トランプ政権と朝鮮
-朝鮮の辛抱/待ち姿勢もそろそろ限界?-

2017.2.19
(補筆)2.21

(補筆)2月20日付の朝鮮中央通信は、同日付の労働新聞署名入り論評の内容の紹介として、3月の米韓合同軍事演習に関し、「トランプ行政府は自分の執権期間にわれわれの「変化」と「崩壊」を実現するという妄想だけをしていて敗北者とらく印を押されて世人の非難と嘲笑だけを受けたオバマ一味の轍をそのまま踏んでいては米国を最終的滅亡へと追い込むようになるということを銘記すべきである」、「現米行政府は総破たんした対朝鮮敵視政策を踏襲しようとするのではなく、政策転換という大勇断を下さなければならない」と、「トランプ行政府」「米現行政府」と始めてトランプ政権に言及しました。「辛抱/待ち姿勢もそろそろ限界?」と書きましたが、早くも名指しになったことを紹介しておきます。

トランプ政権が登場して以来、選挙期間中にトランプが「思わせぶり発言」(2016年5月17日にロイター通信とのインタビューで、「金正恩委員長と対話するつもりはあるか」という質問に「もちろんだ。対話するだろう。 彼と対話するのに何の問題もない」と答えたというもの。同年5月18日付ハンギョレWS)をしていたこともあり、朝鮮はトランプ政権がいかなる対朝鮮政策を打ち出すか、慎重に見守る姿勢を示してきました。例えば、朝鮮外務省の崔善姫米州局長は、2016年11月17日から3日間、ジュネーヴで行われたアメリカの朝鮮半島問題専門家たちとの非公式会談で、「トランプ氏の当選について「北朝鮮の人々も米国人に劣らないほど驚いた」とし、「北朝鮮はトランプ政権の対北朝鮮政策に注目している。トランプ政権の対北朝鮮政策の輪郭が表れるまでは朝米関係改善や朝米対話の可能性を遮断する行動をとらない」と挑発を事実上自制するという立場を明らかにした」と報道されました(2016年12月9日付韓国・中央日報WS)。もっとも、「崔局長は来年2月に予定された韓米合同軍事訓練が実施される場合、北朝鮮の対応は「非常に激しい(very tough)」と脅迫した」ともありました(同WS)。
トランプ政権始動以後の動きは、崔善姫局長が付け加えた後の方向に向かっています。すなわち、予定されている米韓合同軍事演習に対するトランプ政権の強硬アプローチが明らかになってきています。また、安倍首相が訪米して、トランプと一緒にいるさなかに朝鮮が弾道ミサイルの発射実験を行ったことに対するトランプの反応、さらには2月16日に行われた米韓及び米韓日外相会談で従前どおりの対朝強硬アプローチの確認等により、トランプ政権がオバマ政権の「戦略的忍耐」政策から良い方向に転換する「一縷の可能性」を辛抱して見守ってきた朝鮮も、そろそろ忍耐切れに近づいているのではないかと思われます。
むしろ、韓国側報道には、トランプ政権が、オバマ政権による金正恩政権の崩壊を促す「戦略的忍耐」戦略以上に強硬な、朝鮮に対する先制攻撃の選択肢をも視野に入れているとする観測も頻繁に現れています。そうなると、朝鮮が「強硬に対しては超強硬で応じる」ことは明らかです。
 私は、トランプ当選後の朝鮮のアメリカ関連の朝鮮側報道をフォローしてきました。私もまた、トランプ政権が良い方向でオバマ戦略から転換する可能性に「一縷の望み」を抱いてきましたが、事態は甘くないようです。トランプ政権登場後の朝鮮側論調の推移を、経過報告としてまとめて紹介しておきます。強調部分は、トランプ政権に対するメッセージと読み取れる箇所です。

