朝鮮核問題に関する中国側論調

2016.01.27.

最近の朝鮮半島核問題特に朝鮮の核開発に関する中国メディアの取り上げ方は、私から見ると、注目すべき点が少なくありません。1月26日付の環球時報が朝鮮外務省軍縮平和研究院の崔恩珠研究員署名文章「平和協定締結が朝鮮南北統一の早道」を掲載したのもその一つです。しかも同紙は、1月16日付で韓国慶熙大学の周允在教授署名文章「朝鮮核、各国はこれ以上バラバラに動くことは許されない」も掲載しています。環球時報の注目を要する社説及び中国の専門家の興味ある主張もこれまでに1月14日付、同15日付、同18日付及び同20日付のコラムで紹介してきました。李敦球は、同23日付の中国青年報でも「アメリカは何故に朝鮮核問題の責任逃れをするのか」と題する文章を発表しましたし、同日付の環球網は、中国人民大学の呉日強教授署名文章「朝鮮の第4回核実験が水素爆弾でないことは間違いなし」をそれぞれ掲載しました。さらに、ケリー国務長官の訪中を前に、朝鮮に対する強硬な制裁措置に中国の同調を要求することが予想されるケリーに対する明確な牽制球として、同27日付環球時報は「制裁は断固としたものであるべきだが、朝鮮の民生に打撃を与えることは避けなければならない」と題する社説を掲げています。
 韓国の周允在文章は、アメリカが中心となって進めてきた朝鮮に対する「アメとムチ」の政策は、もはやカードを出し尽くしてしまっていて、これ以上の効能は期待できないとし、今議論されているのはムチの範囲と規模を拡大することに過ぎないと指摘しています。そして、「米韓は朝鮮敵視政策を放棄しなければならないことは疑問の余地のないところだ。そうでないと、朝鮮は核開発を停止することはあり得ないからだ」と、私から見れば至極まっとうな主張を行っています。ちなみに、周允在文章の今一つ興味深い指摘は、朝鮮の核開発に利益を見出しているのは日本だとし、朝鮮の核実験は「普通の国」実現を目指す日本によって利用されていると指摘していることです。
 朝鮮の崔恩珠文章は朝鮮の公式見解をくり返すもので、内容的に新味があるわけではありません。しかし、ケリー訪中を直前にしたこの時期に、環球時報があえて朝鮮の学者による文章を掲載すること自体が、中国側の認識の所在を示す強烈な対米メッセージであることは疑う余地がありません。また、私は韓国の周允在文章については最初あまり深く詮索しなかったのですが、朝鮮の崔恩珠文章が同じ環球時報に掲載されたのを見て、環球時報のきめ細かい編集方針の一端を垣間見る思いを味わいました。
 崔恩珠文章は公式見解をくり返すものだと述べましたが、私にとっては認識を深める上での有益な指摘もあります。朝鮮の第4回核実験は、朝鮮のアメリカに対する平和協定締結呼びかけをアメリカが無視したことに対する警告である(逆にいえば、アメリカが朝鮮の提案に応じれば、朝鮮は核実験を停止し、交渉への途をオープンにする用意がある)という対米メッセージであるという理解については、李敦球と私が一致するところです。二人の事実認識が異なっていたのは、朝鮮の対米提案は2015年1月から始まっていたとする李敦球に対して、私は8月危機後の朝鮮外相の国連総会演説が起点であるという見方だった点です。
 崔恩珠文章はこの点に関し、次のように述べています。

 我が共和国の、停戦状態を終結し、半島の平和的統一を実現するために必要な環境をつくり出すという立場は終始一貫したものだ。2015年1月、我が方が提出したアメリカが合同軍事演習を停止することと朝鮮が核実験を暫定的に停止することとを交換するという提案は、平和協定締結のために好ましい雰囲気と条件をつくり出すためのものでもあった。同年8月、朝鮮半島が直面した一触即発の危機を乗り越えた後、我が方は再度平和協定締結の提案を行った。ところが、我が方の平和提案に対し、アメリカは合同軍事演習を強行することで答え、平和協定締結の提案に対して、アメリカは朝鮮半島周辺海域に空母を配備することで答えた。

