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朝鮮核問題:韓国の無力と焦燥

2017.10.15.

1.朝鮮の明確なメッセージ

韓国3紙(朝鮮日報、中央日報、ハンギョレ)WS(日本語)をフォローするようになってかなりの時間が過ぎましたが、相変わらず他者感覚が働かず、もどかしい思いを抱えています。特に関心を持って観察しているのは南北関係ですが、朝鮮からはきわめて明確なメッセージが発せられているにもかかわらず、超保守的な朝鮮日報はもちろんのこと、どちらかというと保守的傾向が強い中央日報さらには「ろうそく革命」の担い手達と積極的に連帯する立場を明らかにしているハンギョレすらも、朝鮮のメッセージを真剣に受け止めた上で韓国の対北政策のあり方を真剣に考えるというアプローチがほとんどと言って良いほど欠落しています。
 トランプ政権はひたすら問答無用で朝鮮を屈服させる政策(政策と呼べるかどうかも疑問です)を追求しています(朝鮮が無条件降伏することがトランプの言う「対話」の始まりになるということでしょう)が、これに対しては例えば10月13日付の朝鮮中央通信は、朝鮮外務省米国研究所の研究者キム・グァンハクの「米国の無分別な軍事的妄動はわれわれをしてやむをえず行動せざるを得なくしている」と題する論評を掲載し、次のように朝鮮の立場を明らかにしています。

今、トランプ一味は戦略爆撃機B1Bが原潜、原子力空母を朝鮮半島の周辺水域に送り込むなど、無分別な軍事的挑発を強行することによって、あえてわれわれに手出ししようとしており、このような軍事的妄動はわれわれをしてやむをえず軍事的に対応しなければならないようにしている。
トランプの無分別な軍事的挑発策動は、われわれが自衛的核抑止力を全面的に強化してきたのが全く正しかったし、今後も最後までこの道に疾走すべきだということを再び痛感させている。
われわれは、米国がわれわれの周辺水域と太平洋が静かな日がなく暴れ、鋭敏な地域で軍事的妄動をこととしていることに関連して、米国の対朝鮮侵略の前哨基地、発進基地であるグアムの周辺に対する包囲射撃の断行をはじめ、自衛的対応措置を取るということについてすでに数回にわたって警告したことがある。
米国の軍事的妄動はわれわれをして、米国を必ず火で馴らさなければならないという決心をいっそう固めさせており、超強硬対応措置の「引き金」を引くようにしている。
今後、朝鮮半島でいかなる衝撃的な事件が起こる場合、その全責任は事理をわきまえずに対策のない空威張りをして朝鮮半島の情勢を最悪の爆発ラインへ追い込んでいる米国が負うことになるであろう。

これほど明確なメッセージはないと言えるでしょう。つまり、アメリカが現在強化している朝鮮に対する軍事圧力を今後も続けるのであれば、朝鮮は膝を屈するどころか、金正恩が前に警告したグアム周辺に対するミサイル「包囲射撃」に踏み切る超強硬対応で応じることがあり得ることを明確にしているのです。そして、これまでのアメリカの圧力に対する朝鮮の対応から判断すれば、これは決して「虚仮(こけ)威し(おどし)」ではないことは誰にも分かるはずです。
 また、文在寅政権に対しては、朝鮮は一貫して、対米追随をやめ、トランプの朝鮮に対する「最大限の圧力と対話(関与)」とキッパリ絶縁することのみが南北関係改善への前提であることを明らかにしてきています。例えば、10月13日付の朝鮮中央通信は、民族和解協議会スポークスマンの同日付談話を発表し、次のように従来からの立場を改めて確認しました。