<「労働新聞」 朝鮮の大陸間弾道ロケットを迎撃するという米国に警告>

 労働新聞のこの署名入り論評は、トランプ陣営及び米軍部で取りざたされるようになった、朝鮮に対する先制攻撃論を意識しつつ、それを牽制するものだと思われます。

【平壌1月24日発朝鮮中央通信】朝鮮の大陸間弾道ロケット試射の準備が最後段階に至ったと宣言された以降、米政界では騒ぎが起きている。
米国が数十機のアパッチを南朝鮮占領米軍が駐屯している平沢基地に増派する計画を公開した。
一方、米国防総省は朝鮮の大陸間弾道ロケット試射を追跡監視するために海上に高性能レーダーを移動展開する、どうすると奔走している。
はては、解任直前に米国防長官カーターは記者会見で「もし、朝鮮が発射するミサイルが米国あるいは同盟国の領土を脅かすと推測されれば米国はそれを撃墜する」と言いふらした。
24日付の「労働新聞」は署名入りの論評で、これは、共和国の自衛的措置に怖じ気づいた無分別な連中のヒステリーだと揶揄した。
論評は、米国が朝鮮の大陸間弾道ロケットを迎撃するということは愚行であると警告し、次のように強調した。
われわれと米国は、交戦関係にある。
もし、米国がわれわれの大陸間弾道ロケットに対する迎撃を試みるなら、それはすなわち戦争の導火線に火をつけることになるだろう。
われわれは、南朝鮮とその周辺に戦争殺人装備を投入する米国を自分が死ぬことも知らずに無分別に飛び込む火取り虫にしか見ない。
わが軍隊は、敵のすべての侵略戦争手段はもちろん、対朝鮮攻撃および兵站補給基地まで精密照準打撃圏内に入れてすでに久しい。
われわれの大陸間弾道ロケット試射は、誰かがけなすからとしてやめることではない。
われわれの国防力強化措置はいっそう揺るぎなく続くであろうし、大陸間弾道ロケット試射はすでに公開した通りにわが最高首脳部の決心と意志によって行われる。

<「労働新聞」 米国は対朝鮮敵視政策を撤回する勇断を下すべきだ>

 トランプ政権発足(1月20日)直後に出された労働新聞のこの署名入り論評は、オバマ政権の対朝鮮政策が失敗だったとして、「米国は今からでも、大胆に対朝鮮敵視政策を撤回する勇断を下さなければならない」と、トランプ政権が新しい対朝鮮アプローチをとることを促しています。

【平壌1月25日発朝鮮中央通信】25日付の「労働新聞」は、米国でオバマ執権期間が終わったことに関連してオバマ行政府の対朝鮮政策を解剖した署名入りの論評を掲載した。
論評は、オバマ行政府の対朝鮮政策は失敗したとし、歴代米行政府が傍若無人のように世界にむやみに対していた時代は永遠に米国から立ち去ったと明らかにし、次のように指摘した。
時間は決して、米国のものではない。
オバマ行政府の対朝鮮政策からくみ取るべき深刻な教訓は、時間を巡るわれわれとの対決で米国が絶対に勝てないということである。
米国の策略家らが頭脳を合わせ、高性能コンピュータを動員してち密に作成した時間表がすべてめちゃくちゃになった。
オバマ政権が退任した時刻を基準にして朝米の勝敗関係を見れば、朝鮮は勝利者になって明るく笑っており、米国は敗者になって泣きっ面をしている。
オバマ行政府が強行してきた対朝鮮敵視政策の総破たんからくみ取るべき教訓は、自強力第一主義をとらえた人民の国、先軍朝鮮は何によってもくじけないということである。
現在、米国には選択の余地がほとんどない。
もちろん、米軍部はわが共和国を短時間内に奇襲的に核先制打撃して焦土化する各種の戦争計画を持っている。
ところが、その短時間が米国を最後の滅亡に陥れるおびただしい事態を招くことになりかねないという不安と恐怖が米軍部の足かせとなっている。
時間は、米支配層に米国の最後の滅亡と朝鮮との平和的共存という二つの道のうち、一つの道を選択することを刻一刻と求めている。
流れた時間は、逆戻りさせることはできない。
米国は今からでも、大胆に対朝鮮敵視政策を撤回する勇断を下さなければならない。

<朝鮮外務省代弁人 共和国は今後も自主、平和、親善の対外政策理念に忠実でありつづける>

 トランプ政権発足直後に出された朝鮮外務省スポークスマンのこの談話も、朝鮮外交の基調が自主平和親善であることを確認することで、間接的に政策転換を促す対米メッセージという性格を持っていることは明らかです。

