戦後日本外交を考える上での資料-米ソ冷戦時代まで-

2015.11.22.

*私は今、M市主催の市民大学講座と大阪経法大学主催の「市民アカデミア」講座とでお話をしています。前者では、日本と米中韓露4ヵ国との関係を中心に、また、後者では戦後日本外交の歩みを中心にお話ししています。私にとっても、これまでの日本外交についての研究と思索の総まとめという感じがあり、私としてはかなり思い入れを持って担当させてもらっています。
 各回のお話しでは、関連する資料もまとめて出席される皆様に配布しています。それらの資料は、WSで検索すれば出てくるものばかりですが、テーマ毎にまとめていますので、それなりの資料価値はあるのではないかと思っています。このコラムでも載せて皆様の参考に供するのはそれなりに意味があるのではないかと思い立ちました。
 ということで、まず、米ソ冷戦時代までの日本外交を考える上での基本的資料をお届けします。

1.アメリカ

(1)独立宣言(1776 年7 月4 日)

人類の歴史において、ある国民が、他の国民とを結び付けてきた政治的なきずなを断ち切り、世界の諸国家の間で、自然の法と自然神の法によって与えられる独立平等の地位を占めることが必要となったとき、全世界の人々の意見を真摯に尊重するならば、その国の人々は自分たちが分離せざるを得なくなった理由について公に明言すべきであろう。
われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているということ。こうした権利を確保するために、人々の間に政府が樹立され、政府は統治される者の合意に基づいて正当な権力を得る。そして、いかなる形態の政府であれ、政府がこれらの目的に反するようになったときには、人民には政府を改造または廃止し、新たな政府を樹立し、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる原理をその基盤とし、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる形の権力を組織する権利を有するということ、である。もちろん、長年にわたり樹立されている政府を軽々しい一時的な理由で改造すべきではないことは思慮分別が示す通りである。従って、あらゆる経験が示すように、人類は、慣れ親しんでいる形態を廃止することによって自らの状況を正すよりも、弊害が耐えられるものである限りは、耐えようとする傾向がある。しかし、権力の乱用と権利の侵害が、常に同じ目標に向けて長期にわたって続き、人民を絶対的な専制の下に置こうとする意図が明らかであるときには、そのような政府を捨て去り、自らの将来の安全のために新たな保障の組織を作ることが、人民の権利であり義務である。これらの植民地が耐え忍んできた苦難は、まさにそうした事態であり、そして今、まさにそのような必要性によって、彼らはこれまでの政府を変えることを迫られているのである。現在の英国王の治世の歴史は、度重なる不正と権利侵害の歴史であり、そのすべてがこれらの諸邦に対する絶対専制の確立を直接の目的としている。(以下省略)
(出所)在日アメリカ大使館WS

(2)モンロー・ドクトリン(1823年12月2日)

It was stated at the commencement of the last session that a great effort was then making in Spain and Portugal to improve the condition of the people of those countries, and that it appeared to be conducted with extraordinary moderation. It need scarcely be remarked that the results have been so far very different from what was then anticipated. Of events in that quarter of the globe, with which we have so much intercourse and from which we derive our origin, we have always been anxious and interested spectators. The citizens of the United States cherish sentiments the most friendly in favor of the liberty and happiness of their fellow-men on that side of the Atlantic. In the wars of the European powers in matters relating to themselves we have never taken any part, nor does it comport with our policy to do so. It is only when our rights are invaded or seriously menaced that we resent injuries or make preparation for our defense. With the movements in this hemisphere we are of necessity more immediately connected, and by causes which must be obvious to all enlightened and impartial observers. The political system of the allied powers is essentially different in this respect from that of America. This difference proceeds from that which exists in their respective Governments; and to the defense of our own, which has been achieved by the loss of so much blood and treasure, and matured by the wisdom of their most enlightened citizens, and under which we have enjoyed unexampled felicity, this whole nation is devoted. We owe it, therefore, to candor and to the amicable relations existing between the United States and those powers to declare that we should consider any attempt on their part to extend their system to any portion of this hemisphere as dangerous to our peace and safety. With the existing colonies or dependencies of any European power we have not interfered and shall not interfere. But with the Governments who have declared their independence and maintain it, and whose independence we have, on great consideration and on just principles, acknowledged, we could not view any interposition for the purpose of oppressing them, or controlling in any other manner their destiny, by any European power in any other light than as the manifestation of an unfriendly disposition toward the United States. In the war between those new Governments and Spain we declared our neutrality at the time of their recognition, and to this we have adhered, and shall continue to adhere, provided no change shall occur which, in the judgement of the competent authorities of this Government, shall make a corresponding change on the part of the United States indispensable to their security.
(出所)www.ourdocuments.gv

(3)ウィルソン大統領「14カ条の平和原則」(1918年1月8日)

