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トランプ政権下の米朝関係
(朝鮮の対米メッセージ)

2017.1.8

金正恩が恒例の「新年の辞」を述べる中で、「大陸間弾道ロケット試験発射準備が最終段階に入った」と言及し、トランプがツイッターで反応して、朝鮮による「攻撃はあり得ない」とつぶやいたことで、トランプ政権のもとで米朝関係がどのように動くのかについて改めて注目が高まっています。トランプがツイッターで思い付き発言を繰り返す軽率さ、危うさが浮き彫りです。しかし私たちとしては、トランプ当選後に朝鮮がどのような対米メッセージを発してきたかを正確に踏まえておくことが今後の米朝関係を判断する上で重要だと思います。私は、トランプ当選後の朝鮮中央通信(日本語)WSの報道をフォローしてきました。以下では、金正恩の「新年の辞」の関連部分をまず紹介します。その上で、その前後の主な対米メッセージを紹介します。
 もちろん問われるべき最大の問題は、トランプ政権が全体として、こういう朝鮮の対米メッセージ・認識を正確に認識し、受けとめるだけの能力を備えているかどうかです。しかし、この点については現時点で判断する材料がまったくないので、今後の課題とするしかありません。

<金正恩の「新年の辞」>

 金正恩の「新年の辞」における対米関係の部分は、次の2箇所です。「大陸間弾道ロケット試験発射準備が最終段階に入った」という発言は、朝鮮の国防力強化の成果を述べる中で行われました(強調は浅井。以下同じ)。

帝国主義者の日増しに悪らつになる核戦争の脅威に対処したわれわれの初の水爆実験とさまざまな攻撃手段の試験発射、核弾頭爆発実験が成功裏に行われ、先端武力装備の開発が活発化し、大陸間弾道ロケット試験発射準備が最終段階に入ったことをはじめ、国防力強化のための驚異的な出来事が相次いで連続して起きたことによって、祖国と民族の運命を守り、社会主義強国建設の偉業を勝利に向けて前進させていくことのできる強力な軍事的保証がもたらされました。勇敢な人民軍は、敵の無分別な侵略と戦争挑発策動を断固粉砕して祖国の安全と革命の獲得物を固守し、無敵強兵の政治的・思想的面貌と軍事技術的準備をより完璧に備えました。国防分野における輝かしい成果は、朝鮮人民に大きな民族的誇りと鼓舞的力を与え、帝国主義者と反動勢力を恥ずべき破滅の道に追い込み、共和国の戦略的地位を一段と高めました。

 「新年の辞」のアメリカに対する直接的なメッセージは次のくだりです。すなわち、「民族離間術策をこれ以上追求してはならず、時代錯誤の対朝鮮敵視政策を撤回する勇断を下さなければなりません」ということと、「アメリカ‥の核の脅威と脅迫が続く限り、また、‥戦争演習騒動をやめない限り、核武力を中枢とする‥先制核攻撃能力を引き続き強化していく」ということとの2点です。
ちなみに、このくだりは主としてアメリカに対するものですが、「自主と正義を貴ぶ国際社会は、朝鮮半島の平和と統一を阻むアメリカと追随勢力の妨害策動に反対すべきであり、周辺諸国は朝鮮民族の統一志向と努力に役立つ有益なことをしなければなりません」ロシア及び中国にも向けられていることは明らかです。

 南朝鮮に居座ってアジア・太平洋支配戦略を実現しようとするアメリカをはじめ外部勢力の侵略と干渉策動に終止符を打ち、民族の本当の主敵も判別できずに同族対決に生きる道を求める朴槿恵のような反統一的な事大主義的売国勢力のしゅん動を粉砕するための全民族的な闘争を力強く展開しなければなりません。
アメリカは、朝鮮民族の統一意志を直視して南朝鮮の反統一勢力を同族対決と戦争へとあおり立てる民族離間術策をこれ以上追求してはならず、時代錯誤の対朝鮮敵視政策を撤回する勇断を下さなければなりません。自主と正義を貴ぶ国際社会は、朝鮮半島の平和と統一を阻むアメリカと追随勢力の妨害策動に反対すべきであり、周辺諸国は朝鮮民族の統一志向と努力に役立つ有益なことをしなければなりません。
われわれは、アメリカとその追随勢力の核の脅威と脅迫が続く限り、また、われわれの門前で「定例」のベールをかぶった戦争演習騒動をやめない限り、核武力を中枢とする自衛的国防力と先制攻撃能力を引き続き強化していくでしょう。われわれは必ずわれわれの力でわが国家の平和と安全を守り抜き、世界の平和と安定を守ることにも大いに寄与するでしょう。