【平壌1月26日発朝鮮中央通信】最高指導者金正恩元帥は今年の新年の辞で、昨年、朝鮮の軍隊と人民が収めた成果を輝かしく総括し、共和国政府の対外政策的立場をはっきりと闡明した。
朝鮮外務省のスポークスマンは26日の談話で、今年、われわれは最高指導者が新年の辞で提示した対外政策的課題を貫徹して尊厳ある自主の強国、核保有国の地位にふさわしく対外関係を積極的に発展させていくとし、次のように強調した。
われわれは必ずわれわれの力でわが国家の平和と安全を守り抜き、世界の平和と安定を守ることにも大いに寄与するであろう。
自主、平和、親善の対外政策理念に従って自主性を擁護する国々との善隣友好・親善協力関係を拡大、発展させていくのは、朝鮮労働党と共和国政府の一貫した立場である。
今年、われわれは歴史的に長い友好の伝統、協力の伝統を有している国々との接触と交流を引き続き拡大し、友好のきずなをより強化発展させるのに力を入れるであろう。
われわれは、思想と体制が異なるとしてもわれわれの自主権を尊重し、われわれに友好的に接するすべての国と関係を改善し、政治・経済・文化分野の多面的な交流と協力を活発に繰り広げていくであろう。
われわれは今年も、国連をはじめとする国際舞台で世界各国と緊密に協力して、不当で不法な反共和国制裁・圧迫騒動をはじめあらゆる強権と専横、二重基準に反対、排撃し、自主的で公正な新しい国際秩序を立て、真の国際的正義を実現するために積極的に努力するであろう。
われわれはまた、対テロ問題と紛争問題、環境問題をはじめとする国際問題を解決し、人類共同の発展と繁栄を図るために共同の努力を傾けていくであろう。
われわれは今後も自主、平和、親善の対外政策理念に忠実でありつづけ、わが共和国の国際的影響力をいっそう高め、対外関係を主動的に、多角的に発展させていくであろう。

<「労働新聞」 朝鮮の宇宙征服の道は革命の道、自主の道>

 この文章は、朝鮮の宇宙平和利用の権利(人工衛星打ち上げ)は対米交渉マター(交渉次第で放棄する可能性がある事項)ではないことを改めて明らかにしたものです。また、「一部の国々はわれわれが衛星を打ち上げることに対して快く思わなかった」とする言及は、国連安保理で対米協調歩調をとってきた中露に対する当てこすりとも読み取れます。

【平壌2月10日発朝鮮中央通信】10日付の「労働新聞」は署名入りの論説で、朝鮮の人工衛星の打ち上げだけを問題視して制裁を加えている米国をはじめとする敵対勢力の策動によって、われわれの宇宙開発事業は闘争を伴っていると明らかにした。
論説は、朝鮮の宇宙征服の道はすなわち革命の道だとし、次のように指摘した。
われわれの宇宙開発は、第一歩から敵対勢力の軍事的圧迫と経済的封鎖の中で行われた。
昨年、わが共和国が地球観測衛星「光明星4」号を成功裏に打ち上げた時も、米国とその追随勢力は常套的な手口通り国連安保理で悪らつな対朝鮮「制裁決議」をつくり上げた。
多くの国々が、朝鮮が衛星の打ち上げを中止しろという米国の要求を受け入れなければ好ましくない結果が出ると懸念し、一部の国々はわれわれが衛星を打ち上げることに対して快く思わなかった。
しかし、人工衛星製作および打ち上げ国としてのわれわれの地位は敵対勢力が否定するからといって決して変わらず、宇宙開発事業は誰かが反対するからといって諦める事業ではない。
いかなる威嚇や圧力も、われわれの意志と決心を変えることはできなかった。
宇宙征服の道は決して平坦な道ではなかったが、われわれは躊躇することなく歩んできた。
われわれの宇宙征服の道は、すなわち自主の道である。
われわれは民族の尊厳と自尊心をかけて宇宙開発を行っており、これはわが党と人民が選択した道である。
論説は、米国とその追随勢力がいくらあがいても、共和国の宇宙征服の道を絶対に阻めないと強調した。

<朝鮮外務省軍縮・平和研究所 朝鮮半島と世界の平和と安全保障のために積み上げた金正日総書記の業績を称賛>

 朝鮮外務省軍縮・平和研究所による報告は、朝鮮半島核問題に関する歴史的経緯に関する、朝鮮としての認識・立場・政策を総括的にまとめたものとしても貴重ですが、この時期に出されたことの対米メッセージ的性格も無視できないと思います。なぜならば、金正日の「先軍政治」路線、「核には核で対抗するという戦略的決断」のいずれもが、アメリカの対朝敵視政策の産物であることを明らかにすることにより、朝鮮半島核問題を根本的に解決するためには、トランプ政権が朝鮮敵視政策をスクラップする以外にないということを明らかにしているからです。