われわれの希望と目標は、和平の過程が開始されるときには、それが完全に開かれたものとなり、それから後、いかなる種類の秘密の合意も含まず許可しないものになることである。征服と強大化の日々は過去のものである。同様に、特定の政府の利益のために、そしておそらく思いがけない時に世界の平和を乱すために締結される秘密の盟約の日々もまた、過去のものである。この喜ばしい事実は、死滅し過ぎ去った時代に拘泥することのない新しい考えを持つ、あらゆる公人にとって今では明白であり、それは、世界の正義と平和に合致する目的を持つあらゆる国家が、今、あるいはいかなる時においても、その目指す目標を明言することを可能にしているのである。
われわれがこの戦争に入ったのは、権利の侵害が発生したためである。それは、われわれを深く傷つけた。そして侵害が是正され、その再発に対して世界の安全が最終的に確保されない限り、わが国民の生活が不可能になったのである。従って、この戦争でわれわれが求めるものは、われわれ自身にとって特別なものではない。それは、この世界を住みやすく安全なものにすることである。そして特に、わが国のように、自分の生活を営み、自分の制度を決定し、世界の諸国民から力と利己的な攻撃ではなく、正義と公正な扱いを保証されることを望むすべての平和を愛する国民にとって、世界を安全なものにすることである。この件に関しては、世界中のすべての人々が事実上の伴侶である。そしてわれわれ自身に関する限り、他者に対して正義を行われなければ、われわれに対して正義が行われることもない、ということが非常に明確に見えている。従って、世界平和のための計画は、われわれの計画である。そしてその計画、われわれが見るところ唯一の可能な計画は、以下の通りである。
Ⅰ 開かれた形で到達した開かれた平和の盟約。その締結後は、いかなる種類の秘密の国際的合意もあってはならず、外交は常に率直に国民の目の届くところで進められるものとする。
Ⅱ 平時も戦時も同様だが、領海外の海洋上の航行の絶対的な自由。ただし、国際的盟約の執行のための国際行動を理由として、海洋が全面的または部分的に閉鎖される場合は例外とする。
Ⅲ 和平に同意し、その維持に参加するすべての諸国間における、すべての経済障壁の可能な限りの除去と貿易条件の平等性の確立。
Ⅳ 国家の軍備を、国内の安全を保障するに足る最低限の段階まで縮小することで、適切な保証を相互に交換。
Ⅴ 植民地に関するすべての請求の、自由で柔軟、かつ絶対的に公平な調整。その際には、主権に関するそうしたすべての問題の決着に当たっては、当事者である住民の利害が、法的権利の決定を待つ政府の正当な請求と同等の重みを持たされなければならない、という原則に基づくものとする。
Ⅵ すべてのロシア領土からの撤退と、ロシアに影響を及ぼすあらゆる問題の解決。それは、ロシアに対して自らの政治的発展と国家政策を独自に決めるための、制約と障害のない機会を得させるために、世界各国の最良かつ最も自由な協力を確保し、またロシアが自ら選んだ制度の下で、自由な諸国の社会に真摯に迎えられることを保証するだろう。また歓迎にとどまらず、ロシアが必要とし希望するあらゆる援助の提供も保証するだろう。今後何カ月かの間に、ロシアに対して姉妹諸国が支える待遇は、それら諸国の善意と、彼ら自身の利益と切り離してロシアが必要としているものへの理解と、彼らの知的で、しかも利己主義を排した同情心の試金石となるだろう。
Ⅶ ベルギーが他の自由諸国と同様に享受している主権を制限しようとする試みがあってはならない。 ベルギーから撤退し、同国を復興させなければならない。このことについては、全世界が同意してくれるはずである。各国が相互の関係を管理するために自ら設定し決定した法律に対する信頼を回復する上で、これほど貢献する措置はないだろう。この治癒的行為がなければ、国際法全体の構造と正当性は永久に損なわれる。
Ⅷ フランスの全領土が解放され、侵略された部分は回復されるべきである。また、1871 年にアルザ ス・ロレーヌ地方に関してプロシアがフランスに対して行った不法行為は、50 年近くも世界の平和を乱してきたのである。全員の利益のためにもう一度平和が確保されるために、この不正行為は正されるべきである。
Ⅸ イタリア国境の再調整は、明確に認識できる民族の境界線に沿って行われるべきである。
X われわれは、オーストリア・ハンガリー国民の諸国間における地位が保護され確保されることを望 む。彼らには、自治的発展の最も自由な機会が与えられるべきである。
XI ルーマニア、セルビア、モンテネグロからの撤退が行われるべきである。占領された領土が回復され、セルビアは海への自由かつ安全な交通路を与えられ、いくつかのバルカン諸国間の相互の関係が、忠誠心と民族性という歴史的に確立された方針に沿って、友好的な協議により決定され、またいくつかのバルカン諸国の政治的、経済的な独立と領土保全に関する国際的な保証が結ばれるべきである。
XII 現在のオスマン帝国のトルコ人居住区域は確実な主権を保証されるべきだが、いまトルコ人の支配下にある他の諸民族は、確実な生命の安全と自立的発展のための絶対的に邪魔されることのない機会を保証されるべきである。そしてダーダネルス海峡は、国際的保証の下で、すべての諸国の船舶と通商に自由な通路として恒久的に開かれるべきである。
XIII 独立したポーランド国家が樹立されるべきである。そこには議論の余地なくポーランド人である人々の居住する領土が含まれ、彼らは海への自由で安全な交通路を保証され、政治的、経済的な独立と領土保全が国際的盟約によって保証されるべきである。
XIV 大国にも小国にも等しく、政治的独立と領土保全の相互保証を与えることを目的とする具体的な盟約の下に、諸国の全般的な連携が結成されなければならない。(中略)
これでわれわれは、これ以上の疑いも質問の余地もないほど、具体的な言葉で述べ終えた。私が概要を述べたこの計画全体には、明確な原則が貫いている。それは、すべての国民と民族に対する正義であり、そして強い弱いにかかわらず、互いに自由と安全の平等な条件の下に生きる権利である。この原則が土台となっていない限り、国際正義という建造物は、どの部分もしっかり立つことはできない。合衆国の国民は、これ以外の原則に従って行動することはできない。そして、この原則を守るために、自分の生命、栄誉、持っているものすべてを捧げる準備ができている。このことの道徳的な頂点、人類の自由のための最終的な絶頂である、その戦争が訪れたのである。合衆国国民は、自分の力、自分の最も崇高な目的、そして自分自身の品位と献身を試してみる準備ができている。
(出所)在日アメリカ大使館WS

(4)「大西洋憲章」(1941年8月14日)

アメリカ合衆国大統領及ヒ連合王国ニ於ケル皇帝陛下ノ政府ヲ代表スル「チャーチル」総理大臣ハ会合ヲ為シタル後両国カ世界ノ為一層良キ将来ヲ求メントスル其ノ希望ノ基礎ヲ成ス両国国策ノ共通原則ヲ公ニスルヲ以テ正シト思考スルモノナリ。
一、両国ハ領土的其ノ他ノ増大ヲ求メス。
二、両国ハ関係国民ノ自由ニ表明セル希望ト一致セサル領土的変更ノ行ハルルコトヲ欲セス。
三、両国ハ一切ノ国民カ其ノ下ニ生活セントスル政体ヲ選択スルノ権利ヲ尊重ス。両国ハ主権及自治ヲ強奪セラレタル者ニ主権及自治カ返還セラルルコトヲ希望ス。
四、両国ハ其ノ現存義務ヲ適法ニ尊重シ大国タルト小国タルト又戦勝国タルト敗戦国タルトヲ問ハス一切ノ国カ其ノ経済的繁栄ニ必要ナル世界ノ通商及原料ノ均等条件ニ於ケル利用ヲ享有スルコトヲ促進スルニ努ムヘシ。
五、両国ハ改善セラレタル労働基準、経済的向上及ヒ社会的安全ヲ一切ノ国ノ為ニ確保スル為、右一切ノ国ノ間ニ経済的分野ニ於テ完全ナル協力ヲ生セシメンコトヲ欲ス。
六、「ナチ」ノ暴虐ノ最終的破壊ノ後両国ハ一切ノ国民ニ対シ其ノ国境内ニ於テ安全ニ居住スルノ手段ヲ供与シ、且ツ一切ノ国ノ一切ノ人類カ恐怖及欠乏ヨリ解放セラレ其ノ生ヲ全ウスルヲ得ルコトヲ確実ナラシムヘキ平和カ確立セラルルコトヲ希望ス。
七、右平和ハ一切ノ人類ヲシテ妨害ヲ受クルコトナク公ノ海洋ヲ航行スルコトヲ得シムヘシ。
八、両国ハ世界ノ一切ノ国民ハ実在論的理由ニ依ルト精神的理由ニ依ルトヲ問ハス強力ノ使用ヲ抛棄スルニ至ルコトヲ要スト信ス。陸、海又ハ空ノ軍備カ自国国境外ヘノ侵略ノ脅威ヲ与エ又ハ与ウルコトアルヘキ国ニ依リ引続キ使用セラルルトキハ将来ノ平和ハ維持セラルルコトヲ得サルカ故ニ、両国ハ一層広汎ニシテ永久的ナル一般的安全保障制度ノ確立ニ至ル迄ハ斯ル国ノ武装解除ハ不可欠ノモノナリト信ス。両国ハ又平和ヲ愛好スル国民ノ為ニ圧倒的軍備負担ヲ軽減スヘキ他ノ一切ノ実行可能ノ措置ヲ援助シ及助長スヘシ。
(出所)データベース『世界と日本』 東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室

