プーチンに対するロシア人の評価(中国側見方の一端)

2015.01.31.

ウクライナ情勢を受けた西側の対露制裁によって、ロシア経済は厳しい状況に直面していることが伝えられています。しかし、これまでのところ、ロシア国内においてパニックが起こることはなく、プーチン大統領に対するロシア人の支持率は80%以上という高い水準を維持しています。ロシア問題についてまったく素人の私にはとても興味深い状況です。
  ロシア情勢に関する中国メディアの報道もまた極めて興味深いものがあります。1960年代から80年代にかけて全面的に対立した歴史をもつ中露両国ですから、ロシアに対して違和感があるとしても自然なことだと思うのですが、ウクライナ情勢に対するロシア・プーチン政権の対応について、中国メディア及び専門家の見方はおしなべて「好意的中立」と特徴づけることができます。
  1月26日付の環球時報は、ロシア駐在特約記者である汪嘉波署名「ロシア人は何故にプーチンのために「犠牲」になることを願うのか」という、私の以上の関心に応える極めて興味深い文章を掲載しています。果たしてこのような見方が今後のロシアの歩みにおいて確認されることになるのかどうか、私にはまったく判断する糸口もありませんが、全文を紹介します。

  1月23日のダボス経済フォーラムで、ロシア政府のシュワロフ第一副首相は、西側諸国はプーチン大統領をひっくり返すという幻想をもつべきではない、ロシアの人々はプーチンを支持しており、プーチンのために犠牲になる準備があると述べた。シュワロフは、西側がプーチンを打倒しようと図るならば、ロシアをさらに団結させるだけであり、「国家が直面するいかなる困難にも耐える」、「食べるものが少なくなり、電気を節約する」ことがあってもロシア人は絶対に「外国の圧力」には屈しない、「自分たちのリーダーを絶対に放棄しない、絶対に」と断固として述べた。
  実際に、ルーブルが「暴落」し、インフレは「一直線で上昇」し、経済は「衰退に落ち込む」状況の下にあるのに、ロシアの人々のプーチンに対する信任は低下していない。西側のメディアでも、シュワロフの怒りと自信に満ちた警告からは、一人の政府の人間の国家指導者に対する信任だけではなく、数多くのロシア人の西側に対する軽蔑とプーチンに対する尊敬とを聞き取ることを認めざるを得ないだろう。
  プーチンは何によってこのような不可思議な人々の支持と信任を獲得しているのだろうか。絶対多数のロシア人に関して言えば、この問題に回答することは、「ロシアはなぜ強大であるべきであり、なぜ復興するべきか」という問題に回答することと同じである。プーチンは、ロシアの政治及び社会生活において特別な地位を占めており、彼こそはロシアの今の政治システムの創立者であり、彼の思想、主張及び原則はロシア人の願望と目標とに合致しているのだ。特にクリミアが「ロシアに戻った」後、プーチンは今や「普通の国家元首」ではなく、「すべての人々が仰ぎ見る民族の英雄」となった。ますます多くのロシア人は、「プーチン即ちロシア」「ロシア即ちプーチン」に賛同するようになっている。彼らにとって、プーチンの志はあくまで高く、その謀は超人的であり、彼の行う政策、路線、原則及びその持する価値観はロシア社会全体のそれを反映しており、彼が描き出すロシアの将来はロシアそのものに充ち満ちており、プーチンはロシア・ドリーム及びロシア復興のスポークスマンとなったのだ。プーチンは、ロシアの歴史的プロセスにおいて「ピーター大帝的な英雄」になるだろう。
  政治指導者としてのプーチンは、「現実生活とマッチした健康な思考」と「ロシア正教の人生哲学という崇高な道徳」を備えている。プーチンは、政治家の義務と責任に関して、「公務員は人々に奉仕する意識をもつべきであり、政治家は人々の求めるものを満足させる義務と責任がある」と説明する。プーチンは、人々の支持率が高くなればなるほど、責任はますます重く、なすべき仕事もますます多くなると述べている。これこそが、ロシア人の政治家のあるべき姿と一致するのだ。
  絶対多数のロシア人にとって、ロシアの現在の困難はすべて西側の内政干渉の結果である。西側の目的は、ロシアに面倒を起こし、ロシアを困難に陥れ、ロシアの人々が西側の謀る「街頭革命」に参加するようにそそのかし、それによってプーチンを取り除くことなのだ。ロシア人は、西側のプーチン打倒の戦略的目的はロシアを屈伏させることにあるということをはっきり見極めている。したがって、ロシア人は、衣食に事欠いても、生活内容が深刻に落ち込んでも、「偉大なロシア帝国」が西側の一兵卒となり、国際舞台で二流市民の役割を演ずることを願わないのだ。プーチンを支持することは、西側に対してひざまずかないことであり、ロシア文明と根本的利益とを擁護することなのだ。
  プーチンが民心を獲得しているのは、彼が人々とともにあるからだ。ロシア経済がさらに悪化することを知っていても、絶対多数のロシア人は「カラー革命」をやらかすことはあり得ない。ロシア人は、プーチンが正義の化身であり、西側こそが道徳的失敗者であることを確信している。西側は、ロシアの政治的発展プロセスを左右できると考えるべきではない。西側と対決する今回の戦役において、ロシアは経済モデルの転換を完成させ、道義上の管制高地に立ち、西側の「商売人政治家たち」には望むべくもない世紀的なうるわしい景観を我がものにすることになるだろう。