金正恩の2015年年頭の辞(分析)

2015.01.04.

金正恩は2015年の元旦に際して年頭の辞を発表しました。2013年及び2014年の年頭の辞と比較したとき、文章全体の構成はおおむね同じですが、今回の最大の特徴は、南北統一問題と対外関係・対外政策に大きなスペースを当てていることにあると思います。 しかし、3つの年頭の辞を比較してみると、そのほかにもいくつかの興味深い特徴を読みとることができるように思います。それらは間違いなく「後付けの知見」なのですが、朝鮮情勢を観察する上では重要な内容があると思いますので、南北統一問題及び対外関係・対外政策の部分と合わせて、私の分析結果を紹介します。

1.金正恩の最高指導者としての地位確立

2011年12月17日に金正日が死去し、その後を継いだ若き金正恩にとって、2012年は金日成及び金正日の正統な後継者であることを国内的に認知・浸透させることに全力を注いだ年であったことは、2013年の年頭の辞における次の3つのくだりからも明らかに読みとることができます。

金日成同志と金正日同志は朝鮮人民が数千年の歴史においてはじめて迎え高く戴いた偉大な領袖であり、白頭山大国の永遠なる影像であり、すべての勝利と栄光の旗じるしです。われわれは昨年、金日成同志の生誕100周年を民族最大の祝日として盛大に祝い、チュチェ朝鮮の100年史を誇らかに総括し、金正日同志をわが党と人民の永遠なる領袖として高く戴き、領袖永生の大業を実現することにより、金日成-金正日主義の旗のもと、新たなチュチェ100年代をチュチェの革命偉業を達成するための勝利と栄光の年代として輝かしていくことができるようになりました。

わが軍隊と人民は、天のごとく信じ慕っていた金正日同志をあまりにも思いがけなく失い、血の涙のうちに2012年を迎えましたが、偉大な金正日同志は永遠にわれわれとともにおられるという鉄石の信念を深く胸に刻み付け、党に従って毅然と立ち上がり、一心同体となって党の指導に従いました。人民軍将兵と人民は白玉のような忠誠心と崇高な徳義心、真心を尽くして錦繍山太陽宮殿をチュチェの最高聖地として最も神々しく整備し、万寿台の丘と各単位に大元帥たちの銅像を丁寧に建立しました。

昨年、革命闘争と建設事業ですばらしい勝利を収めることができたのは、金正日同志が富強祖国建設の明確な設計図を示し、強固な土台を築いてくれたからです。昨年の誇るべき成果は、金正日同志の遠大な構想と遺訓を現実化して金日成・金正日朝鮮を世界に轟かそうとするわが党の確固たる決心と正しい指導、党に限りなく忠実な人民軍将兵と人民の高潔な忠誠心と愛国的献身のたまものです。

しかし、翌2014年の年頭の辞においては、もはやこのような念入りな金日成及び金正日に対する言及は姿を消し、「昨年、人民軍と人民は党のまわりに固く団結し、金日成同志と金正日同志の思想と偉業を輝かし、われわれの革命隊伍の政治的・思想的威力を一層強化しました」、「人民軍と人民は共和国創建65周年と戦勝60周年に際しての政治行事と昨年のたたかいの全過程を通じて、金日成同志と金正日同志を高く戴き、その不滅の業績を万代に輝かせていく確たる信念と意志を誇示しました」という簡潔な言及へと変わりました。
さらに2015年の年頭の辞になると、「昨年、党と人民大衆の渾然一体がさらに強固になり、革命隊伍の純潔性と威力がさらに強化されました」となって、金日成及び金正日に対する言及自体が姿を消しました(もちろん、他の箇所で両者への言及がないわけではありません)。以上の記述の変遷からは、金正恩が2014年末までに最高指導者としての地位を確立し、もはや金日成及び金正日の威光に頼る必要がないまでになったことを読みとることができます。
そして、金正恩の最高指導者としての地位を確かなものにする上で、2012年12月12日に成功した人工衛星打ち上げと2013年12月12日に決定、執行された張成沢処刑が非常に重要な意味を持ったことは、2013年及び2014年の年頭の辞がそれぞれ大きなスペースで、次のように特筆大書していることから確認することができます。ちなみに、両事件の日付が同じであることには、これまで気がつきませんでした。単なる偶然かもしれませんが、後者に関しては前者の日付に合わせて決定することはできるわけですから、意図的(如何なる意図かは推し測りかねますが)である可能性はあると思います。