<トランプ当選後>

〇朝鮮外務省「備忘録」(2016年11月21日):トランプが大統領選挙に勝利(11月9日)してから、私が最初に注目したのは、昨年11月21日、朝鮮外務省が発表した「備忘録」です。これは、オバマ政権が追求した「戦略的忍耐」政策、なかんずく米韓合同軍事演習のエスカレーションを糾弾し、「朝鮮半島の情勢激化の根源がわれわれの核・ミサイル実験にあるのではなく、まさに米国の対朝鮮敵視政策と核脅威にあるということを明白に実証していると指摘」するもので、主にオバマ政権の対朝鮮政策を総括的に批判することを主眼とする体裁をとっています。しかし最後に、次のように述べました。これは明らかにトランプ次期政権に向けた最初の明確なメッセージです。さらに言えば、この備忘録は全体として、トランプ政権に対して、オバマ政権の対朝敵視政策及び核威嚇(デタランス)戦略と決別することのみが朝鮮半島問題解決の道だと主張する内容にもなっています。ただし、朝鮮中央通信WS(日本語)は「備忘録」の全文を紹介しているわけではありませんので、その全貌を捉えることはできません。

米国は変わった共和国の戦略的地位をはっきり見て時代錯誤の対朝鮮敵視政策と朝鮮に対する核脅威を撤回する意志を行動で示すべきである」 「これだけがすべての問題解決の出発点になる

〇朝鮮外務省スポークスマンの朝鮮中央通信社記者の質問に対する回答(11月22日):この回答は、ペルーでのAPEC首脳会議でのオバマの発言に対するコメントとして出されたものです。その最後で、次のように述べており、これはトランプ政権を意識したものとみられます。

「朝鮮半島問題解決の根本方途は、米国が変わったわれわれの戦略的地位と大勢の流れをはっきり見て敵視政策を撤回する勇断を下すことである。
米国が時代錯誤の考え方を捨てられないなら、今まで与えられたものより悲惨で苦い結果を招くことになるであろう。」

〇労働新聞署名入り論評「米国は戦略的選択を慎重にすべきだ」(11月25日):「米国に再度はっきりと言うことがある」とした上で、以下のとおり主張しました。ここでは、「朝鮮の核デタランスは交渉の対象にはなり得ない」という主張と、「アメリカの核脅威が存在する限り、朝鮮の核放棄はできない」という矛盾するニュアンスの主張が共存しているところが最大の要留意点です。

 「われわれの核抑止力は、協議のテーブルの上にあげて論議する政治的駆け引き物や経済的取り引き物ではない。
億万金とも換えられない民族の生命、統一朝鮮の国宝である。
われわれの核武装の解除は、いつになっても実現されない妄想である。
われわれは、核兵器の小型化、軽量化、多種化を実現し、この世のどこにも行き届く運搬手段を十分に備えた。
米国は、これをはっきりと認識すべきである。
米国の核脅威が存在する限り、絶対に放棄できないのがわれわれの核抑止力である。
米国の政客に忠告するが、先任者の誤った対朝鮮政策から教訓をくみ取るべきである。
われわれに対する軍事的圧迫は、永遠に通じない。
米国の核脅威と専横が続く限り、核抑止力を中枢とする国防力を磐石のごとく打ち固めるというわが千万の軍民の意志はいささかも変わりがない。
米国の政策作成者らはこれを銘記し、熟考して戦略的選択を正しくすべきである。
これだけが米国を危機から救い、地面に落ちた大国の体面をある程度でも立てられる道である。」

