日韓関係を支配するアメリカ(李敦球文章)

2015.07.08.

7月6日付の中国青年報は、李敦球署名文章「韓日関係の主は誰か」と題する文章を掲載しました。その論旨は、日韓関係のカギとなる時には必ずアメリカが割って入って、日本にとって有利になる形の日韓関係を韓国に受け入れさせてきたし、最近の日韓関係でもそのパターンがくり返されているという見方を示すものです。私も基本的に同じ見方をしていますが、中国の研究者がかくもあからさまにそういう見方を明らかにするのには、これまでお目にかかりませんでした。
  しかも李敦球は、このようなアメリカの有無をいわさぬ形での対韓アプローチは韓国国内において不満、矛盾を鬱積させつつあるとして、最終的に爆発する時が来る可能性があるという見方も示しています。私自身はそこまで「楽観的」にはなれませんが、朴槿恵・韓国に不満を募らせている中国側の雰囲気の一端を示すものである可能性はあるでしょう。
  以下に李敦球文章の内容を紹介します。

  6月22日は韓日国交正常化50周年記念日であり、朴槿恵と安倍晋三はそれぞれ、相手側大使館が行った記念活動に出席して祝辞を述べた。韓日首脳はともに、その発言の中で韓日関係改善を希望する姿勢を示し、冷え切った両国関係に一縷の春風をもたらしたかの如くだった。
  2012年7月10日に李明博が独島(日本名は竹島)に上陸し、その後「天皇が訪韓して心から謝罪する必要がある」と言い放った後、韓日関係は冷却期に入った。安倍が政権に就いてから韓日関係は急速に悪化したが、それは、安倍政権が「慰安婦」の歴史などを歪曲しようとする態度に不満を募らせたからである。韓国外相は6月21日に2日間の訪日を行ったが、これは2011年以来韓国外相による最初の訪日だった。アメリカ国務省報道官は先頃の記者会見において、「日韓両国が関係を改善する行動を歓迎する」と表明するとともに、日韓関係がさらなる協力と対話を通じてさらに広汎にかつ深く発展することを期待すると述べた。
  アメリカは何時もカギとなる時に立ち現れる。戦後、韓日関係はアメリカを中心とする国際システムの枠組みに組み込まれ、対日関係の処理に関し、韓国は、アメリカと同盟する反共政策と日本との複雑な歴史関係によって形成された反日感情との間で「進退両難の境地」に置かれてきた。韓日関係正常化交渉は1952年2月15日から1965年6月22日までの14年間にわたり、韓日基本関係条約は、韓日両国がヴェトナム戦争拡大に巻き込まれるという背景のもと、アメリカの強引な仲介で締結された。同条約は1910年の日韓併合条約に基づく植民地支配に曖昧な処理を行い、日韓請求権協定は植民地統治の被害者の声をことさらに無視し、日本の植民地統治と戦争に関する責任問題を回避し、歴史問題の禍根を埋め込んだ。したがって、国交樹立以後も、韓日間の問題は相変わらず山の如く存在することとなった。
  今日、韓日関係が歴史問題によって膠着状態にある時、アメリカの影が再びちらついている。アメリカは、アジア太平洋リバランス戦略の必要に基づき、韓日間の歴史問題における理非曲直を再び無視し、韓日関係を強引に「仲介」しており、恐らく後遺症は尽きることがないだろう。本年5月、ケリー国務長官は韓国を訪問した際、韓日が歴史問題を克服して対話を再開することを公然と促した。日本のメディアは、ケリーの発言によって韓国外相は日本訪問を決定したと報じている。アメリカの官僚経験者は公に、「日本と韓国はアメリカのアジアにおける重要な同盟国であり、日韓がもめると、アメリカは非常に緊張する。なぜならば、このことは米日韓3国の戦略構造をかき乱すからだ」と指摘した。
  容易に分かることは、東北アジアには極めて興味深い現象があるということだ。即ち、韓日関係が緊張するたびにアメリカがすぐさま登場し、和解対話を勧め、さらには強制干渉という手段まで使うということだ。アメリカの韓日関係及び朝韓関係に対するアプローチは極めて対照的であり、重要なことは、アメリカは何度でも同じことをするということだ。
  アメリカは今回もうまくやったかの如くである。韓日メディアの報道によれば、アメリカの圧力のもと、朴槿恵大統領は5月に韓日関係を処理する「ダブル・トラック」政策を提起した。即ち、日韓の歴史領土問題と経済・安保協力問題とを切り離して処理し、「慰安婦」等の歴史問題によって日韓間のすべての交流チャンネルがふさがれないようにするというものだ。その後、5月下旬には韓日財務相対話が2年半ぶりに再開された。5月末には韓日防衛相会談が4年ぶりに行われた。今回の韓日外相会談の実現も、「ダブル・トラック」政策の延長であり、具体化である。
  日本の収穫はこれに留まらない。韓国連合通信社の6月25日付報道によれば、アメリカ国防省の匿名の当局者は、「朝鮮の核・ミサイルの脅威に関する韓米日間の情報交流取り決め」の枠組みのもとで、韓日両国が朝鮮に関する情報の交流を開始したと述べた。別の筋によれば、アメリカは韓日が関連情報を交流するために大量の働きかけを行った。その目的は、韓米日3国の安全保障協力を通じて地域の覇権秩序を維持するためという。韓日外相会談はさらに、両国間のさらなる外交目的・課題は最初の首脳会談を如何にして実現するかであることを示している。
  このことについて、安倍は駐日韓国大使館の活動に出席した際、「両国は多くの共通の戦略的利益をもっており、日韓及び日韓米の協力を強化することは、アジア太平洋地域の平和と安定にとって代わりのきかない役割を持っている」と得意げに述べた。安倍がここで述べた日韓米協力の強化とは朝鮮に対してだけ向けられたものと言えるだろうか。そうでないとした場合、一体誰に対しての代わりのきかない役割だと言うのだろうか。
  韓日の戦略同盟関係樹立が歴史的及び民意という基礎を欠いているとすれば、韓日間に横たわる主要な課題、即ち歴史的摩擦、領土紛争、国民感情の悪化、東アジアの戦略的位置づけなどの問題は相変わらず解決困難だろう。ソウルで韓日国交正常化50周年の祝賀行事が行われたその日に、韓国の反日活動は至るところで盛大に行われ、多くの韓国市民は慶祝活動会場の周辺で大規模な反日デモを行い、「韓日協定廃棄」、「韓米日軍事同盟反対」、「日本が歴史を正視することを要求する」などのスローガンを高唱した。韓国日報及び読売新聞が6月に共同で行った世論調査によれば、85%の韓国人が日本を好きでなく、信頼していないと答え、73%の日本人が韓国を信頼しないと答えた。両国国民の感情は日増しに悪化している。
  50年前、アメリカは冷戦の必要のために韓国の声を抑え込み、日本が植民地統治に対する責任追及を逃れることを客観的には手伝った。現在アメリカはアジア太平洋リバランス戦略の必要のために再び手を出し、歴史を徹底的に清算すべしという韓国の正当な声を押さえ込んでいる。潜在的な矛盾はますます多くなっており、いつかは爆発する日が来るだろう。