(2013年)

 100%われわれの力と技術、知恵によって科学技術衛星の製作と打ち上げに成功したのは、太陽民族の尊厳と栄誉を最高の境地に至らしめた大慶事であり、千万軍民に必勝の信念と勇気を与え、朝鮮は決心すれば必ず実行するということをはっきりと示した特筆大書すべき出来事でした。

    「宇宙を征服したその精神、その気迫で経済強国建設の転換的な局面を切り開いていこう!」これが今年、わが党と人民が掲げていくべき闘争スローガンです。

(2014年)

 わが党は昨年、強盛国家の建設をめざす誇りあるたたかいの時期に、党内に潜んでいた分派の汚物を除去する断固たる措置を取りました。わが党が適中した時期に正確な決心をして反党反革命分派一党を摘発粛清することによって、党と革命隊伍は一層打ち固められ、われわれの一心団結は百倍に強化されました。このたたかいを通じて、わが党は党組織の戦闘的機能と役割を強めて、人民のために奉仕する党として時代と歴史に対し担った栄誉ある使命を果たし、人民のために一層献身するであろうことを確言しました。

2.朝鮮労働党の比重増大

 先軍政治を強調した金正日に対して、金正恩が朝鮮労働党に軸足を移していることは、2014年11月15日付のコラム「崔龍海訪露発表とこれまでの朝露関係(中国側報道)」の中で紹介した、朝鮮中央通信の報道記事において、崔龍海(労働党書記)が10月29日以後黃炳瑞(軍総政治部長)より前に記載されるようになったことからも窺えるところです。そして、このことは3つの年頭の辞における「先軍」の取り上げ方からも感じ取れます。
  朝鮮の2012年憲法では、金日成の「主体(チュチェ)思想」とともに、金正日が唱えた先軍政治を表す「先軍思想」が「序文」に明記されていますが、3つの年頭の辞における「先軍」の扱いは控えめで、しかも年を追うごとに少なくなっています。
2013年の年頭の辞で「先軍」という言葉が使われているのは次の4箇所で、思想的な意味合いが込められています。

「われわれは金日成-金正日主義の旗を高く掲げ、自主の道、先軍の道、社会主義の道に沿ってあくまでまっすぐに進まなければなりません。」
「すべての幹部と党員と勤労者は、先軍革命の道で党と思想と志を同じくし、生死苦楽をともにし、祖国と人民のために献身する真の同志となり、一心同体とならなければなりません。」
「われわれは偉大な先軍の旗を高く掲げ、軍事力の強化に引き続き大きな力を入れて祖国の安全と国の自主権をしっかり守り…」
「今日の国際情勢は、わが共和国がこれまでと同様、先軍の旗を高く掲げて自主の道を進むことを求めています。」

2014年の年頭の辞で「先軍」が言及されるのは次の3箇所です。いずれの場合も思想的な意味合いを込めたものというよりは、むしろ「形容詞」的です。

「国防部門の科学者、技術者と労働者は、揺るぎない信念と胆力をもって国防科学の先端を突破して先軍朝鮮の威力を轟かせ、国防力の強化に大いに寄与 しました。」
「新しい年2014年は、社会主義強盛国家建設のすべての部門で新たな飛躍の熱風を強く巻き起こし、先軍朝鮮の繁栄期を開く壮大な闘争の年、偉大な変革の年です。」
「建設部門では、先軍の時代を代表する世界的水準の立派な建築物を築き、人民の生活条件改善のための建設を多く行って自立的経済の土台を打ち固め、人民により裕福で文化的な生活をもたらすべきです。」

2015年の年頭の辞では、次の2箇所で触れられています。ただし、後の文章では、2013年及び2014年の年頭の辞では顔を出さなかった「先軍政治」という表現が、金正恩が打ち出した「並進路線」(2013年3月の労働党中央委員会総会)と並んで使われています。