〇朝鮮中央通信社論評「現実的な思考が必要だ」(11月29日):「先日には、マイケル・ヘイドン元米中央情報局(CIA)長官が米紙「ザ・ヒル」に寄稿した記事で、「朝鮮の非核化が不可能な目標」だというのは「すでに10年前から米情報当局内で非公式的に共有していた主張」であると言って大きい波紋を呼んだ」と指摘した上で、以下のように主張しています。上記労働新聞署名入り論評の矛盾した主張(後者だけを強調する内容)です。
注目すべきは、「歴代米行政府が長々数十年間にわたってわれわれに対する圧殺政策の実現に天文学的金額に及ぶ資金をつぎ込んだが、得られたものが何であるのかを深刻に反省してみる必要がある」というくだりです。明らかに朝鮮は、トランプが商売人特有の損得勘定で動く人間であることを見て取ってこういう発言をしているのだと思います。

 「諸般の事実は、米国が戦略的選択を変えなければならない窮地に至ったということを客観的に実証している。…
対朝鮮政策の失敗という明白な事実にもかかわらず、完敗した戦略にあくまでも執着するのは愚かなことであるだけでなく、しまいには危険極まりない選択になるだろう。
米国は、不可能なことを固執してはいけない。
トルーマンからオバマに至る歴代米行政府が長々数十年間にわたってわれわれに対する圧殺政策の実現に天文学的金額に及ぶ資金をつぎ込んだが、得られたものが何であるのかを深刻に反省してみる必要がある。
東方一角に恐ろしく浮上した名実相伴う核強国の戦略的地位をあくまでも否定する片意地では、対朝鮮問題に足が縛られた「超大国」のメンツがさらにつぶれるだけである。
現実を直視しなければならない。
現実的な思考から出発してこそ、賢明な選択をすることができる。

〇労働新聞署名入り論説「朝鮮の力をくじく者はこの世にいない」(12月28日):朝鮮が核・ミサイル分野で「保有できるものはすべて保有し、核戦力完成のための最終関門まで通過した」と指摘し、「われわれの前進を阻める者はこの世にいないとし、いかなる制裁や封鎖、軍事的圧力によってもわれわれを驚かせない」と強調しています。これは、「年頭の辞」における「大陸間弾道ロケット試験発射準備が最終段階に入った」という指摘と同じ意味合いであることが分かります。新年の時の発言に新味があるとすれば、ICBM打ち上げはいつでもできると具体的に述べることで、ICBM打ち上げを行うかどうかはトランプ政権の出方次第であるというメッセージ性を持たせたことでしょう。

 「保有できるものはすべて保有し、核戦力完成のための最終関門まで通過したこの驚異的な事実に世界は大きな衝撃を受けた。
われわれの戦略的地位は最上の境地に上がった。
論説は、われわれの前進を阻める者はこの世にいないとし、いかなる制裁や封鎖、軍事的圧力によってもわれわれを驚かせないと強調した。」

<「新年の辞」以後>

 「新年の辞」が発表された以後も、朝鮮中央通信はいくつかの重要な対米メッセージを報道してきています。

〇朝鮮中央通信社論評「自衛的確抑止力強化は至極正当だ」(1月5日):この論評は、アメリカがミサイル防衛システムを張り巡らせようとしている動きに対してロシアと中国が戦略的確デタランスを強化することで対抗しようとしている動きを紹介した上で、以下のように述べています。
ちなみに、トランプ政権に対するメッセージが直接含まれているわけではありません。しかし、アメリカの核デタランス戦略が「諸悪の元凶」であり、アメリカがその点を認識して改めない限り、露中が核政策を見直すはずもなく、それは朝鮮についても同じだと主張しているわけです。朝鮮は、以上のように主張することで、朝鮮の核ミサイル開発については、アメリカと一緒になって朝鮮を押さえ込もうとしている露中両国をも間接的に牽制したとみられます。

