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韓国外交の分析と提言(環球時報社説)

2017.11.11.

韓国の文在寅政権は内政面では堅実な足取りであり、国民的に高い支持を得ています。世論調査によると、同政権の外交に関しても肯定する国民が多いという結果が出ているようです。しかし、私から見ると、文在寅外交は必ずしも骨太の一貫した原則性を見いだすことができない印象です。
 11月8日付の環球時報社説「トランプの5カ国訪問 韓国が失望しているのはなぜか」は、私の上記問題意識を共有した上で、その分析を行い、韓国外交の根本的問題点にまで踏み込んだ指摘を行っています。私として首肯できる内容であり、大要を紹介します。

 トランプ大統領は7日に韓国を訪問、歓迎式で文在寅の面前で、韓国が購入する米国製軍備品の数量を増加するべきだと提起し、世論に突出した印象を残した。両元首は午後の会談後に記者会見を行い、朝鮮核問題について語ること少なからぬものがあったが、新しい内容はなかった。
 今回のトランプ訪韓に関して、韓国は総じて喜んでいないようであり、最初から、「日本訪問は3日なのに、韓国訪問は2日だ」として悶々とし、このことはワシントンが「日本を重視するほどには韓国を重視していない」ことのあからさまな表れだと見做した。このことに基づく失望感たるや、どうにも払いのけることができないという感じだ。
 ワシントンは確かに「日本をより重視している」が、それは日本の実力が強く、米日同盟は全方位であるのに対して、米韓同盟は建前としては朝鮮に対するものでしかない、等々の理由によるものだ。また、米韓の見解の隔たりは米日間におけるより多い。例えば、東京はアメリカの対朝鮮選択肢すべてを支持すると表明しているのに対して、韓国は、アメリカが朝鮮に対して武力行使する場合には、それに先だってソウルの同意を得ることを要求している。文在寅は朝鮮との対話を行うことについて比較的積極的であり、彼の姿勢はトランプの対朝路線に対してつかず離れずであるようだ。
 しかし、ソウルはアメリカの軍事的保護に頼るという点では徹底しており、融通性を利かす余地がない。韓国では、米韓同盟が長きにわたって安全保障上の生命線であると見做されてきており、この認識は韓国の国家戦略の基本的あり方を深刻に規定してきた。したがって、韓国のアメリカに対する「外交的自立」には限度があるということだ。
 得失にこだわるということは韓国の一大特徴となっている観がある。米日と比較すれば、韓国はなんといっても朝鮮と隣接しており、中国は韓国にとって絶対的な第一輸出市場でもあり、多くの要素が韓国を「引き裂いて」おり、時によって、韓国の政策決定者はコインを投げて表か裏かを見るだけのことしかできないという状況であることは、外部からはなかなか想像できないことだ。
 またこれ故に、韓国はきわめて敏感であり、屈折しやすく、普通の国々にも増して尊重されることを強く求めることになるのだ。
 ところが、韓国にとっての最大の弱みは半島情勢が近年不断に悪化していることであり、このことは韓国が独立自主の立場で国家戦略を組み立てる余地を深刻なまでに圧迫しており、多くの場合、流れにしたがい、情勢に順応するしかなくなっている。半島の緊張がエスカレートし続ける限り、韓国は情勢の虜となるほかなく、各国の利益の間をシャトルするという主体性を発揮することはきわめてむずかしい。
 ソウルとしては、以下のいくつかの根本的問題を整理して明確にする必要があるだろう。
 第一、朝鮮発の脅威は、韓国にとって詰まるところどれほど大きく、どれほど切迫したものであるかということであり、戦略的思考上、「速やかに防空壕に入って身を守る」必要があり、ほかのことにはかまっていられないという類いのものなのか。
 第二、韓米同盟は韓国の安全に対する保障であり、韓米同盟を強化すればするだけ韓国の安全は高まる、という正比例の関係にあるものなのかどうか。
 第三、韓国の安全と朝鮮の安全とはいったいどういう関係なのか。双方は安全を共有する関係なのか、それともゼロサムの関係なのか。
 第四、中国の台頭は韓国にとっていかなる利益関係があるのか。韓国は中米間でいかなる役割を担うべきなのか。
 トランプの訪日時間は韓国よりも長かったが、韓国世論がこの違いについて若干不快であったというのは正常なことだ。しかし、韓国の主流メディアの一部は、政府に対して、アメリカが調整を行うように促すべきだと要求した。…韓国としては、自分はいったい何をしているのかと反省する必要があるのではないか。
 韓国は世界第11位の経済大国であり、その独立自主的能力は現在の実情よりも高いはずであり、半島の平和と安定の実現に対してももっとなすべきことがあって然るべきだ。韓国は畢竟するにシンガポールのような小国ではなく、その外交的行動はシンガポールよりも張力があるべきである。
 ワシントンが日本を重視するようには韓国を重視しないということは、韓国にとって害があることなのか。韓国にある「ハンフリー・キャンプ」は米陸軍の海外における最大の基地であり、韓国の基地をいったん失ったら、東北アジアにおける米駐留軍はアジア大陸から島嶼へと後退しなければならなくなる。軍事力配備を巡る評価こそ、アメリカが韓国を重視する圧倒的出発点である。仮にアメリカが「日本を重視するのと同じ程度に韓国を重視する」のであれば、ソウル防衛の駐韓米軍が「朝鮮だけを相手にする」というボトム・ラインを維持することはきわめてむずかしくなるだろう。
 「強いということ」は、実力に加え、一種の選択でもある。韓国の経済建設は並々ならぬものがあるが、豊かな韓国が「より強くなる」ことを求めるのであれば、それは豊かになることよりもはるかに簡単でないことは確かであり、さらなる試練をくぐり抜けることが求められることになるだろう。