【平壌2月12日発朝鮮中央通信】朝鮮外務省軍縮・平和研究所が、金正日総書記が朝鮮半島と世界の平和と安全保障のために積み上げた業績を伝える記念報告書を12日に発表した。
報告書は、金正日総書記が朝鮮半島で戦争を防止したことについて明らかにした。
国と民族の運命、世界の平和と安全に対する崇高な使命感を身につけた総書記は、先軍革命路線を確固と堅持し、先軍政治を全面的に施した。
どんな代償を払っても、国の防衛力を強化しなければならないという総書記の鉄の意志と精力的な指導によって、朝鮮の国防工業は強大かつ威力ある自衛的国防工業にさらに強化発展した。
先軍政治によってもたらされた無尽強大な国防力は、帝国主義者の侵略策動を粉砕して祖国の安全と社会主義の城塞をしっかり守られるようにした保証となった。
共和国は、総書記が築き上げた強力な軍事的力に基づいて、米国とその追随勢力のエスカレートする軍事的圧力と侵略策動をそのつど余地もなく粉砕した。
総書記は1993年、米国が無謀な戦争演習を行ったことによって朝鮮半島に一触即発の核戦争の危険が生じた時、準戦時状態の宣布と核兵器不拡散条約の脱退という断固たる措置で米国の侵略企図を破綻させた。
わが軍隊は1996年4月、停戦協定を乱暴に蹂躙して軍事境界線非武装地帯に重兵器を引き込んで情勢を極度に激化させた米国と南朝鮮軍部好戦狂らの無分別な策動を断固たる物理的行動で評定した。
1998年の末、米国がわれわれに対する先制打撃計画である「作戦計画5027」を具体的に公開した時には、われわれに手出しする者はこの惑星のどこにいてもわれわれの打撃圏内から絶対に逃れられないという声明を発表し、実際の軍事的能力を誇示して敵の侵略企図を破綻させた。 総書記は、核には核で対抗するという戦略的決断を下した。
これによって、2003年1月10日、共和国政府は10年間中止させていた核兵器不拡散条約脱退の効力を発効させて条約から完全に脱退する断固たる自衛的措置を講じた。
条約から脱退した時から3年後である2006年10月、初の地下核実験を行い、2009年5月には2次地下核実験を行った。
共和国の核保有が持つ抑止効果によって、朝鮮半島での戦争勃発の危険は著しく少なくなるようになった。
総書記が核抑止力を中枢とする自衛的軍事力を強固にし、米国の戦争挑発策動をそのつど粉砕することによって、朝鮮半島と世界の平和と安全は頼もしく守られるようになった。
報告書は、金正日総書記が共和国政府が朝鮮半島と地域で恒久的な平和を保障するための公明正大で現実性のある提案を打ち出し、その実現のために一貫した努力を傾けるように賢明に導いたことについて伝えた。
共和国政府は、1974年3月に朝米間に平和協定を締結することに関する提案、1994年4月に朝鮮半島で戦争の再発を防ぎ、恒久平和を裏付けられる新しい平和保障システムを樹立することに関する提案、1996年2月にそれをより具体化した朝米暫定協定締結提案などで、恒久平和保障システムの樹立を志向した努力をねばり強く傾けてきた。
総書記は、1997年8月4日、国の統一を武力行使に頼らず、平和的方法によって実現することに関する原則的な立場を闡明し、そのために米国が共和国に対する敵視政策を放棄し、朝米間に平和協定を締結して朝鮮半島に新しい平和保障システムを立てるべきだと明らかにした。
2000年10月、総書記の特使の訪米の際に朝鮮半島で緊張状態を緩和し、停戦協定を恒久平和保障システムに変えて朝鮮戦争を公式に終息させるいろいろな方途があるということで見解を共にするという共同コミュニケが発表された。
共和国政府は、朝鮮半島の平和と安全保障のための4者会談、6者会談のような多国間会談にも積極的に参加して問題の論議に真しに臨んだ。
総書記の遠大な祖国統一思想と平和保障構想によって、北南間に多岐の往来と接触、協力が活発となり、ついに2000年に北南最高位級の対面で6・15共同宣言が発表されることによって、朝鮮民族同士が朝鮮半島の平和を保障し、統一を実現することのできる民族共通の統一大綱がもたらされた。
その後、北南間には西海海上で偶発的衝突を防止し、軍事境界線地域での宣伝活動を中止し、宣伝手段を取り除くことに関する合意が採択、履行され、政治、経済、文化をはじめとする各分野での協力が活性化した。
2007年の歴史的な北南最高位級対面では、現停戦システムを終息させて恒久的な平和システムを構築していかなければならないということで認識を共にし、直接関連する3者、または4者の首脳が朝鮮半島地域で会って終戦を宣言する問題を推し進めるために協力していくことで合意した10・4宣言が採択された。
報告書は、朝鮮半島と世界の平和と安全保障のために積み上げた総書記の不滅の業績はこんにち、最高指導者金正恩元帥の非凡な指導によってさらに燦然たる光を放っていると強調した。
共和国の無尽強大な国力がいっそう固められ、北南関係の改善と国の統一がこれ以上後回しすることのできない時代的要求に提起されているこんにち、米国と周辺諸国が朝鮮の戦略的地位と自主統一意志を尊重し、それ相応に政策調整を行うのは、朝鮮半島と地域で恒久的な平和と安全を実現するための現実的な方途になると明らかにした。
金正日総書記が積み上げた不滅の業績が光り輝き、朝鮮半島と世界の平和と安全を頼もしく守っている金正恩元帥の賢明な指導があるがゆえに、共和国は今後も、われわれの力でわが国家の平和と安全を守り、世界の平和と安定を守り抜くことにも積極的に寄与すると報告書は強調した。