2 日米関係

(5)カイロ宣言(1943年12月1日)

「ローズヴェルト」大統領、蒋介石大元帥及「チャーチル」総理大臣ハ、各自ノ軍事及外交顧問ト共ニ北「アフリカ」ニ於テ会議ヲ終了シ左ノ一般的声明ヲ発セラレタリ
各軍事使節ハ日本国ニ対スル将来ノ軍事行動ヲ協定セリ
三大同盟国ハ海路陸路及空路ニ依リ其ノ野蛮ナル敵国ニ対シ仮借ナキ弾圧ヲ加フルノ決意ヲ表明セリ右弾圧ハ既ニ増大シツツアリ
三大同盟国ハ日本国ノ侵略ヲ制止シ且之ヲ罰スル為今次ノ戦争ヲ為シツツアルモノナリ右同盟国ハ自国ノ為ニ何等ノ利得ヲモ欲求スルモノニ非ス又領土拡張ノ何等ノ念ヲモ有スルモノニ非ス
右同盟国ノ目的ハ日本国ヨリ1914年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ日本国カ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ満洲、台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ
日本国ハ又暴力及貧慾ニ依リ日本国ノ略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ駆逐セラルヘシ
前記三大国ハ朝鮮ノ人民ノ奴隷状態ニ留意シ軈テ朝鮮ヲ自由且独立ノモノタラシムルノ決意ヲ有ス
右ノ目的ヲ以テ右三同盟国ハ同盟諸国中日本国ト交戦中ナル諸国ト協調シ日本国ノ無条件降伏ヲ齎スニ必要ナル重大且長期ノ行動ヲ続行スヘシ」
(出所)「日本外交年表並主要文書」下巻、外務省編(1966)

(6)「ヤルタ協定」(1945年2月11日)

三大国即チ「ソヴィエト」聯邦,「アメリカ」合衆国及英国ノ指導者ハ「ドイツ」国ガ降伏シ且「ヨーロッパ」ニ於ケル戦争ガ終結シタル後二月又ハ三月ヲ経テ「ソヴィエト」聯邦ガ左ノ条件ニ依リ聯合国ニ与シテ日本国ニ対スル戦争ニ参加スベキコトヲ協定セリ
一 外蒙古(蒙古人民共和国)ノ現状ハ維持セラルベシ
二 1904年ノ日本国ノ背信的攻撃ニ依リ侵害セラレタル「ロシア」国ノ旧権利ハ左ノ如ク回復セラルベシ
(甲)樺太ノ南部及之ニ隣接スル一切ノ島嶼ハ「ソヴィエト」聯邦ニ返還セラルベシ
(乙)大連商港ニ於ケル「ソヴィエト」聯邦ノ優先的利益ハ之ヲ擁護シ該港ハ国際化セラルベク又「ソヴィエト」社会主義共和国聯邦ノ海軍基地トシテノ旅順口ノ租借権ハ回復セラルベシ
(丙)東清鉄道及大連ニ出口ヲ供与スル南満州鉄道ハ中「ソ」合弁会社ノ設立ニ依リ共同ニ運営セラルベシ但シ「ソヴィエト」聯邦ノ優先的利益ハ保障セラレ又中華民国ハ満洲ニ於ケル完全ナル主権ヲ保有スルモノトス
三 千島列島ハ「ソヴィエト」聯邦ニ引渡サルベシ
前記ノ外蒙古竝ニ港湾及鉄道ニ関スル協定ハ蒋介石総帥ノ同意ヲ要スルモノトス大統領ハ「スターリン」元帥ヨリノ通知ニ依リ右同意ヲ得ル為措置ヲ執ルモノトス
三大国ノ首班ハ「ソヴィエト」聯邦ノ右要求ガ日本国ノ敗北シタル後ニ於テ確実ニ満足セシメラルベキコトヲ協定セリ
「ソヴィエト」聯邦ハ中華民国ヲ日本国ノ覊絆ヨリ解放スル目的ヲ以テ自己ノ軍隊ニ依リ之ニ援助ヲ与フル為「ソヴィエト」社会主義共和国聯邦中華民国間友好同盟条約ヲ中華民国国民政府ト締結スル用意アルコトヲ表明ス
(出所)データベース『世界と日本』 東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室

(7)「ポツダム宣言」(1945年7月26日)

