日韓軍事関係強化の動きと対韓注意喚起 (李敦球文章)

2015.06.07.

6月6日付の中国青年報は、李敦球署名文章「韓日軍事協力は歴史の流れに合わない」を掲載しました。前回のコラムで紹介した「寰球東隅」の第2弾と思われます。この文章は、日韓が進めている軍事協力関係強化は、朝鮮に対する日韓協力ということが表向きの理由になっているけれども、その背後には、再び朝鮮半島への軍事進出を狙う日本の意図と、中国の封じ込めを狙うアメリカの強力な押しがあるとして、韓国に対して過去の歴史を繰り返さないように慎重な対応を促すものです。

  韓日の軍事分野における協力が最近深まる傾向にあるようだ。報道によれば、5月30日、韓国国防部の韓民求長官と日本の中谷元防衛大臣がシンガポールで会談し、日本の集団的自衛権行使の条件及び手続などの問題に関して意見を交換した。双方は、日本が朝鮮半島で集団的自衛権を行使するに当たってはその前に韓国の同意を得る必要があるという合意に達するとともに、国防分野での両国の協力をさらに強化すること、年内に合同捜索救援演習を行うよう努力することを決定した。
  以上のニュースに関しては次の3点を読み取ることができる。第一、韓国は日本が朝鮮半島で集団的自衛権を行使することを必ずしも排除しているのではなく、韓国の事前の同意さえ得れば良いとしているにすぎないということだ。第二、適当な条件の下では、日本の自衛隊は、集団的自衛権行使の名目のもと、70年という年月を経て再び朝鮮半島に進出する可能性があるということだ。第三、韓日両国は今後不断に両国間の軍事協力をエスカレートしていくということだ。
  韓日の現在の軍事協力強化の勢いに鑑み、筆者としては、近代日本が朝鮮半島の戦略的地位に付していた重視のほどを連想せざるを得ない。早くも1890年、山県有朋首相は、いわゆる「主権線」と「利益線」という理論を提起した。この理論によれば、日本の「利益線」の焦点は朝鮮半島にあるとされた。その後、日本は様々な手段を利用して当時の韓国と一連の不平等条約を締結し、最終的には1910年8月22日に「日韓併合条約」を締結し、その後の半島を基地として中国大陸に侵攻する上での基礎とした。現在の朝鮮半島が再びかつての日本の「利益線」とならないことを願うばかりだ。
  2011年8月、日本のタカ派である野田佳彦が政権に就き、エスカレートした米韓全面戦略同盟を利用し、韓国との安全保障戦略関係を強化しようとし、それによって中国及び朝鮮に対抗する「鉄のトライアングル」を強化しようと試みた。考えられた韓日軍事条約は二つの部分から構成されることになっていた。それは即ち、「軍事情報保護協定」(GSOMIA)及び「物資労務相互提供協定」(ACSA)である。2012年春には交渉はすでに最終段階に近づいていた。しかし、韓国の野党及び市民団体の反対の声が高まるという圧力を受け、同年5月17日、韓国の金寛鎮国防長官は東京訪問と日本との協定締結の計画を取り消した。棚上げされた「韓日軍事情報保護協定」は準軍事同盟という性格の文件である。韓国政府は、最初の提案は2010年に日本側から提起されたと主張したが、韓国メディアの報道によれば、実際には2008年に韓国が最初に提案したのであり、時の韓国大統領は李明博だった。
  朴槿恵大統領になってから、米日韓三国は2014年12月29日に「朝鮮の核ミサイルの脅威に関する情報交流協議」の三国間のメモランダムに署名し、それは直ちに発効した。韓国当局は、その目的は「朝鮮の脅威」に対処するものだと繰り返し強調しているが、韓国世論は、そのメモランダムの署名は、実際上はアメリカの仲介のもとで韓日間の軍事情報の交換を実現するための「迂回」であり、2012年に挫折した韓日政府間の「軍事情報保護協定」を形を変えて推進するものと見なしている。アメリカは三国の軍事協力において非常に力を尽くしており、その意図するところは明確だ。
  常識的に言って、強大な韓米同盟は朝鮮のいわゆる「脅威」に対処するに十分であり、韓国は何故にさらに日本との軍事協力を強化する必要があるのだろうか。韓国国防分析研究所の専門家である白承周は、韓日軍事協力の最大の勝者は日本でも韓国でもなく、アメリカであるとしている。彼によれば、韓日が軍事協力を強化することは地域の緊張した情勢をさらに深めるだけであり、中国などの隣国は「アメリカが主導する軍事同盟の東北アジアにおける拡張」と看做すであろう。
  韓国の『朝鮮日報』もかつて社説を発表して、アメリカと日本は韓日軍事協力強化を希望しており、表面的には朝鮮問題を理由としているが、背後にある本当の理由は「中国を牽制する同盟戦略」であると指摘した。日本のメディアも、日本は「日韓準軍事同盟」の正式な着手を期待しており、日韓準軍事同盟は将来的に日韓米三国軍事同盟形成の準備となると報道した。
  報道によれば、日本は先日のシンガポールでの日韓防衛相会談を契機として、引き続き「軍事情報保護協定」を締結することを希望している。韓国側は、韓日両国の関連当局間ではこの協定を締結することの重要性については一致しているが、韓国国内には強烈な反日感情があり、また、中国ファクターも考慮するため、この協定を締結することにはなお障碍があるとしている。韓国の識者は次のように指摘する。「中国は韓国にとって最大の貿易パートナーであり、朝鮮半島の平和と統一の問題においてはアメリカと同じく極めて大きな影響力を持っている。したがって、中国の立場を考慮しなければならない。率直に言って、韓国が東北アジアの対立構造の最前線に立たされることは国家の長期的利益に合致しない。」
  韓国政府は、対外戦略において、歴史の教訓をいまだ本当には学んでいないようであり、東北アジアの歴史的法則に対しても深刻な認識がいまだできておらず、地縁戦略においても間違った判断をしているのかもしれない。韓国の進歩的な人士が述べているように、米日韓軍事同盟ができれば、「手術は成功しても、人は死んでいる」というのと同じだ。現在の日本政府は、侵略の歴史に関する反省という点で深刻な問題がいまだにあり、右翼勢力と軍国主義勢力が次第に台頭するという背景のもと、韓国が慎重に韓日軍事協力問題に対処し、再度「自ら災いの種をまく」ことだけは絶対にないことを希望する。