<「民主朝鮮」紙 北東アジア地域情勢悪化の根源について強調>

 民主朝鮮のこの署名入り論評は、北東アジア情勢の悪化の原因は「列強の覇権争い」にあるとし、具体的に「中米間の対立」及び「中日間の激化する対立」を指摘したもので、特に中国の行動を米日と同列の覇権争いと明快に(?) 断じたことは、私にとっては「新鮮」でした。

【平壌2月12日発朝鮮中央通信】一部の国々の情勢分析家が新年に入って急激に推進されている南朝鮮に対する米国の「THAAD」の配置が間もなく断行されるようになる共和国の大陸間弾道ロケットの試射に原因があるかのように世論をまどわし、これによって周辺諸国間の不和が激化し、地域の情勢が悪化一路へ突っ走っているかのように荒唐無稽な主張を流している。
12日付の「民主朝鮮」紙は署名入りの論評で、他国に言いがかりをつけて自分らの侵略策動を合理化することに長けている米国の詭弁に相づちを打ち、問題の本質に顔を背ける単純かつ一面的な見解に驚きを禁じ得ないと指摘した。
そして、北東アジア地域情勢の緊張激化がどこに根源があるかについて次のように暴いた。
世界で最も侵略的かつ横暴非道な米国と長々数十年間も直接立ち向かっているわが共和国にとって、国防力の強化は国と民族の存亡に関連する死活の問題である。
わが共和国の「ミサイル脅威」のため、「THAAD」配置問題が生じたと考えるのは、米国の主張を額面通りに受け入れる愚かな考え方である。
それでは、なぜ、北東アジア地域の情勢が絶え間なく悪化一路を歩んでいるのか。
その原因はまさに、列強の覇権争いにある。
中米間の対立は、地域情勢悪化の最大の原因になっている。
中米間の軍事的対立は、北東アジア地域で軍備競争をもたらしており、地域の情勢を劇甚な不安定に追い込んでいる。
北東アジア地域情勢の悪化において無視することのできないもう一つの要因は、中日間の激化する対立である。
この厳然たる現実に顔を背けて現状況の責任がわが共和国の自衛的措置にあるかのように世論を喚起させるのは、北東アジア地域情勢の悪化を防ぐことに何の役にも立たない。

<金正恩元帥が地対地中・長距離戦略弾道ミサイル「北極星2」型の試射を現地で指導>

 安倍首相の訪米のさなかに行われた朝鮮の新型弾道ミサイル発射実験に関する発表文です。多くの指摘があるように、今回の発射実験の最大の軍事的意味は「キャタピラー式弾道ミサイル自走発射台車」による「大出力固体ロケットエンジン」による成功だったことにあります。つまり、アメリカによる先制攻撃を困難にする能力を朝鮮が獲得したというメッセージです。そのことをトランプに突きつけることで、トランプ周辺の動きは強硬さが際立ってきたものの、政権就任来自らの立場を明確にしてこなかったトランプに対して、明確な態度決定を迫る意図が込められていたという通説的理解を、私も共有します。
ただし、念のために確認しておきますが、それはいわゆる「挑発」ということではありません。そもそも「挑発」というのは、強者が弱者に対して仕掛けるものであり、弱者である朝鮮が強者であるアメリカに対して、身の危険を顧みずに行うはずがありません。朝鮮が行った今回の行動の性格は、「真意を見極めるための捨て身の行動」です。