 以上の指摘からはっきりすることは次の2点です。第一、朝鮮の新しい対米提案が開始されたのは、李敦球指摘のとおり2015年1月であること(私はそのことに気付いていませんでした)。第二、8月危機を受けて朝鮮は再度対米提案を行ったということ。8月危機が朝鮮の対米外交アプローチを強める契機となったという点では、その点を重視する私の見方が、8月危機には何ら言及しない李敦球の見方よりも事実に即しているということです。
 以下におきましては、1月23日付中国青年報所掲の李敦球文章、同日付の環球網所掲の呉日強文章及び27日付環球時報社説の内容を紹介します。

1.李敦球文章

 李敦球文章の核心は、朝鮮の核問題の責任を中国に押しつけようとするアメリカの本心は、自らが負うべき責任を回避し、逃れようとすることにあるという中国側認識をズバリと指摘するとともに、アメリカがそういう逃げの姿勢をとる背後には、アジア太平洋リバランス戦略を維持するためには朝鮮の核問題が解決されるのは都合が悪いというアメリカの戦略的判断があるという問題の急所をもズバリと指摘した点にあります。朝鮮核問題を解決するためにはアメリカの戦略全体の根本的転換が前提になる、という中国側の認識の最大公約数が凝縮されていると思います。

 朝鮮が水素爆弾の実験に成功したと発表して以後、アメリカ及び西側の一部の世論は、鬱憤と怒りを中国にぶちまけ、朝鮮核問題における「中国責任論」をまき散らしている。王毅外交部長は1月7日、アメリカのケリー国務長官の求めに応じて電話会談を行ったが、その後ケリーはCNNに対して、「中国の朝鮮に対するアプローチはすでに失敗した」と述べた。このケリーの発言に対して、中国外交部の華春瑩報道官は15日に記者の質問に回答し、「中国は半島核問題の主要矛盾ではなく、問題解決のカギも中国にはない」と述べた。また王毅外交部長も15日に記者の質問に答え、「中国は半島核問題の主要矛盾ではない。各国が再度感情的な発言を行わないことを希望する」と述べた。
 では、半島核問題の由来とポイントは一体何なのか。アメリカは何故責任を中国に押しつけようとするのか。卑見を提起しようと思う。
(半島核問題の由来)
 朝鮮半島の核問題の起源は冷戦時代にあり、アメリカは1957年に韓国に戦術核兵器配備の準備に着手し、1962年に配備を完了した。配備されたのは核地雷、地上発射及び空中発射の戦術核などで総数は1000以上であった。配備された核兵器がすべて撤去されたのは1992年である。1975年にはシュレジンジャー国防長官が初めて韓国への核配備を公表し、朝鮮に対する核脅迫を口にした。1978年には米韓共同防衛条約が締結され、韓国に対して「核の傘」が提供され、米韓軍事演習に核兵器が加わった。アメリカは、冷戦時代に朝鮮が半島非核化地帯設立を提案したのを拒否し、朝鮮半島情勢が緊張するたびに、核兵器の使用を選択肢の一つとしてきた。
 朝鮮の核エネルギーに関する研究は20世紀60年代に開始され、ソ連の援助の下、寧辺に核エネルギー研究センターが設置されたが、当時はまだ基礎的研究に留まっていた。現在の研究が明らかにするところによれば、20世紀70年代末が朝鮮の核兵器開発戦略形成のカギとなる時期で、核兵器開発計画の実施が開始され、処理能力と濃縮技術の開発が主要なものだった。1980年から1986年にかけて、朝鮮は5メガワットの天然ウラン黒鉛原子炉を建設し、これによって核兵器製造に必要なプルトニウムを生産することが可能となった。朝鮮の核兵器開発戦略の形成とアメリカの国防長官が韓国に大量の核兵器を配備したことを公然と認めたこととの間には、時間的にも論理的にも一定の必然的な関係がある。朝鮮が2014年に発表した「朝鮮人権報告」は、朝鮮の核開発の歴史を回顧する中で、アメリカの極端な核脅迫が朝鮮をして「核を以て核にお返しする」という対抗策の採用を強いたと述べた(強調は原文のまま。以下同じ)。
