朝鮮労働党第7回大会(李敦球分析)

2016.05.17.

5月16日付の中国青年報は、朝鮮半島問題専門家の李敦球署名文章「「七大」後の朝鮮にはいかなる変化があるか」を掲載しました。経済重視が最大の特徴だとするものです。以下に大要を紹介します。
 なお、李敦球は5月3日付中国青年報で、「「亡命」か、それとも「誘拐拉致」か」と題する文章を載せ、中国浙江省寧波市の朝鮮レストラン「柳京」の従業員13人が東南アジア経由で韓国ソウルに「亡命」したとされる事件について、数々の不審点を列挙の上で、朝鮮社会に不安定要因を導くことで朝鮮の「変化」を狙った韓国政府の拉致である可能性が大きいことを指摘し、最後に、「韓国政府に指摘する必要があるのは、朝鮮は主権国家であり、国連加盟国でもあり、朝鮮に「変化」が起こるとしても、朝鮮人の意向と願望とを尊重するべきであり、朝鮮半島は外部からの干渉がない前提の下で自主的平和統一を実現するべきである」と指摘しています。このような大胆な判断を示す文章が中国青年報に掲載されたこと自体極めて注目すべきことだと思いますので、参考までに紹介しておきます。

 朝鮮労働党第7回代表大会が5月6日から9日にかけて平壌で行われた。これは36年を隔てて行われた全国代表大会であり、歴史の節目となる意義を有している。労働党「七大」は経済問題をかつてないレベルにおいて提起し、「経済強国」という目標を明確に提起した。これは、朝鮮の発展の道路における新しい変化を象徴するとともに、国際社会に向けて接触し、開放する姿勢をも表している。
 金正恩の「七大」における4つの報告中、経済工作に関する発言内容は次のようないくつかの特徴がある。
 第一に、経済工作に対する高度な重視が「七大」の最大のハイライトである。4日にわたった会議において、毎日金正恩の報告または発言があった。その中では、朝鮮労働党の歴史の回顧と等の活動の総括以外では、朝鮮経済活動、国防建設、対韓関係及び外交政策などのいくつかの重要領域の中で、経済活動の論述にかかわる内容が、質量ともに他の領域に先んじていた。金正恩は、「経済建設及び核武装建設を並進するという労働党の戦略路線を引き続き確実に貫徹する」ことを強調したが、「経済建設」が前で、より突出した位置に置かれており、この順序は2013年以来一貫して変わっていない。「経済建設」が朝鮮労働党及び国家の中心任務であることは予想できるところであり、この基礎の上で、朝鮮を「経済強国、軍事強国、科学技術強国、文明強国」に建設しようとしている。
 第二に、国情に立脚した科学的経済発展戦略を制定したことである。金正恩は、20世紀90年代の国情を回顧した際、「偉大な金日成同士が逝去し、帝国主義者及びその追随勢力が朝鮮を扼殺するべく政治的軍事的圧力、戦争挑発活動及び経済封鎖を最高レベルにまで高め、加えて深刻な自然災害もあって、朝鮮の経済建設と人民生活は言葉では言い尽くせないほどの試練と困難に直面した」と指摘した。これは、朝鮮の最高指導者が当時の経済の困難な状況に初めて公に言及したものである。金正恩は、以上に鑑みて、朝鮮は「社会主義建設の総路線及び自強力第一主義を長期にわたる戦略路線としてしっかりとつかみ」、「朝鮮の党及び人民は社会主義経済建設を貫徹する戦略路線の闘いを力強く展開し、自力的民族経済の物質的技術的基礎をうち固め、経済強国建設の踏み台を作り出した」と強調した。以上から分かるとおり、朝鮮の「経済強国」建設は国情に基づき、自力更生に立脚したものであり、間違いなく正しい選択である。
 第三に、2016年から2020年にかけての国家経済発展5年計画を制定したことである。これは、金正恩が政権について以来初めて示した経済発展5年計画である。金正恩は、経済発展5年計画の趣旨は人民経済を活性化し、経済の均衡発展を推進し、国家経済の持続可能な発展のための基礎を据えることだと提起した。
 金正恩は、党の新並進路線をしっかりつかみ、エネルギー問題を解決し、人民経済発展の先行領域を推進し、併せて基礎工業分野を正常な発展軌道に乗せ、農業及び軽工業の生産を拡大し、最終的に人民生活水準を向上させると指摘した。とりわけ、電力供給問題を解決することは5年計画の戦略的前提条件であり、経済を発展させ、人民生活を向上させるためのカギでもあり、「電力供給問題」の解決には全国すべての力を傾けなければならないとされた。
 第四に、経済建設における科学技術力の役割を重視することである。
 第五に、朝鮮は対外開放の思いを強くしていることである。金正恩は、「朝鮮の党及び政府は、朝鮮の主権を尊重し、朝鮮に友好的に接するすべての国家と関係を改善し、関係正常化を実現するだろう。過去において朝鮮と敵対関係にあったとしてもそうする」と指摘した。5月8日、「七大」が採択した「朝鮮労働党中央委員会の活動について」と題する決定は、「朝鮮の党及び政府は、思想及び制度の違いを問わず、自主を志向し、正義を熱愛するすべての国家及び民族と団結及び協力し、朝鮮の主権を尊重し、朝鮮に友好的に接する国家と関係を改善し及び関係正常化を実現する。過去において朝鮮と敵対関係にあったとしてもそうする」と指摘している。朝鮮が国際社会との交流及び協力を渇望していることは明らかだ。
 金正恩が政権について以来、経済活動が最重要の位置に置かれている。彼は頻繁に工場及び農村を視察し、民生産業及びインフラ建設を重視し、朝鮮の情況及び人民生活は大きく改善してきた。金正恩は、政権について以来一連の経済振興策を講じてきた。一つは全国農村で「戸別請負制(包産到戸)」を推進し、「労働に応じた所得(多労多得)」を採用し、生産に対する積極性を喚起した。二つ目は2012年に発表した新しい管理方式であり、計画経済の弾力性を強化し、市場経済要素を活発にした。三つ目は内需を拡大し、インフラ建設投資を行い、国家主導で一連の大規模な建設を行った。四つ目は、経済開発区を拡大し、レベルを高めたことだ。五つ目は、経済改革派官僚を抜擢したことだ。例えば、2013年4月に朴鳳柱を首相に再任して経済を主管させ、彼は「七大」では5人の政治局常務委員の一人となった。
 2011年から2015年にかけて、国際社会の厳しい制裁下にあっても、朝鮮経済は5年連続のプラス成長を維持した。これは金正恩の努力を離れてはあり得ない。国際社会は、朝鮮の変化を直視するべきであり、「七大」以後の朝鮮経済は新たな全面的発展の時期を迎えると信じるべき理由がある。