われわれはすでに南朝鮮当局が打ち出した「制裁・圧迫と対話並行」を基調とする「対北政策」が全く実現不可能なきわめて矛盾的で荒唐無稽な詭弁(きべん)であり、保守一味が追求してきた反統一的かつ反民族的な対決政策のコピーにすぎないということについて聞き分けられるほど忠告した…。
しかし、南朝鮮当局はそれにあくまでも背を向けて米国の機嫌を取りながら反共和国制裁・圧迫騒動にいっそう執ように執着することによって、北南関係遮断のかんぬきをより深くさした…。
特にとんでもないのはいまだに北を制裁、圧迫して対話に臨まざるを得なくするという妄想をしていることだ…。これは結局、同族を敵に対するということを公然とさらけ出したとしか他に見られない…。われわれの忍耐にも限界がある…。
再度明白に言うが、対米追従と北南関係の改善、制裁・圧迫と対話は絶対に両立しない…。
今のように、米国の機嫌を取りながら無分別に振る舞っていれば、北南関係の改善はさておいて、惨たらしい大惨禍だけを呼びつけることになる。
今からでも気を確かにもって民心の要求通りに「対北政策」を根本的に転換する勇断を下し、事大・売国的な対米追従ではなく真に民族のための道、自主統一の道を志向していかなければならない。

2.文在寅大統領の当事者能力欠如丸出し発言

私は、10月11日付の韓国・朝鮮日報(日本語版WS)の「北朝鮮危機:主導的な役割を果たせない文大統領が無力感を吐露」と題する以下の記事(中央日報にも同旨記事あり)に接して唖然としました。

文在寅大統領は10日「このところ安全保障の状況が大変なのは、外部で安全保障上の危機がつくり出されているから。安全保障上の危機に対して、われわれが主導的にどうにかできる条件になっていない」と語った。
 文大統領は、丁世均国会議長、金命洙大法院長(最高裁長官に相当)、李洛淵首相、金竜徳中央選挙管理委員長、金二洙憲法裁判所長権限代行の「5部要人」を韓国大統領府(青瓦台)に招き、昼食会で安全保障の状況について説明した際、このように発言した。…これまで強調してきた「韓半島運転席論」とは異なり、米朝対決の中で主導的役割を果たせない状況への無力感を訴えたもの、と解されている。
 文大統領は今年7月、20カ国・地域(G20)首脳会議に出席した直後にも「われわれが痛切に感じているのは、韓国にとって最も切迫した韓半島の問題であるにもかかわらず、現実的にはわれわれに解決する力が存在せず、合意を引き出す力もないという事実」と語った。(後略)

朝鮮半島の危機が最高度に高まっており、偶発核戦争の危機が迫っているこのときに、「われわれが主導的にどうにかできる条件になっていない」と泣き言しか言えないというのは、完全に当事者能力の欠落です。安倍暴走政治もひどいですが、文在寅無力政治も、違った意味でではありますが、まったく言語道断といわなければなりません。
 以上の発言からは、朝鮮の対米韓メッセージについて真剣に受け止めた上で、危機感を持って現状打開の道を探ろうとする意思のひとかけらも見いだすことができません。トランプの暴走にストップをかけられるのは韓国大統領である文在寅をおいてほかにないし、文在寅が主体的当事者能力を発揮してこそ、南北関係の危機を打開する道が開けてくるはずです。

3.朝鮮日報と中央日報の的外れな文在寅批判

このような文在寅の無責任を極める発言に対して、朝鮮日報及び中央日報は社説(ともに12日付日本語版WS掲載)を掲げて厳しく批判したのは当然です。しかし、韓国としてはどう対処するべきか、という肝心な点になると、朝鮮日報は核の選択肢を重視する主張、中央日報は米韓同盟強化という主張であり、朝鮮のメッセージが那辺にあるかということが最初から念頭にないのです。相手の存在・立場を考えず、もっぱら天動説で自分のことばかり考える、という点では日本の保守主義と似通っています。韓国メディアの問題意識の所在を理解する一端として両社説の要旨を紹介します。

