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韓国民主化30年:省察と課題(中央日報掲載文章)

2017.11.25.

韓国・中央日報日本語WSは、11月17日付で延世大学教授のパク・ミョンリム署名文章「韓国民主化30年:省察と課題」を掲載しました。この文章は、「成年民主韓国は成就と限界、光と影、明と暗をはっきりと比べることができる」という問題意識の下、韓国市民社会の成熟とは逆に、韓国の政治経済情勢が韓国の民主化に対してきわめて厳しい壁をなしていることを指摘しています。
 私は11月19日付のコラムで、韓国市民社会の政治意識の成熟を感じ取ることができるハンギョレの文章を紹介しましたが、それが「光」であるとすれば、今回紹介する文章は「陰」に関わるものだと思います。韓国政治にはまったく疎い私としては、今回の文章のインパクトも大きく、全文を転載紹介する次第です。

【中央時評】韓国民主化30年:省察と課題
2017年11月17日16時02分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
韓国民主化30周年とろうそくデモ1周年を同時に迎えている。ろうそくは韓国民主主義の現実に対する激烈な反命題だったため、民主化30年の道程がどれくらい劇的だったかに気づくことになる。30年前に街頭を埋め尽くした夢は、今どれほど達成されているのだろうか。1年前の広場の平和は、今国の安定と個別の人生の平安につながっているのだろうか。30年成年民主主義を客観的指標を通じて落ち着いて振り返ってみたい。
最も顕著な点は、成年韓国民主主義が示す相反する現実だ。成年民主韓国は成就と限界、光と影、明と暗をはっきりと比べることができる。膨大な4種類の経済協力開発機構(OECD)集合指標を比較して韓国が辿ってきた道、立っている場所、今後進むべき道を測量してみたい。
まず、国内総生産(GDP)、1人あたりの国民総所得、外貨準備高、輸出、株価、企業規模、先端技術、国際競争、情報技術(IT)、情報化を含めた「経済発展指標」は、民主化以降も持続的な成長を実現した。独裁政権と保守談論の長年の曲解とは反対に、民主主義が経済成長をリードしたのだ。
しかし「国家役割指標」は非常に虚弱だ。税負担率、GDPに対する公共支出、税前・税後のジニ係数と税前・税後の貧困率は最下位水準だ。家計可処分所得に対する公的移転比率もやはり最下位だ。中央政府の雇用比重と中央政府の支出も最下位水準だ。国家の役割は先進民主国の数分の1に過ぎない。
私的個人所得がすなわち市民的・人間的な生活の質になってしまう、国家の役割が不在の不幸な現実だ。国民の人生の現実と必要、意志と要求を法律・政策・予算に反映する通路である議会の規模・予算・権限も最下位・最小レベルだ。
このため「社会公平指標」も全部門を通して非常に低い。GDPに対する全体教育公共負担比率と大学教育公共負担比率は最下位で、平均とは半分も違いが生じる。平均投票率も最下位水準で、高い国々とは比較することさえできない。労組組織率も最下位グループだ。非正規職の比率も最高水準で、平均の倍にもなる。自営業の比率も最高水準だ。人口の半分である女性管理者進出比率は最下位で、女性国会議員の比率も最低レベルだ。
反面、街頭デモや社会葛藤指数は断トツで最高水準だ。議員数も、投票も、労組組織も、女性代表性も低い社会で、街頭デモと葛藤指数が高いのは当然だ。代表の規模も権限も小さく、投票率も低く、労組も組織されていないのに、国民の意見が十分に反映されるような民主主義が可能というのは奇跡だ。自由も福祉も市民が制度に参加(が可能)だから成り立つ。その上、韓国は議会と大統領選挙において国民の意思が全く比例的に代表されることはない。だから当然、制度の外、すなわち道路で叫んでデモをするほかはない民意歪曲政治制度なのだ。
国家役割指標、国民大意=議会民主指標、社会公平指標が低いため、国家の存在理由である「人間尊厳指標」が低くならざるをえない。国家の公的役割がこのように低く、国民参加と意見伝達を保障する民主制度が不備で、社会公平指標が最高の不平等を示しているため、同じ国民、同じ人間としての存在は不可能だ。自殺率は1等で出産率は最下位だ。直系尊属殺人比率、直系卑属殺人比率、交通事故死亡、産業災害死亡、女性権限尺度、労働時間、男性の家事労働時間、老人貧困率などすべての指標でOECD最悪水準だ。調査をするほど「背筋が寒くなる」。
驚くべき点は、一国家内で違う次元の各種指標間で高い相関関係を示していることだ。一社会のすべてのことはつながっている。いかなる部分も別々にアプローチしては解決することはできない。今までのように政治・選挙・経済・教育・労働・福祉を別々に扱えば、韓国はさらに悪い人間状況に陥ることが明らかだ。
民主化以降、韓国社会は最高水準の葛藤を露呈して人間問題の民主的解決に失敗してきた。 前後世界の民主主義、自由、(不)平等、国家発展、人間条件に関するOECD・国際通貨基金(IMF)・国際比較研究の統合指標はすべて議会民主主義、国家発展、社会経済平等、人間尊厳の指標が同じ方向に向かっている点を示している。
韓国は今、韓国型産業化と民主化の光が生んだ闇が非常に深い。これからは、暗・影・否定・黒・悪を一緒に見ずに明・光・肯定・白・善意を一方的に追求する姿は正されるべきだ。出産の絶壁は人間の絶壁であり、結局は生命の絶壁と国家の絶壁に転化するだろう。白と肯定だけを追求していれば、黒と否定がついには白と肯定さえも飲み込んでしまうだろう。
パク・ミョンリム/延世(ヨンセ)大教授・政治学