(問題のカギ)
 朝鮮を敵視し、半島の分裂状態を維持するというアメリカの政策は、世界の冷戦構造の崩壊によっても終了することはなかった。アメリカは、分裂して、適度に緊張している半島情勢が同国のアジア太平洋ひいてはグローバルな戦略的利益に合致していると考えており、これこそが、朝鮮半島が相変わらず冷戦メカニズムによって縛られ、朝鮮核問題が遅々として解決に至らない根本原因である。
 20世紀90年代初に最初の朝鮮核危機が勃発した。1994年10月21日に米朝はジュネーヴで「核枠組み合意」を締結し、朝鮮は核放棄に同意し、アメリカは2003年以前に朝鮮のために2基の2000メガワットの軽水炉発電所を建設することに同意した。アメリカがこの合意を実行しなかったために、10年後の第二次朝鮮核危機が勃発し、6者協議メカニズムが誕生するに至った。
 朝鮮の核放棄は不可能というわけではなく、朝鮮の最重要の条件はアメリカとの関係正常化であり、半島の停戦メカニズムを平和メカニズムに転換することである。金正日時代も金正恩執政後も、朝鮮は数十年来一貫してアメリカとの関係改善を積極的に探究し、朝鮮半島に長期にわたって有効な平和メカニズムを確立し、自らの体制の安全を確保し、政権の合法性について国際社会の承認を取り付けることを追求してきた。アメリカは、そのアジア太平洋ひいてはグローバルな戦略的利益から出発し、朝鮮の合理的な要求をことさらに回避し、無視し、逆に朝鮮をして「核保有による安全保障」に向かうように刺激したのであり、これこそが朝鮮核問題のカギの所在である。本気で朝鮮核問題を解決しようとするのであれば、アメリカは朝鮮の合理的な安全保障上の関心を解決しなければならず、朝鮮敵視政策を放棄し、半島平和メカニズムを構築しなければならない。
(アメリカは何故責任逃れをするのか)
 事実が証明するとおり、アメリカは朝鮮核問題の主要な責任を負うべきである。ところが、世界警察であるアメリカはこの重要な責任を「鷹揚に」中国になすりつけようとしている。その意図は何か。それともワナなのか。筆者の見るところ、アメリカには2つの目的がある。
 一つは中朝関係の離間だ。1月5日に朝鮮中央通信社が発表した論評は、「不断に増加するアメリカの核脅迫が朝鮮をして核抑止力を強化することに向かわせた根本原因である」と述べた。1月6日すなわち水素爆弾実験当日、朝鮮は政府声明を発表して、「朝鮮が水素爆弾の実験を行ったのは、アメリカを筆頭とする敵対勢力が強化している核脅迫と威嚇に対抗するものである」と述べた。矛先が向けられているのはアメリカだ。朝鮮が周辺諸国を「挑発」する意図がないことを懇ろに説明しているのは明らかである。アメリカが意図的に朝鮮の批判を回避し、責任を中国に押しつけようとするのは、明らかに中朝関係を挑発しようとする狙いがある。
 もう一つは、この機に乗じて、米韓同盟を強化し、「戦略的忍耐」政策及び「アジア太平洋リバランス」戦略の目的に資することだ。アメリカは、東アジアにおける「リーダーの地位」を守るために、米日同盟及び米韓同盟という2つの柱を強化しており、米日韓が相互に支え合うトライアングルを作ろうとしており、かつまた朝鮮半島をして中国の台頭を押さえ込む戦略的支柱とすることを狙っている。この戦略的選択に基づき、アメリカは朝鮮核問題の解決を急いでおらず、むしろ半島の対峙局面を利用してアジア太平洋戦略に利用しようとしている。「アメリカは朝鮮の核保有を黙認することはあっても、半島の平和メカニズムを作ることはあり得ない」とする論評もある。なぜならば、アメリカからすれば、朝鮮の核保有と比較して、半島平和メカニズムを作ることの方がアメリカにとって「傷」はもっと大きいからだ。これこそが、アメリカが朝鮮の批判を回避し、朝鮮核問題の責任を逃れようとする根本の目的である。

