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朝鮮半島問題:安倍首相のトランプ大統領に対する影響力(その2)

2017.10.25.

私事で恐縮ですが、このところ目の調子が芳しくなく、苦しんでいます。パソコンに向かっていると、ものの1時間もしないうちに非常な疲労感と目のひどいかすみに襲われ、根気が続きません。これまでのめがねがブルーライト・カットが入っていなかったためかと思い、急遽新しいのを作ったのですが、今度は度数が合わず(私の右目と左目の近視度は極端な差があるし、乱視の度合いも非常に違います)、疲労感とかすみ度は増すばかり。
 ということで、コラムで書きたいことは増えるばかりなのですが、材料、資料はたまるばかりです。更新が滞ってしまい、申し訳なく思っています。
 しかし、韓国・中央日報が安倍首相とトランプ大統領の「異常な仲の良さ」を伝える3本の記事を掲載しましたので、10月19日のコラムの続報として紹介します。トランプ・安倍の癒着構造が進めば進むほど、朝鮮半島情勢はますます危険な方向に突き進むばかりだと思います。

<トランプ氏、安倍氏に30分間の祝いの電話…一段と密着する日米>
2017年10月24日08時46分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
「強いリーダーが国民から強力な支持を受けたということが非常に重要だ」
安倍晋三首相の圧勝で終わった衆議院選挙の翌日である23日午前11時30分、ドナルド・トランプ大統領が安倍氏に述べた祝いの言葉だ。30分間行われた両首脳による電話会談は、安倍氏の圧勝を祝うためにホワイトハウスからの要請で行われた。トランプ氏が「大勝おめでとう」と伝えると、安倍氏は「実際は長く険しい選挙戦だった」と答えた。
安倍氏はまた「揺らぐことのない両国同盟をベースに最大限の圧力をかけ、政策を変えさせていくと遊説中に強く主張した」と選挙戦の雰囲気を紹介した。あわせて「2週間後の大統領の訪日を期待している。その時に北朝鮮問題などについて腰を落ち着けて話をしよう」と述べ、トランプ氏も「訪日をとても楽しみにしている」と応じた。
安倍氏の説明通り、今回の選挙戦中の遊説では、米国とトランプ氏への言及がない日はなかった。
選挙前日の21日にも、遊説の場で「11月に日本に来たらめぐみさんの両親に会って拉致問題に対する強いメッセージを伝えてほしい』とお願いしたところ、トランプ氏は『シンゾー、分かった。本当に悲しい話だ。米国は全力を尽くして拉致問題解決に協力する』と約束してくれた」(名古屋市金山駅での遊説)と声のトーンを高めた。このため「安倍氏の遊説場はトランプ劇場」という言葉が出回るほどだった。
安倍氏が選挙日をトランプ訪日直前の今月22日に決めたことをめぐっても「安保危機状況でトランプ氏との親交の深さと日米絵同盟の重要性を有権者に最大限ピールする戦略を立てた」という分析がある。「シンゾー」「ドナルド」とお互いファーストネームで呼ぶ2人の蜜月関係は、11月5~7日に予定されたトランプ氏の訪日期間中に最も劇的に現れる見通しだ。
男子ゴルフ世界ランキング3位の松山英樹選手を参加させるなど、安倍氏が心を込めて準備したゴルフのラウンドをはじめ、「おもてなし」と呼ばれる日本式の最高水準の接待をトランプ氏にプレゼントすることが確実だからだ。 
安倍氏の圧勝を契機にした日米同盟の強化は韓半島(朝鮮半島)問題など北東アジア情勢にも相当な影響を及ぼす見通しだ。特に、両首脳間のスキンシップが深まる中で「中国けん制、北朝鮮圧迫」という日米両国の共通した利害がさらに鮮明になれば、北朝鮮問題で韓国の立場がないがしろにされる「コリアパッシング」が一段と進みかねないという懸念の声も上がっている。