「わたしは、チュチェの革命偉業、先軍革命偉業に対する確固たる信念を持ち、頑強な闘争を展開して昨年を誇るべき偉勲と変革の年として輝かせるのに貢献したすべての人民軍将兵と人民に熱い感謝を送ります。」
「われわれは今後、国際情勢がどう変わり、周辺関係の構図がどう変わろうと、われわれの社会主義制度を圧殺しようとする敵の策動が続く限り、先軍政治と並進路線を変わることなく堅持し、国の自主権と民族の尊厳を断固として守るでしょう。」

しかし、党の軍に対する優位性を強烈に印象づけるのは、2013年、2014年及び2015年の目標を掲げた次の3つの文章の対比で分かる、2015年の党重視の突出ではないかと思います。

(2013年)

新年2013年は、金日成・金正日朝鮮の新たな100年代の進軍路で社会主義強盛国家建設の画期的な局面を開く壮大な創造と変革の年です。

すべての人民と人民軍将兵は、勝利者としての高い誇りと明るい未来に対する信念を持って、強盛国家建設のための壮大な進軍に力強く奮い立たなければなりません。

(2014年)

新しい年2014年は、社会主義強盛国家建設のすべての部門で新たな飛躍の熱風を強く巻き起こし、先軍朝鮮の繁栄期を開く壮大な闘争の年、偉大な変革の年です。

われわれは希望に満ちた新しい年に勝利への確信と熱情に満ちて英雄的進軍を推し進め、革命と建設において一大繁栄期を開かなければなりません。

(2015年)

新しい年2015年は、祖国解放70周年と朝鮮労働党創立70周年に当たる非常に意義深い年です。

われわれは今年、白頭の革命精神と気概をもって敵対勢力の挑戦と策動を断固粉砕し、社会主義防衛戦と強盛国家建設のすべての部門で勝利の砲声を高く轟かせて、祖国解放と党創立70周年を革命的大慶事として輝かせなければなりません。

しかも、2015年の年頭の辞では、党の指導力と戦闘力強化に関する次の文章があります。これに対応するくだりは2013年と2014年の年頭の辞にはありません。2015年が労働党創立70周年に当たるからの強調という側面はありますが、むしろ、70周年を機会に党の「唯一的指導体系を確立」しようとしていると見るべきでしょう。

党創立70周年を迎える今年、朝鮮人民のすべての勝利の組織者であり導き手である党の指導力と戦闘力を強化するうえで新たな里程標をもたらさなければなりません。
党の唯一的指導体系を確立する活動を絶えず深化させて、全党が党中央と思想も呼吸も歩みもともにするようにしなければなりません。すべての党組織は、党の路線と政策の貫徹を党活動の基本としてとらえ、党の政策をどれも取り落とすことなく無条件にあくまで貫徹しなければなりません。

また、軍事力強化を扱った箇所でも、「人民軍では、全軍に党の唯一的指揮体系を確立し、…党が提示した軍事力強化の4大戦略的路線と3大課題(浅井注:「4大戦略的路線」と「3大課題」が何を意味するかは、寡聞にして知りません)を貫徹しなければなりません」、「人民軍は党の富強な祖国建設構想を体し、今後も党の思想貫徹戦、党政策擁護戦で先駆者、手本にならなければなりません」と、党の指導性を強調しています。
私個人の感想をつけ加えれば、金正日の先軍政治強調には違和感が強かったので、金正恩が党の指導性を強調することは、むしろ本来のあるべき姿への回帰傾向と捉えることができると思います。