2.呉日強文章

 正直申し上げて私は軍事的科学用語に疎いので、日本語訳が誤っていたり、稚拙であったりしていると思いますが、適宜判読してください。しかし、軍の機関紙である解放軍報を日常的に読む機会のある人にとっては旧聞に属する内容かも知れませんが、私のような軍事に疎い人間にとって、内容の正否を判断する能力はまったくないことを認めた上でなお、呉日強文章は極めて興味深いものです(朝鮮が第1回核実験の前にその規模が4000トンであると中国に通報したこと、朝鮮の地下核実験がチリをまったく外部に漏出させていないこと、など)。
また、朝鮮の核の脅威を喧伝するアメリカに対して、朝鮮の核ミサイルは日韓両国を十分射程範囲に収めているけれども、アメリカ本土を射程に収める可能性は将来にわたってないと指摘する呉日強文章は、アメリカの朝鮮脅威論がためにするものであることを間接的に明らかにする意図に出るものであることも容易に読み取ることができます(ただし、私自身は、アメリカの同盟国である日本及び韓国を射程距離に収める能力を持っているだけでも、アメリカに対する核デタランスとしては十分であると思います)。

 朝鮮は4回の核実験を行った。第1回は2006年でTNT換算400トン前後、第2回は2009年で4000トン前後、第3回は2013年で10000トンだった。
(第1回の失敗は間違いなし)
 朝鮮の4回の核実験の成功・不成功に関しては様々な主張があるが、第1回が失敗だったことは間違いない。というのは、400トンというのはあまりに少ない数字だからだ。第2回については2種類の主張があるが、中国の学者の中には成功だったとする見方がある。というのは、第1回実験の前に朝鮮が中国に通報したときには4000トンだったのが結果は400トンだったのに、第2回は4000トンを達成したからだ。しかし、西側では第2回も失敗だったとする。その理由は、各国の第1回核実験の際には10000トンから20000トンクラスだったのであって、朝鮮が最初から4000トンという先進的な実験はできないというのだ。朝鮮の第3回はみんなが朝鮮はやり遂げたと見なした。
(第4回が水素爆弾でなかったのは間違いない)
 第4回核実験は水素爆弾だったと朝鮮は言っているが、そうでないことは間違いない。水素爆弾であればTNT換算ではるかに大きいはずだからだ。現在の推測で比較的多数を占めるのは、爆発を助長する(中国語:「助爆法」)原爆だったという見方だ。それは、原爆内部に核融合のための材料を加えることによって爆発に際して融合反応を起こさせるのだが、その際の融合反応の目的はTNT換算量(爆発力)を増やすことではなく、中性子を提供することである。つまり、融合によって生まれた中性子は分裂をさらに高めさせ、分裂効率を向上させることができる。
(朝鮮の核兵器の小型化に注目すべし)
 アメリカの専門家の中には、今回の実験のカギは爆発力の問題ではなく、10000トン相当の威力であれば、いかなる都市で爆発しても極めて恐るべきものだと見るものもいる。すなわち、今回の実験のカギは、爆発を助長する原理を通じて核兵器を小型化することであり、これこそが注目するべき問題である。今のところはっきりしないのは、朝鮮の小型化がどの程度まで達しているかということだが、アメリカの専門家はすでにミサイルに搭載するまでになっているとするのに対して、韓国はまだその能力は具えるに至っていないとしている。
 朝鮮の核実験に関してはもう一つ、核材料の問題があり、前の2回はプルトニウムだったと専門家は考えているが、第3回以後についてはプルトニウムであるかウランであるかははっきりしない。なぜならば、それ以前に朝鮮はウラン濃縮能力があると明らかにしている一方、地下核実験の密閉度が非常によいために、実験後も微粒子はまったく採集されていないからだ。第4回に関しても、現在までのところ何の情報もない。
