イラン核問題に関する国際会合での習近平発言(朝鮮核問題への示唆)

2016.04.03.

アメリカで開催された核サミットの際、4月1日にイラン核問題に関する6ヵ国メカニズム首脳会議が開催されました。その席上で習近平主席が発言した内容を4月2日付で中国外交部WSが紹介しています。その内容は、朝鮮半島核問題の解決に関する習近平自身の基本的考え方を示すものとして注目に値するものだと思います。以下にその発言内容を紹介します。
 ちなみに、習近平は、3月31日に韓国の朴槿恵大統領、そして4月1日にアメリカのオバマ大統領とも個別の首脳会談を行っており、中国外交部WSはそれらにおける習近平の朝鮮半島関連の発言内容も紹介していますので、以下では、順番に紹介しておきます。

<習近平・朴槿恵会談>
 両元首は朝鮮半島情勢についても見方を交換した。習近平は次のように強調した。中国は、半島の非核化実現、半島の平和と安定の維持、対話と協議を通じた問題解決を堅持しており、各国が安保理関連決議を全面的かつ総体として履行することを主張している。中国は、各国が情勢の緊張を強める言動を取ることを避け、この地域の安全保障上の利益と戦略的バランスとが損なわれないようにすることを促す。対話と協議は問題解決の唯一の正しい方向であり、中国は建設的に努力し、6者協議の枠組みのもとでの対話再起動を推進したいと思う。朴槿恵は、当面の半島情勢に関する見方を述べ、関係する問題について中国と緊密な意思疎通を行いたいと表明した。
<習近平・オバマ会談>
 習近平は次のように強調した。中国は終始、朝鮮半島の非核化を堅持し、半島の平和と安定の維持を堅持し、対話と交渉を通じて関係する問題を解決することを堅持している。我々は、各国が総体として、厳格に安保理の朝鮮関係決議を執行し、情勢の緊張を強めるいかなる言動をも取ることを回避するべきであり、他国の安全保障上の利益及び地域の戦略的バランスに影響するいかなる措置も取ってはならないと主張する。

 以上に明らかなように、朴槿恵及びオバマに対する習近平発言は、これまでの中国政府の公式見解を踏襲するもので新味はありません。それに対してイラン核問題に関する会議における習近平の発言はより踏み込んだ内容になっています。中国外交部WSは以下のように紹介しています。発言の重点は明らかにアメリカに向けられていることが分かります。

 現地時間の4月1日、習近平主席は、イラン核問題6ヵ国メカニズム首脳会談に出席するとともに、重要な発言を行った。
 習近平は次のように指摘した。イラン核問題に関する全面的な協議の達成は、素晴らしい、歴史の節目となる大事件であると同時に、その実行は任重くして道遠きものがある。全面的な協議は立派に交渉されたが、その実行もうまく行う必要がある。われわれは、政治的コミットを堅く守り、約束の実行が上っ面だけとならないことを確保する必要がある。外部の妨害を排除し、他の問題が引き起こす矛盾によって約束の全面的履行が影響を受けないように確保する必要がある。
 習近平は次のように強調した。今日の世界は相変わらず太平ではなく、国際的なホット・イッシューはあちこちで起こっており、グローバルな安全保障ガヴァナンスを弛めることはできない。イラン核問題の解決は、我々に少なからぬ示唆を与えている。第一、対話と交渉はホット・イッシュー解決の最善の選択である。対話と協議は時間とエネルギーを消耗するが、成果はしっかりしたものとなる。第二、大国間の協力は、重大紛争を処理するための有効な道筋である。国際社会は運命共同体だ。大国は、イラン核問題における6ヵ国のように、問題解決の大黒柱となるべきだ。第三、公平及び公正は、国際約束達成の基本原則である。各国の正当な関心は適切に解決するべきだ。国際紛争は公正に解決するべきであり、二重基準ではうまくいかない。第四、政治的決断は、交渉のブレークスルーを推進するためのカギとなる要素だ。各国は、主要矛盾を把握し、カギとなるときに決断を行うべきだ。

 ちなみに、4月1日付の朝鮮中央通信は、「朝鮮国際政治問題研究所の論評員が、現世界政治秩序の不公正さを暴露する記事を発表した」とする紹介記事を掲載しましたが、その中で、名指しはしないものの、「体面と名分をそんなにも重視するという一部の大国」、「血でもって成し遂げた共同の獲得物である貴重な友誼関係もためらうことなく投げ捨て、この国、あの国と密室結託」という表現で、明らかに中国を非難する、次のような指摘を行っています。このような見方からすれば、習近平の上記発言は許しがたいものと映ることでしょう。

問題は、体面と名分をそんなにも重視するという一部の大国まで米国の卑劣な強迫と要求に屈従し、はては三文の値打ちもない親米娼婦の鼻持ちならぬスカート旋風に相づちを打つ想像外の汚らわしい事態が公然と起きていることである。
血でもって成し遂げた共同の獲得物である貴重な友誼関係もためらうことなく投げ捨て、この国、あの国と密室結託してつくり上げたいわゆる結果物で 正義と真理を踏みにじろうとする惨憺(たん)たる現実の前で、われわれは世界政治の虚像と真実を再度明白に見抜くことになる。