自衛隊の南シナ海進出問題

2015.01.31.

1月30日の中国外交部報道官による定例記者会見の席上、アメリカ第7艦隊のトーマス司令官が最近、①日本の空中巡邏の範囲を南シナ海にまで拡大し、中国の不断に拡張する艦隊に対する牽制を行うことを歓迎する、②地域の同盟国や友好国は日本がこの地域の安定にとって重要な要素であるという見方をますます強めており、自衛隊が南シナ海で行動することは意義がある、と述べたことに対するコメントを求めたのに対して、華春瑩報道官は次のように答えました。

  南海情勢は安定しており、中国とASEAN諸国は善隣友好関係を維持している。中国とASEAN諸国は、南海地域の平和と安定を共同で維持する意思と能力を有している。域外諸国は、この地域の国々が平和と安定を維持する努力を尊重するべきであり、国家関係を挑発し、緊張した情勢をつくり出すようなことをするべきではない。

 この問題について、同日付の環球時報社説「中国は自衛隊の南海進出に断固反対する」は、激しい言葉遣いで要旨次のように述べています。今後の情勢を考える上で見逃すことができない内容ですので、紹介しておきます(強調は浅井)。

  アメリカの南海での軍事プレゼンスは歴史的な事実であり、南海周辺諸国は我慢してきた。しかし、南海はアメリカの言うなりになる地域ではなく、アメリカには誰彼を引っ張り込んで南海の軍事的緊張をエスカレートさせる権利はない。
  南海地域は、日本が「第2のアメリカ」になることを許すはずもないし、この地域に米日軍事同盟の影が出現することを許すはずもない。個別の国家が支持するとしても、地域全体を代表するものではなく、中国の意見は尊重されなければならない。
  もしも日本が航空自衛隊を強行派遣して南海を巡邏するというのであれば、中国は厳しい措置を取ってお返しをする必要がある。中国は南海防空識別圏を宣言し、南海における基地建設を加速、拡大することを考えることになるだろう。中国はまた、ロシアと東北アジアでの軍事協力を強化して、米日同盟を牽制することもできる。
  アメリカが日本の軍事力の南海進出を促すのは、そのAPRリバランス戦略遂行において力足らずであることの反映であり、足りないところを日本によって補填する必要があるということだ。29日のトーマス司令官の発言は、ワシントンが中国の反応を窺うために投じたアドバルーンだが、中国としては、曖昧さを残さない対応によって米日の今後の決定に対して影響を及ぼす必要がある。
  日本の航空自衛隊がアメリカの要請にしたがって南海に入り込むとすれば、米日同盟が南海に進出することと同義だ。このことは、米日同盟が釣魚島に適用されることよりも深刻なエスカレーションとなる。これは中国に対する公然たる挑発であり、中国を公然と「仮想敵」とする行為であると見なければならない。したがって、中国の対抗措置も空前の厳しいものとなるべきである。
  この機会に、東京に対して忠告しておきたい。日本が中国の台頭を警戒して中国に対する対抗措置を強化することは理解できる。しかし、日本はレッド・ラインの意識をもたなければならない。即ち、反中においてやりたい放題であってはならず、トゥキディデスとなって最終的にAPRにおける中国の第一の敵になることがあってはならないということだ。
  中国の敵となるということは、いかなる状況の下においても日本の利益にはならない。日本が再び軍国主義の道を歩もうとしても、このような冒険は日本にとっては耐えきれない負担だ。APRのパワー・バランスは複雑であり、日本が一蹴りすればすべてめでたしめでたしというものではない。日本は、アメリカに対する「死んでも忠誠」という偽りを真実に変え、アメリカが誰それを攻撃せよといえばそのとおりに行動する鉄砲玉になるべきではない。
  中米は大国であり、新型大国関係を発展させつつあり、簡単に絶交することはあり得ない。仮にアメリカが日本を動かすとしても、中米は日本をめぐって大国間の特殊なゲームを演じ、その結果、日本に対する危険は中米のリスクよりも必ずや高いものになるだろう。日本が少しは賢くなり、日本は中米という2人の巨人を弄ぶことができるなどと支離滅裂で、ばかげたことを考えることだけはないように希望する。