(朝鮮はアメリカに到達する核ミサイルはつくり出していない)
 核兵器を保有しても、さらに運搬手段であるミサイルの問題がある。朝鮮が現在保有している完成したミサイルにはスカッド・ミサイルとノドン・ミサイルとがある。スカッドの射程距離は300キロで、韓国攻撃には何の問題もない。ノドンの射程は約1300キロで、日本本土をカバーすることが可能である。朝鮮はさらにロシアのSS-N-6潜水艦発射ミサイルであるムスダン・ミサイルを公開したことがあるが、飛行実験で飛ばしたことはなく、外部では朝鮮がまだそのエンジン技術を我がものにするには至っていないのではないかと考えている。仮にムスダンが完成すれば、グアムまで到達できる。このほか、テポドン大陸間弾道弾は理論的にはアメリカまで届くが、そのための前提はSS-N-6エンジンがあるということであり、それがないとすれば、朝鮮が保有するのはスカッド技術のミサイルだけであり、それではアメリカにまで到達しえない。
 今のところ、朝鮮のミサイルが日本、韓国を叩くのには問題がないが、アメリカを叩くことはまだできない。何時アメリカを叩くことができるかは、第一にSS-N-6エンジンの飛行実験をすること、第二に弾頭の実験をすることであり、この2つが備わって始めて可能となる。しかし朝鮮は現在、弾頭実験を行う条件を具えていない。弾頭実験をするには、朝鮮は小さすぎるから、必ず公海に向かって打ち上げなければならない。そして、少なくとも5,6隻の一定規模の軍艦を派遣し、1万キロ先の公海でサークルを囲み、誰も入り込めないようにした上で、弾頭が飛来したらすぐそれを回収しなければならない。アメリカでは2020年以後には朝鮮がこの能力を持つにいたる可能性があると見るものもいるが、私は朝鮮がこれをやり遂げられるとは考えない。
 朝鮮が弾頭技術を実験で証明しない限り、朝鮮は永久に大陸間弾道ミサイルを作り出すことはできない。中国が何故この問題にかくも関心があるかといえば、朝鮮の弾道ミサイルはアメリカのミサイル防衛の口実の一つであるからだ。アメリカは一貫して朝鮮に対処するためだというが、中国がアメリカと議論するときは必ず、朝鮮のミサイルはまだ影もないのであって、アメリカのミサイル防衛技術は中国に向けられたものだと指摘している。

3.環球時報1月27日付社説

 環球時報は一貫して朝鮮に対する制裁措置そのものを支持する主張を行っていますが、私に言わせれば、NPTから脱退した上で核実験に踏み切った朝鮮の行動は、政治的(道義的)に非難・批判はできても、NPT違反として安保理制裁決議の対象とすることはできない話(国際条約は当事国のみを縛るという大原則)であり、国連憲章重視をいう中国にはこういう国際法の基本常識を我がものにした上での行動を要求せざるを得ません。国際社会としてできることは、朝鮮が核に固執しなくても済むような環境・条件をつくり出し、朝鮮がNPT体制に加わることを促すために全力を尽くすということだけなのです。
 その点を指摘した上でのことですが、社説が中国にはアメリカなどの主張する強硬な制裁措置に応じる用意はないことを明言したことは、朝鮮半島情勢の先行きを考える上で明るい材料です。
 もう一つこの社説の興味深いことは、韓国、というより朴槿恵大統領の対中発言に対して、中国が猛烈に怒っていることです。この点については、すでに1月15日付のコラムでも紹介したところですが、朴槿恵のアメリカ追随姿勢には中国の怒りさめやらぬ心境がモロに伝わってきます。