<朝鮮日報社説「北朝鮮危機に「何もできない」と嘆く文在寅大統領」>
 トランプ大統領は10日、北朝鮮が今後新たな挑発行動に乗り出した場合に使用する軍事オプションについてマティス国防長官と意見を交換した。直後にホワイト・ハウスは「マティス長官からの報告と意見交換のポイントは、北朝鮮によるいかなる攻撃にも対応が可能で、核兵器の脅威を阻止するためのさまざまなオプションがあるということだ」と説明した。ちょうどその頃、米国の戦略爆撃機B1Bは東海(日本海)だけでなく西海(黄海)でも爆撃訓練を行った。ところがその一方でこの日、文在寅大統領は最近の安全保障上の危機について「韓国が中心になって何かをできる状況ではない」と発言した。…
 この絶体絶命とも言える国家的危機の中、韓国軍の統帥権者である文大統領が公の席で自国の無力さを嘆くのは、たとえそれが事実だとしても決して望ましいことではない。大統領は国家と国民を守る大きな責任を持っている。韓国軍の最高司令官である大統領が「できることは何もない」とうなだれてばかりでは、前線に立つ兵士たちは誰を信じて戦えばよいのか。また他国は韓国についてどう考えるだろうか。韓国人の生命が懸かった重大問題で、韓国そのものは完全に脇役に追いやられてしまうのか。
 文大統領の無力感についての告白は実は自業自得の側面も大きい。まず戦術核兵器の再配備や独自の核武装など、韓国として考えられる対応は全て自ら放棄した。これらを実際に推進はせずとも、戦略的NCND(肯定も否定もしないこと)によって交渉力を維持することくらいはいくらでもできたはずだった。自分の手足を自分で勝手に縛り上げ、その上で「できることはない」と言っても何ら説得力はない。今からでも「最悪の状況に備えることが大韓民国大統領の責務」と一言でも言えば、状況は大きく変わるだろう。文大統領はつい先日まで「韓半島の運転席に座る」と大言壮語していたが、実はこの言葉自体が文大統領の現状認識の甘さと、幻想にとらわれていた事実を示すものに他ならなかった。今後もこの幻想から抜け出すことができなければ、運転席どころか助手席にも座れない事態に直面するだろう。…
 韓国では今も多くの国民が不安を感じている。米国が北朝鮮の核開発を阻止できなければ、5100万人の国民は金正恩氏の核により奴隷として生きていくしかない。しかし米国が北朝鮮の核開発を阻止するための軍事攻撃に乗り出せば、間違いなく戦争が起こるだろう。国民の誰もが「今後どうなるのか」と不安に駆られているが、このような状況で国民が頼れるのは大統領しかいない。一寸先が闇の状況でこそ、大統領は国民に進むべき道を提示し、先頭に立ってほしい。ところが大統領は今「何もできない」と嘆くばかりだ。もしこの言葉が今後も繰り返されるようでは、大韓民国は「船長のいない船」になってしまうだろう。
<中央日報社説「米軍事オプション危機の中で韓国の外交安保ラインが見えない」>
韓半島を取り巻く状況が尋常ではない。「死の白鳥」と呼ばれるB-1B戦略爆撃機2機が10日真夜中、北朝鮮近隣上空に予告なしに出撃した。先月23日に続き、2回目であるB-1Bの夜間出撃は今後も2~3週間置きに定例化し、北朝鮮の恐怖感を最大化すると伝えられた。そのうえに、トランプ大統領が直接ホワイト・ハウス状況室でB-1Bの出撃を見守ったという伝言が出て深刻性は増している。状況室は2011年当時、オバマ大統領がウサマ・ビン・ラディン射殺作戦を見守ったところで、戦時や戦時に準ずる状況で大統領が軍事作戦を指揮する場所だ。その場所でトランプ大統領はマティス国防長官など米軍首脳部から北核を防ぐための様々なオプションを報告されたという。軍事の行動オプションも当然含まれただろう。このような事実をホワイト・ハウスがあえて異例に公開したのも尋常でない。
これに原子力潜水艦「ツーソン」も10日、鎮海基地に停泊したことが分かった。また、ロナルド・レーガン号とともにルーズベルト原子力空母戦団も発進し、韓半島海域には異例に2隻の空母戦団が留まることになる。トランプ大統領が「戦時司令官」の面貌を誇示する中で、米国の核心戦略資産が次から次へと韓半島に集結しているわけだ。北朝鮮はこれに対抗して「危険千万な妄動」としながら超強硬な対応を決意した。韓半島が一触即発の危機状況にますます近付いている様子だ。
だが、この中で韓国政府の外交安保ラインはどこで何をしているのか、まったく目に見えない。康京和外交部長官は国際外交の舞台で全く存在感が感じられない。チョン・ウイヨン国家安保室長も秋夕(中秋)連休以前から姿が見えないのは同じだ。より一層懸念されるのは文大統領の状況認識だ。文大統領は10日5部要人午餐会で「我々が主導的にどうにかできる環境が整えられていない」と述べた。その間、自信を持って叫んできた「韓半島運転者論」はむなしくなり、「コリア・パッシング」に対する懸念の声だけが高まっている。…
文在寅政府は北朝鮮が挑発するたびに強硬な対応を取ると念を押したが、直ちに対話を提案する言動を繰り返してきた。その結果、韓国は北朝鮮の核脅威の中で米国の信頼まで失う最悪の状況に追い込まれた。このままであれば、米国は韓国政府と協議なしに独自で北朝鮮を刺激する行動を増やし、北朝鮮はこれを口実に核・ミサイル挑発を継続して戦争一寸前まで行く状況も排除できなくなるだろう。
政府がこのような極端な状況を防ぎたいなら、隙間のない韓米連携が優先だ。そして、中国を説得して強力な対北朝鮮制裁で北朝鮮を確かに圧迫してこそ、平壌がまともな苦痛を感じて交渉に応じる余地ができる。当面「対話のための対話提案」はやめるべきだ。強力な圧迫だけが戦争を防止し、対話機会も得られる道になるということを肝に銘じるべきだ。

