朝日新聞インタビュー(オバマ広島訪問)

2016.07.30.

*7月25日付朝日新聞(大阪本社版)に掲載された私のインタビュー発言記事です。

 オバマ米大統領の広島訪問が高く評価されていますが、広島演説には、プラハ演説から踏み出す内容はありませんでした。最近の報道によれば、オバマ氏は任期の最後に「核の先制不使用を含む核政策の重要な調整」を検討しているといいます。広島訪問で刺激を受け、「核なき世界」という初心に立ち返る衝動に駆られたのかもしれません。
 今回の広島訪問は、日米同盟の変遷の中で位置づける視点が必要です。どういうことか。日米同盟はブッシュ、オバマ両大統領の時代に非常に強化された。日本は集団的自衛権の行使を「合憲」とする閣議決定、続く安全保障関連法の制定により、米国に「おんぶに抱っこ」の関係から、積極的に米国の世界戦略に協力する「持ちつ持たれつ」に変わりました。
 この日米同盟の変質を名実ともに盤石に仕上げるには、のどに刺さった2本のトゲを抜く必要があった。日本の真珠湾攻撃と米国の原爆投下です。日米首脳による広島でのセレモニーによって、トゲが一つ取り除かれた。従って、安倍晋三首相の真珠湾訪問が最後のステップ。日米開戦の日の年末にかけて大きな注目点になるでしょう。
 オバマ氏の核政策の再検討は共和党の強硬な反対に直面しており、安易な期待は禁物です。それに「先制不使用」は、米国内のみならず、米国の「核の傘」にしがみつく安倍政権、韓国・朴政権の強い反発で実現できない可能性が高いと考えざるを得ません。
 いま、私たちに必要な姿勢は何かが改めてはっきりしました。日本の国是である「非核三原則」に徹し、米国の「核の傘」ときっぱり縁を切ること。さらに、米国の世界軍事戦略を厳しく問い直して日米軍事同盟を清算し、憲法に基づく平和外交を展開することです。