 朝鮮核問題の本質は朝米対決である。朝鮮は間違った方法でアメリカの正当ではない軍事圧力に抵抗しているが、アメリカは、国際世論を誘導することを通じて、朝鮮核問題を打開するカギは中国が動くことに応じるか否かにかかっているという印象をつくり出している。西側世論は中国が「本気で手を下すか」を見ており、韓国も中国に圧力をかけている。
 世論から漏れ出てくるアメリカの提案の内容から見るとき、中国がそのすべてを受け入れることはあり得ない。その提案とは、朝鮮に対する中国の石油禁輸とか、朝鮮の民間航空機の中国領空飛行禁止とか、中国が朝鮮の外貨獲得のための原材料の輸入を停止するとかである。これらの措置は、朝鮮経済に対して「絨毯爆撃」を行うに等しく、朝鮮民生に対する打撃は深刻であり、「朝鮮を死に追いやる」にほぼ等しい。
 中国は朝鮮に対して国際的制裁を行うことを支持するべきではあるが、朝鮮の核計画に対しては「ピンポイント攻撃」を加えることを主内容とすることがより望ましい。朝鮮に人道的災難が生じれば、朝鮮と1000キロ以上の国境を接する中国にとって好ましいことでないことは明らかだ。
 しかし、我々は中米が見たところ小さくはない違いを克服し、朝鮮制裁問題で妥協を達成することはできると信じている。朝鮮がまだ反応もしていないのに、中米が真っ先に態度をがらりと変え、中韓も緊張するというような局面は現れないに違いない。
 アメリカは、対朝制裁計画の制定を主導し、中国がアメリカの言いなりになることを当然希望しているし、中国が米韓日の責任をすべて背負い込み、朝鮮核問題を中朝対決に変え、問題を引き起こしたアメリカなどが漁夫の利を得ることを願っている。しかしアメリカは、中国をこのように「思いどおりにさせる」ことはできず、中米が難しい交渉を通じて相互に妥協する必要があることについて心づもりをしておくことだ。
 仮にアメリカが本気で頑固一徹で、中国はアメリカの提案どおりにしなければならないと要求するのであれば、それはあまりに幼稚というものだ。21世紀における大国間の外交はこういう理屈では動かない。
 韓国も、朝鮮に対する制裁問題であまりにも身勝手な要求を中国に対してするべきではない。とりわけ、THAADミサイル防衛システムを配備する問題で中国を「脅迫」するべきではない。韓国が本当にそうするならば、中韓間の信頼を深刻に傷つけるであろうし、韓国としてはそのことによって生じるコストを負担する準備をしておく必要がある。
 中国人は朝鮮が核兵器を開発することには断固反対だが、問題が複雑であることも真実である。中国はこの複雑さに直面する用意があるのに、アメリカは問題を「単純化」し、中国の利益を損ずることをもってこの「シンプル」なコストを実現しようとしている。これではまったく話にならない。
 朝鮮の周りには大国が林立しており、冷戦の残滓と新時代の風雲が交じり合っており、朝鮮核危機に対して「解体」工事を行うに当たっては、必ず安全な「方向を定めた爆破」を行わなければならないのであって、爆破と同時に周囲をも破壊するということがあってはならない。中国のかかる主張は完全に現実的なものであり、理解し、尊重されるべきである。
 中米戦略関係はアジア太平洋ひいてはグローバルな問題であり、両国関係をさらに成熟させ、確定的なものとすることの重要性は、朝鮮核問題を解決することの重要性よりも低いということはあり得ない。アメリカもこの点を理解していると信じる。