一、吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート・ブリテン」国総理大臣ハ吾等ノ数億ノ国民ヲ代表シ協議ノ上日本国ニ対シ今次ノ戦争ヲ終結スルノ機会ヲ与フルコトニ意見一致セリ
二、合衆国、英帝国及中華民国ノ巨大ナル陸、海、空軍ハ西方ヨリ自国ノ陸軍及空軍ニ依ル数倍ノ増強ヲ受ケ日本国ニ対シ最後的打撃ヲ加フルノ態勢ヲ整ヘタリ右軍事力ハ日本国カ抵抗ヲ終止スルニ至ル迄同国ニ対シ戦争ヲ遂行スルノ一切ノ連合国ノ決意ニ依リ支持セラレ且鼓舞セラレ居ルモノナリ
三、蹶起セル世界ノ自由ナル人民ノ力ニ対スル「ドイツ」国ノ無益且無意義ナル抵抗ノ結果ハ日本国国民ニ対スル先例ヲ極メテ明白ニ示スモノナリ現在日本国ニ対シ集結シツツアル力ハ抵抗スル「ナチス」ニ対シ適用セラレタル場合ニ於テ全「ドイツ」国人民ノ土地、産業及生活様式ヲ必然的ニ荒廃ニ帰セシメタル力ニ比シ測リ知レサル程更ニ強大ナルモノナリ吾等ノ決意ニ支持セラルル吾等ノ軍事力ノ最高度ノ使用ハ日本国軍隊ノ不可避且完全ナル壊滅ヲ意味スヘク又同様必然的ニ日本国本土ノ完全ナル破壊ヲ意味スヘシ
四、無分別ナル打算ニ依リ日本帝国ヲ滅亡ノ淵ニ陥レタル我儘ナル軍国主義的助言者ニ依リ日本国カ引続キ統御セラルヘキカ又ハ理性ノ経路ヲ日本国カ履ムヘキカヲ日本国カ決意スヘキ時期ハ到来セリ
五、吾等ノ条件ハ左ノ如シ
吾等ハ右条件ヨリ離脱スルコトナカルヘシ右ニ代ル条件存在セス吾等ハ遅延ヲ認ムルヲ得ス
六、吾等ハ無責任ナル軍国主義カ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序カ生シ得サルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ツルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレサルヘカラス
七、右ノ如キ新秩序カ建設セラレ且日本国ノ戦争遂行能力カ破砕セラレタルコトノ確証アルニ至ルマテハ聯合国ノ指定スヘキ日本国領域内ノ諸地点ハ吾等ノ茲ニ指示スル基本的目的ノ達成ヲ確保スルタメ占領セラルヘシ
八、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ
九、日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルヘシ
十、吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非サルモ吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルヘシ日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スヘシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ
十一、日本国ハ其ノ経済ヲ支持シ且公正ナル実物賠償ノ取立ヲ可能ナラシムルカ如キ産業ヲ維持スルコトヲ許サルヘシ但シ日本国ヲシテ戦争ノ為再軍備ヲ為スコトヲ得シムルカ如キ産業ハ此ノ限ニ在ラス右目的ノ為原料ノ入手(其ノ支配トハ之ヲ区別ス)ヲ許可サルヘシ日本国ハ将来世界貿易関係ヘノ参加ヲ許サルヘシ
十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ
十三、吾等ハ日本国政府カ直ニ全日本国軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適当且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ対シ要求ス右以外ノ日本国ノ選択ハ迅速且完全ナル壊滅アルノミトス
(出所)データベース『世界と日本』 東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室

(8)終戦詔書(1945年8月14日)

朕深ク世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク
 朕ハ帝国政府ヲシテ米英支蘇四国ニ対シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ
 抑々帝国臣民ノ康寧ヲ図リ万邦共栄ノ楽ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遺範ニシテ朕ノ拳々措カサル所曩ニ米英二国ニ宣戦セル所以モ亦実ニ帝国ノ自存ト東亜ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他国ノ主権ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス然ルニ交戦已ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海将兵ノ勇戦朕カ百僚有司ノ励精朕カ一億衆庶ノ奉公各々最善ヲ尽セルニ拘ラス戦局必スシモ好転セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之敵ハ新ニ残虐ナル爆弾ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ惨害ノ及フ所真ニ測ルヘカラサルニ至ル而モ尚交戦ヲ継続セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招来スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神霊ニ謝セムヤ是レ朕カ帝国政府ヲシテ共同宣言ニ応セシムルニ至レル所以ナリ
 朕ハ帝国ト共ニ終始東亜ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ対シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝国臣民ニシテ戦陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内為ニ裂ク且戦傷ヲ負イ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念スル所ナリ惟フニ今後帝国ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪へ難キヲ堪へ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス
 朕ハ茲ニ国体ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ乱リ為ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム宜シク挙国一家子孫相伝ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ総力ヲ将来ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ国体ノ精華ヲ発揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ体セヨ
(出所)国立国会図書館WS「日本国憲法の誕生」

(9)降伏文書(1945年9月2日)

下名ハ茲ニ合衆国、中華民国及「グレート、ブリテン」国ノ政府ノ首班ガ千九百四十五年七月二十六日「ポツダム」ニ於テ発シ後ニ「ソヴィエト」社会主義共和 国聯邦ガ参加シタル宣言ノ条項ヲ日本国天皇、日本国政府及日本帝国大本営ノ命ニ依リ且之ニ代リ受諾ス右四国ハ以下之ヲ聯合国ト称ス
 下名ハ茲ニ日本帝国大本営並ニ何レノ位置ニ在ルヲ問ハズ一切ノ日本国軍隊及日本国ノ支配下ニ在ル一切ノ軍隊ノ聯合国ニ対スル無条件降伏ヲ布告ス  下名ハ茲ニ何レノ位置ニ在ルヲ問ハズ一切ノ日本国軍隊及日本国臣民ニ対シ敵対行為ヲ直ニ終止スルコト、一切ノ船舶、航空機並ニ軍用及非軍用財産ヲ保存シ之ガ毀損ヲ防止スルコト及聯合国最高令官又ハ其ノ指示ニ基キ日本国政府ノ諸機関ノ課スベキ一切ノ要求ニ応ズルコトヲ命ズ
 下名ハ茲ニ日本帝国大本営ガ何レノ位置ニ在ルヲ問ハズ一切ノ日本国軍隊及日本国ノ支配下ニ在ル一切ノ軍隊ノ指揮官ニ対シ自身及其ノ支配下ニ在ル一切ノ軍隊ガ無条件ニ降伏スベキ旨ノ命令ヲ直ニ発スルコトヲ命ズ
 下名ハ茲ニ一切ノ官庁、陸軍及海軍ノ職員ニ対シ聯合国最高司令官ガ本降伏実施ノ為適当ナリト認メテ自ラ発シ又ハ其ノ委任ニ基キ発セシムル一切ノ布告、命令 及指示ヲ遵守シ且之ヲ施行スルコトヲ命ジ並ニ右職員ガ聯合国最高司令官ニ依リ又ハ其ノ委任ニ基キ特ニ任務ヲ解カレザル限リ各自ノ地位ニ留リ且引続キ各自ノ非戦闘的任務ヲ行フコトヲ命ズ
 下名ハ茲ニ「ポツダム」宣言ノ条項ヲ誠実ニ履行スルコト並ニ右宣言ヲ実施スル為聯合国最高司令官又ハ其ノ他特定ノ聯合国代表者ガ要求スルコトアルベキ一切ノ命令ヲ発シ且斯ル一切ノ措置ヲ執ルコトヲ天皇、日本国政府及其ノ後継者ノ為ニ約ス
 下名ハ茲ニ日本帝国政府及日本帝国大本営ニ対シ現ニ日本国ノ支配下ニ在ル一切ノ聯合国俘虜及被抑留者ヲ直ニ解放スルコト並ニ其ノ保護、手当、給養及指示セラレタル場所ヘノ即時輪送ノ為ノ措置ヲ執ルコトヲ命ズ
 天皇及日本国政府ノ国家統治ノ権限ハ本降伏条項ヲ実施スル為適当ト認ムル措置ヲ執ル聯合国最高司令官ノ制限ノ下ニ置カルルモノトス
大日本帝国天皇陛下及日本国政府ノ命ニ依リ且其ノ名ニ於テ 重光葵
日本帝国大本営ノ命ニ依リ且其ノ名ニ於テ 梅津美治郎 (以下省略)
(出所)国立国会図書館WS「日本国憲法の誕生」