4.韓国国内の焦燥感の所在

韓国のとるべき政策として、朝鮮日報社説が核オプション(朝鮮日報の社をあげての持論です)を持ち出し、中央日報社説が「隙間のない韓米連携」を主張するのは見当外れも甚だしいですが、しかし、文在寅政権の漂流状態に対する保守言論界のいらだちと焦燥がいかばかりのものがあるかについてはよく伝わってきます。
韓国国内の焦燥感の所在を窺う上では、12日付中央日報(日本語版WS)所掲のパク・ボギュン(同紙コラムニスト)署名文章「朴正熙、金日成を抑えたが…「魔法の北核」で南北競争を再開」及び13日付朝鮮日報(日本語版WS)所掲の権大烈(クォン・デヨル)政治部長署名コラム「韓国を窮地に追い込む「戦争を心配するふり」」が、韓国国内の問題意識の所在を示しており、他者感覚を養う上で参考になります。パク・ボギュン署名文章の主張は、核兵器に関して曲がりなりにも「知識」「意識」がある私たち日本人の多くにとっては違和感を覚える人が多いでしょう。他方、権大烈署名文章に関しては、1972年のニクソン訪中(「ニクソン・ショック」)が日本に与えた焦燥感と似た焦りが韓国保守勢力の間に広がっている可能性を窺わせます。長くなりますが、大要を紹介します。