3.南北統一問題への踏み込み

前2年の年頭の辞と比較する場合における、2015年の年頭の辞の最大の特徴は、韓国政府及び韓国メディアが注目しているように、南北統一問題に踏み込んで言及した点にあると思います。もちろん、2014年においては、年頭の辞こそ抽象的な内容でしたが、すぐ後に金正恩が大胆な提案を行い、南北関係改善への期待を持たせたことは、私たちの記憶になお残っていることです。
2013年の年頭の辞が一般論に終始したのは、金正恩がまだ内政掌握で手がいっぱいだったことを考えれば、十分に理解できることです。2014年の年頭の辞では、「われわれは金日成同志と金正日同志の遺訓を体して、今年、祖国統一運動に新たな前進をもたらさなければなりません」とは言っているのですが、具体的な内容はまだありませんでした。
これに対して2015年の年頭の辞においては、2015年が朝鮮解放70周年に当たることを強く意識して、「雰囲気と環境がもたらされ次第、最高位級会談も開催できない理由はありません」とする首脳会談の可能性にも言及する、次のように極めて積極的かつ具体的な発言を行っています。

昨年、われわれは北南関係の改善と祖国統一のための重大提案を提起し、それを実現するため誠意ある努力を尽くしました。しかし、内外の反統一勢力の妨害策動によってしかるべき実を結ぶことができず、北南関係はかえって悪化の道へ突き進みました。
たとえ情勢は複雑で障害と難関が横たわっていてもわれわれは金日成同志と金正日同志の畢生の念願であり民族最大の宿願である祖国の統一を必ず実現し、この地に尊厳ある富強な統一強国を建設しなければなりません。
「祖国解放70周年に当たる今年、全民族が力を合わせて自主統一の大路を開いていこう!」、これが全朝鮮民族の掲げていくべき闘争スローガンです。
朝鮮半島での戦争の危険を取り除いて緊張を緩和し、平和的環境をつくりださなければなりません。

南朝鮮当局は、外部勢力とともに繰り広げる無謀な軍事演習をはじめ戦争策動を一切中止すべきであり、朝鮮半島の緊張緩和と平和的環境づくりに方向を転換すべきです。
わが民族を二つに分け、70年の長きにわたり民族分裂の苦しみを強いてきた張本人であるアメリカは、時代錯誤の対朝鮮敵視政策と無分別な侵略策動に固執せず、大胆に政策転換をすべきでしょう。
北と南はそれぞれの思想と体制を絶対視して体制上の対決を追求してはならず、わが民族同士の理念に基づいて民族の大団結を成し遂げ、祖国統一の問題を民族共通の利益に即して順調に解決していかなければなりません。

北と南はすでに合意したとおり、祖国統一の問題を思想と体制を超越して民族共通の利益に即して解決していかなければなりません。
北南間の対話と協商、交流と接触を活発に行って断たれた民族のきずなと血脈をつなぎ、北南関係において大転換、大変革をもたらさなければなりません。
北と南が戦わず、力を合わせて統一の新たな道を切り開くことは同胞の等しい願いです。北と南はこれ以上無意味な口論やさ細な問題で時間とエネルギーを浪費してはならず、北南関係の歴史を新しくつづらなければなりません。
わが民族の意志と力を合わせるなら成し得ないことはありません。北と南はすでに統一の道で7・4共同声明と歴史的な6・15共同宣言、10・4宣言のような統一憲章、統一大綱をもたらして民族の統一意志と気概を全世界に示しました。
われわれは、南朝鮮当局が心から対話によって北南関係の改善を図ろうとする立場に立つなら、中断された高位級接触も再開し、部門別の会談も行うことができると思います。
そして雰囲気と環境がもたらされ次第、最高位級会談も開催できない理由はありません。
われわれは今後とも対話と協商を実質的に進捗させるためにあらゆる努力を尽くすでしょう。

オバマ政権が、ソニー・ピクチャーズの映画『インタビュー』にかかわって、1月3日に新たな対朝鮮制裁措置を発表するなど、朝韓関係改善にかかわる外部環境は決して楽観を許しませんし、朝韓間の立場の違いも大きいので、前途を楽観する状況にはありません。しかし、国内基盤を今や盤石にした観のある金正恩が、朝鮮解放70周年という節目に、南北統一問題に本腰を入れて取り組む強い意志をもっていることは間違いないと思われます。

4.対外関係・対外政策への踏み込み

対外関係及び対外政策に関する言及という点においても、2015年の年頭の辞は、前2年のそれと比べて踏み込んだ内容となっています。2013年及び2014年の年頭の辞は、「自主、平和、親善」の対外政策理念を表明するだけのものでした。しかし、2015年の年頭の辞は、まず次のように国際情勢認識を行っています。