(10)マッカーサー・ノート(1946年2月3日)

Three basic points stated by Supreme Commander to be "musts" in constitutional revision.
I
Emperor is at the head of the state.
His succession is dynastic.
His duties and powers will be exercised in accordance with the Constitution and responsive to the basic will of the people as provided therein.
II
War as a sovereign right of the nation is abolished. Japan renounces it as an instrumentality for settling its disputes and even for preserving its own security. It relies upon the higher ideals which are now stirring the world for its defense and its protection. No Japanese Army, Navy, or Air Force will ever be authorized and no rights of belligerency will ever be conferred upon any Japanese force.
III
The feudal system of Japan will cease.
No rights of peerage except those of the Imperial family will extend beyond the lives of those now existent.
No patent of nobility will from this time forth embody within itself any National or Civic power of government.
Pattern budget after British system.
(出所)国立国会図書館WS「日本国憲法の誕生」

(11)トルーマン・ドクトリン(1947年3月12日)

今日、国家としてのギリシアの存立そのものが、共産主義者の指導の下にテロ活動を行う数千の人々によって脅かされている。彼らは当該政府の権威を至る所で侵犯し、特に北部国境地帯において、その活動が甚だしい。国連安全保障理事会によって指名された調査委員団が現在、北部ギリシアの動乱の実情と、一方にギリシア、他方にアルバニア、ブルガリア、ユーゴスラビアをひかえる辺境地帯における国境侵犯の申し立てについて調査を行っている。この間、ギリシア政府の能力によっては事態に対処することは不可能となっている。ギリシア国軍は兵力が少なく、かつその装備は弱体である。ギリシア国土全体にわたって政府の権威を回復するためには装備補給が必要とされている。ギリシアが自立自尊の民主主義国となるためには援助が必要である。合衆国がこの援助を与えなければならない。我々は既にギリシアに対して、ある種の救済並びに経済援助を行ってきたが、それらはまだ十分ではない。民主主義ギリシアが頼りにできる国は他にはない。民主主義ギリシア政府にその必要とする支援を与える用意と実力を持つ国民は他にはないのである。今日までギリシアを援助してきたイギリス政府は、3月31日 以降、いかなる財政的経済的援助も与えられないことになった。イギリスはギリシアを含む全世界各所において、従来の責任を軽減ないし清算せざるを得なくなったのである。我々は現下の危機において国際連合がいかに援助を与えるかについても考慮した。しかし状況は切迫していて即刻の行動を要する。そして国際連合やその関係機関はその性質上、目下要求されているような援助を与える地位にはないのである。ギリシア政府は、我々に対して我々がギリシアに与える財政的その他の援助の使用にあたっても、それを最も有効に利用すべく助力すること、さらに政府行政の改革も助けることを希望しているという点が、ここで注目されなければならない。ギリシアに与えられるあらゆる資金が我々の手によってその使用を管理され支出されるすべての資金がギリシアを自立へと導き、健全な民 主主義が栄えることのできる経済的地盤を確立する役に立つように用いられるということは極めて重要である。いかなる政府といえども完全ではない。しかしながら民主主義の主たる長所の1つは、その下においては欠陥が常に隠されることなく明らかであり、民主的政治過程の下で指摘され、矯正され得るという点にある。ギリシア政府は完全ではない。しかしそれは昨年の選挙によって選出されたギリシア国会議員の85パーセントを代表するものである。692人のアメリカ人を含む外国人の観察するところによれば、この選挙はギリシア国民の意見の公正な表明であったと見なされている。ギリシアの隣国トルコに対しても我々は注意を払わなければならない。独立国にしてかつ健全なる経済を持つ国家としてのトルコの将来は、全世界の自由を愛する人々にとってギリシアの将来に劣らぬ重要性を持っている。今日、トルコの直面している状況は、ギリシアのそれとはかなり異なっている。トルコはギリシアを苦しめたような惨害を被らずにすんだ。そして戦争中に合衆国とイギリスはトルコに対して物資援助を行ってきた。それにも拘わらず、トルコは現在我々の支援を必要としているのである。 戦争以来、トルコはその国家的統一を維持するうえで必要な近代化を実現するために、イギリス及び合衆国に対してより一層の財政援助を求めていた。彼らの統一は中東地域における秩序の維持にとって必要不可欠である。合衆国の外交政策の主要目的の1つは、我々自身及び他の国の人々が圧政からの自由の下に生活することのできる条件を作り出すことにある。ドイツ及び日本との戦いにおける基本的な課題はこれであった。我々が勝利を収めたのは、他国に対し、自らの意思を強制し、自己と同様の生き方をしようとする国々との戦いにおいてであった。圧政からの自由の下に、諸国民の平和な発展を保障するために、合衆国は国際連合創設に指導的役割を務めたのである。国際連合は、加盟国すべてが自由と独立を永続させることができるようにしている。もし我々が、全体主義的な体制を押し付けようとする攻撃的な動きに対して自由諸国民が、自由な制度と国家の統一を維持できるように進んで支援しなければ、我々は我々の目的を実現させることはできない。直接的、間接的な攻撃により自由諸国民に押し付けられた全体主義的な体制は、国際平和の根幹を損ない、それ故、合衆国の安全を損なうということは率直な認識に他ならない。世界の数多くの国民が、最近、その意思に反して全体主義的な体制を押し付けられた。合衆国政府は、ヤルタ協定に違反して、ポーランドとルーマニア、そしてブルガリアで行われた強制と威嚇に対して度々抗議を行った。また 私はその他多くの国々でも同じように事態が進展していると言明しなければならない。世界史の歴史の中で目下、ほぼすべての国が選択可能な生き方のどちらかを選ばなければならない。そうした選択はよくあることだが自由な選択ではない。多数の意志に基づき、自由な制度、代議制政府、自由選挙、そして個人の自由、言論と信教の自由、政治的抑圧からの自由によって特徴付けられる生き方がある。もう1つの生き方は、少数の意志が多数に押し付けられる生き方である。そうした生き方は、恐怖と抑圧、統制された新聞とラジオ、固定された選挙、そして個人の自由の抑圧に拠っている。私は、外部の圧力か、また武装した少数者により企てられた征服に抵抗する自由諸国民を支援することが合衆国の政策でなければならないと信じる。私は、自由諸国民が自らのやり方で自らの運命を切り開くことができるように支援しなければならないと信じる。私は、我々の支援が、主に、経済の安定と秩序ある政治過程に必要となる経済的、財政的支援を通じて行われるべきだと信じる。それ故、私は当議会に対して、1948年6月30日を以って終結する期間の間に、ギリシア及びトルコに対して4億 ドルの援助を与える権限を要請する。資金と同時に私は当議会に対してギリシアとトルコ両国の要請に基づいて、その復興を助け、与えられるべき財政的物資的援助の使用を監督する目的で、両国に対してアメリカ民間人及び軍人を特派する権限を要請する。私はまたギリシアとトルコ両国人の中から選ばれた人々に対して、指導と訓練を施す権限を与えることを勧告する。最後に私は、現下に必要とされる品目、補給物資、及び装備に鑑みて、上述の資金を最も迅速かつ有効に利用することのできる権限を当議会に対して要請する。
(出所)アメリカ学会編訳、『原典アメリカ史』(岩波書店、1958年) <「歴代アメリカ大統領研究」WS(西川秀和)>

