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朝鮮経済実績(2016年)

2017.7.25.

韓国銀行は7月21日に「2016年北朝鮮経済成長率推定結果」を発表しました。厳しい国際制裁のもとで実質GDPが3.9%の成長を遂げたということに驚きました。7月22日付韓国・中央日報WS(日本語版)と7月24日付ハンギョレWS(日本語版)がそれぞれ解説記事を掲載していますので、参考までに全文を紹介します。

<中央日報「北朝鮮、昨年の経済成長率3.9%…制裁でも市場効果」>

北朝鮮に対する制裁にもかかわらず、昨年の北朝鮮の実質国内総生産(GDP)は以前に比べて大きく改善したという分析があった。韓国銀行(韓銀)は21日に発表した「2016年北朝鮮経済成長率推定結果」で、昨年の北朝鮮の実質GDPが前年比3.9%増加したと明らかにした。99年の6.1%以来17年ぶりの最高水準だ。
産業別には鉱業(15年マイナス2.6%→16年8.4%)と製造業(マイナス3.4%→4.8%)、農林漁業(マイナス0.8%→2.5%)、電気・ガス・水道業(マイナス12.7%→22.3%)の改善が目立った。
韓銀は2015年まで厳しい状況だった北朝鮮経済が回復に向かったのは「ベース効果」のためだと診断した。しばらく低かった数値が従来の水準に戻ったことで成長率の数値が大きく上昇したという説明だ。実際、韓銀が推定した北朝鮮の実質GDP成長率は7年間、マイナス1.1~1.3%の間で推移していた。
韓銀経済統計局のシン・スンチョル国民所得総括チーム長は「干ばつなどマイナス要因が緩和されたことによる効果が大きく作用した」とし「2015-16年の年平均成長率は1.3%と、1%台序盤の低成長基調が続いている」と分析した。
しかし専門家らは北朝鮮経済がこれより速いペースで成長中とみている。イム・ウルチュル慶南大極東問題研究所教授は「北の内需産業と建設業がかなり活性化し、民間投資も大幅に増え、実際の経済成長率は5%を超えるというのが学界の大半の意見」と話した。
チョ・ボンヒョンIBK経済研究所副所長は「昨年は中国内の鉱物需要が多かったうえ、石炭など鉱物価格が2015年より上昇し、北が鉱物輸出効果を享受した」と診断した。「下半期に入って輸出制裁があったが、民生目的の輸出は許されたため打撃は大きくなかった」という分析だ。
最も大きな動力は市場経済の活性化だ。北朝鮮の市場は個人が金を稼げる私設市場であり、金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の執権後に200カ所から400カ所に増えた。チョ副所長は「昨年、市場が活性化し、北の生産工場の稼働率が高まり、独立採算制で企業の経営自律性も高まった」と伝えた。独立採算制とは、利益の一部を国に納め、残りの経営は企業に任せる制度をいう。北朝鮮は金正恩委員長の執権後の2014年に「社会主義企業責任管理制」を実施し、企業の自立権を拡大する措置を取った。
南北貿易規模は大きく減少した。15年に比べ87.7%減の3億3000万ドルとなった。昨年2月10日に開城(ケソン)工業団地が閉鎖された後、製品などの搬出入がほとんどなかった。南北貿易を除いた北朝鮮の対外貿易規模は65億5000万ドルと、前年比4.7%増加した。輸出(28億2000万ドル)、輸入(37億3000万ドル)ともに増え、動物性生産品を多く輸出し、植物性生産品、繊維類を多く輸入したことが分かった。
昨年の国内経済成長率は2.8%だった。韓銀は「北の経済指標は韓国の価格、付加価値率などを適用して算出するため、他の国と直接比較するのは適切でない」と説明した。

<ハンギョレ「北朝鮮経済、昨年3.9%成長…1人当り所得は146万ウォン」>

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韓国と北朝鮮の経済成長率比較/ハンギョレ新聞社
北朝鮮経済が昨年3.9%成長し、1人当り国民総所得は146万1千ウォン(約14万6千円)と推定された。
韓国銀行は北朝鮮の2016年実質国内総生産(GDP)が3.9%増加し、1999年(6.1%)以来の最高値を記録したと21日発表した。韓銀は「北朝鮮経済が2015年に干ばつなどでマイナス成長(-1.1%)したことに伴う基底効果が大きく作用した」として「2015~2016年の年平均成長率は1.3%で、低成長基調が続いている」と説明した。北朝鮮の経済成長率は、北朝鮮の経済専門機関が作成した基礎資料に基づいて、韓国の国民所得推計方法である国民計定体系(SNA)を適用し推定する。
産業別に見れば、石炭・亜鉛鉱石の生産が増えた鉱業(-2.6%→8.4%)、1次金属・化学製品など重化学工業が好調を示した製造業(-3.4%→4.8%)、水力・火力発電が増加した電気・ガス・水道業(-12.7%→22.3%)の急反騰が成長を牽引した。北朝鮮の鉱工業が国内総生産(名目)に占める比重は33.2%で、サービス業(31.1%)より高い。建設業(4.8%→1.2%)とサービス業(0.8%→0.6%)の増加率は低下した。
北朝鮮の昨年の国民総所得(名目GNI)は36兆4千億ウォン(約3兆6千億円)で、韓国(1639兆1千億ウォン=約163兆円)の45分の1(2.2%)水準と推定された。1人当り国民総所得は146万1千ウォンで韓国(3198万4千ウォン)の22分の1(4.6%)水準だ。昨年の北朝鮮人口は2490万人で、韓国(5125万人)の48.6%だ。
南北交易を除く北朝鮮の昨年の対外交易規模は65億5千万ドルで、前年に比べ4.7%増えた。輸出(28億2千万ドル)と輸入(37億3千万ドル)がそれぞれ4.6%、4.8%増加した。南北交易の規模は昨年朴槿恵(パク・クネ)政府の開城(ケソン)工業団地閉鎖の影響で87.7%急減した3億3千万ドルに終わった。昨年4月以後は南北間の搬出入物量が全くなかった。