【平壌2月13日発朝鮮中央通信】朝鮮式の新しい戦略兵器システムである地対地中・長距離戦略弾道ミサイル「北極星2」型の試射が12日、成功裏に行われた。
朝鮮労働党委員長、共和国国務委員会委員長、朝鮮人民軍最高司令官である党・国家・軍隊の最高指導者金正恩元帥が、地対地中・長距離戦略弾道ミサイル「北極星2」型の試射を現地で指導した。
最高指導者は、昨年8月、戦略潜水艦弾道ミサイルの水中試射で収めた成果に基づいてこの兵器システムを射程を延ばした地対地弾道ミサイルに開発することに関する課題を提示した。
最高指導者は、地対地中・長距離戦略弾道ミサイル「北極星2」型の開発状況の報告を受けて試射の日を自ら定め、その準備を現地で直接指導した。
最高指導者は、発射当日、試射に先立って軍需労働者階級が自らの力と技術、知恵でつくったキャタピラー式弾道ミサイル自走発射台車を見て回った。
最高指導者は、監視所に上がって地対地中・長距離戦略弾道ミサイル「北極星2」型の試射計画を具体的に了解し、発射開始の命令を下した。
今回の試射を通じて地上での冷発射システムの信頼性と安全性、大出力固体エンジンの始動特性を実証し、能動区間飛行時の弾道ミサイルの誘導および操縦特性、大出力固体エンジンの作業特性、階段分離特性を再確認した。
また、より能力が向上した核弾頭装着が可能な操縦戦闘部の分離後の中間区間と再突入区間での姿勢操縦および誘導、迎撃回避機動特性などを検証し、新しく設計、製作した自走発射台車の機動および運営状態を極悪な地上環境の中で試験、完成し、実際の弾道ミサイルの発射を通じてその技術的指標を完全に確定した。
地対地中・長距離戦略弾道ミサイル「北極星2」型の試射は、周辺国家の安全を考慮して射程の代わりに高度を高める高角発射方式に行われた。
最高指導者は、新しく開発した地対地中・長距離戦略弾道ミサイル「北極星2」型は作戦利用に便利でありながらも打撃の迅速性を保障できる朝鮮式の優れた兵器システムであり、発射台車と弾道ミサイルの設計と製作、発射に至るまですべてのものが100%われわれの知恵、われわれの力、われわれの技術によって開発された名実ともにチュチェ弾、チュチェ兵器であるとし、わが祖国の強大な力を増すわれわれの威力ある核攻撃手段がもう一つ誕生したことに大満足の意を表した。
最高指導者は、今やわれわれのロケット工業が液体ロケットエンジンから大出力固体ロケットエンジンに確固と転換され、見本模倣型ではなく開発創造型工業に非常に強化発展したと述べた。
新しい戦略兵器システムの開発によって今や、わが人民軍は水中と地上の任意の空間で最も正確で、最も迅速に戦略的任務を遂行できるようになったと述べた。
最高指導者は、試射後、地対地中・長距離戦略弾道ミサイル「北極星2」型の試射に参加した国防科学者、技術者と軍人と共に記念写真を撮った。

<目前の現実となっている侵略脅威 朝鮮中央通信社論評>

 この中央通信社論評は、言及はしていませんが、日米首脳会談で明確に再確認された米日の対朝鮮強硬アプローチを踏まえ、朝鮮がトランプ政権に対する「我慢の見極め姿勢」にケリをつけつつあることを窺わせるものだと思います。そのことは、「諸般の事実は、わが共和国の自主権と生存権を抹殺しようとする米国の侵略脅威が目前の現実となっていることを実証している。今、「北の脅威」と「予想できない挑発」を宣伝して「能動的抑止戦略」「大量よう懲報復戦略」の実行に狂奔している侵略者、挑発者、朝鮮半島情勢緊張の張本人は、他ならぬ米国である」と指摘したことから明らかです。
ただし、「米国」という表現で一貫しており、トランプ政権の名指し批判に踏み切っていないことは、朝鮮が最後の一線でまだ踏みとどまっていることを表している、と見るべきでしょう。