(12)日本国との平和条約(1951年9月8日署名 1952年4月28日発効)

 連合国及び日本国は、両者の関係が、今後、共通の福祉を増進し且つ国際の平和及び安全を維持するために主権を有する対等のものとして友好的な連携の下に協力する国家の間の関係でなければならないことを決意し、よつて、両者の間の戦争状態の存在の結果として今なお未決である問題を解決する平和条約を締結することを希望するので、
 日本国としては、国際連合への加盟を申請し且つあらゆる場合に国際連合憲章の原則を遵守し、世界人権宣言の目的を実現するために努力し、国際連合憲章第五55条及び第56条に定められ且つ既に降伏後の日本国の法制によつて作られはじめた安定及び福祉の条件を日本国内に創造するために努力し、並びに公私の貿易及び通商において国際的に承認された公正な慣行に従う意思を宣言するので、
 連合国は、前項に掲げた日本国の意思を歓迎するので、
 よつて、連合国及び日本国は、この平和条約を締結することに決定し…次の規定を協定した。
<第一章 平和>
   第一条
 (a) 日本国と各連合国との間の戦争状態は、…この条約が日本国と当該連合国との間に効力を生ずる日に終了する。
 (b) 連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。
  第二章 領域
   第二条
 (a) 日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
 (b) 日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
 (c) 日本国は、千島列島並びに日本国が1905年9月5日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
 (d) 日本国は、国際連盟の委任統治制度に関連するすべての権利、権原及び請求権を放棄し、且つ、以前に日本国の委任統治の下にあつた太平洋の諸島に信託統治制度を及ぼす1947年4月2日の国際連合安全保障理事会の行動を受諾する。
 (e) 日本国は、日本国民の活動に由来するか又は他に由来するかを問わず、南極地域のいずれの部分に対する権利若しくは権原又はいずれの部分に関する利益についても、すべての請求権を放棄する。
 (f) 日本国は、新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
   第三条
 日本国は、北緯29度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するもの とする。
<第六章 紛争の解決>
   第二十二条
 この条約のいずれかの当事国が特別請求権裁判所への付託又は他の合意された方法で解決されない条約の解釈又は実施に関する紛争が生じたと認めるときは、紛争は、いずれかの紛争当事国の要請により、国際司法裁判所に決定のため付託しなければならない。日本国及びまだ国際司法裁判所規程の当事国でない連合国は、それぞれがこの条約を批准する時に、且つ、千九百四十六年十月十五日の国際連合安全保障理事会の決議に従つて、この条に掲げた性質をもつすべての紛争に関して一般的に同裁判所の管轄権を特別の合意なしに受諾する一般的宣言書を同裁判所書記に寄託するものとする。
<第七章 最終条項>
   第二十六条
 日本国は、1942年1月1日の連合国宣言に署名し若しくは加入しており且つ日本国に対して戦争状態にある国又は以前に第23条に列記する国の領域の一部をなしていた国で、この条約の署名国でないものと、この条約に定めるところと同一の又は実質的に同一の条件で二国間の平和条約を締結する用意を有すべきものとする。但し、この日本国の義務は、この条約の最初の効力発生の後三年で満了する。日本国が、いずれかの国との間で、この条約で定めるところより大きな利益をその国に与える平和処理又は戦争請求権処理を行つたときは、これと同一の利益は、この条約の当事国にも及ぼさなければならない。
(出所)データベース『世界と日本』 東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室

(13)日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(旧)(1951年9月8日署名 1952年4月28日発効)

 日本国は、本日連合国との平和条約に署名した。日本国は、武装を解除されているので、平和条約の効力発生の時において固有の自衛権を行使する有効な手段をもたない。
 無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないので、前記の状態にある日本国には危険がある。よつて、日本国は平和条約が日本国とアメリカ合衆国の間に効力を生ずるのと同時に効力を生ずべきアメリカ合衆国との安全保障条約を希望する。
 平和条約は、日本国が主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認している。
 これらの権利の行使として、日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。
 アメリカ合衆国は、平和と安全のために、現在、若干の自国軍隊を日本国内及びその附近に維持する意思がある。但し、アメリカ合衆国は、日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則に従つて平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。
 よつて、両国は、次のとおり協定した。
第一条
 平和条約及びこの条約の効力発生と同時に、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。
第二条
 第一条に掲げる権利が行使される間は、日本国は、アメリカ合衆国の事前の同意なくして、基地、基地における若しくは基地に関する権利、権力若しくは権能、駐兵若しくは演習の権利又は陸軍、空軍若しくは海軍の通過の権利を第三国に許与しない。
第三条
 アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定する。
第四条
 この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。
第五条
 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国によつて批准されなければならない。この条約は、批准書が両国によつてワシントンで交換された時に効力を生ずる。
(出所)データベース『世界と日本』 東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室

(14)日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(1960年1月19日署名 1960年6月23日発効)

日本国及びアメリカ合衆国は、
 両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、
 また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、
 国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、
 両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、
 両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、
 相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、
 よつて、次のとおり協定する。
第一条 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、 国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。
 締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
第二条 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の 経済的協力を促進する。
第三条 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第四条 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
第六条 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
第七条 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。
第八条 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。
第九条 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。
第十条 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。
(出所)外務省WS