<パク・ボギュン署名文章>
「朴正熙誕生100周年」が近づいている。…北朝鮮の核挑発は彼の時代を思い出させる。1970年代、在韓米軍は撤収しようとした。朴正熙大統領は核兵器開発に動いた。それは自主国防決断の頂点だった。米国はブレーキをかけた。彼の野望は挫折した。
朴正熙と金日成の対決は激しかった。朴正熙の産業化は国家的貧困を追い出した。北朝鮮の自力更正経済は墜落した。その時期、維新独裁の苦痛と暗闇があった。しかし南北の体制競争は朴正熙の圧勝だった。…(朴正煕死去の)38年後、金正恩労働党委員長の北朝鮮は核武装国として登場した。…
南北の経済・文化力の差は非常に大きい。韓国が圧倒的に優位だ(GDPは北朝鮮の45倍)。…その曲折のドラマは終わるかと思われた。韓国主導の吸収統一論に向かうようだった。しかし…2017年の北朝鮮の反撃は巨大で絶妙だ。大陸間弾道ミサイル発射、そして6回目の核実験の成功(9月3日)。その武力示威で南北の状況は一気に混迷した。
核兵器は「神の一手」だ。その怪力が南北の優劣と格差をもつれさせた。北朝鮮の脅迫は険悪だ。「南朝鮮が廃墟になるかもしれない」。その場面は魔法の絶対武器が成し遂げた大反転だ。それは南北版図の再構成を意味する。…
どのようにこうした状況になったのか。目を開けたままやられたのだ。…その中には誤った判断と無能、怠惰と卑怯というものが混ざっている。その歳月は長かった。91年は韓半島情勢の転換期だ。米軍戦術核兵器の撤収、韓半島非核化宣言(盧泰愚大統領)があった。それで韓国は核兵器と決別した。そこには非核化の模範に北朝鮮も従うだろうという期待があった。
当時、ソ連の崩壊、韓中国交正常化があった。平壌指導部は危機に追い込まれた。彼らの脱出口の摸索は激しかった。切実になれば道が開かれる。…「核兵器は魔法、状況を覆す神の一手だ」。彼らはそこに力と執念を注いだ。…
北朝鮮の外交はあざとい。奇襲と予測不可能、トリックと瀬戸際戦術を交互に結びつける。その術策に米国はやられた。ジュネーブ交渉の米国代表ロバート・ガルーチの告白は衝撃だ(2014年)。「1994年の核凍結合意当時、我々は北朝鮮について知らなかったし、今も同じだ」。米国の関係者らの無知は致命的な負担だ。ヒル国務省次官補と金桂冠外務次官の交渉は2006年からあった。ヒルは有力な交渉家だった。しかし老練な金桂冠に惨敗した。…
北朝鮮の成就は韓国の挫折だ。太陽と包容、圧力と牽制。進歩・保守政権ともに北核を防げなかった。闘志も戦略的感受性も不足した。金大中-金正日会談は和解の象徴だ。盧武鉉政権はその流れを引き継いだ。しかし北朝鮮の核への野心は拡張した。李明博・朴槿恵政権当時、北朝鮮の崩壊の可能性が広まった。「統一は泥棒のようにくる」(李明博)、「統一はテバク(大もうけ/大当たり)」(朴槿恵)はぜいたくな気勢だった。安易と自慢が絡んだ26年。それが今日の北朝鮮の反撃を許した。
韓国の狼狽は何のためか。根本要因は安保の主人意識欠乏だ。韓国は在韓米国に依存する。長い間の恩恵は暗い影を作った。それは米国の核の傘への依存と高みの見物だ。その心理は自らを辺境の従属変数に設定する。安保不感症は根が深い。見物人の心理が強まる。北核危機は以前からある。そのたびに対応と分析は緻密でなかった。韓国の国防費(約395億ドル)は北朝鮮の5倍だ(韓半島先進化財団報告書)。しかし危機対処能力は不十分だった。国防主役姿勢の不足のためだ。…
