21世紀の日本と国際社会 浅井基文Webサイト

朝鮮のICBM発射実験成功と情勢の緊張激化(2)

2017.12.4.

12月2日付の環球時報は再び社説「中国は力を尽くした 後始末は米朝がやることだ」を発表し、前日の社説(浅井注:12月2日付のコラムで紹介)を踏まえつつ、さらに突っ込んで中国の立場を鮮明にしました。前日に続いて、しかもさらに突っ込んだ立場を表明することは、最高指導部の判断を踏まえたものであることは明らかです。大要を紹介します。

 中国の選択は困難を極めるだろうが、我々は力を尽くしたことは是非言っておかなければならない。我々は朝鮮を説得できないだけではなく、アメリカを説得して動かすこともできないのであり、中国がいまや唯一できることは、自らの原則におけるボトム・ラインに確固として立ち、情勢緩和に努力すると同時に、最悪の変数に対処する備えを行うことだ。
 我々は、朝鮮に対して力を尽くしてきた。朝鮮の核兵器開発は北東アジアの地縁政治に対する激震を導き、中国の安全にとってのチャレンジを増大させた。アメリカの戦略的軍事資産は北東アジアに集結する新たな理由を見いだし、THAADシステム等は中国に対する直接の脅威となった。また、朝鮮の核実験及び半島で再び戦争が勃発するリスクは中国東北地方の安全に対する脅威となり、朝鮮核危機は中国の戦略が直面する外部的不確定性としては最大のものとなっている。
 しかし、中国はこれまで朝鮮に対して友好政策を行ってきた数少ない国家の一つだ。中国は国連の朝鮮に対する制裁には参加してきたが、いまに至るも朝鮮にとっての最大の貿易相手国だ。中国は、安保理における幾たびの議論の中で、朝鮮に対する全面的貿易禁輸には強く反対してきたし、制裁対象は朝鮮の核計画に関係する部門及び領域に限られるべきであることを断固主張し、制裁は朝鮮の民生に影響を与えてはいけないことを強調してきた。制裁が朝鮮人民に対する懲罰となることをさせないため、中国はアメリカ及び西側世論からの巨大な圧力に耐えてきた。
 中国はアメリカに対しても力を尽くしてきた。朝鮮核危機の根源は間違いなく米韓及び朝鮮との間の敵対が不断に激化してきたことにあり、「中国責任論」という思考様式は間違いそのものだ。朝鮮核問題の解決は、制裁及び対話促進の双方において同時的に努力することによってのみ効果があり得る。中国は安保理決議の枠内で朝鮮に対する制裁のすべての義務を履行し、中朝関係はそのために犠牲を支払ってきた。ところが米韓は、緊張した情勢を緩和させ、対話を促進する面で見合うだけの義務を果たしておらず、朝鮮をして立場を変えさせるという希望のほとんどを中国に押しつけてきた。
 ある時期(浅井注:4月の習近平訪米を指していると思われます)以来、アメリカは脅迫まがいに対朝鮮制裁を強めるように要求してきたが、中国は最大限の忍耐心でアメリカと立場を協調してきた。米朝の激烈な対決のプロセスの中で、中国は情勢が崩壊しないようにするためにカギとなる役割を担ってきた。アメリカの対朝鮮圧力が不断に強まる中で、中国が被った連帯的損失は疑いもなく最大である。
 半島の緊張がさらにエスカレートしようとする新たな時に当たり、圧力の相当部分は中国に降りかかろうとしている。しかし、米朝にはっきり認識してほしいのは、自分たちが引き起こした問題については自分で責任を担うべきであり、中国は米朝が犯した間違いの責任をとることはできないということだ。
 朝鮮は、安保理決議に違反してICBM発射実験に邁進したのであり、さらなる制裁を受ける思想的準備を持つべきだ。中国としては、この時に当たって、朝鮮の誤りの荷物を背負い、朝鮮に代わってツケを支払う理由はない。
 しかし、朝鮮が何をしたとしても、朝鮮に対して貿易の全面禁止及び断交孤立を強いることは間違いであり、中国には、アメリカのこの非現実的な構想につきあう義務はないし、アメリカは中国及び安保理に対する指揮権を持ってはいない。
 実際、アメリカの世論の中には、中国は力を尽くしてきた、事実が証明するように中国に頼っていては朝鮮核問題の解決はできないとする理性的な声が増大している。畢竟するに、事実はもっとも雄弁であり、平壌も、核ミサイル実験停止を拒む限り、中国が朝鮮の懲罰を受けることを回避することを手伝いようがないということはますます分かってきているだろうと信じる。
 半島に戦争が最終的に勃発する可能性は増大しているが、戦争が勃発するかしないかは中国が今後どのように行動するかによって決まることではない。中国の対策は、自らの独立的立場と原則を引き続き維持し、安保理がもっとも合理的な政策をとることを促し、アメリカ及び韓国いずれの過激な要求にも譲歩しないということだ。
 仮にさらにまずい情勢の突然の変化が起こるのであれば、中国としてはそれに向かい合うだけのことだ。我々の対応には十分かつ断固とした準備の備えがあるべきであり、中国の強大な力は、この過程の中で、一点のためらいもなく、中国の国家的利益を防衛するために役割を発揮するべきである。問題を起こしたものはツケを払うべきであり、中国は誰にもツケを負っていない。