ラブロフ外相の日露関係発言(中国側見方)

2016.01.31.

ロシアのラブロフ外相が1月26日に行った日露関係に関する発言は、中国でも関心を集めたようです。1月30日付の環球網は、同紙論評員の労木署名文章「ロシア外相の一言、日本の「4島」の思いを断ち切る」を掲載しました。ラブロフ発言は日本に向けたものであると同時に、ロシア国内、中国及びアメリカにも向けて行われたものであるとするその見方は傾聴に値すると思います。大要を紹介しておきます。

 ロシア外相ラブロフの26日の発言は極めて衝撃力があるものだった。彼は、モスクワは日本との平和条約を領土問題解決と同義であるとは考えていないとし、日本に対して第二次大戦の結果、すなわち北方4島(ロシアは南千島群島と称する)をソ連領土とし、ロシアによって実際に支配されている現実を受け入れることを要求した。彼の今回の発言は音響周波数がすこぶる高く、遠くまで伝わり、四方八方にまで届くものだった。実際、彼の発言は関係方面に聞かせようとするものだった。
 ラブロフ発言はまず日本に聞かせるものだった。安倍は数日前、ロシアをG8に呼び戻すことを呼びかける形でプーチンが日本で開催するG7サミットに出席することを要請することにより、今後プーチンと北方4島について交渉する際に、日本にとって有利な結果を獲得するというお返しを狙った。ところがラブロフはあたかもプーチンに代わって回答したようなもので、ヤルタ協定に基づいて4島はロシア領土であり、日本は「取り戻す」という考えを持ってはならないと述べたのだ。
 北方4島問題に関しては、日ソ及び日ロ間では1956年、1993年及び2013年の3度にわたって会談が行われており、ソ連・ロシアが日本に示した最優待価格は4島の3%を占めるに過ぎない色丹及び歯舞を引き渡すが、その条件はアメリカ軍が日本から撤退する必要があるというものだ。日本はこれに応じず、4島一括返還を要求している。今やロシアは日本が第二次大戦の結果を受け入れることを要求しており、2島の返還というチャンスすら失われたようだ。
 ロシア外相の発言はロシア国内向けでもある。「ロシアの領域がいかに大きいと言えども、一寸の土地も余分なものはない」というのが、ロシア民族の牢固とした領土に対する考え方だ。北方4島はロシア太平洋艦隊の進出の要害を扼しており、戦略的重要性は極めて高く、いったん日本の手に落ちれば、アメリカが手を染める可能性は極めて高く、そうなればロシアに対して巨大な脅威となる。ラブロフ発言は、ロシアの人々に精神安定剤を与えると共に、反対勢力がプーチンに対する不満を煽る口実を与えないようにというものである。
 最近の日本は釣魚島問題で中国に対してことのほか横暴な態度を取っており、軍事力で解決すると脅迫している。アメリカのハリス司令官は最近、「釣魚島が中国の攻撃に見舞われたら、アメリカは必ず防衛する」と言い放ったが、これは、アメリカがはじめて中国を名指しし、日本を助けると明らかにしたものだ。ちょうどそういう時のロシアの態度表明であり、これは中国に対して、ロシアは第二次大戦戦勝国が達成した協定を守り、領土問題で日本に譲歩し、その侵略主義を助長するということはあり得ないと告知したのと同じである。つまり、中露全面戦略パートナーシップとは相手の核心的利益を尊重するということであり、思いつきで発言するという類のものではないのだ。
 ラブロフ発言に対して、日本の加藤副官房長官は絶対に「受け入れられない」と述べた。受け入れられないとしても受け入れなければならないのであり、ロシア外相発言は国際文書に依拠したものである。ポツダム宣言第8項は、「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」と明確に規定している。北方4島は日本の主権の中に含まれていない。アメリカのルーズベルト大統領はポツダム宣言の署名者の一人であり、アメリカとしてはこれをひっくりかえすことはできず、日本がロシアに対して北方4島返還を要求しても、助けるすべがない。したがって、ラブロフ発言はアメリカ向けでもあると言える。
 日本とロシアとは、関係を改善する願望と必要がある。ロシアはこの2年間経済困難であり、西側が制裁を解除した後には、日本の資金及び技術援助を得たいし、日本はロシア極東地域に前々から虎視眈々であると同時に、日露関係改善を通じて隣国すべての関係が悪いという外交局面を打開したいと考えている。しかし、北方4島問題の存在は、両国の間に打ち込まれた楔のように、日本をしてロシアとの関係を近づけることを難しくしている。