朴槿恵政権の対朝鮮政策批判(李敦球文章)

2015.06.17.

 6月15日付の中国青年報は、李敦球署名文章「冷戦・熱戦・温戦」を掲載しました。この文章は、南北関係悪化の責任は韓国側にあるとして、朴槿恵政権の対朝鮮政策を正面から批判したものです。朴槿恵政権に大きな期待を抱いてきた中国ですが、対朝鮮政策でアメリカに対する傾斜を強めている朴槿恵政権に対して、中国が不満を持っていることを示したものと受けとめることも可能です。その主要部分を紹介します。

  新年早々朝韓は互いにオリーブの枝を相手側に差し出し、無条件で首脳会談を行おうと呼びかけあった。世界が南北関係はどのように発展するかと注目していた時、外部的要因によってか、韓国の朝鮮に対する「幻想」が打ち消され、朝韓関係は突然冷却化した。いくつかの現象から見れば、朴槿恵は韓朝関係改善のために何かしたいという気持ちはあるようだが、「不本意ながら」なのか、「力及ばず」なのか、あるいは韓国内外の戦略環境に牽制されてなのか、それとも朴槿恵自身も眼前にある内外環境にチャレンジする気持ちがないからなのか、様々な圧力に屈伏しているように見える。その結果、朝韓関係は新たな対立のエスカレーションを引き起こしている。
  今年は世界反ファシズム戦争勝利70周年であるとともに、朝鮮半島分裂70周年でもあって、1945年に引かれた38度線は米ソ冷戦の産物として朝鮮半島を分断している。民族分裂という角度から見れば、朝鮮と韓国はともに冷戦の直接被害者である。即ち、米ソ冷戦がなかったならば、朝韓分裂もなかったということだ。
  38度線が引かれた5年後に、朝鮮半島には大規模な熱戦が燃え上がった。朝鮮戦争の勃発は多くの内外諸国を巻き込んだだけではなく、38度線をさらに固定化させ、民族分裂を深めた。朝鮮戦争は、停戦協定及び韓米同盟などの多くの冷戦の遺産を残し、半島及び東北アジアの秩序に影響しかつこれを規制してきた。朝鮮戦争が終わってすでに60年以上経つが、その余波は継続して絶えることがなく、時に激しくエスカレートし、朝韓関係は長期に対立し、摩擦が絶えない温戦に変化した。
  世界の二極冷戦構造が崩壊した後、朝韓関係は小さくはない改善もあったが、本質的なブレークスルーはない。朝鮮半島の冷戦メカニズムが相変わらず存在するだけではなく、近年においてはそれがさらに強化される趨勢にある。朝鮮半島は東北アジアの中心部にあり、朝韓関係の動向は東北アジアひいてはアジア太平洋地域に対して重大かつ深遠な影響を生みだす。朝韓の和解及び統一を実現することは、半島人民の長期的利益に合致するだけでなく、朝鮮及び韓国が持続可能な発展を遂げる上での基礎でもある。南北関係問題に関して外部の干渉を排除するべきか否かは朝韓が自主的に決定することであり、半島のすべての人々が真剣に考える価値のあることだ。
  朝韓関係の変化の歴史が語るように、韓国政府が対朝政策に関して相対的に大きな自主性を維持する状況のもとでは、朝韓関係は緩和しうる。金大中及び盧武鉉政権の時期には、対朝鮮政策において基本的に自主性の原則を堅持し、朝韓の和解と協力を推進し、半島情勢にはかつて良好な局面が現れた。
  朴槿恵大統領の5年の任期はすでに3年目の半ばを超えており、道理からいえば、朝韓関係の改善についても行動に移すべき時に来ている。以上の歴史的法則に基づけば、朴槿恵政権としては、まずは、朝鮮半島の平和と統一が民族的なもっとも根本的な利益であるという認識に基づき、自らの設計するプラン及び方法に従って朝韓相互信頼プロセスを推進し、外部的要因が朝韓関係に及ぼすマイナスの影響を最大限度減らし、対朝鮮政策が李明博政権時代の路線に回帰することを回避するべきである。戦略的選択は往々にして苦痛を伴うプロセスであるが、これこそが問題のカギである。
  次に、朝鮮の核問題に対処する上で、韓国政府は朝鮮半島の非核化を積極的に推進すると同時に、朝鮮の核問題の本質を正確に認識するべきであり、非核化プロセスを朝韓関係改善と一体化するということだけにこだわるべきではなく、さらには、李明博政権当時のように朝韓関係を犠牲にして朝鮮の核問題を解決するということを考えるべきではない。まずは朝韓関係改善推進を先行させることもあるのではないか。朝韓関係改善は必ずしも朝鮮の核問題の直接の解決にはならないかもしれないが、同問題の最終的な解決に対してプラスに働くことは間違いない。
  第三に、韓中及び韓米の間でバランス外交を行うと同時に、対朝鮮政策に関して中国の十分な支持を得ることは非常に必要なことだ。なぜならば、アメリカを含む周辺大国の中で、朝韓和解を本当に希望しているものは必ずしも多くないようだからだ。
  朝韓の和解及び統一に対する東北アジア各国の態度はそれぞれ異なっており、公然と朝韓が接近することを妨害する動きも現れたこともある。朝韓関係がいかなる形でプラスに変化することも、東北アジアの国際構造及び同盟関係を含む半島の冷戦メカニズムに対して巨大な影響とショックを生みだすだろう。逆に言えば、半島の固有の冷戦メカニズムもまた朝韓和解に対してネガティヴな影響を及ぼすだろう。ある意味において、朝韓が70年にわたって分裂し、和解しがたいことのもっとも重要な原因は、韓国が同盟関係によって縛り付けられていることにある。朝韓の和解と統一は、最終的には半島全体の人民の覚醒と実力の増大によって決まるのであり、これは朝鮮半島が冷戦から抜け出す上で必ず取らなければならない道のりなのだ。
  朝鮮半島が和解と統一を実現することは、中国にとってチャンスであると同時にチャレンジであるが、チャンスがチャレンジよりはるかに大きい。大局的な地縁政治環境から見ても、また、東北国境地域の経済建設というより小さな次元から見ても、半島が和解と融合を実現することは、中国にとって重要な戦略的な意義があり、中国としては、朝韓関係改善を断固支持し、半島が自主平和統一を実現することを断固として推進するべきである。