ジョージ・W・ブッシュ大統領当時、ホワイトハウス国家安保会議アジア担当上級補佐官を務めた韓半島(朝鮮半島)専門家のマイケル・グリーン・ジョージタウン大教授は、中央日報紙のインタビューで「ホワイトハウスは初めは訪韓はなく日本だけに行きたかったものと考える。しかし、多くの専門家が韓米同盟で強力な連帯を示さない場合、北朝鮮を抑えることはできないと説得して訪韓日程も含まれることになったと聞いた」と伝えたことからも、このような懸念が根拠のない話ではないことが分かる。
世宗(セジョン)研究所のキム・ソンチョル首席研究委員は「安倍氏に対するトランプ氏の信頼が厚いため、東アジア政策で中国の習近平主席や文在寅大統領がいくら他の説明をしてもトランプ氏は安倍氏の言葉のほうを聞こうとする」としながら「特に、トランプ氏が北朝鮮政策において安倍氏と同じような強硬論側に立っているように見えるのも、両首脳の強力な信頼関係が反映された結果だと考える」と述べた。
  安倍氏の執権が今後も続く以上、歴史問題で足を引っ張られた韓日関係に当面の変化はない見通しだ。国民大学日本学研究所の李元徳(イ・ウォンドク)所長は「基本的に大きな変化は起きないだろう」としながら「安倍氏が推進する改憲に弾みがつく状況なので、北朝鮮問題に対する日本との共助を弱めることは国益レベルでは望ましくない」と述べた。
<「トランプ劇場」で勝利した安倍氏、韓国への影響は?>
2017年10月23日15時09分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
#1.「必要に応じていつも電話できるような関係を構築してきました。前回は国連総会で米国大統領としては初めて(拉致被害者である)横田めぐみさんに言及しました。そして11月には再びトランプ大統領と首脳会談を行います」。衆議院選挙前日の21日午後8時、最後の遊説場所である東京秋葉原駅前で安倍晋三首相がこのように叫ぶと、聴衆からは歓声があふれた。
この3時間前、名古屋市金山駅南側出口でマイクを握った安倍氏の言葉はもっと露骨だった。「世界が注目する国連演説でトランプ大統領がめぐみさんの話をしてとても嬉しかった。その後の首脳会談時に『11月に日本に来たらめぐみさんの両親に会って拉致問題に対する強いメッセージを伝えてほしい』とお願いしたところ、トランプ氏は『シンゾー、分かった。本当に悲しい話だ。米国は全力を尽くして拉致問題解決に協力する』と約束してくれました」。
名古屋遊説3時間前に行われた岐阜県遊説も同じだった。行く先々で「トランプ、トランプ」。トランプ氏は衆議院選挙運動期間中、安倍氏の常連レパートリーだった。このため「安倍氏の遊説場はトランプ劇場」という言葉まで飛び出す始末だった。
#2.次は安倍氏と自民党が衆議院比例代表選挙用にテレビ放映した「政見放送」の一部だ。芸能人出身の参議院議員、三原じゅん子氏と安倍氏の間にはこのような会話が行き来した。
三原氏=「思い出すのは2月の首相訪米の時、北朝鮮がミサイルを発射した。その直後、安倍総理とトランプ大統領が2人並んで、毅然とメッセージを発したことです」
安倍氏=「あの時、フロリダの大統領の別荘で、私たちは一日借りて北朝鮮情勢をはじめ、世界の様々な課題を語り合いました。その後、夕食の時にミサイル発射の一報が入った。私が記者の取材に答えるため『席を外します』と申し上げたら、トランプ大統領が『シンゾー、一緒に行くよ』と言ってくれたんです。そして『米国は100%日本とともにある』、こう力強く語ってくれました」
三原氏=「アメリカの大統領とここまでの関係を築いたのは安倍総理が初めてだと思います」