昨年、国際舞台では帝国主義者の横暴な専横と露骨な主権侵害行為により、各国と地域で戦乱と流血の惨劇が続き、世界の平和と安全ははなはだしく脅かされました。
特に社会主義の堡塁であり自主と正義のとりでであるわが共和国を孤立・圧殺しようとするアメリカの極端な対朝鮮敵視政策によって、朝鮮半島では緊張激化の悪循環が続き、戦争の危険はさらに増大しました。

以上の情勢認識に基づき、年頭の辞は、朝鮮の核抑止力保持を含めた先軍政治と並進路線の堅持を正当だと、次のように主張しています。

国際舞台で力による強権がのさばり、正義と真理が無残に踏みにじられている今日の現実は、われわれが先軍の旗を高く掲げて核抑止力を中軸とする自衛の国防力を強固に固め、国の生命である国権を揺るぎなく守ってきたことがいかに正当であったかを如実に示しています。
われわれは今後、国際情勢がどう変わり、周辺関係の構図がどう変わろうと、われわれの社会主義制度を圧殺しようとする敵の策動が続く限り、先軍政治と並進路線を変わることなく堅持し、国の自主権と民族の尊厳を断固として守るでしょう。

私が特に注目したのは、以上の文章に続けて、次の一文があることです。ちなみに、朝鮮中央通信は、2015年の年頭の辞のさわりとも言うべき内容を紹介しているのですが、次の一文は抜け落ちています。

われわれは革命的原則と自主の支柱に基づいて国の尊厳と利益を第一とし、対外関係を多角的に、主動的に拡大し発展させていくでしょう。

特に注目されるのは、「対外関係を多角的に、主動的に拡大し発展させていく」という部分です。言うまでもなく、2014年には朝鮮が活発かつ多面的な外交活動を展開したことは私たちの記憶に新しいところですが、この基調が2015年にも続くことをこの一文は宣明したものと言えるでしょう。
中朝関係が停滞し、中国からの支援がこれまでのように期待できなくなっている状況のもとで、金正恩としては自らが打ち出した「並進路線」の成果を挙げるためにも、ますます活路を求める活発な対外政策を探究しようとしていると判断されます。

5.経済政策

3つの年頭の辞においては、対外開放を積極的に進めるが如き記述はもちろんありません。しかし、3つの文章を比較すると、経済政策における一定の変化への模索の動きを見て取ることができるように思われます。
2013年の年頭の辞では、「発展する現実の要求に即して、経済指導と管理を改善すべきです」とある一方で、「朝鮮式の社会主義経済制度を固守」しなければならないと述べています。
2014年の年頭の辞では、「経済活動に対する指導と管理を抜本的に改善しなければなりません」とし、「党の指導のもとに経済に対する国の統一的指導を強化し、企業体の責任感と創意性を高め、すべての勤労者が生産と管理において主人としての責任と役割を果たすようにすべきです」という記述となっています。全体としては「国の統一的指導を強化」することに力点がありますが、「企業体の責任感と創意性を高め、すべての勤労者が生産と管理において主人としての責任と役割を果たす」という箇所に新味が感じられます。
これに対して2015年の年頭の辞は、次のようにさらに興味深い記述が行われています。

内閣をはじめ国家経済指導機関で現実的要求にかなった朝鮮式の経済管理方法を確立するための活動を積極的に推進し、すべての経済機関、企業体が企業活動を主動的に、創意的に行うようにすべきです。各級党組織は経済管理方法を改善する活動が党の意図どおり進められるように強く後押ししなければなりません。

特に、「現実的要求にかなった朝鮮式の経済管理方法を確立」、「すべての経済機関、企業体が企業活動を主動的に、創意的に行う」、「各級党組織は経済管理方法を改善する活動が党の意図どおり進められるように強く後押し」という記述の部分は、今後、朝鮮の経済政策がどのように展開されていくかを判断する上での材料となりうるでしょう。