 「 このように、広大な領土と多くの人口、大きな経済力を有している国々も、国家発展と安全保障のために自己の核戦力強化を最優先視している。
いわんや、米国の直接的な核脅威を恒常的に受けているわが国が核抑止力を強化するのはあまりにも当然である。
わが国が米国から受ける核脅威の度合いは、周辺の諸大国が受けるものとは比べられないほどおびただしい。
米国は半世紀以上にわたってわれわれに対する核脅威と恐喝を引き続き強行してきただけでなく、政治的・軍事的圧力と制裁圧迫策動を極大化している。
これに対処して最近、われわれの初の水爆実験と異なる攻撃手段の試射、核弾頭爆発実験が成功裏に行われ、大陸間弾道ロケット試射の準備が最終段階に至ったのをはじめ、戦略核戦力部門で収められた大きな成果はわれわれに米国が強いるいかなる形態の戦争にもすべて対応することのできる威力ある戦略核打撃手段があるということをはっきりと実証した。
わが共和国が米国の無分別な敵視策動と露骨な核脅威に対応して自衛的核抑止力を保有し、強化してきたのは至極正当である。
戦略核戦力を建設して自己の安全を守り、力のバランスを維持するのは今後も依然として国々の核心利益になるだろう。

〇朝鮮中央通信「チュチェ朝鮮の一貫した対外政策理念」(1月6日):この文章は、「新年の辞」が、「党と共和国政府は今後も自主、平和、親善の対外政策理念に忠実でありつづけ、自主性を擁護する国々との善隣友好・親善協力関係を発展させ、真の国際正義を実現するために共同で努力する」と述べたことを紹介した上で、以下のように敷衍しました。2017年における朝鮮外交の基本線を述べたものとしても重視するべき文章だと思います。そして、「過去にはたとえわれわれと敵対関係にあった国だとしても、わが国の自主権を尊重し、われわれに友好的に対するなら関係を改善し、正常化するということがわれわれの一貫した対外政策的立場である」と指摘したくだりはトランプ政権に対するメッセージであることは見やすいことです。

 「新年の辞に明らかにされた対外政策理念は、自主の強国、核強国の地位に上がったわが共和国が対外関係を主動的に拡大、発展させ、民族の尊厳と利益を最上の水準で保障できるようにする原則的問題に明確な解答を与えた綱領的指針である。
わが共和国の戦略的地位は創建以来、最高に上がった。
国防力を強化する上で画期的転換がもたらされ、わが祖国はいかなる強敵もあえて手出しをすることのできないアジアの核強国、軍事強国として浮上し、祖国と民族の運命を守り、正義かつ平和な新世界を建設するうえで主導的役割を果たせる保証をもたらした。
自主は、わが共和国政府が対外関係において堅持している基本原則である。
世界には大国、小国はあっても、高い国、低い国はなく、指示する国と指示を受ける国もない。
すべての国と民族は平等であり、同等の自主権を行使すべきである。
わが共和国は対外関係において自主の原則を徹底的に堅持することによって、歴史の反動層が起こした反社会主義狂風が全地球を吹きまくり、覇権国家の強権と専横がよりいっそう露骨になる中でも変わらず自分が選択した道に沿って力強く前進してくることができた。
わが共和国は、人類の平和と安定を守るために積極的に努力している。
人類の平和念願が新世紀に入っても実現されていないのはまさに、侵略と戦争を追求する反平和勢力のためである。
米国をはじめとする帝国主義者は、いまも力による世界制覇を夢見て戦争政策に執着しており、世界の至る所で平和を破壊している。
力による世界制覇を狙う帝国主義者の戦争策動がいっそう露骨になるこんにち、われわれの自衛的核抑止力は平和守護の威力ある武器になっている。
自主的に、平和に生きようとする人類の理想と念願を実現するためには、各国が友好の旗印を高く掲げて積極的に団結すべきである。
特に、帝国主義者が自分の支配権を維持するために侵略的結託関係をいっそう強めている状況で、反帝・自主的な国々は帝国主義反動勢力の攻勢に団結の戦略で立ち向かわなければならない。
わが共和国政府は、自主、平和、親善の理念の下でわれわれに友好的に接する国々と友好関係を結び、発展させるために積極的に努力している。
過去にはたとえわれわれと敵対関係にあった国だとしても、わが国の自主権を尊重し、われわれに友好的に対するなら関係を改善し、正常化するということがわれわれの一貫した対外政策的立場である。
わが共和国は今後も、自主、平和、親善の対外政策理念を変わることなく守り、世界の自主的発展に積極的に寄与していくであろう。」