(15)佐藤・ニクソン「核密約」(1969年11月21日)

AGREED MINUTES TO JOINT COMMUNIQUE OF UNITED STATES PRESIDENT NIXON AND JAPANESE PRIME MINISTER SATO ISSUED ON NOVEMBER 21, 1969
(DRAFT)
United States President:
As stated in our Joint Communique, it is the intention of the United States Government to remove all the nuclear weapons from Okinawa by the time of actual reversion of the administrative rights to Japan; and thereafter the Treaty of Mutual Cooperation and Security and its related arrangements will apply to Okinawa, as described in the Joint Communique.
However, in order to discharge effectively the international obligations including Japan, in time of great emergency the United States Government will require the re-entry of nuclear weapons and transit rights in Okinawa with prior consultation with the Government of Japan. The United States Government also requires the standby retention and activation in time of great emergency of existing nuclear storage locations in Okinawa: Kadena, Naha, Henoko and Nike Hercules units.
Japanese Prime Minister:
The Government of Japan, appreciating the United States Government's requirements in time of emergency stated above by the President, will meet these requirements without delay when such prior consultation takes place.
(出所)若泉敬『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』

(16)琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(1971年6月17日署名、1972年5月15日発効)

第1条
1. アメリカ合衆国は,2に定義する琉球諸島及び大東諸島に関し,1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第3条の規定に基づくすべての権利及び利益を,この協定の効力発生の日から日本国のために放棄する。日本国は,同日に,これらの諸島の領域及び住民に対する行政,立法及び司法上のすべての権利を行使するための完全な権能及び責任を引き受ける。
第2条
日本国とアメリカ合衆国との間に締結された条約及びその他の協定…は,この協定の効力発生の日から琉球諸島及び大東諸島に適用されることが確認される。
第3条
1. 日本国は,1960年1月19日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約及びこれに関連する取極に従い,この協定の効力発生の日に,アメリカ合衆国に対し琉球諸島及び大東諸島における施設及び区域の使用を許す。
(出所)外務省WS

3.日中関係基本文書

(17)日本国と中華民国との間の平和条約(1952年4月28日署名 同年8月5日発効)

 日本国及び中華民国は、
 その歴史的及び文化的のきずなと地理的の近さとにかんがみ、善隣関係を相互に希望することを考慮し、
 その共通の福祉の増進並びに国際の平和及び安全の維持のための緊密な協力が重要であることを思い、
 両者の間の戦争状態の存在の結果として生じた諸問題の解決の必要を認め、
 平和条約を締結することに決定し、よつて、その全権委員として次のとおり任命した。
 日本国政府 河田烈
 中華民国大統領 葉公超
 これらの全権委員は、互にその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。
第一条
 日本国と中華民国との間の戦争状態は、この条約が効力を生ずる日に終了する。
第二条
 日本国は、1951年9月8日にアメリカ合衆国のサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約(以下「サン・フランシスコ条約」という。) 第二条に基き、台湾及び澎湖諸島並びに新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄したことが承認される。
第三条
 日本国及びその国民の財産で台湾及び澎湖諸島にあるもの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で台湾及び澎湖諸島における中華民国の当局及びその住民に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国政府と中華民国政府との間の特別取極の主題とする。国民及び住民という語は、この条約で用いるときはいつでも、法人を含む。
第四条
 1941年12月9日前に日本国と中国との間で締結されたすべての条約、協約及び協定は、戦争の結果として無効となつたことが承認される。
第五条
 日本国はサン・フランシスコ条約第十条の規定に基き、1901年9月7日に北京で署名された最終議定書並びにこれを補足するすべての附属書、書簡及び文書の規定から生ずるすべての利得及び特権を含む中国におけるすべての特殊の権利及び利益を放棄し、且つ、前記の議定書、附属書、書簡及び文書を日本国に関して廃棄することに同意したことが承認される。
第六条
(a)日本国及び中華民国は、相互の関係において、国際連合憲章第二条の原則を指針とするものとする。
(b)日本国及び中華民国は、国際連合憲章の原則に従つて協力するものとし、特に、経済の分野における友好的協力によりその共通の福祉を増進するものとする。
(以下省略)
<日華平和条約議定書(抜粋)>
 本日日本国と中華民国との間の平和条約(以下「この条約」という。)に署名するに当り、下名の全権委員は、この条約の不可分の一部をなす次の条項を協定した。
1 この条約の第11条の適用は、次の了解に従うものとする。
(b)中華民国は、日本国民に対する寛厚と善意の表徴として、サン・フランシスコ条約第14条(a)1に基き日本国が提供すべき役務の利益を自発的に放棄する。
(出所)データベース『世界と日本』 東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室

(18) 日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明(1972年9月29日)

 日本国内閣総理大臣田中角栄は、中華人民共和国国務院総理周恩来の招きにより、1972年9月25日から9月30日まで、中華人民共和国を訪問した。田中総理大臣には大平正芳外務大臣、二階堂進内閣官房長官その他の政府職員が随行した。
 毛沢東主席は、9月27日に田中角栄総理大臣と会見した。双方は、真剣かつ友好的な話合いを行った。
 田中総理大臣及び大平外務大臣と周恩来総理及び姫鵬飛外交部長は、日中両国間の国交正常化問題をはじめとする両国間の諸問題及び双方が関心を有するその他の諸問題について、終始、友好的な雰囲気のなかで真剣かつ率直に意見を交換し、次の両政府の共同声明を発出することに合意した。
 日中両国は、一衣帯水の間にある隣国であり、長い伝統的友好の歴史を有する。両国国民は、両国間にこれまで存在していた不正常な状態に終止符を打つことを切望している。戦争状態の終結と日中国交の正常化という両国国民の願望の実現は、両国関係の歴史に新たな一頁を開くこととなろう。
 日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。また、日本側は、中華人民共和国政府が提起した「復交三原則」を十分理解する立場に立って国交正常化の実現をはかるという見解を再確認する。中国側は、これを歓迎するものである。
 日中両国間には社会制度の相違があるにもかかわらず、両国は、平和友好関係を樹立すべきであり、また、樹立することが可能である。両国間の国交を正常化し、相互に善隣友好関係を発展させることは、両国国民の利益に合致するところであり、また、アジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献するものである。
1 日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。
2 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
3 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。
4 日本国政府及び中華人民共和国政府は、1972年9月29日から外交関係を樹立することを決定した。両政府は、国際法及び国際慣行に従い、それぞれの首都における他方の大使館の設置及びその任務遂行のために必要なすべての措置をとり、また、できるだけすみやかに大使を交換することを決定した。
5 中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。
6 日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。
 両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。
7 日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。
8 日本国政府及び中華人民共和国政府は、両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、平和友好条約の締結を目的として、交渉を行うことに合意した。
9 日本国政府及び中華人民共和国政府は、両国間の関係を一層発展させ、人的往来を拡大するため、必要に応じ、また、既存の民間取決めをも考慮しつつ、貿易、海運、航空、漁業等の事項に関する協定の締結を目的として、交渉を行うことに合意した。
(出所)外務省WS

