プーチン大統領とハメネイ師との会談(イラン側報道)

2015.11.26.

11月21日-23日にイランの首都テヘランでガス輸出国フォーラムの第17回閣僚級会合と緊急会合、そして23日には第3回首脳会合が開催され、プーチン大統領が参加するとともに、最高指導者ハメネイ師及びロウハニ大統領と会談しました。
イランのメディアによりますと、ガス輸出国フォーラムとは、「2001年、エネルギー、特に天然ガス市場に関する情報と経験、意見の交換を目的に、加盟国のエネルギー部門での政策を決定するために創設」されたもので、加盟国は「イラン、アルジェリア、ボリビア、エジプト、赤道ギニア、リビア、ナイジェリア、カタール、ロシア、トリニタード・トバゴ、ベネズエラ、アラブ首長国連邦の12カ国」(このほかにオブザーバー国としてオランダ、ノルウェー、イラク、オマーン、ペルー)であり、「世界の天然ガスの生産量の42%、埋蔵量の 67%、パイプラインによるガス移送量38%、液化天然ガスの貿易量の85%」を占めているそうです。今回の首脳会合には、プーチン大統領を含め、「イラン、ロシア、ボリビア、赤道ギニア、ベネズエラ、ナイジェリア、イラク、トルクメニスタンの8カ国の大統領やアルジェリアの首相が出席」しました。
最高指導者WSは、ハメネイ師がプーチン大統領以下の各国首脳と会談した模様を詳しく紹介し、大統領府WSもロウハニ大統領と各国首脳との会談の模様を詳しく報じました。イラン核問題に関する合意(JCPOA)以後のイラン外交の活発化は目を見張るものがありますが、今回のガス輸出国フォーラムの開催と首脳外交の展開もその一環と位置づけることができます。
特にハメネイ師とプーチン大統領の会談に関しては、ロシア大統領府WSはごく簡単に両者が会見したことを紹介したに留まりますが、最高指導者WSは、会談が約2時間にわたって行われたことをわざわざ指摘し、両者の発言内容を詳しく紹介するという力のこもったものでした。ハメネイ師がアメリカに対しては極めて厳しい態度であることは前々から理解できていましたが、今回の報道は、ハメネイ師がロシア特に近年におけるプーチン大統領の行動を極めて高く評価していることが確認できるものとして貴重です。大要を紹介します。

ハメネイ師は、プーチン大統領との会談で、両国の二国間、地域及び国際協力の一層の拡大を歓迎した。ハメネイ師は、地域問題、なかんずくシリア問題に関するロシアの影響力ある役割を賞讃し、「中東地域に関するアメリカの長期計画はすべての諸国民及び国々特にイランとロシアにとって有害であり、警戒とより緊密な対応によって阻止するべきである」と述べた。
約2時間続いた会見において、ハメネイ師はプーチン氏を今日の世界における傑出した人物であるとし、イランの核問題解決に関してロシアが行った努力に感謝するとともに、「核問題は解決に至ったが、我々はアメリカを信用しておらず、この問題に対するアメリカ政府の行動を刮目して注視している」と述べた。
両国関係をさらに広げることに関するプーチン氏及びイラン当局の真剣さに言及して、ハメネイ師は「経済問題を含む両国間の協力は現在のレベルよりさらに拡大することができる」と述べた。また、政治及び安全保障に関して存在する両国間の協力に関しては、ハメネイは、多くの問題に関するプーチン大統領の立場、特に最近1年半に関するものは極めて良く、革新的であると評価するとともに、「アメリカは常にライバルが動きを控えるように努力しているが、あなたはそうしたアメリカの政策を無力化してきた」とつけ加えた。
ハメネイ師は、シリア問題に関するロシアの諸々の決定及び措置はロシア及びプーチン氏個人の地域的及び世界的な立場を高めたと述べるとともに、「アメリカは、長期計画に基づいてシリアを支配し、それによって西アジアに対して支配を及ぼしてこなかった歴史的な空白を埋めることでこの地域に対する管制を及ぼそうとしている。このようなアメリカの長期計画は、すべての国々、とりわけロシア及びイランに対する脅威となる」と付言した。
ハメネイ師はまた、「アメリカ及びその追随国は、シリア問題に関し、軍事的に実現できなかった目標を政治的に交渉の場で実現しようとしており、断固として阻止しなければならない」と述べた。ハメネイ師はさらに、シリア人民の合法的で選ばれた大統領であるアサドを追放することをアメリカが主張しているのはアメリカの政策の弱みの一つであり、「アメリカにはシリア人民の投票及び選択を無視する権利はない」、「シリアに関しては、いかなる解決にせよ、シリアの人民及び当局の合意に基づかなければならない」と述べた。
ハメネイ師はまた、ダーシュ(Daesh, al-Dawla al-Islamiya al-Iraq al-Sham)を含むテロリスト・グループに対するアメリカの直接間接の支援もアメリカの政策の弱みの一つであり、「中東及び世界の世論の信用を失っている国々とアメリカが協力していることは、アメリカが誠実な外交を行っていないことを示している」とし、「このこと及び核問題の故に、我々は、シリアはもちろん他の如何なる問題に関してもアメリカとは2国間の交渉を行っていないし、今後も行わないだろう」と述べた。
ハメネイ師は、シリア問題の正しい解決が非常に重要であり、そのことは地域の将来に対して大きな影響を持つだろうとし、「シリアで犯罪を行っているテロリストが弾圧されないと、彼らの破壊的な活動は中央アジアその他の地域に拡散するだろう」とつけ加えた。
ロシア大統領は、イランを独立した、堅固な、非常な将来性のある国家だと評価するとともに、「ロシアは、イランをこの地域及び世界における信頼でき、頼りになる同盟者だとみなしている」と述べた。プーチンはまた、「他の国々とは異なり、ロシアは仲間を背後から殴りかかることはしないし、友人に対して秘密の行動を取ることもせず、違いがあるとしても、対話を通じて理解を達成する」とも述べた。
ロシア大統領はまた、シリア問題に関する両国の立場は非常に接近しているとし、この分野での協力の重要性に触れて、「シリア危機の解決は、この国の人民の投票並びにシリアのすべてのエスニシティ及びグループの要求を受け入れることによってのみ可能となること、また、この国の人民に意見を押しつけ、統治機構及びシリア大統領の命運をシリア人民に代わって決定する権利は誰にもないことを強調している」と述べた。プーチンはさらに、「ハメネイ師が述べたように、アメリカはシリアの戦場で達成できなかった目標を交渉の場で追求しようとしており、我々はこの問題を注視している」とも述べた。
プーチンはまた、シリアにおけるテロリスト・グループに対するロシアの攻撃を続けることを強調するとともに、シリア問題の政治解決プロセスについて両国が協力し、協議することが絶対に必要であるとし、「デモクラシーを助長すると主張しているものである限り、シリアにおける選挙に反対することはできないはずだ」と述べた。
会見の最後に、ロシア大統領は、ハメネイ師にコーランのもっとも古い手書き版の一つを貴重な贈り物として贈呈した。ハメネイ師はこの贈り物についてプーチン大統領に感謝した。