韓半島で北朝鮮の核独占時代だ。…核武装の潜在力確保は南北体制争いの必須要素だ。北朝鮮は核兵器がない韓国を見下げる。「通米封南」のきっかけになる。核武装の道は段階がある。検討・意思表明・技術動員・実際の保有に分かれる。検討自体が効果的な抑止手段となる。韓国の戦術核接近に中国は敏感だ。それで中国が北朝鮮に圧力を加えるテコになる。 … 核の世の中は単純だ。核兵器で対抗する恐怖の均衡、または現状認定の卑屈な順応だ。第3のグレー選択は成立しない。時間は北朝鮮側に傾いている。核保有者の属性がある。相手を人質にする。…核のない韓国社会は獲物だ。韓国社会は慢性不安感に苦しむだろう。安…恐怖の均衡が南北の共存と共生を保障する。…そうしてこそ核危機の決定的な突破口を探ることができる。 …核武装は技術の問題ではない。リーダーシップの意志と決断の領域だ。 …
勝敗は経済・文化力だけで決まらない。…文大統領は南北競争の優位を維持しなければいけない。歴史の展開に国民との同行は必須だ。北朝鮮の核武装の脅威の実状を知らせなければいけない。状況の共有は国民的な知恵と闘志を結集させる。それが南北体制競争を圧倒する踏み台だ。
<権大烈署名文章>
 外交・安全保障担当の国政担当者は「今懸念すべきことは米国の攻撃ではなく、韓国と米国の国民の『戦争懸念』を理由に、米国が北朝鮮の核を容認し、米国にとって心配の種である大陸間弾道ミサイルについてのみ、北朝鮮と取引することだ」と指摘する。北朝鮮が望むのは、韓国を攻撃する核・ミサイルは公認を受け、米国とは関係改善を進めることだ。一方、米国が容認できないのは、北朝鮮によるICBMの完成だ。そのため、妥協点として、現状凍結論が浮上する。しかし、それは韓国にとっては最悪だ。米国との同盟は弱体化し、北朝鮮は韓国の命脈を握ることになる。
 実際にそういう兆しが見られる。トランプ米大統領は来月、中国で習近平国家主席と会う。そこで北朝鮮の核問題の行方が定まる可能性が高い。それを控え、北朝鮮最高人民会議の金永南は数日前、平壌を訪問したロシア議員に「射程距離3000キロメートルの弾道ミサイルは既に保有した。米本土を攻撃できる射程距離9000キロメートルのミサイルは開発中だ」と述べた。米国に聞かせるためだ。トランプ大統領も最近、軍事行動の検討会合を開く一方、キッシンジャー元国務長官と会った。中国とのビッグディール論に対する助言を聞いたとされる。トランプ大統領は「3000キロメートルまで容認」という妥協に誘惑を感じるはずだ。まして、北朝鮮による最大の被害者となる韓国の政府が「戦争は絶対に認めない」と背中を押すのだから、妥協をためらう理由はない。
 米国を北朝鮮の核の完全除去に集中させるためには、韓国は「戦争が起きても、北朝鮮が核を放棄するまで圧力を加えるべきだ」との姿勢を示す必要がある。米国に「友人があれほど差し迫っているのに、自分たちのことばかり考えてはいられないのではないか」と思わせなければ、核除去にハンドルを切らないのではないか。北朝鮮もその程度まで行かなければ、「これ以上やれば危険だ」と考え始めるはずだ。現在米国は「戦争の危険性を高めてはならない」という韓国政府の姿勢を見て、「交渉面で役に立たない」と思うかもしれない。交渉力を低下させるだけの意見だからだ。それを根拠に米国は「現状凍結」に合意し、「韓国が望む通りに戦争はしなかったのだから、北朝鮮への支援費用は韓国が全て持て」と言ってくる可能性もある。
 リベラル・左派の一部は「このまま戦争が起きたらどうするのか。国民の安全のために戦争を起こしてはならない」と話す。私はその言葉から真剣さを全く感じない。むしろ、自分たちの望む方向に進むために「戦争を心配するふり」をしている勢力が多いと考えている。無論専門家も「緊張が高まる過程で偶発的、局地的な衝突はあり得る」と指摘する。しかし、ソウルなど人口集中地域を攻撃することは自滅行為であり、今後50年以上の権力掌握を夢見る金正恩がそんな選択をするとは思えない。左派自らも「北朝鮮は戦争が起きた瞬間に滅ぶことを知っているため、絶対に戦争はしない」と言っているではないか。いずれ国全体で「戦争をすべきかどうか」を議論する時が来るかもしれない。しかし、現在は「戦争は駄目だ」と必要以上に戦争懸念をあおることの方を心配すべきだ。