21世紀の中米関係(環球時報社説)

2016.09.01.

杭州G20サミットにおける習近平・オバマ首脳会談を前にして、8月29日付環球時報は、「21世紀の重大問題:中米は「敵か友だちか」」と題する社説を掲載しました。8月30日付の同紙は、高飛(外交学院ロシア研究中心主任)署名文章「ロシアの外交包囲網突破の実現要因」を、また、8月31日付の同紙は鄭継永(復旦大学朝韓研究中心主任)署名文章「韓国の対中不健康心理の来源」を掲載しています。いずれも、中国人の国際問題を分析する際の他者感覚・自己内対話の豊かさを理解させるものです。私たち日本人には欠落している他者感覚・自己内対話の重要性を認識する好個の材料を提供していますので、3回にわたって紹介します。今回はまず環球時報社説から。

 杭州G20サミット期間中、習近平とオバマが行う首脳会談はもっとも注目されるバイの会談となる。本年に入ってから中米間の戦略的相互疑念が増大し、南シナ海仲裁及び米韓によるTHAADの韓国配備決定は中米関係に新たな衝撃を与えた。この時にあたり、アメリカ関連の様々な情報を整理することは、アメリカ及び中米関係に対する我々の認識をさらに正確なものとするために極めて必要なことだ。
 アメリカは、中国の国家安全保障に対する最大の現実的問題であるとともに、中国の台頭に対して戦略的抑止を行う動機を持ち得る唯一の国家である。中国の周辺問題が近年悪化していることはすべてアメリカと関係があり、アメリカのアジア太平洋リバランス戦略、特にアジア太平洋を重点とする軍事的再配備は明らかに中国を対象とするものだ。
 オバマ政権のアメリカの戦略態勢は総体として縮小傾向にあり、中国に対しては警戒プラス関与の政策を維持しているが、警戒的要素が増大しつつある。アメリカが中国の台頭を邪魔する手段はコストのかからない、それほど手のかからないものであり、例えば、中国が周辺諸国との間で抱えている問題に油を注ぐとか、イデオロギー的手段で中国国内の反対派世論や自由主義者をそそのかすとかだが、これらはすべてアメリカの「使い慣れた手段」であり、アメリカが本格的に資本を注ぎ込んで中国をめがけてつくり出したものではない。
 中米間の最悪の事態は戦争勃発だが、全面核戦争が勃発しない状況のもとでは、中米が伝統的意味合いにおいて勝敗を決するということは不可能であり、しかも、核戦争勃発は双方にとって耐えられないことであり、リスクと損害があまりに大きく、しかも得るものはあまりにも小さい。以上により、中米双方が平和的手段で矛盾を処理することに対する積極性は、互いに軍事的に対抗することに対する関心よりも高いということになる。
 さらに、中国が経済を発展するにおいてアメリカはもっとも実力があるパートナーだ。このことは、過去30年間において一貫して定数であったし、今後数十年においても恐らく変わることはない。アメリカはNo.1の経済大国であり、最大の技術創造国家でもあり、国際システム構築の発言権を掌握している。これに対して中国は、世界最大の市場の一つとなりつつあり、いくつかの経済指標ではアメリカを追いこしている。したがって、中米協力は双方に対して巨大な利益をもたらしており、この利益が突然消滅することは両国にとって想像もできないことだ。
 中米間には少なくとも90以上の安定した対話メカニズムがあり、軍事から文化に至る大部分の領域をカバーしている。両国はともに相手に対して不安を感じているが、意思疎通を強化することによって深刻な判断の誤りを生むことを避けたいという願望を有している。
 中米が互いに安心できないのは明らかであり、一方で安定した関係を実現しようとするとともに、もう一方で両国関係が最悪の事態に向かう可能性に対してもひそかに準備を行っている。将来の方向性は両国間のやりとりの中で作られていくだろう。アメリカの実力は総体として強く、中国の力も急速に伸びており、両国の駆け引きの中でどちらが主動権を取るかについては判断が難しい。
 旧ソ連と日本の人口規模はアメリカよりも小さかったが、中国の人口はアメリカの4倍以上であり、中国が決定的な誤りを犯さない限り、中国の経済規模がアメリカを追いこすことは時間の問題だ。その時になると、アメリカの軍事的実力と世界システムに対する掌握力が日常的国際関係において優勢を占めるということは、今日におけるほどには容易なことではなくなるだろう。そのような変化を予期するとき、米中両国はともに安易な気持ちではいられない。
 しかし、アメリカがこの自然的な成り行きを遮断するための手段は非常に限られているだろう。アメリカが自らの競争力を高めるか、中国が乱れてアメリカを利するとかいうことを除き、アメリカがほかに何をしても恐らく効果は生まれないだろう。4年に一度政権が換わるアメリカは一貫した強烈な対中政策を実行していくことは極めて困難であり、他方、中国の台頭は畢竟するに十数億の中国人民の勤勉奮発の努力の結果であって、それは時代の潮流であって阻止することはできない。
 アメリカは、中国の台頭をねたみ、心配しており、中国と協力することで利益を図りつつ、ついでに中国に対して面倒を与え、自国のリスクを高めない条件の下で中国が台頭する際のコストを増大しようとするだろう。しかし、アメリカは、中国を抑止するためには代価を惜しまないということにはならないだろうし、平和よりも高い主要目標とすることはないだろう。
 以上よりして、中米が矛盾を解消するスペースは極めて大きい。両国は協力するとともに競争し、「闘って破れず」という状況が引き延ばされ、その間に、両国が互いを認識する上でさらに豊富な座標軸が創造されていくだろう。中米は一時的な尖鋭な対立に基づいて性急な結論を出すべきではなく、歴史的時間は我々の想像力を豊富にする多くの転換点を与えることだろう。