【平壌2月13日発朝鮮中央通信】米国が新年の年頭からわれわれの「核・ミサイル脅威」を念仏のように唱えて朝鮮半島に核戦略資産をはじめ各種の殺人装備を大々的に引き込んでいる。
特に、来る3月、南朝鮮のかいらいと共に歴代最大規模の「キー・リゾルブ」「フォール・イーグル」合同軍事演習を強行することを画策し、米空軍の3大中核戦略兵器とされる長距離戦略爆撃機B52、超音速戦略爆撃機B1B、ステルス爆撃機B2とステルス戦闘機F22など膨大な戦争手段を展開させようとしている。
原子力潜水艦、イージス駆逐艦などと、最近、アジア太平洋海域でうろつきまわっている米空母「カール・ビンソン」号の投入も予想される。 これまでの演習期間、米国の原子力空母と原子力潜水艦などが訓練参加の一環として展開されたことはあるが、それ以外の戦略資産の直接展開が論議されるのは非常に異例のことで、国際社会の大きな懸念をかき立てている。
一方、米国は今年中に南朝鮮に対する「THAAD」配備の完了と共に、最新ステルス駆逐艦「ズムワルト」号を朝鮮半島に配置しようと企図している。
諸般の事実は、わが共和国の自主権と生存権を抹殺しようとする米国の侵略脅威が目前の現実となっていることを実証している。
今、「北の脅威」と「予想できない挑発」を宣伝して「能動的抑止戦略」「大量よう懲報復戦略」の実行に狂奔している侵略者、挑発者、朝鮮半島情勢緊張の張本人は、他ならぬ米国である。
われわれが米国の核戦争脅威・恐喝を受けなければならない理由はない。
米国は、ただ思想と体制が異なり、自分らに屈従しないからといってわれわれに前代未聞の政治的孤立と経済的封鎖、軍事的圧迫を加えてきたあげく、核惨禍まで浴せかけようと狂奔している。
われわれは、米国の絶え間ない核脅威・恐喝に永遠に終止符を打とうとする決死の意志と覚悟を持って自衛的国防力を強化し、こんにち、堂々たる核強国となった。
われわれが敵対勢力の核脅威と戦争策動に対処して自力で国家の自主権と尊厳を守り、地域の平和と安定を守り抜くために努力していることに対して誰も疑ってはいけない。
米国は、われわれの戦略的地位が変わったこんにちに至ってまでわれわれの目前で強行する核脅威・恐喝策動がどんな想像しがたい破局的結果につながるのかということについて熟考して対する方がよかろう。
われわれの核砲火を避けられる最上の方途は、われわれの尊厳と安全に手出しせず、自重、自粛することである。

<朝鮮外務省の代弁人 共和国の地対地中・長距離戦略弾道ミサイルの試射に言い掛かりをつけた米国とその追随勢力を糾弾>

 国連安保理は、朝鮮が行った新型弾道ミサイル発射実験に対して非難声明を出しましたが、朝鮮外務省スポークスマンのこの発言は、「米国主導の下」「米国の強権に押さえられて」と2度にわたってアメリカに対する批判を行いました。また、「国連安保理の不当な二重基準行為を見分けようとせず、盲目的に理事会の決議に追従するのは決して、国連加盟国や国連事務総長の義務をまともに履行することにならない」と述べることによって、中露及び国連事務総長の責任をも追及していることも見逃せません。
 なお、2月16日付で朝鮮中央通信社も、「われわれの核戦力高度化措置は合法的権利」とする論評を出しています。

【平壌2月15日発朝鮮中央通信】朝鮮外務省のスポークスマンは、米国とその追随勢力がわれわれの地対地中・長距離戦略弾道ミサイルの試射に言い掛かりをつけたことに関連して15日、朝鮮中央通信社記者の質問に次のように答えた。
13日、米国主導の下、国連安保理はわれわれの試射をいわゆる「決議違反」と言い掛かりをつけて「追加的な重要措置」を講じるという公報文を発表した。
スポークスマンは、共和国の地対地中・長距離戦略弾道ミサイルの試射は、国家の路線である並進路線を貫徹する過程に経ることになる正常な工程の一環だとし、次のように強調した。
最高指導者金正恩元帥は、今年の新年の辞で大陸間弾道ロケット試験発射準備が最終段階に入ったと宣言し、その後、われわれは数回にわたって最高指導者が決心する任意の時刻に核戦力高度化の措置が講じられるということを公式に闡明した。
われわれの核戦力高度化の措置は、米国とその追随勢力の核戦争脅威から国の自主権と民族の生存権を徹底的に守り、朝鮮半島の平和と地域の安全を頼もしく保証する自衛的措置である。
これは、主権国家の合法的権利として、誰もけなすことはできない。
われわれが自衛のために行う試験には「不法」のレッテルを貼り付け、米国と他国が行う試験に対しては一言半句も言えない二重基準の極みである国連安保理は、われわれの正々堂々たる自衛的措置についてけなす資格をすでに喪失して久しい。
国連安保理の不当な二重基準行為を見分けようとせず、盲目的に理事会の決議に追従するのは決して、国連加盟国や国連事務総長の義務をまともに履行することにならない。