実際、トランプ氏の11月初旬の訪日をあらかじめ把握していた安倍氏が10月22日の衆議院選挙実施を決心したことをめぐり、「トランプの訪日を一種の背水の陣とした可能性が高い」という分析もある。トランプ大統領と自身の強力な連帯を武器に、安保問題を最大イシュー化して野党指導者との差別化ポイントとする戦略を立てたということだ。トランプ-安倍氏の蜜月は、11月5~7日に予定されたトランプ氏の訪日期間中に最も劇的に現れる可能性が高い。男子ゴルフ世界ランキング3位の松山英樹選手を参加させるなど、安倍氏が心を込めて準備したゴルフのラウンドをはじめ、「おもてなし」と呼ばれる日本式の最高水準の接待をトランプ氏にプレゼントすることが確実だからだ。
問題はトランプ-安倍氏の蜜月関係が深まるほど、韓米首脳間の関係が相対的に萎縮する可能性があるという点だ。ジョージ・W・ブッシュ大統領当時、ホワイトハウス国家安保会議アジア担当上級補佐官を務めた韓半島(朝鮮半島)専門家のマイケル・グリーン・ジョージタウン大教授は、中央日報紙のインタビューで「ホワイトハウスは初めは訪韓はなく日本だけに行きたかったものと考える。しかし、多くの専門家が韓米同盟で強力な連帯を示さない場合、北朝鮮を抑えることはできないと説得して訪韓日程も含まれることになったと聞いた」と伝えた。
中国をけん制しなければならない日本と米国の共通した利害がますます一致し、これを後押しする日米トップの個人的なスキンシップが深くなるほど、北朝鮮の核・ミサイル問題解決のための方法論的見解の違いから始まった「コリアパッシング」問題がますます大きく浮上するのではないかというのが専門家の見解だ。
世宗(セジョン)研究所のキム・ソンチョル首席研究委員は「安倍氏に対するトランプ氏の信頼が厚いため、東アジア政策で中国の習近平主席や文在寅大統領がいくら他の説明をしてもトランプ氏は安倍氏の言葉のほうを聞こうとする」としながら「特に、トランプ氏が北朝鮮政策において安倍氏と同じような強硬論側に立っているように見えるのも、両首脳の強力な信頼関係が反映された結果だと考える」と述べた。
自民党の圧勝で終わった衆議院選挙結果に伴う韓日関係の今後について、国民大学日本学研究所の李元徳(イ・ウォンドク)所長は「安倍氏が推進する改憲に弾みがついても、北朝鮮共助にブレーキがかかったり影響を受けたりするような状況ではない」とし「改憲などの問題のために日本との共助を弱めるのは、結局国益レベルでは望ましくない」と述べた。改憲推進など安倍氏の日本国内的リーダーシップと、韓日間の北朝鮮共助問題は分離してアプローチしなければならないという趣旨だ。
<【コラム】文在寅大統領が安倍首相のようにできない理由>
2017年10月24日08時21分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
連合国に敗れて日本が取った最初の措置の一つが占領軍のための「慰安所」設置だった。1945年8月15日、天皇が降伏を宣言してから3日目に日本内務省は外国軍の駐留が予想される都道府県に慰安施設を設置するよう公文書を送った。敗戦8日目に半官半民性格の「特殊慰安施設協会(RAA)が結成され、すぐに東京に米軍専用慰安所1号店がオープンした。RAAは最高級の衣食住提供などを約束し、「特別女性従業員」の募集を始めた。RAAに所属する事業主は皇宮の前で発隊式を行い、新日本の再建と日本女性の純潔のための滅私奉公の決意を固めた。
戦争中に日本は植民地朝鮮の無力な女性を旧日本軍慰安婦として動員した。戦争に敗れると、自国の貧困に苦しむ一部の女性を、占領軍の性犯罪から大多数の女性を守る「防波堤」として利用した。花代として受けたドルは戦後の復興資金として使われた。占領軍のための売春は東西古今どこにでもあるが、戦後の日本のように国が国策事業として進めた例は珍しい。
