島戦争が94年に勃発していれば初期の3カ月間に民間人を含む死者が100万人以上発生していただろうと報じた。また、米国の最終戦争費用は1000億ドル、韓国経済損失規模は1兆ドルを超えるという見方を示した。
これに関連し金泳三元大統領は生前、「米国の先制打撃計画を当時のクリントン大統領との何度かの電話会談を通じて白紙にした」と明らかにした。
公開された文書にはペリー元長官の対北朝鮮特使活動もあった。これによると、ペリー元長官は99年6月、対北朝鮮特使として平壌を訪問し、北朝鮮側に「核武装は容認できない」という米政府の警告を伝えた。また「米本土に到達可能で韓国と日本を脅かす北朝鮮の長距離ミサイルは容認できない」とし「核プログラム強行は朝米関係に大きな悪影響を及ぼすだろう」と強調した。
クリントン政権の北朝鮮との対話の雰囲気はその後、ジョージ・W・ブッシュ政権に入って変わったと、国家安保文書保管所は説明した。ペリー元長官はブッシュ政権のパウエル元国務長官にクリントン政権の対北朝鮮戦略を説明し、パウエル元長官も「従来の対話を引き継いで成功裏に終える」と述べたが、結局、ブッシュ政権は対北朝鮮対話を全面的に中断した。