核実験とミサイルの試射を不法に規定したのは、国連憲章のどこにもない。
それゆえ、われわれはわれわれの核実験とロケットの試射に「不法」のレッテルを貼り付けた国連安保理の「決議」自体を認めず、今後も絶対に認めないであろう。
われわれは、われわれの正当な要求には顔を背け、米国の強権に押さえられて主権国家の自衛的権利を問題視した国連安保理の公報文を全面排撃する。

<朝鮮半島の情勢をいっそう激化させる米国の武力増強策動>

 2月16日に行われた日米韓外相会談の共同声明において、「「北朝鮮は禁止されている核・弾道ミサイル計画を完全かつ検証可能で不可逆的な方式(CVID, Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)で放棄しなければならない」と強調」する(2月17日付ハンギョレWS)、ブッシュ政権期に確立した朝鮮核問題に関する日米韓の基本的立場が確認されました。この文章をまとめている段階(2月18日現在)では、朝鮮側の直接の論評は出ていませんが、この朝鮮中央通信の記事は、3月に開始予定の米韓合同軍事演習について、「無分別な米国の武力増強策動によって、朝鮮半島の情勢は予測しがたい境地へと突っ走っている」と、朝鮮側の警戒感の高まりを表しています。なお、同日付の民主朝鮮の署名入り論評も同旨です。

【平壌2月18日発朝鮮中央通信】南朝鮮の「聯合ニュース」によると、12日、米帝侵略軍海軍のミサイル追跡艦「ハワード・ロレンチェン」号が釜山港に入港した。
「Xバンド」「Sバンド」レーダーが設置されているこの艦船が南朝鮮に入ったのは、今回が初めてである。
誰それの「挑発」を口実にして米国は、朝鮮半島とその周辺に大々的に武力を増強している。
南朝鮮に「THAAD」を配置しようとあがいているのも、誰それの「挑発」に対処するという美名の下に強行される武力増強策動である。
米国は3月、南朝鮮で行われることになる合同軍事演習に原子力空母戦団「カール・ビンソン」号を投入しようとしている。
グアムと米本土の核戦略爆撃機編隊、日本の本土と沖縄に展開したステルス戦闘機も、南朝鮮に出撃する準備を整えている。
無分別な米国の武力増強策動によって、朝鮮半島の情勢は予測しがたい境地へと突っ走っている。

 このように、朝鮮半島情勢は危険を極める最悪の情勢に向かっているといわなければなりません。朝鮮が警戒する形で米韓合同軍事演習が開始されれば、朝鮮がトランプ政権を名指しで非難することに踏み切る可能性も大きくなるでしょう。
2月17日、中国の王毅外交部長はミュンヘン安全保障会議での演説後、質問に答えて、朝鮮半島情勢が負の循環を続けてきたと指摘した上で、「こうした状況はこれ以上続けていくべきではない。なぜならば、その最終局面は誰もが到底受けとめきれない、全員負けの局面になるだろうから」という切迫した危機感を露わにしました。「最終局面」とは、米韓の先制攻撃で始まり、朝鮮が絶望的に反撃する核戦争であることは明らかです。
 私たち日本人は核廃絶、核のない世界を、と口にしています。しかし、朝鮮半島情勢は本当に核戦争と隣り合わせなのです。それなのに、私たちは「北朝鮮脅威論」で感性をマヒされています。アメリカの先制攻撃に対する朝鮮のミサイルによる反撃は、日本に密集する原発を標的にすることは見やすい道理です(「費用対効果」の原則)。私たちが目を醒まして批判すべき対象は日米であって、朝鮮ではないのです。我が同胞の国際感覚の絶望的な欠落に、私の絶望感も深まるばかりです。