人間を民族や国籍で分けて日本人はそうだが韓国人はこうだという話を私は好まない。そのような話を聞くたびに違和感を覚える。韓国人、日本人である以前に同じ人間だ。とはいえ韓国人と日本人はやはり違うと感じる時があることは否定しがたい。二律背反だ。
私の考えでは日本人は韓国人より実質的だ。大義名分に縛られるよりも現実に適応し、機会を利用することができる。自分より強い人にはしっかりと頭を下げるが、自分より弱い人は踏みにじる。時には親切で時には残忍な2つの顔で徹底的に実益を取る。よく言えば柔軟であり、悪く言えば二重的だ。 歴代の米国大統領のうちトランプ大統領ほど尊敬や信頼との距離が遠く感じられる人物も珍しいが、安倍首相はトランプ大統領に濡れた落ち葉のようにくっついて「最高の相性」を誇示している。米大統領選挙が終わるやいなやニューヨークに行ってトランプ次期大統領に会った最初の外国首脳が安倍首相だ。トランプ大統領の趣味を狙撃してゴルフクラブもプレゼントした。就任するとトランプ大統領は安倍首相をフロリダにある自分のマー・ア・ラゴ リゾートに招待し、27ホールを一緒にラウンドした。来月初めのアジア訪問でトランプ大統領が最初に行く日本での最初の日程も安倍首相とのゴルフ会談だ。
どんな行動に出るか分からない上司をもてなすことは部下にとって高難度ミッションだ。先日ワシントンポストはホワイトハウス参謀18人にインタビューをし、トランプ大統領を扱う3つの方法を紹介した。一つ目は無条件の称賛。ムニューチン財務長官が最高の境地を見せている。二つ目はマクマスター国家安保補佐官が好んで使う回避戦略。時間が経過する過程で注意を別のところに向ける手法だ。三つ目は静かな反対。異見を率直に伝えるものの、葛藤を外部に露出せず静かに処理する方法だ。マティス国防長官が代表的だ。
どんなことをしたのかは分からないが、安倍首相はトランプ大統領の心をつかむのに成功した。北朝鮮がミサイルを発射し、核実験をするたびに、トランプ大統領が最初に接触する外国首脳になった。北朝鮮問題でトランプ大統領が韓国大統領と5回電話をする間、安倍首相とは13回電話をした。これを通じて安倍首相は強固な日米同盟で国家安保を守ることができる指導者という認識を植え付けた。そのイメージが一昨日の総選挙で有利に作用し、安倍首相は生涯の夢である平和憲法の改正までが可能なほど圧勝した。北朝鮮の挑発とトランプ変数という悪材料を好材料に変え、戦争ができる軍事大国へ進む扉を開いた安倍首相に、改めて日本人の真の姿を見る感じだ。
文在寅大統領はなぜ安倍首相のようにできないのかと嘆く人たちがいるが、それはなぜ韓国人は日本人のようにできないのかというほどあきれるようなことだ。韓国人が日本人のようになれないように文在寅大統領も安倍首相にはなれない。2人の性格と哲学が違い、両国が直面している状況と環境が違う。文在寅大統領は文在寅大統領らしく進むしかない。韓国を訪問するトランプ大統領を最大限に丁重にもてなしながらも堂々と言うべきことは言わなければいけない。
北朝鮮に最大限の圧力を加えるものの対話の扉は開いておく点、外交的解決法が尽きる前の軍事的解決法はいけないという点、いかなる場合にも韓国に対する米国の防衛公約は徹底的に守られるべきだという点、韓国が米国を必要とするほど米国も韓国を必要とする点、韓国に知らせず中国と直接取引をしてはならないという点を明確にしておく必要がある。安倍首相は安倍首相らしく、文在寅大統領は文在寅大統領らしく。それが定石だ。
ペ・ミョンボク/中央日報コラムニスト