(19) 日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約(1978年8月12日署名 同年10月23日発効)

 日本国及び中華人民共和国は、
 1972年9月29日に北京で日本国政府及び中華人民共和国政府が共同声明を発出して以来、両国政府及び両国民の間の友好関係が新しい基礎の上に大きな発展を遂げていることを満足の意をもつて回顧し、
 前記の共同声明が両国間の平和友好関係の基礎となるものであること及び前記の共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきことを確認し、
 国際連合憲章の原則が十分に尊重されるべきことを確認し、アジア及び世界の平和及び安定に寄与することを希望し、
 両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、
 平和友好条約を締結することに決定し…た。
第1条 
1 両締約国は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に、両国間の恒久的な平和友好関係を発展させるものとする。
2 両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。
第2条
 両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。
第3条
 両締約国は、善隣友好の精神に基づき、かつ、平等及び互恵並びに内政に対する相互不干渉の原則に従い、両国間の経済関係及び文化関係の一層の発展並びに両国民の交流の促進のために努力する。
第4条
 この条約は、第三国との関係に関する各締約国の立場に影響を及ぼすものではない。
第5条
1 この条約は、批准されるものとし、東京で行われる批准書の交換の日に効力を生ずる。この条約は、十年間効力を有するものとし、その後は、2の規定に定めるところによつて終了するまで効力を存続する。
2 いずれの一方の締約国も、一年前に他方の締約国に対して文書による予告を与えることにより、最初の十年の期間の満了の際またはその後いつでもこの条約を終了させることができる。
(出所)外務省WS

4 日ソ関係文書

(20)日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言(1956年10月19日署名、同年12月12日発効)

相互理解と協力のふん囲気のうちに行われた交渉を通じて、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との相互関係について隔意のない広範な意見の交換が行われた。日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間の外交関係の回復が極東における平和及び安全の利益に合致する両国間の理解と協力との発展に役だつものであることについて完全に意見が一致した。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦の全権団の間で行われたこの交渉の結果、次の合意が成立した。
1 日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の戦争状態は、この宣言が効力を生ずる日に終了し、両国の間に平和及び友好善隣関係が回復される。
2 日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間に外交及び領事関係が回復される。両国は、大使の資格を有する外交使節を遅滞なく交換するものとする。また、両国は、外交機関を通じて、両国内におけるそれぞれの領事館の開設の問題を処理するものとする。
3 日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、相互の関係において、国際連合憲章の諸原則、なかんずく同憲章第二条に掲げる次の原則を指針とすべきことを確認する。
(a) その国際紛争を、平和的手段によつて、国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように、解決すること。
(b) その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使は、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むこと。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、それぞれ他方の国が国際連合憲章第51条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有することを確認する。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、経済的、政治的又は思想的のいかなる理由であるとを問わず、直接間接に一方の国が他方の国の国内事項に干渉しないことを、相互に、約束する。
4 ソヴィエト社会主義共和国連邦は、国際連合への加入に関する日本国の申請を支持するものとする。
5 ソヴィエト社会主義共和国連邦において有罪の判決を受けたすべての日本人は、この共同宣言の効力発生とともに釈放され、日本国へ送還されるものとする。
また、ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要請に基いて、消息不明の日本人について引き続き調査を行うものとする。
6 ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、1945年8月9日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。
7 日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、その貿易、海運その他の通商の関係を安定したかつ友好的な基礎の上に置くために、条約又は協定を締結するための交渉をできる限りすみやかに開始することに同意する。
8 1956年5月14日にモスクワで署名された北西太平洋の公海における漁業に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約及び海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の協定は、この宣言の効力発生と同時に効力を生ずる。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、魚類その他の海洋生物資源の保存及び合理的利用に関して日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦が有する利害関係を考慮し、協力の精神をもつて、漁業資源の保存及び発展並びに公海における漁猟の規制及び制限のための措置を執るものとする。
9 日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。
ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。
(出所)外務省WS

5 日韓関係基本文書

(21)日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約(1965年6月22日署名 同年12月18日発効)

 日本国及び大韓民国は、
 両国民間の関係の歴史的背景と、善隣関係及び主権の相互尊重の原則に基づく両国間の関係の正常化に対する相互の希望とを考慮し、
 両国の相互の福祉及び共通の利益の増進のため並びに国際の平和及び安全の維持のために、両国が国際連合憲章の原則に適合して緊密に協力することが重要であることを認め、
 1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約の関係規定及び1948年12月12日に国際連合総会で採択された決議第195号(III)を想起し、
 この基本関係に関する条約を締結することに決定し、…次の諸条を協定した。
第一条
 両締約国間に外交及び領事関係が開設される。両締約国は、大使の資格を有する外交使節を遅滞なく交換するものとする。また、両締約国は、両国政府により合意される場所に領事館を設置する。
第二条
 1910年8月22日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される。
第三条
 大韓民国政府は、国際連合総会決議第195号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。
第四条
(a)両締約国は、相互の関係において、国際連合憲章の原則を指針とするものとする。
(b)両締約国は、その相互の福祉及び共通の利益を増進するに当たつて、国際連合憲章の原則に適合して協力するものとする。
(以下省略)
(出所)外務省WS

(22)日韓請求権協定

 日本国及び大韓民国は、
 両国及びその国民の財産並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題を解決することを希望し、
 両国間の経済協力を増進することを希望して、
 次のとおり協定した。
第一条
1 日本国は、大韓民国に対し、
(a)現在において1080億円に換算される3億合衆国ドルに等しい円の価値を有する 日本国の生産物及び日本人の役務を、この協定の効力発生の日から10年の期間にわたつて無償で供与するものとする。(以下省略)
(b)現在において720億円に換算される2億合衆国ドルに等しい円の額に達するまでの長期低利の貸付け…をこの協定の効力発生の日から10年の期間にわたつて行なうものとする。(以下省略)
第二条
1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、1951年9月 8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第4条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。
第三条
1 この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。
2 1の規定により解決することができなかつた紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三30日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又 は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれかの国民であつてはならない。
3 いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが30日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。
4 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。 (以下省略)
(出所)外務省WS