韓国議会選挙結果と朴槿恵政権の前途(李敦球分析)

2016.04.25.

4月23日付の中国青年報は、李敦球署名文章「朴槿恵が「選挙女王」から「レーム・ダック」になったのは何故か」を掲載しました。4月13日に韓国で行われた議会選挙結果に関する李敦球の分析は私には首肯できる内容ですので、要旨を紹介します。

 韓国の第20期議会議員選挙結果は4月14日に判明し、300議席中、最大野党の「共に民主党」(以下「民主党」)が123議席、政権党のセヌリ党が122議席、第2野党の「国民の党」が38議席、正義党が6議席、無所属が11議席となり、野党3党が過半数の議席を獲得し、朴槿恵大統領は「与小野大、3党議会」という新局面に直面することとなった。
 今回の選挙結果は事前の予想を大幅に超えるものであり、多くの民間調査機関が選挙1週間前に発表した世論調査結果では、セヌリ党が150~170議席を獲得して過半数を大きく超えるとしていた。しかるに投票結果は眼鏡が大きくずり落ちるものとなった。
 朴槿恵は、韓国政治において「選挙女王」の称号を勝ち得ており、これまでの政治家としての生涯において、たびたび困難に打ち克ち、劣勢をくつがえし、議会及び大統領選挙で勝ってきた。韓国メディアは、朴槿恵は一夜にして「選挙女王」から「レーム・ダック」へとずっこけ、政治家としての生涯においてまたもや危機に直面することとなったと評している。
 今回の選挙には2つの顕著な特徴がある。一つは若者の投票率が大幅に上昇したことだ。統計によれば、20歳代の投票率は前回選挙より8%上昇し、30歳代は5%上昇した。一般的傾向として、中間層及び20歳代~40歳代の有権者の多くの投票は野党に向けられ、彼らの多くは朴槿恵政権の内外政策に不満を有している。例えば、最大の票田でありかつ伝統的に中間地帯でもある首都圏(ソウル、仁川及び京畿道)では、セヌリ党の議席はわずか35で、総議席数122の1/3にも達しなかった。それに対して民主党は一気に82議席を獲得した。このことは、野党が首都圏で大いに伸長したことを意味している。
 もう一つは中高年層の投票率が顕著に低下したことだ。本来、中高年層は朴槿恵及びセヌリ党の堅い支持層であり、保守的であり、1960~70年代における朴槿恵の父親である朴正煕大統領期の韓国経済の高度成長、民生の著しい改善の時代(それ以前の韓国の経済状況及び国民生活水準は朝鮮にはるかに及ばなかった)を懐かしく感じており、「愛はその身内に及ぶ」ことから、政権与党を強く支持してきた。しかし、今回の選挙においては、朴槿恵の政治運営実績に対する不満のため、伝統的支持層の多くが投票を棄権することで抗議の気持ちを表した。朴槿恵の政治的「大本営」である岭南地方の釜山及び大邱(朴槿恵の故郷)を例に取れば、釜山の投票率はわずか54.8%と全国最下位、大邱は55.5%で下から2番目だった。その結果、セヌリ党が岭南地方で獲得した議席は65議席中の49だった。しかし、前回選挙では失った議席は4に過ぎなかったのだ。
 セヌリ党がこれほどの惨敗を喫した原因は多いが、以下の3点が原因として大きい。
 第一、韓国経済の成長力が鈍っていることが政権党支持率低下の主要原因であること。近年、韓国経済の成長率は低く、国内経済は不振であり、輸出は大幅に減少し、青年層の失業率は日増しに悪化しており、家庭ローン残高は最高を更新し、貧富格差が拡大しており、各界は朴槿恵政権の経済政策の失敗が原因だと批評している。
 第二、セヌリ党における派閥争いが公然化して民意を失ったこと。今回の選挙では、セヌリ党を離れて無所属で立候補したものが7人も当選した。
 第三、朴槿恵政権の対朝鮮及び対外政策に対して人々が失望を感じていること。朴槿恵が政権に就いた当初は、大した実績はなかったとしても、まずまず平穏であったし、一度は韓朝関係の硬直状態を打破しようとしたこともあった。しかし、朝鮮の第4回核実験後は、朴槿恵は国連が対朝鮮史上もっとも厳しい経済制裁を取ることを積極的に推進し、韓国経済が不景気な状況のもとで開城工業団地を閉鎖し、韓米は史上最大規模の合同軍事演習を行って韓朝関係を戦争瀬戸際にまで進ませ、少なからぬ韓国国民特に青年層はこれらを大いに不満とした。また、2015年12月28日、韓日はソウルで外相会談を行い、「慰安婦」問題で最終解決に合意し、「慰安婦」問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認したが、このことは韓国民間団体及び広汎な国民の反対に直面し、論争は今に至るも沈静化していない。さらにまた、韓国経済がますます中国に依存する状況のもとで、朴槿恵政権はアメリカにTHHADシステム配備を要求し、このことに対しても韓国国内では婉曲的な批判が多い。以上に述べた事柄は、最近の韓国外交における3大敗着となっている。
 韓国の民間世論調査機関Realmeterが4月14日から15日にかけて行った世論調査によれば、朴槿恵政権に対する支持率は31.5%であり、一週間前と比較して8.1%下がった。朴槿恵は現在内外政両面で危機に直面しており、今回の選挙は来年の大統領選挙に対する「風向計」ともなり、一連の内憂外患を前にして、朴槿恵は如何に対処して危機を乗り越えることができるだろうか。朴槿恵政権にとっては一大試練と言えるだろう。