〇労働新聞署名入り論説「朝鮮は真の国際正義を実現するために努力する」(1月7日):この論説は、「今後、国際情勢がどう変わり、周辺関係の構図がどう変わろうと、われわれの社会主義制度を圧殺しようとする帝国主義・支配主義者の策動が続く限り、軍事的力をいちだんと強化し、それに依拠して国の自主権と民族の尊厳、真の国際正義を守っていこうとするわが共和国の意志には変わりがない」とするように、朝鮮を「圧殺」しようとするアメリカの動きに対しては断固として対抗していく原則的立場を強調しています。上記1月6日の文章と合わせ、硬軟両様の対応方針を示したものとみることが可能です。
 また、「冷戦の終息後、少なからぬ国々が米国の軍事的圧力と専横に萎縮して原則を捨てて不正義に妥協し、屈従している時」という指摘は、1990年代から21世紀初における、国連安保理で中露両国が対米協調路線をとったこと(その結果、朝鮮の人工衛星打ち上げに対する安保理制裁決議が採択された)に対する批判の意味が込められていることは明らかです。

<朝鮮の対米メッセージ(まとめ)>

 以上から分かるとおり、金正恩の「年頭の辞」における対米メッセージは、11月21日付の朝鮮外務省の「備忘録」から12月28日付労働新聞署名入り論評までの中で発出された対米メッセージを踏まえたもので、特に意外性があるわけではありません。しかし、11月25日付労働新聞署名入り論評で示された、核放棄の可能性に関する矛盾した(それだけに含蓄が残されている)主張については、「新年の辞」は直接言及しませんでした。その点をどのように読み取るのかは、アメリカ次第だということでしょう。そういう含みを持たせた対米メッセージという性格は、1月6日の文章とその翌日(1月7日)の文章の異なる強調ポイントということでもくり返されていると思います。
以上をまとめれば、これまでの朝鮮の対トランプ政権メッセージにおけるポイントは次の諸点です。第一、米朝関係改善の大前提はオバマ政権の対朝鮮政策からの決別であること。第二、特に朝鮮が特に問題にしているのは、アメリカの対朝鮮核デタランス政策撤回及びエスカレートしてきた米韓合同軍事演習の中止という2点であり、これが満たされれば対米交渉に臨む用意があるということ。当面の眼目は合同軍事演習の中止であることはいうまでもないでしょう。第三、米朝交渉における眼目については触れていませんが、この点に関しては、停戦協定の平和協定への転換、そして米朝関係正常化であることは不変でしょう。第四、朝鮮の非核化については今後の交渉に含みを持たせているということ。この点に関しては、米中韓を含め、悲観的見方が大勢です(朝鮮の目的は、インド、パキスタンと同じ扱いを受けることにあるとする)。しかし、私は、朝鮮とインド及びパキスタンとを同日に論じることには疑問があります。後者においては、相互の対立(インドの場合はそれにプラスして中国)が核デタランス政策の基礎にあります。しかし、朝鮮の相手はもっぱらアメリカです。アメリカが確実に脅威ではないと朝鮮が安心できる状況になれば、朝鮮が最終的に非核化に応じる可能性は残されているとみるべきだと思います。
 しかし、トランプ政権が引き続き強硬な対朝鮮政策を打ち出すならば、朝鮮としては従来どおりの強硬な対決政策を行う決意であることもまた見やすい道理です。朝鮮としてはいつでも核ミサイル開発の次なるステップ(核実験・ICBM発射実験)をとる準備を整えつつ、トランプ政権の出方如何によって硬軟両様の対応で応じる用意があることを伝えようとしているのだと判断されます。